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依然、異常な長時間労働 労働総研

 労働時間1800時間は、パートなど増加の結果であり、フルタイム正規労働者は2700時間台。非正規も3割は週40時間以上就労する「フルタイム型」で、この中にはダブルワーク、トリプルワークも含まれており、週49時間以上の長時間労働をする非正規雇用労働者が66万人もいる--「日本は、先進諸国では他に例を見ない長時間労働と過重労働の国であり、それが過労死・過労自殺、心身の疾患という問題として顕在化している。長時間労働の是正は「生活大国」をめざす日本として一刻の猶予もできない課題」と指摘している。
 ななにより労働条件の改善は、若者の深刻な雇用環境を改善し、内需拡大による経済の好循環に結びつく。 
【日本は依然として異常な長時間労働の国   労働総研・理事 斎藤 力 2011/12】

 フランスのように週35時間(昼休み1時間含む)労働、5週間以上のバカンス・・・余暇をたのしみ、ボランティアにも参加できる、そういう結びつきがあるので、退職後、高齢になっても孤立しない。「無縁社会」は、日本の異常な働き方の問題である。という指摘を思い出す。

【日本は依然として異常な長時間労働の国    斎藤 力 2011/12】

1 フルタイム正規雇用労働者の労働時間は2700時間台

 「2000(平成12)年に向けてできるだけ早期に、現在のアメリカ、イギリスの水準を下回る1800時間程度を目指すことが必要である」と述べ、日本の労働時間を1800時間とすることを「国際公約」としたのは1987年の新前川レポート(経済審議会「構造調整の指針」)であり、それは、日本企業の強すぎる国際競争力が異常な長時間労働によってもたらされている、という国際的な批判を背景にしてのことであった。

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」(企業規模30人以上)によると、日本の年間総実労働時間は1985年には2110時間であったが、90年には2052時間、95年1910時間、2000年1859時間、05年1829時間と推移し、09年には1768時間と初めて1800時間を切り、10年も1798時間であった。これからすると、日本政府が目標とした2000年には10年ほど遅れたものの、この四半世紀の間に日本の労働時間は300時間余り減少し、1800時間弱となったことになる。

 年間労働時間1800時間は、年52週で割ると1週間当たり約35時間となる。この中には、祝祭日や年次有給休暇の取得日なども含まれるから、「毎月勤労統計調査」の年間出勤日数(一般労働者1人平均、2010年)228日で割ると、ちょうど1日当たり8時間となる。つまり、年間労働時間1800時間というのは、毎日残業なしで働いた場合の労働時間ということになる。

 しかし、個々の労働者からすれば、労働時間が確実に減ったという実感はないし、むしろ仕事はきつくなっているという労働者が多いのではないだろうか。

 黒田祥子は、「日本人の労働時間が10%以上短くなったとする公式統計の値と、世の中の時間とがなぜ乖離しているのかという点はきちんと解明されていない。週休1日・週6日就業というスタイルが一般的であった1970、80年代に比べて、週休2日制が普及した現代において労働時間が非常に増えているように人々が感じているのはなぜだろうか」(1)との問題意識のもと、総務省「社会生活基本調査」を活用して、1日24時間分の生活行動を15分単位で回答者に記録してもらう「タイムユーズ・サーベイ」という統計で、1976年から2006年の労働時間を比較している。

 黒田は、「タイムユーズ・サーベイ」の結果、雇用者1人当たり、フルタイム雇用者1人当たり、そして男女別のいずれでみても、1986年と2006年の日本の有業者1人当たり週平均労働時間は統計的に有意な差は見られないと述べている。さらに、日本(2006年)とアメリカ(2003年)のフルタイム労働者の週労働時間を比べると、男女ともに日本が9~10時間長いこと、平日の労働時間の増加が睡眠時間の減少を招いていることも明らかにしている。
(2) 

 労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2010』では、1人当たり平均年間総実労働時間は日本の1792時間に対し、アメリカは1797時間とアメリカの方が長時間労働国となっているが、黒田の分析によればフルタイム雇用者で比較すると日本の方が400~500時間も長いことになる(表1)。
 なぜ、日本の労働時間が1800時間を切るようになったのかについてはすでに多くの指摘が行われているように、パートタイム労働者をはじめとする短時間労働者の増加が大きく寄与している(図)。 しかし、フルタイム正規雇用労働者に関してみれば、先進諸国中では依然として異例な長時間労働国であることに変わりはない。

 それでは、日本のフルタイム正規雇用労働者は年間でどのくらい働いているのだろうか。森岡孝二によると、「社会生活基本調査」(2006年)における男性正規労働者の労働時間は週52.5時間で、これは年率に換算すると2730時間となり、1950年代の全労働者の年平均2719時間とほとんど変わらない大きさだという。(3) 森岡はさらに、総務省「就業構造基本調査」(2007年)から、年間250日以上就業する男性労働者(2381万人)のうちの「正規の職員・従業員」1363万人の51.8%は週49時間以上、25%は週60時間以上も働いていることを明らかにしている(表2)。日本の労働者の働き(働かされ)過ぎは依然として深刻な状況にある。

 日本の労働時間問題の深刻さは、長時間労働がフルタイム正規雇用労働者に限られていないことである。伍賀一道は、非正規雇用労働者のうち、およそ3割は週40時間以上就労する「フルタイム型非正規雇用」であり、この中には短時間のパートやアルバイトをかけもちする人(ダブルワーク、トリプルワーク)も含まれており、週49時間以上の長時間労働をする非正規雇用労働者が66万人もいることを指摘している。(4)
 非正規雇用労働者の長時間労働問題は「アルバイト店長」問題などとしても社会問題化したし、雇用不安と相まって精神的な健康を損ないやすいことが指摘されている。(5)



2 長時間労働の要因

 ILOの統計によれば、週労働時間が50時間以上の労働者の割合は、日本が先進国中で群を抜いている。日本のほかに週50時間以上の労働者の割合が高い国は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなど、いずれも新自由主義的な政策が積極的に展開された国であることも注目される。
 週60時間以上働く労働者の割合が大きく増えたのも、90年代半ば以降の特徴である。1994年と2004年で、週60時間以上働く男性労働者の割合を比べると、30代後半から40代にかけては10年間で5ポイント前後も増えている。週労働時間60時間は「過労死ライン」とされ、4~5人に1人がこのラインを超えて労働しているという状況は異常と言うしかない。

 こうした日本の長時間労働の背景には、所定内労働時間の長さに加え、所定外労働時間(残業)の常態化や年次有給休暇の未消化を前提とした経営計画など、資本のどん欲な蓄積欲があると同時に、法規制の不十分さや労働行政の機能不全、そして、労働組合の社会的規制力の弱さがある。

 所定外労働時間が長い最大の要因は、仕事量に比べて人員が圧倒的に不足していることである。連合総研「勤労者短観」(2010年10月実施)によれば、残業(所定時間を超えて働いた時間)の理由として最も多いのは、「突発的な仕事があるから」(43.1%)、「人手が足りないから」(39.8%)が1、2位を占め、「残業を織り込んだ業務運営となっているから」(31.1%)が4位となっている。このように、慢性的な人員不足、残業を前提とした業務計画が長時間労働の最大の要因となっている。

 所定外労働時間の多さの背景には、「労働基準法は、第32条で1週40時間・1日8時間の原則を定めているが、同法第36条では労使協定(いわゆる36協定)の締結を前提として時間外や休日労働を許している。しかも、協定において定められる時間外労働に関する上限規制は、強行性がない非常に緩やかなものであり、これをはるかに超える協定も多く存在している」(6)と指摘されるように、労働基準法の定める1週40時間・1日8時間を超えて労働者を働かせることが合法化されていることが大きい。法遵守を率先すべき日本経団連の会長・副会長企業のうち、年間1000時間前後の残業を容認する36協定を結んでいる企業が少なくない(表3)。 労働者の肉体的限界をはるかに超える36協定の存在については、協定締結の一方の当事者である労働組合の責任も大きい。

 所定外労働時間のうち、企業が賃金・割増賃金を支払わない賃金不払い残業=「サービス残業」の横行も大きな問題である。厚生労働省労働基準局は毎年、監督指導による時間外労働の割増賃金の是正状況を公表している。これは、対象事業場数に対して数%に過ぎない定期監督実施率、労働者からの申告によって行われる申告監督の結果、不払いが指摘され、事業が是正を求められた結果で、しかも是正金額が100万円以上の場合のものであり、不払い残業のごく一部に過ぎないと言わなければならないものであるが、それでも、2010年度には是正金額が123億円余にも上っている。(7)

 年次有給休暇の付与日数の少なさと取得率の極端な低さも長時間労働の要因の一つとなっている。日本はもともと、他の先進諸国と比べて年次有給休暇の付与日数が少ないが、それにも増して問題なのは取得日数と取得率の低さである。1995年以降、年休の付与日数は17~18日で推移しているが、取得率は1995年の55.2%から低下し続け、2001年には50%を割り、07年には46.6%にまで低下し、その後もほぼ横ばいで推移している。労働者が年休を取得しない(取得できない)理由で最も多いのは「取得しにくい雰囲気がある」「業務上、取得する予定が立てられない」というものであり、企業が年休の完全取得を前提とした生産計画、経営計画を立てていないところに最大の問題があり、企業に有給休暇の完全取得を義務づけ、使用者もそれを自覚しているヨーロッパ諸国とは大違いである。

 労働と生活を考える場合には、労働時間の長さに加えて通勤時間の長さにも注目する必要がある。日本は、長時間労働に加え、長通勤時間の国である。この結果、日本の労働者は帰宅時間が遅くなり、その結果、自宅で過ごす時間は西欧諸国に比べて圧倒的に短い。このことが、男性労働者の家事や育児に対する関与時間の圧倒的な少なさの原因となっている。ちなみに、午後8時前に帰宅する男性労働者の割合を、ストックホルム、パリ、東京で見ると、ストックホルムでは80%、パリではほぼ半数であるのに対し、東京は20%余に過ぎない。(8)

 日本は、先進諸国では他に例を見ない長時間労働と過重労働の国であり、それが過労死・過労自殺、心身の疾患という問題として顕在化している。長時間労働の是正は「生活大国」をめざす日本として一刻の猶予もできない課題であり、労働基準法や労働安全衛生法など法の遵守、それを担保する労働行政職員の増員をはじめとした行政体制の確立と労働行政の権限の強化、そして労働組合の社会的規制力の強化が不可欠である。これらは、法の遵守を拒み、あるいは脱法的な行為に走る使用者を規制する力となる。労働組合は労働時間短縮を建て前としてではなく、本気でたたかうことが必要であり、社会的な真価が問われている。


(1)黒田祥子「日本人の労働時間―時短政策導入前とその20年後の比較を中心に―」『RIETI Policy Discussion Paper Series 10-P-002』2010年1月。
(2)NHK放送文化研究所「日本人の生活時間」(5年ごとに調査)によると、2010年の有職者の睡眠時間は前回調査より10分少ない6時間55分と、初めて7時間を下回った。
(3)森岡孝二「労働時間の二重構造と二極分化」『大原社会問題研究所雑誌』No.627、2011年1月号、12ページ。
(4)伍賀一道「雇用の現状と求められる雇用政策」『月刊全労連』2011年11月号、4ページ。伍賀は、「フルタイム型非正規雇用」労働者の中には年収200万円未満の労働者が15%もいることも指摘している。
(5)日本学術会議労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会提言「労働・雇用と安全衛生に関わるシステムの構築を―働く人の健康で安寧な生活を確保するために」、2011年4月。
(6)日本学術会議、上記提言、5ページ。
(7)リーマン・ショック直前の2007年度には274億円余に達していた。01年度には81億円余であったが、「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入の主張の高まりとともに、不払い賃金に対する是正支払額も急増しているのは、単なる偶然とは考えられない。
(8)筒井晴彦「ディーセント・ワーキングタイム! 時短先進国になろう!」、『学習の友』2011年4月号。

(さいとう ちから・理事)

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