震災現場から考える循環型地域経済(メモ)
井内(いのうち)尚樹・名城大教授「自然エネルギーと循環型経済」(経済2012.3)の中から、「震災現場から循環型地域経済を考える」部分の備忘録。
「小規模分散」「地産地消」型の産業による循環型経済が、持続的な地域づくり、災害につよいまちづくりに結びつく。以下、備忘録。
【震災現場から循環型地域経済を考える】
井内(いのうち)尚樹・名城大教授 経済2012.3
・311後の日本経済、地域経済を考える際、先進的な事例を被災地から発掘し、新しい地域経済を構築することが重要。
(1)木造仮設住宅の建設と循環型地域経済
・「小規模・分散」「地産・地消」型の産業が重要なキーワードとなる。本格的な循環型経済とは何か。
◆住田町の仮設住宅建設のとりくみ
・岩手県住田町 人口6400人、山間部のまち。「森林・林業日本一のまちづくり」
・震災3日目から地元材をつかった仮設住宅の建設。/ 壁・床の8割は地元産の気仙杉、カラマツ。約3億円の予算で、100%木造の仮設住宅(一戸250万円、給排水設備除く)を100戸程度建設。
◆地域循環型産業の存在意義
・仮設を早く建設できた理由~ 住宅関連産業がうまく循環していたから。
川上の森林組合、製材工場、集成材工場、プレカット工場、工務店、大工と、町内循環システムが稼動
→ 町予算の3億円は、ほとんどが町内部で循環。/川上と川下が循環システムとして機能することが大事
・森林・林業の循環システムをどうつくりあげてきたか
→ カギは安い家賃の木造一戸建て町営住宅 / 日常的なとりくみ
・自然エネルギーの普及についても、間伐材・端材、チップ工場、(ペレット工場/ペレットより、そのまま使えるチップが効果的り、途中で利益が抜けることもぬ)、販路のルートがいる。
(2)宮古市のがれき処理からみえるもの
・ヒヤリング調査~ がれき処理が「ものすごく進んでいる」宮古市
◆「おらが街」の建設業者・労働者がいた
・地域経済活性化をはかるために「住宅リフォーム助成」制度で有名 /地域循環型経済のとりくみ
・震災3日後、建設業3団体があつまり、3/16「宮古地区災害復旧対策連絡協議会」を結成
~ 県建設業協会宮古支部、宮古建設業界、宮古建設組合、宮古電業協会、宮古市水道工事業協同組合
県管工業協会宮古支部、宮古市指定下水道工事店が参加。
→ ライフラインがまったく機能してない状況で、遺体捜査を行う自衛隊の後方支援として、がれき処理、倒壊した家のかたづけ(チェーンソー部隊も発足)などを実施。
◆建設関連業は「地産・地消型」産業
・宮古では、住居を含め街をつくったのが地元業者だったため、すぐに行動ができた。
→コストダウン、効率化により県外大手などにまかせていては被災した街をすぐに再建はできない。
・宮古市/10年前から様々な建設業者が集まり協同のとりくみを実施
→木造住宅の建設現場の事故減少へ、大手建設会社の安全管理を学び、現場の安全パトロールを実施
→市も「住宅リフォーム」助成制度で、市内の建設業者を守ってきた。
・災害があった時に、地域の建設関係者が結集できる地域社会の構築を
→ 「地産地消」型のインフラ業者の集積の構築、他の業界・業者も含めた日常的な協働化が必要。
(3)避難所での栄養不足の実態と学校給食体制
・福島県「一次避難所における食事状況の調査」 4/20-28、159施設
熱源なし49.1%。タンパク質不足32.7%、野菜・果実不足39.6%
朝食 お握り10.7%、菓子パン32.7% 昼食 おにぎり24.57%、菓子パン13.8%、夕食 おにぎり7.5%
◆自校方式自営の給食体制
・相馬市の避難所 小中学校で、温かいスープ、温かいご飯が提供されている。
・自校方式でも、給食会を通じた食材の一括大量調達では、調達網が寸断されたら提供できなくなる。/地産地消の食材を、小規模・分散型で提供するシステムが重要。
◆「地産地消」型産業構造の重要性
・小規模・分散型の学校給食体制と地域商店街(メモ者 農家・農業も)とを結びつける政策が重要
→ 大型店との競争で疲弊しているが、安定的に食材を供給することで、売り上げの半分を学校給食という地域循環する「官公需」でまかなえる。
・今回の震災は、地元の農産物、商店街と小規模・分散型の自校方式自営の給食体制を結びつける「地産地消」型の産業構築の重要性を示した。
・地方自治体の「官公需」を地域内部の中小業者に循環させる
→ 自治体が地域循環型の経済の構築をすすめること。/災害に強い持続可能な地域をつくること
→ そのためにも、熟練、技能、専門性に相応しい賃金の保障(公契約条例)を
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