伊方原発 「再稼動」の条件はない
四国電力は、昨年11月14日に伊方3号基のストレステストの結果を、保安院に報告している。「想定する揺れ 570ガル」「揺れの限界点1060ガル」となっている。
「中越沖地震」では設計時の想定の4倍近い1699ガルを記録、阪神淡路大震災では、848ガルの縦揺れを記録している。原発の耐震強度は横揺れが対象で、縦揺れはその1/2程度。
では・・・伊方原発の場合どうか。福島の苛酷事故を二度とおこしてはならない。「想定外」はゆるされない。という観点から、以下、問題点を整理してみた。
原発は当面必要と思う人でも、この程度の「テスト」、対策でオッケーとはいえないだろう。
①ストレステスト自体の問題
・再稼働の前提とされるストレステストは、コンピュータで計算しただけのものであり、「地震・津波について想定の見直しがされていない」、老朽原発についてはデータが無く「新品としての性能を保っているという架空の前提」であり、より根本的には、安全対策の前提である福島原発事故の原因がいまだ究明されていないもとでの「テスト」。
事故原因を踏まえた安全指針類の改訂もされておらず、当然その改訂指針に基づく安全性の確認もなされていない。
原子力安全委員会委員長ですら「一次評価は安全委が要求している(安全性の)レベルに達していない」と発言。
・テストの実施主体が電力会社であり、安全審査をする安全・保安院の「やらせメール」にかかわり、相当数は原子力メーカーなどの出向者であり、原子力安全委員会の委員長らはメーカーから資金を受け取っており、「安全神話」を振りまき、国民の信頼を失ったことから、両機構とも3月末に廃止される機関である。
②安全対策
・追加の安全対策は、水素爆発防止策は2年後であり、ベント設備の新設も必要とされようとしている。現状では役に立たないオフサイトセンターの建て替え、地域防災計画策定・対策も整っていない。
老朽化の進む1号機の原子炉の脆性劣化の試験片検査の結果がわかるのは来年。
③巨大地震と耐震性
・四国で発生が予想される大地震の想定が大きく塗り替えられ、いっそう深刻になっている。南海トラフの巨大地震モデル検討会の「中間とりまとめ」は、想定エネルギーで3倍、波源域を約2倍に拡大し、震源域が伊方原発のすぐ近くまで拡大した。基本の想定は根本から変わる。
・伊方原発の耐震性は、予想される1000ガル強には対応できない。中越沖地震級の揺れがあれは破損する。電力会社は、伊方原発は堅い岩盤上にあると説明していますが、従来の揺れ対策は、横揺れで中心であり、縦揺れ対策はほとんど無視されてきた。縦揺れは堅い岩盤の方が良く伝わり、減衰しない。縦揺れに対する限界点は500ガル程度であり、阪神・淡路レベルの縦揺れには耐えられない。
各地の地震で「想定外」の揺れが記録されており、国内で記録された揺れを相当程度上回る強度が最低条件である。
・そもそも、何倍までの余裕が確認できれば再稼働を認めるのか、その基準も示されていない。
④閉鎖性海域・瀬戸内海を「死の海」に
・福島第一原発の事故で、海水中に放出された放射能は海と魚介類を汚染し、はるか離れた地域の海産物にも影響が出ている。伊方原発で苛酷事故が起これば、四国だけでなく、閉鎖海域である瀬戸内海を「死の海」にするなどその影響は計り知れない。
・使用済み核燃料の処理方法がなく、伊方原発構内にたまり続けている。特に3号機の使用済みMOX燃料は通常の使用済み燃料より発熱量が格段に大きく、死の灰を多く含み、より長期の厳格な管理が必要されている。
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