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教育の公平性と質 -恵まれない子ども、学校に手厚い支援を OECD

 「最も優秀な成績を収めている教育制度は、質と公平性を兼ね備えている」、「特に恵まれない環境にある子どものために教育に投資することは、公平であるとともに、経済的に効率的」と指摘し、「公平性を損なう教育制度 の慣行の撤廃」「恵まれない状況に置かれている低学力校への重点的な対策」を柱に「全ての子どもが学校教育で成功を収められる教育制度」のためのOECDの政策提言。
【教育の公平性と質 -恵まれない生徒や学校に対する支援 OECD 2012/2】

浅井春夫氏は、「子ども時代のしあわせ平等」のためには「えぐられた発達」を補填する「積極的格差」を提起している。OECDの提言も、困難を抱える子ども、学校にこそ手厚く、最高のものを、と主張する。

 教育という点ではニッセイ基礎研究所、土堤内 昭雄氏の「研究員の目」もおもしろい。

「人口減少社会・日本の針路~目指せ教育立国 ニッセイ基礎研究所2/10】 

 保育新システムについて「『質の高い幼児教育』を提供するという教育政策としての視点が欠落しているように思われてならない。」と指摘し、「北欧諸国やドイツでは“森の幼稚園”と呼ばれる自然のなかで子どもの主体性や判断力、責任感を育む幼児教育が実践されている」「単に知識を詰め込んだり点数で子どもを評価するのではなく、一人ひとり子どもの意思を尊重し、子どもの選択機会を保障する。」と紹介し、“豊かな「創造力」と「想像力」”を育む教育を主張している。
 
  「競争」「管理」の教育制度、「自己責任」論と子どもの貧困率の高さ・・・抜本的な政策の転換が必要である。


【教育の公平性と質 -恵まれない生徒や学校に対する支援 OECD 2012/2】

• OECD 諸国では、生徒のほぼ5 人に1 人が基礎的な技能の最低水準に達していない。さらに、社会経済的環境に恵まれない生徒は、低学力者になる確率が(恵まれている生徒より)2 倍高い。学校が公平性と包摂性を欠いているために失敗することにつながりかねない。つまり、平均で若年層の5 人に1 人が後期中等教育修了前にドロップアウト(脱落)するということである。
• 学校の失敗を減らすことは、社会にとっても個人にとっても有益である。OECD 諸国で最も優秀な成績を収めている教育制度は、質と公平性を兼ね備えている。
本報告書は、全ての子どもが学校教育で成功を収められる教育制度のための政策提言である。

           *               *
学校の失敗を減らすことは、社会にとっても個人にとっても有益である。また、経済成長や社会発展にも貢献できる。実際、OECD 諸国で最も優秀な成績を収めている教育制度は、質と公平性を兼ね備えている。教育の公平性とは、性別、民族的出自、家庭環境などの個人的・社会的状況が教育の可能性を実現する障害にならず(公平性)、全ての個人が少なくとも基礎的な技能の最低水準に達する(包摂性)ことを意味する。こうした教育制度においては、大多数の生徒が、その個人的・社会的状況に関係なく、高水準の技能を修得する機会を有する。

◆OECD 諸国は学校の失敗とドロップアウトの問題に直面

OECD 諸国では、生徒のほぼ5 人に1 人が実社会で働くための基礎的な技能の最低水準に達していない(包摂性の欠如)。社会経済的背景に恵まれない生徒は、低学力に陥る確率が2 倍高く、個人的・社会的環境がその教育の可能性を実現する障害になっている(公平性の欠如)。包摂性と公平性の欠如は、学校の失敗を助長することになる。その最たるものがドロップアウトである-若年層の平均20%が後期中等教育修了前にドロップアウトしている。

◆公平性を改善し学校の失敗を減らすことが有益

学校の失敗とドロップアウトは経済的・社会的コストが高い半面、中等教育修了者はより良い雇用とより健全なライフスタイルを送ることができる見込みが高まり、結果的に、公的予算と投資への寄与度が高くなる。学歴が高い者ほど民主的な社会と持続可能な経済に対する寄与度が高く、公的支援への依存度や不況の影響を受ける可能性が低くなる。技能を持つ個人がいる社会は、現在および今後起こりうる危機により良く対処できる。したがって、万人、特に恵まれない環境にある子どものために早期・初等・中等教育に投資することは、公平であるとともに、経済的に効率的である。

◆早期教育から後期中等教育まで生徒に投資する政策が必要

景気回復への道筋において、教育はOECD 諸国の成長戦略の柱になっている。長期的な実効性を確保するためには、教育を改善して全ての生徒が早期に質の高い教育を受け、少なくとも後期中等教育が終わるまで学校にとどまり、社会や労働市場に効果的に統合されるために必要な技能や知識を習得できるようにする必要がある。
政府にとって最も効率的な教育戦略のひとつは、早期教育から中等教育の全期間を通じて投資することである。政府は、公平性を損なう教育制度 の慣行の撤廃と、恵まれない状況に置かれている低学力校への重点的な対策という2 つの並行的な取り組みを用いて、学校の失敗を防止し、ドロップアウトを減らすことができる。しかし、教育政策は、生徒の成功を確保するための住宅政策や福祉政策といった、他の政策と調和させる必要がある。

◆学校と生徒の失敗につながる制度の政策を回避

教育制度は、その制度設計によっては、当初の格差を増幅し、生徒のやる気と学業に悪影響を及ぼし、最終的にドロップアウトを招くことがある。公平性への制度レベルの障害を撤廃することは、他の生徒の進歩を妨げることなく、公平性を改善し、恵まれない生徒に恩恵をもたらす。以下の5 つの提言は、失敗の防止と後期中等教育の履修促進に寄与できるものである。

1. 留年の廃止

留年はコストがかかる上、教育成果の引き上げという点でも効果的ではない。留年を減らすための代替策としては、学年中に学習格差の解消に取り組むことによる留年の防止、自動進級制や落第科目の限定留年制、留年に対する社会の意識改革などが挙げられる。これらの代替策を支援するには、補完的政策によって、生徒の学習ニーズに適切に応えられるよう学校や教師の能力を高め、早期に定期的に、そしてタイムリーに支援を行う必要がある。留年率を引き下げるには、学校や社会全体がそのコストや生徒に対する悪影響について意識を高め、目標を設定し、学校へのインセンティブを連動させる必要もある。

2. 早期進路選択の回避と後期中等教育への進学生選抜の延期

早期に生徒の進路を決めることは、平均的な成績を引き上げることがなく、より低い進路に割り振られた生徒に悪影響を及ぼし、格差を増幅させる。進路選択は、全体的な学校教育を強化しつつ、後期中等教育まで先延ばしすべきである。進路選択を先延ばしにできない場合には、より低い進路やグループをなくせば悪影響を緩和できる。科目数や能力別グループ編成期間を制限し、進路や学級を変更する機会を増やし、進路が異なっても生徒に高いカリキュラム基準を提供することで、早期の進路選択と能力別コース・グループ編成の悪影響を軽減し得る。

3. 学校選択制の管理運用による差別と格差拡大の回避
 
 完全に親任せの学校選択制は、能力や社会経済的背景による生徒の差別につながり、教育制度の全体にわたる格差の拡大を生み出しかねない。学校選択制は、公平性への悪影響を制限しつつ、選択のバランスを取るよう設計・運用することができる。いろいろな選択肢を採用することが可能であり、管理選択制と親による選択制を組み合わせれば、生徒を多様な進路に分布させることができる。さらに、バランスを確保すべく、恵まれない生徒の魅力を高めて質の高い学校に行かせるためのインセンティブ、学校選択メカニズム、クーポンや税額控除などを導入することもできる。恵まれない家庭が学校情報を利用しやすくなるようにし、十分な情報を得た上で学校を選択できるよう支援する政策も必要である。

4. 生徒や学校のニーズに応える資金助成策

 利用可能な資金とその使途は、生徒の学習機会に影響する。教育制度の全体にわたり公平性と質を確保すべく、資金助成策は、特に恵まれない家庭が質の高い幼児教育・保育(ECEC)を利用しやすくするとともに、恵まれない生徒に対する教育コストの方が高くなる可能性を考慮した、加重助成方式などの資金助成策を用いるべきである。さらに、最も恵まれない生徒や学校への支援を確保するために、地方分権/地方自治と資金管理責任のバランスを取ることも重要である。

5. 後期中等教育における進学コースと職業教育コースを同等化して修了させる

 後期中等教育は個人と社会双方にとって戦略的な教育水準であるが、この教育水準への進学者の10~30%が修了できない。後期中等教育は、その質と制度設計を改善する政策によって、内容をより生徒にふさわしいものとし、確実に修了させることができる。このために様々な政策オプションとして、職業教育・訓練の質向上による進学コースと職業教育コースの同等化や進学コースから職業教育コースへの進路変更許可、退学制度の撤廃、生徒指導やカウンセリングの強化と対象を絞り込んだ退学防止策が利用できる。なお、この退学防止策には、後期中等教育の履修資格を得る追加的な履修コースや修了するまで学校にとどまりたいと思わせるインセンティブ—などがある。

◆恵まれない学校や生徒の状況改善

 恵まれない生徒の割合が高い学校は、より大きな課題を抱えており、それが成績を悪くし、教育制度全体に悪影響を及ぼすことになりうる。成績の悪い、恵まれない学校には、内部から改善する力と支援が欠けている。   
学校長と教師、学校、学級、近隣の環境も、往々にして、最も恵まれない生徒に質の高い学習経験を提供できていない。以下の5 つの政策提言は、成績の悪い、恵まれない学校の改善を支援する上で効果を発揮することが分かっている。

1. 学校長の能力強化と支援

 成績の悪い、恵まれない学校を変革する出発点となるのは学校長であるが、学校長はこうした学校で役割を果たせる人材が選ばれているわけではないし、準備も支援も受けていないことが多い。その能力を強化すべく、学校長養成プログラムはこうした学校が抱える課題に対処するための総合的なノウハウと専門知識の両方を提供すべきである。人材育成・成長支援や(コーチング、メンタリング)、関係者同士のつながりを構築し、指導者が変革を続けていかれるようにさらに支援することもできる。また、こうした学校に有能な指導者を惹き付け、その定着を図るためには、政策によって、良好な労働条件、系統だった支援、インセンティブを提供することも必要である。
学校改革への支援が必要な場合にはいつでも検討すべきである。場合によっては、成績の悪い、恵まれない学校の分割、小規模校の合併、改善の見られない学校の閉鎖も政策オプションになり得る。

2. 協力的な学校風土と学習環境の促進

 成績の悪い、恵まれない学校は、学習困難な環境に置かれている。こうした学校向けの特別な政策は、他の学校以上に次の点に注力する必要がある。

1) 教師と生徒、教師と教師、生徒と生徒の良好な関係構築を優先的に行う、
2) 困難に直面している生徒や学習中断要因を特定する学校診断用データ情報システムの利用促進、
3) 生徒に対する十分なカウンセリング、生徒を支援する対話・助言(メンタリング)、進学コースへの進路変更の円滑化。

 さらに、こうした学校は、週間や年間の開校日数を含む学習時間の編成替えや学校規模の変更から恩恵を受ける可能性もある。学級や学校の小規模化が生徒同士や、生徒と教師の交流を強化し、学習戦略を改善する政策になり得る場合もある。

3. 優秀な教師を迎え入れ、支援し、定着させる

 教師は生徒の成績に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、恵まれない学校は必ずしも最も優秀な教師を擁しているわけではない。以下の政策によって、恵まれない学校や生徒のために教師の質を高めなければならない。

1)恵まれない生徒を抱える学校で働くために教師が必要とする技能や知識を習得できるようにするための対象を絞り込んだ教師教育の提供、
2) 新人教師向け指導・支援プログラムの提供、
3) 教師を支援するような労働条件の構築による教師力と定着率の向上、
4) 恵まれない学校に優秀な教師を迎え、その定着を図るための十分な金銭面・キャリア面のインセンティブの開発。

4. 教室での効果的な学習戦略の確保

 恵まれない学校や生徒の学業成績については期待感が低い場合が多いが、データなどによれば、特定の教育実践は成績の悪い生徒に効果を発揮し得る。教室での学習を改善するには、政策によって、恵まれない学校が生徒本位の教育とそれに見合ったカリキュラム・評価をバランスよく利用できるように促進する必要がある。  学校と教師は、診断ツールと形成的及び総括的評価を用いて子どもの進歩を点検し、子どもが十分な理解と知識を確実に習得していくようにすべきである。学校が高い期待感と成功を促進するカリキュラムを採用するように確保することが極めて重要である。

5. 学校と親・地域社会との結びつきを優先する

 恵まれない環境にある親は、様々な経済的・社会的理由から、子どもの学校教育にあまり関与していない傾向がある。政策によって、恵まれない学校は親や地域社会との結びつきの構築に優先的に取り組み、学校と親の努力を調整すべく、コミュニケーション戦略を改善していく必要がある。より効果的なのは、連絡を取りにくい親に対象を絞り、同じ地域社会の人を特定し、生徒の相談に乗ってくれるよう働きかける戦略である。企業にしろ、社会的利害関係者にしろ、学校周辺の地域社会との結びつきを構築することは、学校と生徒を強化することにもつながり得る。


「人口減少社会・日本の針路~目指せ教育立国 ニッセイ基礎研究所2/10】

土堤内 昭雄氏 「研究員の目}

1月末に公表された国立社会保障・人口問題研究所の新たな日本の将来推計人口をみると、2060(平成72)年にはわが国の総人口は約3割減り、子どもと現役世代が半減し、社会全体の4割が高齢者になるという「人口減少社会・日本」の姿が浮かび上がる。このような人口減少時代を迎えるわが国が、どうすれば国力を維持し、活力ある社会を築くことができるのだろうか。

一つの方策はできる限り急速な人口減少を食い止めることであり、もう一つは国民一人ひとりの能力を高め、その能力を活用できる社会をつくることだ。現在、政府は社会保障と税の一体改革のなかで、「幼保一体化」という幼稚園と保育所を統合し、質の高い幼児教育と保育を一体的に提供する施設「総合子ども園」を構想している。これにより待機児童を解消し、子育て期の女性就業率の向上と出生数の増加を図り、将来にわたる労働力人口を確保するのである。

一方、国民の潜在的な能力開発のためには教育の充実が必要である。イギリスの元首相トニー・ブレアは1997年の就任時に、優先すべき政策は『一に教育、二に教育、三に教育』と語ったが、人口減少時代に向う日本にとっても同様であり、とりわけ幼児教育が重要だ。シカゴ大学の労働経済学者であるヘックマンは就学前教育への投資効果が高いことを明らかにしており、幼児教育の充実を図るための公共政策が国民の生産性向上につながることが期待される。

今回の「幼保一体化」は福祉施設の保育所と教育施設の幼稚園を一体化し、厚生労働省と文部科学省による二重行政を解消するはずだが、実際には幼稚園が存続し、私学助成金も交付されるという。それは縦割り行政の弊害とも言えるが、これまでの幼稚園教育の役割も忘れてはならない。

近年では幼稚園は少子化の影響から定員割れとなる場合もあり、その対応策として早期受験に向けた幼児エリート教育に特化してブランド化する施設もあり、それが幼稚園児の登園拒否などの新たな問題となっているとの指摘もある。今回の「幼保一体化」の議論には、真に子どもの能力を高める幼児教育のあり方や保育一体となった「質の高い幼児教育」を提供するという教育政策としての視点が欠落しているように思われてならない。

では、日本の幼児教育にとって何が重要であろうか。それはふたつの「ソウゾウリョク」を育むことではないだろうか。ひとつは問題解決能力としての「創造力」であり、もうひとつは問題発見能力としての「想像力」である。最近では「ユニクロ」のような新卒一括採用から学歴や国籍を問わない通年採用する企業が出現している。これは企業が抱える複雑な問題を解決するために「創造力」を生み出す人材の多様性(ダイバーシティ)が求められているからである。

また、社会の問題を発見するためには、他の人々の状況を慮る「想像力」、すなわち「人を想う力」が必要なのだ。豊かな「想像力」は様々な社会の問題を発見し、その解決に向けて人と人とのつながりや信頼性、規範というソーシャルキャピタル(人間関係資本)を醸成するだろう。

今、日本に求められているのはこのような多様性が育む「創造力」とソーシャルキャピタルを醸成する「想像力」を有する人材である。北欧諸国やドイツでは“森の幼稚園”と呼ばれる自然のなかで子どもの主体性や判断力、責任感を育む幼児教育が実践されている。森の中の幼児教育は単に知識を詰め込んだり点数で子どもを評価するのではなく、一人ひとり子どもの意思を尊重し、子どもの選択機会を保障する。豊かな「創造力」と「想像力」を備えた人材を育成し、その人財を活用できる社会を目指す教育立国こそが、これからの「人口減少社会・日本」の針路ではないだろうか。

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