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 シェールガス増産と原発ゼロ

地中の岩盤層に含まれる新型天然ガスを取り出す「シェールガス革命」と呼ばれる現象で、液化天然ガスが余剰、価格が大幅に低下している。日本は、市場価格とリンクせず、原油価格とリンクしているために約3倍と世界でもっとも高額になり、これが貿易赤字の一因にもなっている。中国はシェールガスも米国を上回る可採埋蔵量がある。原発ゼロにむけて、温暖化や電気代への影響を抑える好条件が開かれている。
 なお、シェールガスの発掘には化学物質を添加し大量の水を使用することの環境への影響、米国のエネルギー自立による中東への「強硬路線」の強化の懸念もある。
【シェールガス増産で米LNG安価に、日本の輸入価格引き下げ急務 ロイター2/5】
【米国のシェールガス大増産、ドル高・円安要因との見方 ロイター1/27】

【シェールガス増産で米LNG安価に、日本の輸入価格引き下げ急務 ロイター2/5】

[東京 6日 ロイター] 米国で新型ガス、シェールガスの増産が進み、天然ガスの価格下落が進む中、韓国ガス公社(KOGAS)(036460.KS: 株価, 企業情報, レポート)が1月末に安価な米国産の液化天然ガス(LNG)を20年間の長期にわたり調達する契約を結んだ。日本のLNG調達価格は国際的にも割高で、調達先の多様化や資源外交を含めた抜本的な対応が急務となっている。

<シェールガス増産で米天然ガス価格は2年で半値以下、カタール産LNG余剰に>
米国では、地中の岩盤層から産出されるシェールガスの増産が急ピッチで進んでいる。米エネルギー省は1月、米国が2016年にLNGの純輸出国になるという予測を発表した。大増産を背景に米国の天然ガスの市場価格は過去2年間で半値以下に急落しており、現在100万BTU(英国熱量単位)当たり2.5ドル前後と、日本のLNG輸入価格と比べた場合8割も安くなっている。
このため米国は、同国向け需要をあてにしてLNG増産を進めてきたカタール産LNGの輸入が事実上不要となった。当初、カタール産LNGの受け入れ拠点を目指していたルイジアナ州サビーヌパスの輸入基地は、米国産ガスの輸出拠点に転換され、韓国ガス公社と契約した。契約価格は米国の市場価格に連動し、100万BTU(英国熱量単位)当たり4─5ドルと日本の3分の1程度とみられる。

<31年ぶり貿易赤字の裏に割高なLNG調達価格>
米国の増産により余剰となったカタール産LNGは、欧州などに転売されている。この結果、欧州はロシアとの天然ガス価格交渉で強気になり、世界的に天然ガスの価格低下が進んでいる。
これに対し、日本のLNG輸入価格は100万BTU当たり16ドル前後と世界で最も割高な水準だ。かつて原油価格が安かったことと、日本には指標となる天然ガスの市場がなかったことなどから、日本では値決め基準に原油の輸入価格連動方式を採用してきた。現在のように原油価格が中東情勢の緊迫で高止まりしていると、世界的な天然ガス価格の需給緩和による価格下落の恩恵を享受できない。
2011年に日本の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落した要因として、原子力発電所の稼働停止に伴いLNGの輸入量が前年比12%と急増したためと説明されることが多い。しかし電力・ガス会社が地域独占を背景にコスト削減意識が希薄なため、割高な価格でLNGを輸入し続けてた事実も見逃せない。

<中国のシェールガス採掘で東アジアのエネルギー地図一変、パイプライン輸入に検討余地>
 日本は国内原発の再稼働時期のめどが立たず、LNGの輸入増は避けれられない。輸入コスト抑制のため、調達先の多様化や契約価格の見直しが必要だ。特に安価な北米産LNGの調達は急務だ。三菱商事(8058.T: 株価, ニュース, レポート)が東京ガス(9531.T: 株価, ニュース, レポート)などと共同でカナダ産シェールガスをLNGに加工して日本などアジアへ輸出するプロジェクトなどが動き始めており、同様の取り組みが拡大することが期待される。
 また東アジアのエネルギー供給体制は大きく変わりつつあり、パイプラインによるロシアなどからの天然ガス調達も検討の余地がある。中国はトルクメニスタンの天然ガスをパイプラインで輸入しており、その価格(100万BTU当たり10ドル前後)を基準として、ロシア産天然ガスの輸入では強気の値引き要求をつきつけて交渉している。中国はシェールガスも米国を上回る可採埋蔵量があるとされ(米エネルギー省試算)、昨年に英蘭資源大手ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L: 株価, 企業情報, レポート)が採掘に成功したのを契機に大規模な増産を進める予定。
 中国のガス調達力強化で、ロシアは売り手確保に躍起になっており、北朝鮮を経由した韓国向けパイプラインの敷設計画を急ぐ。日本は財界首脳がかつて「赤いガスはいらない」としてサハリン産ガスの輸入に難色を示すなど、ロシア産エネルギーへの依存度を高めることを警戒する向きが多いが、国益を考えれば「メンツを捨てなければいけない」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の石井彰特別顧問)との見方もある。


【米国のシェールガス大増産、ドル高・円安要因との見方 ロイター1/27】

[東京 27日 ロイター] 新型天然ガスとして期待されるシェールガスが米国経済のけん引役となり、ドル高・円安要因にもなり得るとの見方が一部市場関係者の間で浮上しつつある。米国が大増産を進めることで中東産原油の輸入が減少、エネルギー自給率が高まることが経常収支の改善につながるとの連想からだ。

<米、LNG純輸出国へ>
シェールガスは地中の岩盤層に含まれる新型天然ガス。岩盤に大きな割れ目を作って採掘する技術が2000年代に確立され、生産が増えた。米エネルギー省によると、2010年には米国国内で生産される天然ガスの23%がシェールガスとなり、35年には49%まで上昇する見通し。米国は国防上の理由で国内産エネルギー資源の輸出を原則禁じてきたが、シェールガスは液化天然ガス(LNG)の形で輸出する方針。エネルギー省の試算では、米国は2016年にLNGの純輸出国に転じ、21年には天然ガス全体でも純輸出国になる見通し。
米国ではシェールガスの登場で天然ガス価格が100万BTU(英国熱量単位)当たり2.5ドル台とピーク時から8割程度下落している。「生産コストは100万BUT当たり3ドルでコスト割れとなっているが、原油価格の高止まりで副産物のシェールオイルの収益性が高く、増産が続いている」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構=JOGMEC=の石井彰特別顧問)。
米国は失業率が低下したとはいえ8%台半ばにとどまり、雇用創出産業としてシェールガス開発に期待が集まる。オバマ大統領は26日、遊説先のラスベガスで「われわれの足元には、米国を100年近く支えられるほどの天然ガスが埋蔵されている」、「それを開発すれば10年間で60万人超の雇用創出にもつながる」などと述べた。
一方、「石油関連の輸入は米国の貿易収支上影響が大きく、今後の輸入激減で大幅な収支改善につながる」(JOGMECの石井氏)とみられる。岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は20日の講演で、2012年の世界経済は欧州ソブリン危機が破局的に展開しないならば、シェールガス開発を軸とした米国経済が中国とともにけん引役になると指摘。米国のエネルギー自給率が高まれば、「経常収支の改善効果もありドルを下支えする」との見方を示した。政府・日銀関係者の一部からも同様の見解が聞かれる。

<米経済の強さがドル高要因にも>
天然ガス価格は契約形態によって大幅に異なるものの、米国内の100万BTU2.5ドルという水準は、日本の電力会社によるLNGのスポット契約価格17─18ドル(2011年末時点)などと比べ、破格の安さだ。エネルギー価格下落は米国の産業競争力を高める公算が大きく、「米国シェールガス開発が立ち上がってくれば景気にも好影響が出る」(日揮(1963.T: 株価, ニュース, レポート)の重久吉弘グループ代表)とみられる。
また、「中東原油輸入の減少で国防関連予算を減らせることができ、米経済の強さにつながる。ひいてはドル高要因にもなり得る」(伊藤忠商事経済研究所の丸山義正主任研究員)。

<自給率向上で対イラン強硬策の可能性>
もっとも、シェールガス開発の実現は不確実性も多い。採掘では岩盤層を破砕するために大量の水を使い、採掘時に使う化学物質による地下水汚染など環境破壊への批判があり、開発の障害となり得る。為替への影響も、「理論的にはドル高要因になり得るが、さらなる米金融緩和観測もあり、仮定を前提とした話」(米投資銀行大手)とみるべきのようだ。
さらにエネルギー業界関係者が懸念しているのが、地政学的リスク。「米国のエネルギー自給率が高まり、中東に気兼ねする必要がないと米議会関係者が誤解し、イランなどに対して強硬策に出れば原油価格が急騰する」(JOGMECの石井氏)ため、世界経済のかく乱要因ともなる。いずれにしろ、米国のシェールガス開発が同国のエネルギー・防衛政策を通じ日本にさまざまな影響を与えることは必至のようだ。

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