保育新システム「基本制度案まとめ」感想
31日の「最終とりまとめ」、議事の映像に続き、関係資料が公開されている。
会議では、ワーキンググループの構成員、オブザーバー全員が発言するということで、それぞれが要望、問題点、反対の部分など発言している。
そこで指摘された内容も含めて、感想的な問題意識の整理。
改善面の多くは政省令待ち、その財源は消費税増税という、子育ての願いを「増税」に流し込む装置であるとともに、「質向上」の決め手である「保育士の待遇改善」に逆行する懸念など、子どものための制度なのだろうか、と思う部分が多々ある。
【子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ(案) 基本制度WG 1/31】
①すべての就学前のこどもに良質の保育(教育+養護)を提供する、といいながら前提となる「総合こども園運営指針」なども含め、その目的、内容、社会的位置づけの議論が希薄で、「幼保一体」の技術的側面の議論に傾いている。まず、ここにボタンの掛け違いがある。
②議論の中で、質の確保の中心は、保育士の配置基準の拡大、待遇改善であることが、何人もから強調された。それらは政省令のゆだねられたうえ、財源は消費税増税となっている。
これは①の問題とかかわって、「質」の問題は、脇におかれているとともに、子育て支援充実の願いを「消費税増税に流し込む」装置としての役割を果たしている。
少なくない委員の発言で、この新制度により、子ども関係予算増への期待が語られていたのが印象的。
③株式会社の参入、配当の解禁(保育4団体がすべてが反対しているのに!)・・・ 昨日のワタミ社長の話参照。
④待機児解消に疑問符? 今、待機児童の多くは3歳未満であるが、総合こども園において、3歳以上の「教育」(学校教育法上の「教育」)は義務付けだが、保育は「保障」するとしかなってない。この部分が拡大するかどうかは、政省令の単価設定などにかかっている。
⑤書いただけの「ワーク&ライフバランス」
子どもの成長にとって質量ともに高めた保育とともに、家庭の役割があげられ、その要は、子どもと向き合う時間の確保、父親の子育て参加など「ワーク&ライフバランス」が強調されているが、具体策はないもない。
これも①と関わる話で、日本の子育て環境をどうするのか、という大きな話がないからである。
⑥実際の運用にあたり・・・膨大な事務量の増大と質の低下
ア.「保育需要が供給を上回っている間の関与の仕組み」について
「特別な支援が必要な子どもなど、まず、優先利用の対象となる子どもについて、市町村が利用調整を行い、利用可能な施設・事業者をあっせん等する」となっている。
「特別な支援」とは「障碍児など」、「優先利用」とは「ひとり親家庭や虐待のおそれのあるケースの子ども等」であるが、それ以外の保護者は、利用調整後に、「あっせん」もされない、ということ。一斉に利用可能な複数の施設に申し込みを行うだろう。
多くの園でも、定員オーバーとなる。複数の園で内諾をもらった親は一番よいところを選択し、あとは辞退するだろう。定員増とおもっていたのに、空きが出る、落とした申請者に、園が働きかける。追加の申し込みもくる。という混乱が起きる。(それとも申し込み数を制限するのか・・・その場合、チェックが必要となる)
また、「イ」でもかかわるが、長時間の子があぶれ、その後申し込んだり、また親が常勤などにかわって「長時間」にかわった場合、保育所が「優先」と判断し、「短時間」の子を「定員一杯」という「正規の理由」で断る事例も発生するだろう。
イ.「短時間」保育について
保育部分は、就労時間にあわせ二段階となっている。「月単位の保育の必要量に関する区分(2区分程度(「長時間利用」及び「短時間利用」))を設定する。」
ところで、この月単位の時間を、月単位、週単位で、どう使うは利用者にまかされる。
ある人は午前中。別の人は、昼をはさんだ時間。また午後と・・・ それがパート、アルバイトのシフトに応じて変化するとなると・・・計画的な保育は不可能となる。
人の配置の算定は、一応、利用時間でなく、必要な人員、ということになっているが、全時間に対応できる配置をしないと無理ではないか。しかし、まるまる長時間対応の予算はこないから、保育士を登録しておいて必要に応じ呼び出してシフトするという「子ども預かり業」が横行するのではないか。
これは①ともかかわるが、日本社会にとって、「子どもの貧困」と正面から向き合うとともに、幼児期の発達をどう保障するのか、の視点が欠如しているからである。
ウ.「月単位の保育の必要量」ということになれば、失業、パート時間の長短、正規への転換など保護者の就労時間を毎月つかんで「認定」する市町村の作業が出てくる。
また、失業した場合の「就活」中の「保育」の必要性をどう認定するのか。「受け入れる」が全て自費となるのか。
~ こうした本質的な問題とは別に、制度的な自由度が高くなるというのは、行政(それを選択する住民)の姿勢姿態で、向上に活用できるのか、安上がりの質低下につながるのか、というのはメダルの両面である点も事実である。
先行事例が紹介されているが、一言で言えば、公的保育を軸に、「子育て」に予算をかけているということである。
~ すべての希望するこどもに集団の一日保育を保障する(注/過疎地は別の事情がある。今回、過疎地での1人、2人からの「保育」について規定されたのは前進)。
「STRONG FIRST」で、こどもの成長、社会の流動性と活力を保障し、働くルールの確立(「ワーク&ライフバランス」)と一体で、女性の社会参加で社会の活力をすすめる。
これらは内需拡大政策ともなり、経済、財政の改善とも結びつく。
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