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新自由主義蓄積の帰結としてのギリシャ危機(メモ)

 二宮厚美・神戸大教授の論考「崩壊期に突入した民主党政権」(経済2012.3)より「ギリシャ危機が物語る新自由主義蓄積の顛末」の部分の備忘録。
 消費税増税や公務員削減の「口実」として、「ギリシャのようになる」が喧伝される(自治体リストラ、負担増の口実とされた「夕張になる」を思い出す)が、本質は、自由化=経済主権を失った中で弱い地域・国を格差・貧困化、景気低迷がまるごと襲う…新自由主義的蓄積の帰結としてソブリン危機である、と指摘。以下備忘録。

【ギリシャ危機が物語る新自由主義蓄積の顛末】

 二宮厚美・神戸大教授「崩壊期に突入した民主党政権」(経済2012.3)より

◇新自由主義的蓄積の帰結としてのソブリン危機

・消費税増税や公務員削減の「口実」として、「ギリシャのようになる」が喧伝される。はたしてそうか。―― 真相は、ギリシャ・南欧のソブリン危機(国家債務危機)はグローバル化の中の新自由主義の帰結にほかならない。

・ギリシャなどのソブリン危機は、直接には財政危機の産物
→ 財政危機がソブリン危機に現象しているのは、国家債務が対外債務となっているから。
→ では、なぜ国家(対外)債務が増大したか。

・出発点/EU、特にユーロ圏で新自由主義的蓄積が進んだ点
 → その特徴/ 貧困・格差社会化をすすめながら、資本蓄積が進む点

・貧困・格差社会化/ 一国内での家計所得・消費の低迷、大企業・富裕層における富の集積を呼びおこす
 → 先進諸国は家計消費が内需の中心を形勢するので、一方での内需不振、他方での過剰資金の集積

・内需不振の慢性化/ 多国籍企業はその競争力を外需に振り向け、輸出依存型成長に向かう
→ アジアでは日本、EUではドイツを中心としたユーロ・コア国と呼ばれる地域
→ 外需依存・投資主導型成長の道は、各国の内需低迷により、ますます外需依存型・グローバル化し、同時に過剰資金の集積が勢いをまして進む。

・各国の内需はどうなるか/ デフレ不況の慢性化
 → が、家計を補完する内需が現れれば、事情が変わってく

 ①コア国では、消費需要を投資需要が補う形で成長/ 外需依存・投資主導型成長の継続
 ②家計消費の不足を補う、借金による指摘消費の増加/ 債務依存型消費の道
  08年以前のアメリカの内需拡大~住宅・証券バブルのおかげ
  →大事な点/ 新自由的蓄積が、貧困・格差社会化の進行、過剰資金の蓄積がバブルを発生された

・ユーロ圏/ 住宅・不動産・金融バブルに見舞われた国(例 スペイン、アイルランド)でも、アメリカのような債務依存型消費が進行
・現在のPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の主要な問題/内需の不足を私的な債務依存でなく、不足する内需を公共部門の需要で補わざるをえなかった点にある
→ 民需の不足を、公儒で補填/ その補填を借金に依存して支えざるを得なかったことによる。

◇ギリシャ危機の背景としての「ユーロ圏グローバル化」

・ユーロ導入/ 域内の市場の統一、共通化を格段に高めた~ユーロ圏内グローバル化の進行
→ 貧困・格差社会化の進行は、地域・産業・企業間の不均衡として現象

・独仏などコア地域での発展、過剰資金の蓄積。
・ギリシャ・南欧などペリフェリ(周辺)国での、斜陽化、衰退。
→ 住宅・証券バブル発生しやすい条件が発生/ アイルランド、スペイン、イギリス
・ ギリシャ、南欧では、コア諸国の多国籍企業による肝心の内需が奪われてしまう。
(メモ者/ 競争力の強いドイツの企業は、統一通貨ユーロの恩恵で「通貨安」による輸出増を享受。ギリシャなど競争力の弱い国は、「通貨高」となり輸出低迷。また域内では、強い国の企業がより弱い企業を駆逐する働きとして出現。為替レートによる調整機能を失った悲劇として出現。)
→ 内需依存の発展の道の喪失。国民所得低迷、高失業率 /スペインなどもバブル崩壊後、同様の自体に。

・国内の民需が投資・消費両面にわたって萎縮、さらに多国籍企業により外から奪われた国では、投資・消費部門で、公共部門に頼らざるを得ない。
→ 「内発的発展」の道をたたれた現代版「ギリシャ悲劇」/ TPP参加後の日本の悲劇の先取りしたもの/グローバル化が進むと国際競争力に劣る地域、産業はまるごと内発的発展の道を奪われる。

・公共部門に頼らざるを得ない国、地域の相反する2つの選択
 ①新自由主義蓄積につきものの過剰蓄積を公共部門が吸い上げて内需にまわす道~ 福祉国家型の垂直的所得再配分の選択
 ②借金により公共部門を維持する道 ~ ギリシャの道

・なぜ、ギリシャは債務依存型の道を選択したか
 ①政府が新自由主義に侵されていたから/ 大企業・富裕層の過剰資金の吸い上げを考えなかった
 ②「ユーロ圏グローバル化」で、ギリシャが「減税競争」の渦中に投げ込まれていた。
   圏内の投資、貿易の自由化により、一国で法人税、所得税の累進性を強化することが困難。
 ③国内の経済不振が全体として税収力を弱体化。08年金融危機が拍車。

・ギリシャは、借金先を、国内に頼れず、過剰蓄積の進むコア諸国の金融機関に依存
→ 公的債権は対外債務化、公的債務危機はソブリン危機となり、ユーロ全体の危機に。

◇ギリシャ危機の日本に対する教訓

①重要な国家主権(通貨、為替主権)が制限されたところで、投資・貿易の自由化が進むと、不均等発展が加速化し、貧困・格差社会化が、特定の国・地域をまるごと襲う。
・ アマルティ・セン「私はユーロ導入に反対だった。かつて危機に陥った国々は多くは通貨を切り下げ、輸出競争力をつけて債務を返済した。ユーロ諸国にはそれができない」(朝日11/12/28)
 ~ 食糧主権を放棄するTPPがもたらす日本の悲劇

②ギリシャのソブリン危機は、ユーロ圏を1つの単位として新自由主義蓄積の帰結
・ 08年以来、アメリカ発の金融危機と同様に、新自由主義のグローバルな展開の結果
・アマルティ・セン「規制緩和の結果、金融機関が無責任な活動をし、金融危機に至り、各国政府が巨額の資金で支援した。この結果、政府の財政危機に陥っている。行き過ぎた規制緩和がまず問題だった」。ギリシャについて、世界的な需要減の中で「支出が過剰だった国の大きな責務が浮き彫りになったにすぎない」
 → 新自由主義が、金融恐慌、ギリシャ債務の真因。(自由化を促進するTPPは不幸を拡大するだけ)。

③ギリシャ危機打開は「緊縮を求めても問題解決にならない」
・アマルティ・セン「危機を加速する誤解がここから生じている。もともと市場経済の問題だったのに、政府の問題だとの考えが広まった。今は危機回避のために政府支出の拡大が必要なのに、銀行などは政府に緊縮財政をもとめる」
(メモ者/ワシントンコンセンサスの失敗。転換したブラジルの債権国への発展など。すでに教訓は明らか)
→野田政権 「消費税の増税」「社会保障の切捨て」をしても何の問題解決にならない

◇おわりに

・ユーロ危機の最大の教訓/2011年 PIIGS諸国で政権交代ドミノ/ 新自由主義に対する反撃
→増税、緊縮財政、社会保障の切り下げ、賃金カット、公共部門の民営化などなど。一方で金融機関には大量の資金を追加して支援
→ソブリン危機への対応は「金融機関には救済を惜しまないが、危機打開の負担は各国国民に押し付ける」という、アメリカのウォール街占拠運動が指摘する内容と同様の対応。
・この新自由主義的蓄積の帰結に対し、新自由主義構造改革をもって制する策(毒をもって毒を制する)に対する反撃としての政権交代
→ 新自由主義的政権を打倒する/ ギリシャ危機から学ぶ最大の教訓がここにある。

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