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診療報酬改定 医療崩壊が止まらない

診療報酬改定へ保険医団体連合会の談話。介護報酬と同じく実質マイナス改定。「平均在院日数の更なる削減、入院から在宅へ、医療から介護への流れの一層の強化」、同年改定となった介護の方も「軽度者切捨て、施設から在宅」となっている。
【診療報酬改定の中医協答申にあたって(医科談話)  2/10 】

【診療報酬改定の中医協答申にあたって(医科談話)  2/10 】

全国保険医団体連合会 副会長 武村義人

1 これでは「医療崩壊」を止められない

2012年改定では、2011年3月11日に発生した東日本大震災の甚大な被害によって一層脆弱化した被災地域の医療体制の復興復旧、及び被災地も含めた全国で、長年にわたる医療費抑制政策による医療提供体制の弱体化や国民皆保険制度の空洞化からの改善が大きな課題となっている。

 2011年11月2日に公表された医療経済実態調査結果では、すべての医科診療所と歯科診療所の医業経営の指標である損益差額が、2001年調査と比してこの10年間でそれぞれ27.9%、21.9%の減額となり、損益率も9.8ポイント、5.1ポイントと、いずれも悪化している窮状が浮き彫りとなり、また中小病院も、これまでの相次ぐマイナス改定によって経営状態が大きく悪化したところから、少しばかりの改善を見せたに過ぎないことが明らかとなった。

 このことからも保団連は、医療崩壊を食い止め必要な医療を提供するために、医学・医療技術の進歩を公的保険制度の中に組み込むとともに、行き過ぎた社会保障抑制政策を止め、必要な診療報酬の引き上げを図ることが国家として優先すべき課題であると訴えた。そのため国庫負担を大幅に拡大して患者負担を軽減するとともに医療費総枠の引き上げ、外来診療機能を高めるために医科・歯科診療所の報酬引き上げを強く求めた。
 しかし12月21日の財務・厚労両大臣折衝で合意された診療報酬改定率は、薬価・材料価格1.375%(▲5500億円)引き下げ、診療報酬本体1.379%引き上げ(+5500億円)で、各科改定率は、医科+1.55%(+4700億円)、歯科+1.70%(+500億円)、調剤+0.46%(+300億円)で、総枠で0.004%増(+16億円)とされた。なお、これとは別枠で長期収載医薬品引き下げ(▲250億円)が行われ、これを加えれば実質マイナス改定である。

東日本大震災の教訓からも、地域の第一線医療を担う医科・歯科診療所、中小病院の役割は大変重要であり、新たに補正予算を組むことも含めて診療報酬を大幅に引き上げるべきである。

2 社会保障と税の一体改革を色濃く反映した改定

さらに2012年改定は、社会保障と税の一体改革の先取り改定として行われ、その特徴は平均在院日数の更なる削減、入院から在宅へ、医療から介護への流れの一層の強化などを柱としたものであり、病院勤務医の負担軽減を重点課題に掲げつつも、医療機関の機能分化を誘導する点数設定や、入院患者を速やかに在宅等に送るための連携強化の点数が数多く設定、評価されている。特に入院点数では「看護必要度」「平均在院日数」「重症者受け入れ率」「在宅復帰率」などの施設基準の強化により医療機関の淘汰を行う内容になっている。  
さらに介護報酬が同時に改定されることを睨んで、在宅やリハビリ等を中心に介護報酬との調整が行われている。まさに自公政権下で行われた医療「構造改革」路線の具体化といえる改定である。

3 地域医療の崩壊を食い止めるためには診療所、中小病院の評価が必要

診療所・中小病院の再診料については、2月1日の中医協でも改定の骨子に対する意見で「再診料を診療所、病院ともに74点にすべき(同旨・類似236件)」など、再診料への意見が多かったとの報告があったにもかかわらず見直しは行われず、69点のまま据え置きとされるとともに、基本診療料のあり方の検討を行うとして附帯意見に盛り込まれ、2014年改定の課題として先送りされた。
 地域医療の崩壊を食い止めるためには診療所、中小病院の評価が必要であり、補正予算の確保も視野に入れて再診料を74点にするべきである。

4 入院患者の他医療機関受診の規制は一部緩和されるも根本的な問題は解決していない

入院中の患者の他医療機関受診の規制については、今回精神病床、結核病床、有床診療所に入院中の患者について、透析又は共同利用を進めているPET、光トポグラフィー等の検査を行った場合については減額幅を30%から15%に縮小(特定入院料の精神科救急入院料等については70%から55%に縮小)したが、入院料を減額するとともに他医療機関の医師の専門的な技術料を不当に削減(減額)し、入院患者への専門的な医療を制限するといった根本的な問題は解決していない。入院患者の他医療機関受診の規制を直ちに撤回し、入院料の減額や外来側の算定制限を廃止すべきである。

5 「維持期リハビリ」介護保険への移行を促進する改定

運動器リハ及び脳血管疾患リハの維持期のリハビリテーションについて、要介護被保険者等への給付を①次回2014年改定で医療保険給付から外すこととされ、②今次改定では「状態の改善が期待できると医学的に判断されない場合」には点数を引き下げられた。これと併せて介護保険への移行を進めるために医療保険との併給期間の延長がされている。しかし維持期を含めてリハビリテーションは、医師が指示するOT、PT、ST等の専門職種による医療行為であり、患者の病態に応じて医療保険から給付されるべきものである。

6 在宅で“看取り”推進のための政策誘導強化

看取りまで含めた地域での在宅医療推進を目的に、新たに「機能を強化した」在宅療養支援診療所・支援病院の項目を新設し、看取り実績2件以上などの要件を設定、複数医療機関の連携でも可とするなど、政策誘導の点数設定を行った。この「機能を強化した」場合を選択すれば、在宅時医学総合管理料など、他にも高い点数を算定できる。しかしこの方向を選択しない場合の評価は据え置きとなり、全国で最も数の多い一人医師支援診や、支援診以外の在宅医療に取り組む診療所は引き続き厳しい状況に置かれる。これでは在宅医療から撤退する医療機関が増えかねない。地域医療充実のために「機能を強化した」以外の在宅医療の評価も底上げを図るべきである。

7 平均在院日数削減や機能分化の目的のための強引な再編

13:1、15:1の一般病棟に90日を超えて長期に入院する患者の取扱いについて、療養病床と同様の評価体系に移行するか、平均在院日数の計算対象とするかの2者択一を迫る改定が行われた。これにより亜急性期等の病床を目指すのか、あるいは長期療養病床を目指すのかの選択を強引に迫られることとなった。地方で二次救急を担っている病院や急性期医療のあとを引き受ける後方病院に厳しい規制をかけることになり、人手確保に苦労しつつ地域医療を担ってきた病院を切り捨てることになる。入院医療確保の上で重大な問題であり即刻撤回するべきである。

8 保団連要求等の反映

この間の保団連や保険医協会の取り組みによって、保団連要求が不十分ではあるが、一定反映された。

具体的には、
①複数診療科受診の2科目の再診料が制限付きであるが認められた、
②在宅患者訪問診療料2に特定施設入居者に対する区分が設けられ点数引き上げ、
③医療依存度の高い状態の要介護被保険者である患者について、退院直後の2週間医療保険の訪問看護の算定が可能に、
④週4日以上訪問看護が可能な患者の対象拡大、
⑤訪問看護の際の看護補助者との同行訪問の評価、
⑥入院では、認知症患者に対する夜間対応を含む治療の評価の新設等、
⑦その他患者サポート体制の評価等である。

9 診療報酬引き上げと患者負担軽減運動にご協力を

社会保障と税の一体改革の推進が叫ばれる中で、診療報酬本体は0.004%とほぼゼロ改定となり長期収載医薬品引き下げを含めると実質マイナス改定となったが、医療担当者のこの間の運動と患者・国民の願いがこれ以上の改悪を押しとどめた。しかし、このままでは「医療崩壊」は一層深刻化することとなる。

 政府は、医療をはじめ社会保障財源を消費税増税でまかなう口実で法案提出を狙っている。実際には大企業の法人税引き下げ、社会保障給付のさらなる削減によって、患者国民へ費用負担を押しつけようとしている。政府の試算でも、社会保障への公的支出をまかなうためには、2015年に18%、2025年には20%以上の消費税率が必要とされている。これでは「医療崩壊」に一層拍車をかけることになってしまう。そもそも、デフレのもとでの消費税増税は、消費落ち込み、景気悪化、税収減の悪循環を生み、経済も財政も悪化させるものであり、方針の即時撤回を求める。

 東日本大震災からの復旧・復興及び進行する「医療崩壊」にストップをかけることは国民的課題であり、地域医療にとって重要なことは診療報酬の底上げである。次の改定を待たずに早急に補正予算対応を行い、診療所及び中小病院の診療報酬大幅引き上げを行うよう、強く要望する。
保団連は、必要な医療が提供できるよう、診療報酬引き上げ・改善と患者負担の大幅軽減を求めて医療関係者、患者・国民とともに奮闘するものである。

以上

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