沖縄にこだわるのは米財政負担の軽減
米議会の上下両院軍事委員会が、米海兵隊のグアム移転関連予算約1億5千万ドル(約117億円)を全額削除することで合意した。すでに辺野古新基地建設は破たんしており、米国内でも安全保障関係者から米本土や豪州移転が提案されている。
ところで12月9日放送の「ニコ生トークセッション」で、前泊博盛氏(沖縄国際大学教授、元琉球新報記者)、孫崎享氏(元外務省国際情報局長)を迎えての議論が紹介されている。
抑止力なんてない、結局は米の財政負担軽減という話。
【[グアム移転費削除]日米政府は決断の時だ 沖縄タイムス】
【元外交官、米が沖縄にこだわる理由は「日本に金を出してもらえるから」12/16】
“前泊氏は「沖縄に米軍海兵隊がこんなにいるのに、中国の海軍(の船)が自由に行き来し、尖閣で問題が起こるのは、抑止力が利いていないとなる。むしろ軍事力で解決できない問題だ」と述べた。同様に孫崎氏も、抑止力としての沖縄の基地の存在意義に疑問を呈した。
両氏の言うように抑止力がないのだとすれば、アメリカが沖縄に基地を持ち続けるメリットは何か。外務省で国際情報局長を務めたこともある孫崎氏は「金の問題」だと指摘する。
「安全保障の重要性ではなくて、海外の基地を置くのに日本だったら金を出してくれる。これが一番重要なポイントだ」”
13日の赤旗のその厚遇ぶりを報道している。「基地の維持費や建設費、演習費用など在日米軍の活動経費のうち、日本側負担分の総額が今年度、6967億円」であり、その約半分が支払い義務のない金。
「米国防総省が会計年度ごとに公表している「基地構造報告」によれば、過去5年間で212減っています。これに対して日本では主要基地が維持されています。米軍への巨額の財政負担は、日本から基地がなくならない要因にもなっています。」
と指摘している。
【米軍基地を維持 日本 7000億円支援 世界では212減なのに 赤旗12/13】
【[グアム移転費削除]日米政府は決断の時だ 沖縄タイムス】米議会の上下両院軍事委員会は、2012会計年度(11年10月~12年9月)の国防権限法案から在沖米海兵隊のグアム移転関連予算約1億5千万ドル(約117億円)を全額削除することで合意した。
在沖米海兵隊のグアム移転は米軍普天間飛行場の辺野古移設と連動しており、グアム移転費の全面削除は、米議会が間接的に辺野古移設にレッドカードを突きつけたことを意味する。法案は近く両院本会議で可決される見通しだ。
下院が5月に政府要求通りの支出を認めたのに対し、上院は12月にグアム移転関連予算を全て削除した法案を可決するなど上下両院でねじれていた。今回の合意は、米政府がグアム移転費の総額や具体的な工程を提出するまで一切の予算の支出を認めないなどの厳しい内容だ。
背景には米国の抱える巨額な財政赤字がある。イラン、アフガン戦争で膨らんだ国防予算が予算削減のターゲットになっている。米政府は今後10年間で4500億ドルの国防費削減を掲げている。
在沖米海兵隊のグアム移転計画が巨額な費用を要するにもかかわらず、上院が要求していた基本計画書(マスタープラン)を米国防総省は提出できなかった。展望のない移転計画に予算は付けられないというわけだ。
日本政府も11年度予算に計上した約520億円を米側に年度内に拠出せず、12年度予算は100億円未満とする方向。米国が予算の削除を決めたのに、日本政府が予算をつぎ込むのはおかしい。
両院の軍事委が、海兵隊のアジア太平洋地域での最新の配置案を示すことを求めていることに注目したい。日米関係に関わってきた米政府関係者や専門家からも海兵隊が沖縄に駐留することへの疑問や普天間の辺野古移設計画に異議が相次いでいるからだ。
上院をリードしたのは超党派のウェッブ議員(民主)、レビン軍事委員長(同)、マケイン筆頭委員(共和)ら。ことし5月、辺野古移設を「非現実的で実行不可能、財政負担も不可能」と国防総省に要請している。県内の政治状況や東日本大震災を踏まえた現実的な認識である。
要請には嘉手納基地への統合案も入っているが、周辺住民の爆音被害を考えれば、それもまた非現実的であることに気付くはずだ。普天間返還に合意した日米特別行動委員会(SACO)から15年が過ぎた。こんな長期間でも移設できないのは、県内移設にそもそも無理があるからだ。
民主党が政権交代をした衆院選で普天間の移設先を「最低でも県外」と約束してから、県内の潮流は変わった。その流れは不可逆だ。県知事、県議会、名護市長、市議会などで示された民意は、県内移設ノーであり、求めているのは県外・国外移設である。
米政府は議会から駄目出しされ、日本政府は沖縄の民意に追い詰められている。沖縄の声を押しつぶして移設を強行するのか、日米関係の持続的安定のために政策転換を図るのか、大きな分かれ道だ。
日米両政府は辺野古移設を断念する時である。
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