こども条例と県の取組み
県議会で自公が県子ども条例に難癖をつけ、関連予算の凍結から条例廃止へ、という勢いで動いているとのこと。
“条例の「あるがままに愛される」と言う趣旨と次期計画の教育の視点が矛盾しないか”“教育改革に力点をおく現県政下でこの条例が必要か”という意見があったとのことだが、あらためて条例やそのもととなった条約の精神と県政のとりくみについてみてみたい。
日本政府も批准している「こどもの権利条約」について、子どもの権利のための国連NGOは、子ども向きの説明の中で、その柱は(1)愛される権利~こどもの基本的権利、(2)自分らしく元気に大きくなる権利~成長発達するためのいろいろな権利、(3)社会の中で大きくなる権利~市民的自由、(4)特別な助けを求める権利~特別なニーズを必要としているこどもの権利がある、と解説している。
「愛される権利」とは、子どもの基本的権利を子ども目線で表現した言葉であり、多くの研究者や機関が使われている。社会福祉協議会が出発した本の中にも、その用語はある。
国連「子どもの権利条約」の成立に深く影響を与えたと評価されているコルチャック氏が、子どもの立場から主張してきた「子どもの権利の尊重」の理念は・・・
・子どもは愛される権利をもっている。自分の子だけでなく、他人の子どもも愛しなさい。「愛」は 必ずや返ってくる。
・子どもを一人の人間として尊重しなさい。子どもは「所有物」ではない。
・子どもは未来ではなく、今現在を生きている人間である。十分に遊ばせなさい。
・子どもも過ちを犯す。それは、子どもが大人より愚かだからではなく、人間だからだ。完全な子どもなどいない。
・子どもにも秘密を持つ権利がある。大切な、自分だけの世界を。
・子どもの持ち物や、お金を大切に。大人にとってつまらぬ物でも、持ち主にとっては大切な宝。
・子どもには、自分の教育を選ぶ権利がある。よく話を聞こう。
・子どもの悲しみを尊重しなさい。たとえそれが失ったオハジキ一つであっても。
・子どもは不正に抗議する権利を持っている。圧制で苦しみ、戦争で苦しむのは子どもたちだから。
・子どもが自分たちの裁判所を持ち、お互いに裁き裁かれるべきである。大人もここで裁かれよう。
・子どもは幸福になる権利を持っている。子どもの幸福無しに、大人の幸福はあり得ない。
と解説されている。
「あるがままに愛される権利」は、虐待やいじめなど(これらは「愛されるに値しない人間」というメッセージ)が深刻化するもとで、重要性はよりましている。また、子どもの貧困、低学力の問題でも同様である。
「あるがままに愛される権利」とは、その存在をまるごと認められ、発達の可能性をまるごと保障する視点であり、それは「子どもの最善の利益」と深く結びついている、と思う。
県も「子どもの最善の利益」をしばしば口にし、取組みを行ってきた。
・児童相談所の体制強化、スクールソーシャルワーカーの拡充など
児童虐待死事件では、知事は
「児童相談所、この役割というのはきわめて、私は大きいと思っております。子ども達がおかれているその環境というのを、真に見分ける力が必要だと思いますし、何よりも子ども達の本当の心の叫びといいますか、真の思い、これをしっかり把握できる。そういう能力が必要だと思っております。
児童相談所の組織体制を、一応とりあえずできる事として、増員をいたしましたけれども、今後検証委員会の検証結果を待って必要があれば、さらなる体制強化をはかりたいと思っております。そして委員ご指摘の通り、体制というだけではダメで、やはり一人ひとり、この職務に携わる人、この人をどう育てていくか。専門性を高めていく、この視点も重要だと思っております。
この職員、何よりも一番大切な事は、子どもの事を思う熱い気持ちを持っておるかどうか。その気持ちに基づいて本当にやる気を持って前向きに行動していくというような、そういう人間性というものが必要だと思いますが、そのような資質を持った職員については、できる限り長くこの職に配置するとことによって専門性を高めていくと。あわせて研修のあり方などについても工夫をしていかなければならないと考えております。」(08年2月議会)と
子どもにとって必要な職員とその体制という観点から答弁している。
・学童保育の保育料軽減補助、高校授業料無償化の期間制限の撤廃、子どもの無保険解消
子どもの貧困について知事は
「働く貧困層が増加し、社会問題化する中、経済的な貧困が教育や児童虐待、いじめなど、子どもに及ぼす影響は大きく、重要な課題であると認識しております。こうした課題に対応し、県民が安心して暮らすことができるようにするためには、教育の充実や、社会保障制度をはじめとした福祉の充実、また、雇用を安定し所得を確保する経済対策といったことが非常に重要になると考えておる次第であります。
そのため、県としましても県立学校での授業料の減免や、奨学金の貸与、乳幼児医療費への助成など子育て世帯を支援してまいりました。
さらに来年度からは、経済的な負担の大きい多子世帯への支援としまして、新たに、第3氏以降で3歳児未満児の保育料の軽減や無料化への支援及び就学前の第3子以降の乳幼児医療費の原則無料化、また、放課後の学びの場の拡大などにも取り組むことといたしております。
児童虐待防止への対応強化を図ることも行い、中央児童相談所の体制整備を図るほか、地域での支え合いを推進するための「あったかふれあいセンター」の取り組みなど、県民の皆様方が住み慣れた地域で生き生きと暮らし続けていけるように、高知型の地域福祉の充実を図っていくこととしています。
また、産業を興すという観点、雇用を安定させる経済活性化策という観点、これらから、あったか高知・雇用創出プランなどの緊急対策とともに、産業振興計画を着実に実行することで、本県経済の体質強化を図っていきたいと考えておるわけであります。」
「本県において子どもの貧困問題、これは非常に重大な課題であり、先程来申し上げておりますような、例えば放課後の学びの場の設置などという問題につきましても、この問題に正面から取り組むものになると考えておる次第であります。」(09年2月議会)
・放課後学びの場、30人学級など学ぶ場の保障、基礎学力の向上
こどもの権利条約29条「教育の目的」
「.子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させること。」としておいる。こども条例の「学び」の意味は、こういう内容である。
また知事は、「学力テストの点数をあげることが自己目的化するような事態というのは、本末転倒だと考えています。」「全国平均から大きく引きはなされた状況が続いておるわけでございます。子どもたちがかわいそうであります。この事実を真摯に受け止め、今後も本県の子ども達の学力の実態に応じた学力向上対策を実施していく必要があります。」(09年9月議会)
・・・その方法論は別にして、言っている内容と、子ども条約、こども条例は矛盾していない。
・学校図書支援員の配置など・
しかし、それは、子どもの権利委員会第三回勧告が指摘する日本現状、政府の政策下のものではあるが・・・
日本への勧告では、子どもの困難は、大きくわけて2つ指摘している。
①教育制度の「高度に競争主義的な」性格が「いじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退および自殺」の原因となっている(パラ70)
→ 98年の第一回最終所見以来くり返され指摘されたこと。
(バラ70).委員会は、日本の学校制度によって学業面で例外的なほど優秀な成果が達成されてきたことを認めるが、学校および大学への入学を求めて競争する子どもの人数が減少しているにも関わらず過度の競争に関する苦情の声があがり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、このような高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。
②新しい困難~「驚くべき数の子どもが情緒的幸福度の低さを訴えている」(パラ60)
→ ユニセフ「子どもの幸福度調査」/ 日本の子どもの1/3が「孤独」感を訴え、OECD諸国・平均値8%弱を圧倒的に上回っている。
→ CRCは、「決定的要因が子どもと親および子どもと教師との間の関係の貧困さにある」(パラ60)と指摘。/家族をめぐっては「親子関係の崩壊が、子どもの情緒的および心理的幸福度に否定的な影響を与え」(パラ50)ているとの懸念をも表明。
新自由主義政策による貧困と格差の拡大、教員の多忙化・孤立化など深刻な影響を与えている。
子どもの権利条約、こども条例はいよいよ大事になっている。
なお、PISAなどの学力調査も高く、国自体の競争力も高い北欧諸国は、徹底した平等と公平、テストもなく自主性、自発性を活かしている。幼児教育も重視しているが、たとえばスウェーデンのそれは、「飽きるまで遊ぶ」、特に自然の中で遊ぶ環境教育というものを重視し、好奇心や自主性とともに、その年齢なりの責任感を育てている。
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