保育新システムまとめ案 「教育」と「保育」?
問題点は多岐にわたるが、前提として教育と保育を対立する概念のように扱っている・・・三歳以上は「標準的な教育」を給付。保育はどの年代も「保護者の就労時間等に応じた保育」としていることに違和感がある。
「子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ(案)12/20」
「 こども園給付(仮称)については、次のような給付構成とする。
・ 満3歳以上の幼児に対する標準的な教育時間及び保護者の就労時間等に応じた保育に対応する給付
・ 満3歳未満児の保護者の就労時間等に応じた保育に対応する給付」
なお「とりまとめ」(案)に対しては、各委員の意見が、問題点をうきぼりにしている。
【各委員提出資料①】
【各委員提出資料②】
【各委員提出資料③】
幼稚園の教育、保育所の役割をどう国は規定してきたか・・
【幼稚園教育の内容 文部科学省HPより】◆学校教育法 幼稚園教育
第23条幼稚園における教育は、前条の目的を実現するため、次に掲げる目標達成するよう行われるものとする。
1 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
2 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
3 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
4 日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
5 音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。◆幼稚園教育の特質 「環境を通して行う教育」を基本とする
・ 幼児の主体的な活動を促し、幼児期にふさわしい生活を展開(幼児は安定した情緒の下で自己発揮をすることにより発達に必要な体験を得ていく)
・ 遊びを通しての指導を中心として第2章に示すねらいが総合的に達成されるようにすること
(「遊び」は、幼児にとって重要な「学習」)
・ 一人一人の発達の特性に応じること
※環境とは物的な環境だけでなく、教師や他の幼児も含めた幼児の周りの環境すべて◆5領域
・健康:健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。
・人間関係:他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人とかかわる力を養う。
・環境:周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかかわり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う。
・言葉:経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。
・表現:感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。
【保育所保育指針】 (1) 保育の目標 子どもは豊かに伸びていく可能性をそのうちに秘めている。その子どもが、現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うことが保育の目標である。 このため、保育は次の諸事項を目指して行う。 ア 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を適切に満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。 イ 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。 ウ 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。 エ 自然や社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の基礎を培うこと。 オ 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、喜んで話したり、聞いたりする態度や豊かな言葉を養うこと。 カ 様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。 (3) 保育の環境 1. (略) 2.保育の内容構成の基本方針 (1) ねらい及び内容 保育の内容は、「ねらい」及び「内容」から構成される。 (略) 内容のうち、子どもが保育所で安定した生活を送るために必要な基礎的な事項、すなわち、生命の保持及び情緒の安定に関わる事項は全年齢について示してあるが、特に、三歳以上児の各年齢の内容においては、これらを「基礎的事項」としてまとめて示してある。また、保育士が援助して子どもが身に付けることが望まれる事項について発達の側面から以下の領域が設けられている。心身の健康に関する領域である「健康」、人との関わりに関する領域である「人間関係」、身近な環境との関わりに関する領域である「環境」、言葉の獲得に関する領域である「言葉」及び感性と表現に関する領域である「表現」の五領域を設定して示してあるが、この五領域は、三歳未満児については、その発達の特性からみて各領域を明確に区分することが困難な面が多いので、五領域に配慮しながら、基礎的な事項とともに一括して示してある。なお、保育は、具体的には子どもの活動を通して展開されるものであるので、その活動は一つの領域だけに限られるものではなく、領域の間で相互に関連を持ちながら総合的に展開していくものである。 保育の内容の発達過程区分については、六か月未満児、六か月から一歳三か月未満児、一歳三か月から二歳未満児、さらに二歳児から六歳児までは一年ごとに設定し、それぞれのねらいと内容を第三章から第一〇章に示してある。 なお、発達過程の区分による保育内容は組やグループ全員の均一的な発達の基準としてみるのではなく、一人一人の乳幼児の発達過程として理解することが大切である。
――― 幼稚園教育も保育の内容も、基本は、安定、安心できる環境のもとで、人との関係、遊びなど子どもの活動を通じ発達を保障するという極めて人間的な営み、という点では同じものである。
保育はたんなる預かりではない。だから各委員の意見の中でも、用語を「保育(教育+養護)」として統一すべきというものがある。
就学前の環境は、その後の人生にもっとも大きな影響を与える点で、OECDも「strong first」を唱えているし、人の一生の中でもっとも急激に発達する3未満の保育は、きわめて重要な役割を果たす。
新システムの言う「教育部分」は現行の幼稚園、保育園が現に担っており、その保育を「保護者の就労に応じて」と切り縮めることで、安上がりで待機児童の解消をし、その引き換えに集団保育の機能の低下を招くということにならないのか。と思う。
「まとめ」案では、過疎地で、小規模保育サービスと組み合わせ、放課後児童クラブ、地域子育て支援拠点、一時預かりなどを併設や、3歳未満児だけでなく、例外的に3歳以上児の利用も認める、という内容がはいっているが、統廃合の進む過疎地の保育をどう支えるのかは、現行システムの中でも考えてみなくてはならない課題である。
CNNが、「10歳前後の女の子がユーチューブやフェイスブック、携帯メールにばかり夢中になっていると、対人関係で問題を抱えやすくなる」という研究結果を発表したが、人の発達の基本を考えれば、当然といえば当然。
【子ども時代のマルチタスク作業は社会性獲得に影響 米研究1/27】
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