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ホモサピエンスと「自己責任」論

NHKスペシャル「ヒューマン なぜ人間になれたのか」
 考古学・人類学・動物学・脳科学・心理学の最新研究から「人間を人間たらしめているものは何か」をさぐり・・それは「協力する力」「助け合う力」にある、としている。
 「競争」「自己責任」を柱とする新自由主義は、そのホモサピエンスの本質と相容れないもの、と痛感した。
以下は「第一回放送」の概略

 その前に、今呼んでいる本の中で、吉野源三郎「君たちはどう生きるか」が取り上げられている。
 
 戦前、吉野は、人間関係を「人間分子的な関係」「物質分子的な関係」の二重の関係ととらえ、物質分子を人間分子に転換することを「一人前の人間」「お互いによい友達であるような世の中」と表現し「どう生きるか」を問いかけた。75年を経て、「今」の課題と、シンクロする内容である。

【ヒューマン なぜ人間になれたのか 第一回 概要】

◆10万年前の祖先の化粧、首飾り

・その目的は、血縁関係の近い仲間を大切にするためのもの。首飾りの風習は,今もアフリカのサン族に残る。
・厳しい自然環境の中で生き残るためには,少ない食料を分け合って仲間内で協力することが重要だった。

◆積極的には協力しないチンパンジー

・遺伝的には1%程度の相違しかないチンパンジー比べると人類の協力行動には明らかな差がある。
・人間だけにある能力,それは自発的協力。チンパンジーは,仲間が困っていても,直接的に要求されない限りは協力しない(京都大学の実験より)。

◆協力を生み出した「骨盤」の変化

・ヒトは二足歩行をするために骨盤が横長になり、産道が著しく狭くなった。第三者の介助が必要となる出産。小さいまま産まれ、誰かの介助(集団)がないと育つことができない。他者に協力的な人間ができあがった。

◆目の前の1万円を、見ず知らずの他人と分け合う

・目の前のお金を「好きなだけ取っていい」、条件は1つ「見ず知らずの相手がもう一人おり、その相手にはいくらあげるか」というもの。全部あげても、まったくあげなくてもよい。
・世界中で実施された実験で、あらゆる状況下の人々が「似たような行動」を取った。
  約半分弱を相手に渡す。日本人 自分56%、他人44%。ニューヨーク 自分53% 他人47%。
・それは、道義的というより、「生存に不可欠な要素」と考えられる。

◆気候変動、飢餓の中で身につけた「協力できる力」

・7万年前のスマトラ島トバ火山の大噴火により、地球の平均気温が12度低下。ヒトの祖先も絶滅の危機に。
・部族を超えた道具(黒曜石)のシェアリングが,この危機以降,認められるようになった。/黒曜石は,鋭い刃物替りの道具として重要なだけでなく,友好関係を示す贈り物としても知られている。
・部族を超えて助け合えたヒトだけが,結果的に生き残った。

◆「相手の気持ちを読む」という特異な能力

・脳卒中で脳の視覚野が損傷を受け全盲になった人(目から視覚信号は脳に入っている)。ヒトの顔写にはPositiveかNegativeと表情を言い当てることができる。
・ヒトの顔を見たときには、視覚信号が視覚野のみならず扁桃体にも送られ,喜怒哀楽を判断している。
・扁桃体。動物では危険を察知するなど命に関わることを判断する場所。ヒトはこの部分で表情を読み取っている。人類が長い歴史の中で大事に受け継いできた能力。アメリカ兵の行動は合理的である。

◆笑顔の力 イラク戦場での経験

・イラクの宗教的指導者に和解を求めるために来たアメリカ軍を民衆が指導者が殺されると勘違いして,一触即発の危機に。/米兵司令官は「Everybody,Smile!!」/笑顔を見て,敵意がないと理解し平和的な解決に。
・言葉も通じない他人同士が,笑顔で敵味方を悟るのも人間の特徴。

◆戦後にアメリカで示された論文(1952)

・「親のいない幼児」を育てる施設。91人の赤ちゃんのうち3人に1人以上(37%)が2歳まで死亡した。
・栄養と衛生環境は完璧。原因は「lack of all connect(つながり感の欠如)」。施設中では、幼児への「話しかけ」はほとんど行われておらず、「孤独」であった。
・人間は、「孤独」に耐え切れない。協力してしか生き抜くことができなかった人類の歴史の所産である。

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