野鳥、モグラ以下の扱い。が、たっぷり「思いやり予算」
議会の関連で、米軍低空飛行訓練関連の資料をあたっていたが、あらためて植民地的扱いを痛感した。
米国内では市街地はもちろん、無人地でも野鳥保護の観点から低空飛行訓練は禁止されている。グアムのアンダーセン空軍基地では、モグラのような夜行性動物の生息に影響を与えると、夜間飛空訓練が禁止されている(伊波・元宜野湾市長の講演)。ひきかえ日本は無法地帯となっている。
一方、思いやり予算で「135億円を掛けて18ホールの米軍専用ゴルフ場がオープンした。返還された泡瀬ゴルフ場(47ヘクタール)の代わりだが、面積は3・6倍に膨らみ、カジノバーまで造られた」(琉球新報社説)
【伊波洋一氏講演 「普天間基地問題から何が見えてきたか」2011/4】
【思いやり予算 被災地の復興に充てよ 琉球新報3/14】
【思いやり予算 被災地の復興に充てよ 琉球新報3/14】大盤振る舞いという言葉がこれほどふさわしい税金の使途はほかに少ない。在日米軍駐留経費負担、いわゆる思いやり予算のことだ。
防衛省は、1978年度に始まった思いやり予算のうち、79年度~2011年度の在沖米軍基地の施設整備費(FIP)が5556億円に上ることを明らかにした。
整備件数の最多は家族住宅で1326億円に上る。1戸当たりの延べ面積は約150平方メートルで、基地外の民間地の一戸建て住宅平均の約2倍の広さに当たる。思いやり予算が米兵や家族の居心地の良さにつながり、沖縄の過重な基地負担を下支えしている実態が浮かび上がった。
そもそも思いやり予算は、日米安全保障条約に基づく日米地位協定上、日本に支払う義務はない。
東日本大震災で膨大な財政需要が見込まれる中、政府は思いやり予算の大幅減額に切り込むべきだ。
米空軍嘉手納基地内に2010年、生徒数約600人の中学校ができた。用地面積16ヘクタールは、太平洋の米軍基地内の中学としては最大だ。整備費用の40億円は生徒数が同規模の県内中学校のほぼ2倍。専用の400メートルトラックやサッカー場まであり、豪華さが際立つ。
同じ年の春には、沖縄市に135億円を掛けて18ホールの米軍専用ゴルフ場がオープンした。返還された泡瀬ゴルフ場(47ヘクタール)の代わりだが、面積は3・6倍に膨らみ、カジノバーまで造られた。
財政難にあえぐ米政府の予算であれば、これほどぜいたくな施設にはならなかったはずだ。
日本政府は1978年度から在日米軍に対して「思いやりをもって対処する」(金丸信防衛庁長官=当時)という珍妙な論理で、基地従業員の給与を肩代わりした。
87年以降の特別協定は、本来は米側が支払うべき基地従業員の給与や光水熱費、訓練移転費などにまで際限なく支払うようになった。
日本が負担する駐留米軍経費は他国に比べ、群を抜いて高い。だが、米国は中国などの軍事情勢を挙げて増額圧力を強め、在日米軍再編見直しに絡む経費負担増も求めかねない。
11年度から15年度までの期限で1兆円近い思いやり予算が国会承認されたが、再交渉を求めたい。 東日本大震災の復興は、駐留経費をめぐり連綿と続く対米従属を断つ好機だ。思いやり予算を被災地支援に充てるべきだ。対等な日米関係を築く上でも大義がある。
【基地による被害は甘受しなければならないのか】伊波洋一氏講演 「普天間基地問題から何が見えてきたか」より
NPO法人 日野・市民自治研究所「九条と基地を考える研究会」 2011年4月10日日本では米軍基地があれば周辺住民が何らかの被害を受けることはごく当たり前のことのように思ってしまうのですが、本当は当たり前のことではないのです。私は宜野湾市長として三度アメリカに普天間問題の解決を要請するために行きました。二度目の2005年7月に行ったときに、アメリカで基地周辺の自治体はどれぐらいの被害を米軍基地から受けているのか確かめておくことが米国政府との交渉や日本政府との交渉で必要と思い、カリフォルニア州の軍港のあるサンディエゴ市とその周辺自治体でペンドルトン海兵隊基地に隣接するオーシャンサイドシティに調査に行ったのです。8万人近い海兵隊員がいるペンドルトン基地に隣接しているオーシャンサイドシティは15万人ぐらいの市です。
私は、オーシャンサイドシティ市長に「隣接するペンドルトン基地からどの程度の被害を受けていますか」と質問をしました。すると市長さんは「米国では市民に被害を与えて基地は存在できません」と答えたのです。つまり、米国では、周辺住民に被害を与え続けて基地が存在することは許されないと言ったのです。「じゃ直接の被害はないのですか」と聞いたら「はい、ないです」と答えました。ヘリコプターも飛行機も見ることはないと。更に聞いてみたら滑走路は山側から海に向かって延びていて、海にしか飛んでいかないそうです。何十年か前に実弾砲撃演習の音が聞こえてうるさかったので、市民から苦情が寄せられ、その旨要請をした結果、実弾砲撃演習は遠くに移され、音が聞こえなくなったそうです。サンディエゴでは80キロ遠方の海上でジェット機などが訓練するのです。その排気ガスが住民に被害を与えているという訴訟があったぐらいですから、直接的な音は聞こえないのでしょうね。ただ隣に米軍基地があるとどういう問題が起こるかということについては、やはり多尐の犯罪の増加もあり、警察官を多くしたと話していました。一方、サンディエゴ市には約200の米軍施設があるそうです。市内には引退をした方も含めて米軍関係者だけでも20万人ぐらい居るそうです。市としては積極的に米軍施設を誘致しているそうですが、でも米軍基地施設を誘致する場合でも、先ず市民に被害を与えないことが条件なのです。
基地の場合、法律だけの規制だけでは不十分なので米軍自身が規制するような協定をつくって管理してもらっているのだと話していました。沖縄や日本の米軍基地のような、厚木とか、嘉手納とか、普天間のような状況はまず彼らには考えられないのです。私たちが持っている米軍基地があれば被害があるのは当たり前という感覚は、実は当たり前じゃないわけです。アメリカではそれは許されていない。人権や環境を重視したジミー・カーター大統領が1978年に初めて米軍も連邦環境法や州環境法を守るべきとの大統領命令を出した。当時まで米軍は大統領の軍隊として特別な地位があり、必ずしも連邦環境法に縛られていなかったのですが、その時から米軍も連邦法や州法、自治体の法も出来るだけ守るということがスタートしたのです。翌年カーター大統領は国内同様に海外においても米軍の活動は守るべき環境基準で規制するべきだとして、国防総省に対して海外における基準をつくって、それを守らせなさいという大統領命令を出すのです。しかし、国防総省はそれを無視して海外での基準を作りませんでした。
その後、冷戦が終わりソビエト連邦が崩壊すると米国でも多くの基地が閉鎖され、跡地利用が始まりました。そして、多くの米軍基地が環境汚染されていることがわかりました。海外の米軍基地でも環境調査が行われ、多くの基地で環境汚染が見つかりました。連邦議会は1991年度に海外米軍の環境基準に関する法律を制定し、カーター大統領が命じた米軍が海外で守るべき環境基準を制定するための調査を国防総省に命じました。国防総省はそれに基づいて1996年に国防総省指針4715.5号を策定し、域外環境基準指針文書を策定します。
◆日本では守られない米国基準
これが日本では日本環境管理基準(JEGS)になっています。日本では1995年からスタートしており、これまでに8回にわたって改定されています。実はそのことも私たちにはほとんど知らされていません。どうしてかといいますと、日本政府はこの日本環境管理基準をまったく翻訳すらしていないのです。同様な例として日米合同委員会で70年代に地方自治体が環境調査を申し出たときには、速やかに日米両政府と米軍はそれを認めて環境調査を行うという合意をしているのですが、これは30年以上公表もされず、国内では誰にも知らされなかったのです。自治体にそういうことを認めるということを決定しながら、当の自治体にはそれは知らされていない。実際には日本の米軍基地においても日本環境管理基準が実施されており、12頁を見てほしいのですが、2000年9月11日には「環境原則に関する共同発表」というのが行われております。どうしてこの時期に行われたかというと、日本における環境管理基準JEGSは1995年にためし版というのがスタートして、それから2回ぐらい改定されるのです。改定されていよいよ本当の意味で2000年からは国防総省指針4715.5号に適合するものだということが日米間でも国防総省内でも合意されたので共同発表になったのです。
ですから、在日米軍基地はこれを確実に守らなければならない立場にその時点からなったのです。共同発表では次のように言っています。「日米両政府の共通の目的は、米軍の施設及び区域に隣接する地域住民並びに在日米軍関係者及びその家族の健康及び安全を確保することである。」さらに「在日米軍の環境基準は、一般的に、日本の関連法令上の基準を満たし又は上回るものとなる。」としています。どうしてかというとJEGSは2年ごとに改定しますが、アメリカの基準か、日本の基準か、より厳しい基準にするということが合意されているからです。ところが、2000年に「環境原則に関する共同発表」をした後も、普天間基地では飛行回数が増加して周辺環境は悪化していきました。嘉手納基地も同様に航空機騒音が増加しました。実は、日本政府は日本環境管理基準を重視せず、考慮しなかったんです。
どうしてか。実はこのJEGSは環境省を中心とした形の合同チームでつくられており、外務省や環境省の所管なのです。防衛省ではほとんど誰も気にしてないのです。私が市長になって、JEGSについてずっと提起して、ようやく最近、外務省や防衛省が基地問題で言葉上、日本環境管理規準についても言うようになりましたが、まだ実効性はありません。でも在日米軍がJEGSを守るべきことは日米で合意されており、こんな部厚い細かい環境基準があって、それに基づいて日本の米軍基地でも守らなければいけないのです。しかし、日本では、誰も米軍に守らせるための監視などしていないわけです。
日本でも米軍が守るべき環境基準が実際にあるということを皆さんに知ってほしいし、本来、日本政府がそれを米軍に守らせるべきなのです。これを守ったら日本で米軍基地を運営できませんということならば、そこは米軍基地のいるべき場所じゃないということをきちんと言わなければならない。だから厚木でも、普天間基地でも、嘉手納基地でも、本来アメリカ国内で言われているように「地域住民に被害を与えて基地は存在できません」という立場を日本国内においてもきちんと言うべきです。私は、日本政府がJEGSを守るよう米軍に言うべきだと市長として外務省や防衛省に対して言い続けてきたのです。しかし、まだ実効性のある対処はなされていません。ここに書いた「環境原則に関する共同発表」は日米が正式に決めたことであり、外務省のホームページにもきちんと載っています。
日本政府は共同発表では基地周辺の住民環境を守ると言いながらほとんど何もしていない。沖縄の嘉手納や普天間でも厚木でもそうですし、在日米軍基地でもそうです。それを私たち国民が知らずに許している面もあります。私たちは、日米両政府が合意した根拠に基づいて、なぜ実施しないのか、何故遵守させないのかと言い続ける必要があります。
◆米軍には適用されない航空法
沖縄の海兵航空部隊、普天間のヘリ部隊がグアムに行く時にこんなニュースが伝わってきます。グアムの新聞ですが、沖縄からヘリ部隊がグアムに来るのでグアムの市街地から海兵隊のヘリを見ることがあるかもしれない。でも皆さんに見えている米軍ヘリは連邦航空法の許可を得て飛んでいます。という記事が出るのです。つまり、グアムでは住民地区を飛ぶヘリは見えないのでしょう。アンダーセン空軍基地は市街地から離れています。だけども見える場合は必要があって飛んでいる。そのときグアムでは連邦航空法の許可を得て飛んでいますと、きちんとアナウンスされている。ところが日本では米軍機には日本の航空法の適用すら無いのです。例えば普天間飛行場の問題でいうならば、普天間飛行場は日本の航空法でいう飛行場じゃないのです。米軍機は日本の航空法の適用下にない。安全基準もなにも日本の航空法の適用下にないから守る必要もないのです。ですから日本の飛行機は普天間飛行場に降りられません。
でも米軍機が降りられるのはなぜか。それは米軍機に航空法の適用がないからです。米軍機は日本の国内においてどこを飛んでもいいのです。あまりあからさまには言われていませんけれども、沖縄ではあからさまに言われています、最近は言わなくなりましたが。那覇防衛施設局長は米軍機が飛んでいろいろ苦情がくると何と言ったかというと、米軍機はどこを飛んでもいいですと答えていました。実際に米軍機は運用上必要であればどこを飛んでもいいことになっているのです。
実は日本は米軍にとっての無法地帯なのです。たしか岩国の米軍戦闘機の低空飛行で土蔵が壊れたというニュースが新聞に載りました。あのように150m、あるいは300m以下で低空飛行が自由に出来る国は日本以外にはないのです。海外では、多くの場合、野生動物の保護のために無人のところでも低空飛行を禁じています。アメリカの中でも低空飛行は基本的に禁じられます。また、グアムのアンダーセン空軍基地では、夜間飛空訓練が禁止されました。なぜか?モグラのような夜行性動物の生息に影響を与えるからです。沖縄では、普天間飛行場では夜中の11時まで米軍ヘリが飛んでいます。嘉手納基地では、眠っている住民を叩き起こすような爆音を響かせて未明の午前3時、4時に数機のジェット戦闘機が本国に向けて離陸していくのです。なぜか?本国には日中に着かなければならないからです。日本だけが米軍の無法地帯と化していることを、私たちが必ずしも十分認識していないのです。日本が米軍基地にとって無法地帯なのは、私たちがそれを許している関係がそこにあるからなのです。
そこを私は正す必要があると思うのです。だから、米軍基地の有り様にしても、当然先ほどの環境原則に関する共同発表にもあるように、アメリカの基準と日本の基準をイコールにしなきゃいけない。アメリカで悪いことは日本でも悪い、ということをきちんとさせなければいけない。そのことをするだけでも、沖縄とか厚木とか岩国では米軍基地問題の多くの被害が尐なくなると思います。そういったことをできないでいるというのが一番大きな問題ではないかと思っております。
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