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「産業空洞化」に、どう対応するか(メモ)

 友寄英隆「大震災後の日本経済、何をなすべきか」(2011/10)より
~ 大震災後、どの調査でも、企業の海外移転が増大し、「産業空洞化」がつよまるだろうという結果になっている。そこで、「空洞化」の本質、日本での特質、最近の「超円高」問題、財界・政府の対策、国民の立場からの対策についてとりあげる。という論考の備忘録。

「産業空洞化」に、どう対応するか

 友寄英隆「大震災後の日本経済、何をなすべきか」(2011/10)より

(1)「産業空洞化」の本質をどう見るか

・「産業空洞化」とは、一般に、製造業などの生産拠点の海外移転がすすみ、海外生産が拡大するにともない、国内産業が縮小・衰退し、雇用や所得、下請け企業や地域経済、税収や景気にマイナスの影響を拡大すること。
~ 経済のグローバル化、大企業の多国籍企業化の展開につれて、主に発達した資本主義国における共通の困難な課題として、1960年代から取り上げられてきた。
・対策を検討するために、その経済的本質を、まず明らかにする必要がある。

◇貿易の拡大と海外生産の拡大 - 国民経済の再生産へ与える影響の違い

ともに、経済の国際化、クローバルカの現われだが…
・貿易/国内の生産物を輸出し、海外の生産物の輸入。/貿易は、輸出産業の生産を拡張。稼いだ外貨で、国内で生産できない製品を輸入(日本では石油など、新興国では近代的機械など)し、国内の再生産を急速に拡大。/拡大再生産を主導する役割を果たす
→が、それぞれの国の相対的に生産性の高い分野に特化(メモ者 押し込められ?)する傾向を持つ/ 国際分業が推進し、各国のバランスのとれた産業発展を阻害する(メモ者 アフリカ 商品作物のモノカルチャー生産が、貧困・食料不足をもたらすように決して、国際分業で、皆が豊かになるわけではない。)

・海外生産の拡大/国内の生産拠点の海外移転、国内に投資されるべき資本が海外で投資される(逆に、海外からの流入もある。)/日本の場合、海外への流出が圧倒的に大きい
→ が、「本質」は、流出入のバランスの問題だけではない/多国籍企業の増大は、資本蓄積と再生産の構造に新たな特徴をもたらしつつある。/従来の国民経済を単位とする構造と別に、もっぱら世界市場を舞台として活動する多国籍企業の独自の資本蓄積と再生産の軌道が形勢されつつある。
→ 国民経済単位の資本蓄積、再生産の土台の上で、新たな重層的な特徴を形勢しつつある。

◇生産力の発展を基礎とした「生産と資本の集積・集中」――重層的な再生産の形勢

・「産業空洞化」とは、「重層的な再生産」が形勢されて、国民経済単位の資本蓄積、再生産の活性化が失われていくことを意味する。
~「重層的」と言っても二重化ではない。再生産構造は、あくまで一国の社会的総資本の総括的な循環運動。/個々の多国籍企業は、独自の「構造」を形成することはできない。が、国民経済単位の「再生産の条件、法則」に制約されず、独自に運動し、国民経済をかく乱する、という意味で「重層的な再生産」を形勢

☆マルクス 再生産表式
   Ⅰ部門 C1 + V1 + M1 = W(Ⅰ)
   Ⅱ部門 C2 +V2 + M2 =W(Ⅱ)
   再生産の条件・法則(単純再生産の場合) Ⅰ(V1 + M2)= ⅡC2

・「重層的な再生産」形勢の背景に、生産力の新たな発展段階。そのもとでの「生産と資本の集積、集中」がいちだんと進んだことにある。
~ ICT革命 生産力基盤の革命的な進展。/資本の集中・集積 大企業上位200社と、それ以外の上場企業の規模は、一社平均で、総資産25.8倍、売上高27.9倍、従業員数27.8倍。
→ 「産業空洞化」の基盤には、生産力の発展を条件とした資本蓄積と再生産の新しい変化がある。

(2)「産業空洞化」の日本的特質をどうみるか。

◇特徴① 輸出主導型再生産構造の歪みと円高の「悪循環」

・戦後復興期、高度成長期をつうじ、政財一体となった輸出振興で経済発展(メモ者 高度成長期など、生産基盤の整備、賃上げなど、「投資が投資を生む」という内需主導型の成長が1つの特徴)
・海外からの入口と出口を大企業が押さえた構造
→巨大独占企業が、鉱石や石油を大量に輸入~その系列のもとで、国内中小・零細企業が部品・中間財や国民の消費財を生産~巨大独占企業は、その部品、中間財を購入し、自動車、電気製品、機械などの高品質の製品を組み立て大量輸出
・輸出目当ての巨大企業が国民経済を支配するという意味で、「輸出主導型再生産構造」といわれた。
・この構造は、同時に、日本経済の大企業の支配も意味する。
・貿易摩擦と「悪魔のサイクル」/輸出主導の成長は、他国と貿易摩擦を激化 → 円高による是正の圧力 → リストラによる競争力の回復 → 貿易黒字 → 円高 → /という悪魔のサイクルに。

◇特徴② 多国籍企業化した大企業の急成長で「重層化する再生産」

・80年代後半、特に90年代より、本格的な多国籍企業化の進展(プラザ合意の超円高)/経済全体のあり方の旋回基軸になるとともに、日本経済の矛盾を拡大する新たな要因に。

・遅れた出発した日本の多国籍企業化 ~ 2つの特徴
①急成長、「身のたけを超える成長」(メモ者 トヨタ、世界一の座獲得と同時にリコール、品質問題)
 ②輸出の増加と海外生産の増加  「二兎を追う」~ 金融国際化の展開力が弱く、劣悪な労働条件を利用した「ものづくり」の国際競争力による輸出拡大が先行(メモ者 中小企業の生産現場の質の高さなど技術力など、使用価値の面での高さも)/  多国籍企業も、世界市場を舞台とする「市場拡大戦略」と並行的にすすめられた。

・「なし崩し的再編」 輸出主導型蓄積・再生産構造の根本的転換がなされず、大企業の海外生産が増大し、「なし崩し的」に「重層的な再生産」に再編されつつある。

・「産業空洞化」は、対処療法的な政策では、効果的な対策は打てない 
 → 「多国籍企業化した大企業」頼みの経済運営のあり方そのものが「産業空洞化」を促進し、国民経済の活性化を損なっているから。

(3)最近の「超円高」をどう見るか

・超円高/ 輸入物価の低下、海外旅行の増大、他方で、輸出企業の経営悪化、海外への生産移転など「産業空洞化」の懸念を強める。

・円高の背景に国際的、国内的要因

①国際的/世界金融危機・世界恐慌への対応策として、各国が超金融緩和・財政膨張政策を実施 ~ 米国、EU、日本ともに、巨額の財政赤字、ソブリン・リスクの深まり ~ 既に、カジノ資本主義化がすすんでいるもとで、国際通貨制度全体が、極めて投機的な不安定状態に /そのもとで、日本は、世界一の対外純資産、経常収支の黒字の継続…「相対的に」金融が安定していると見られ、一時避難的に円に資金が集中。

②国内的には、円高を恒常的に推進する二重の「悪循環」
1.大企業が「国際競争力のため」というスローガンをかかげて強行してきた円高とリストラ「合理化」の「悪魔のサイクル」

2.低賃金・雇用不安による内需低迷・長期不況・デフレと円高の「悪循環」
→内需低迷で、物価上昇率の低下が、実質金利の高さとして、通貨価値としての円の相対的上昇をもたらし、円高となり、円高がさらに不況・デフレを進行させる「デフレと円高の悪循環」

・この2重の「悪循環」の根源には、「国際競争力」強化をかかげ、労働者、中小企業を犠牲にした大企業の「経済成長」方式の矛盾、歪みがある。

(4)財界・政府の「空洞化」対策―― むしろ「空洞化」を促進する。

・財務省の「円高緊急対策」~外為会計が保有する外資を使い、日本企業の海外でのM&A(合併・買収)を支援するための資金を提供(最大7.7兆円の融資枠) 
→ むしろ、企業の海外進出を後押しするもの
・政府、財界の主張は、むしろ「空洞化促進」策

◇TPP、法人税率引き下げ ―― 財界の主張

・「空洞化」対策として、TPP参加を、の主張/ 後述
・法人税が高いから海外に流出・・10数年来の主張/ 事実は、43.3%(84年)が幾度も引き下げられ、30%になっている(これが税収の空洞化の重要な要因)~ この間に、大企業の海外進出が急増。
・経産省「海外事業活動基本調査」(2010年調査)~ 「海外投資の動機」
   ①「現地の需要が旺盛又は今後見込まれる」68.1%
   ②「良質で安価な労働力が確保できる」26.2% 
・・・
   ⑥「税制融資等の優遇措置」10.6% /6番目

◇FTA、EPAによる部品や素材の輸出促進を ―― 「通商白書」の「空洞化」対策

・新たな装い/海外生産の増大とともに、部品、素材など「中間財」の輸出が増えているとの“実態分析”をおこない「中間財の輸出競争力強化を後押しすることが重要だ」と主張。
~ 米国に進出した日系企業 09年、約4兆円の中間財を日本から調達、中国・アジアでは3兆円

・しかし、対策として、自由化促進は、説得力がない
 ①中間財輸出増は、「空洞化」の対策でなく、「空洞化」の結果。
  → 海外生産を増やさないと中間財生産は増えないという奇妙な「対策」
 ②中間財輸出は、絶対額としては増えても、日本の海外企業の全調達総額にしめる日本の割合の急減
  → 2000年度、4割弱、09年3割前後

・中間財の輸出振興それ自体は否定すべきことではないが、「空洞化」対策とはいえない。/「空洞化」対策と称して、従来の政策を国民に押し付けるもの。
(メモ者 対米輸出の自動車、電化製品の関税は、数%の定率。それをゼロにしても、30%とかいう円高の前には、焼け石に水。)

(5)国民の立場からの「空洞化」対策

◇為替レートの乱高下には、通貨自主権の確立と実効ある金融投機規制、積極的な通貨外交を

・投機資金の横行する国際金融情勢のもとで、為替レートは、実態経済の条件を離れて、急激に乱高下することもすくなくない。
・「超円高」への対策 / 円高は、実態経済が安定的に発展しているからでなく、一握りの「多国籍企業化した大企業」の急激な成長が、経常収支の黒字、対外純資産の膨張をもたらしたから。

・戦後日本の通貨対策は、日米関係最優先のもと、ドルの世界支配体制のもとで、自主的な通過対策を事実上放棄してきた → アメリカの言う政策に追随し、異常な円高、急激なドル高などかく乱されてきた。
 ①「産業空洞化」対策には、まず通過の自主権の確立 /投機マネーにかく乱されないよう通貨価値の安定をはかる通貨外交が大事。
 ②投機マネーによる国際通貨体制のかく乱にたいし、国際協調で投機規制の制度的前進をはかる必要
 ③アジアでの積極的な通貨外交/ IMFのアジア版など協調して通貨安定を図る制度づくり。

◇TPP路線を阻止し、「バランスのある通商政策」で「超円高」の根源を絶つ。

・TPP/すべての関税、貿易障壁を撤廃し、各国が「国際競争力」を基準に、弱い産業を淘汰し、最適地生産を徹底する市場統合であり、新たな国際分業体制の形成を目的としたもの。

・資本の再生産活動の国際的展開の2つの道
 ①TPP型の自由放任のグローバリゼーションの道~ 国際競争力の強制法則が無制限に作用し、労働条件、中小企業の保護・育成、環境の規制などは、だんだん切り下げに。
 ②国内で「ルールある経済社会」を確立するとともに、世界市場でも、民主的な国際的ルールにもとづいて、民主的な共存共栄の共同市場を形成する道。

→ EUは、社会的公正をかかげたルールある共同市場をひろげながら、国内では、ルールある雇用、福祉を重視する「社会的市場経済」を発展させてきた。/一定の秩序をもった国際的再生産の絡み合いがある。/(メモ者  ユーロ危機は、通貨は統一しているが、財政政策は各国独自というもとで、経常収支の黒字が、競争力の高いドイツの利益に一極集中していることから繰る矛盾が土台にある。今回の各国の拠出〔その中心は、独仏〕による「財政安定システム」は、中央銀行の萌芽として、ヨーロッパ合衆国の形勢に向かう契機になりうる。また、EU内には、東欧など、成長の余地を残した国が存在している。)

・東アジアは、歴史、言語・文化・宗教、政治・経済など各国の条件は大きく違っており、経済交流がすすんでも、経済統合には、より慎重で、時間をかけた国民的論議が必要
→ TPP参加は、国民的な議論を欠いたまま、大資本が支配する「自由貿易経済圏」にひっぱりこまれることとなる。

◇「重層化する再生産」のもとで、地域経済の新たな役割

・国民経済の再生産活動を活性化するには、地域経済の役割があらためて重要
→ 圧倒的多くの中小企業、労働者は、国内に生産・流通拠点を置き、国内経済に再生産活動の基盤を置いており、「空洞化は定性的に避けられない」(通商白書)と言っていられない。
「地域の個性にあわせ、小規模自然エネルギーの活用に示されるような自然との共生と「人間の復興」を基本にした地域再生が、住民と基礎自治体の主体的な取組みによって可能となれば、それは構造改革によって疲弊しきった日本社会全体を、人間らしい生活ができる安全な空間へと大きく変革していく絶好の機会となる」(岡田知弘)

・新たな条件 ①地域分散型の再生可能エネルギーへの転換 ②ICTなど生産力の発展

◇「地域経済」発展の新しい基礎的条件

①原発からの撤退・自然エネルギーへの転換と地域経済
・巨大な電力独占による大規模集中型の供給体制を、各地域の自然条件を活かした地産地消体制へ根本的に変える。
→ 日本経済の資本蓄積・再生産構造を「自然と人間の正常な循環の回復」という視点から、根本的に見直すことになる。

・自然エネルギーの売電益の地域への還流、小規模発電装置のものづくりの地産地消などで雇用、地域経済を再生し、住み続けられる地方都市に結びつく/環境と原発、エネルギー、地域経済を一体でとらえる。

②ICTなど新しい生産力の発展と地域経済
・ICT革命 /従来の大企業に有利だった「規模の経済」にかわり、むしろ中小企業が主役であるといわれる「範囲の経済」「ネットワーク経済」が発展するという技術的・市場的条件の変化
例)北陸で、各企業が直接、アジアと結びつき(略)

◇地域経済の再生をどう実現するか—地域再生のための統一戦線組織

・地域の産業振興、地域経済の再生をめざす「統一戦線的な組織」を下から組織していく必要性
例)阪神大震災の「救援・復興兵庫県民会議」
~ 労組、農民組合、漁業組合、中小企業団体、女性団体、青年・学生組織、知識人・文化人の組織、地域の商店街、商工会、老人クラブ、観光協会、NPOなど、地域で暮らし、働き、学ぶ人すべての人に門戸を開き、自治体とも連携しながら、創意ある活動を展開する。特に地域の大学、研究機関で働く人びと、医師・弁護士など専門家を結集する。/こうした組織を、地域、市町村、県単意など、可能なところから、/産直運動、中小企業進行条例制定の運動、地域再投資法制定の運動などなど・・・

・一方、原発ゼロ・自然エネルギーの発展には、個別的な運動だけでなく、あらたな地域ぐるみの運動が必要。/また、防災計画・対策などを地域ぐるみで確立することも必要。

・革新的な立場から、地域経済の再生をすすめるために、新しい創造的な運動を展開できる組織が求められている。

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