あらゆる年代、保険種別で医療費相談増 民医連調査
「国民皆保険制度は大きくほころび、すでに底が抜けている」・・・そのことを日々の相談から“「数字」と「事例」に客観的にまとめていくことで…問題解決への第一歩につなげていく”との目的で民医連が実施した調査。
その特徴は
①あらゆる年代、あらゆる保険種別において医療費の相談が発生….皆保険が崩壊に瀕している ②非正規雇用など稼働層へ貧困が拡大 ③3.医療費や介護費の支払い困難者に対する施策が貧弱…基準となる『非課税』のあり方が国民の生活実態に即していない。としている。
【医療費・介護費相談及び無料低額診療事業利用者分析調査報告 12/3】
そして最後に「2011 年は、国民皆保険50 周年の年であります。皆保険は、貧困と病気の悪循環を断ち切るべく多くの医療者・国民の運動によって誕生しました。今こそ、皆保険の理念を遵守し、「安心して医療にかかれる」ための社会保障の充実を切に訴えます。」と結んでいる。
社会保障の改革は、なにより国民の実態から出発しなければならない。
以下は、調査のまとめの部分。
1.皆保険が崩壊に瀕しているあらゆる年代、あらゆる保険種別において医療費の相談が発生しています。医療費の支払いが不安なことが原因で、受診抑制となっています。その結果、死亡という最悪な結果になっているケースが多数あります。重い窓口負担が受診抑制を引き起こしていると同時に、国民皆保険制度を崩す深刻な事態が進行していることも明らかになりました。
「医療費が支払えない・不安がある層」の中に「保険料の滞納がない層」が約3 分の1 を占めている。従前から、『高すぎる国保料を払いたくても払えない』という方の「窓口負担も払えない」という相談は多くありました。今回の調査では、『保険料は納めているけど、窓口負担は払えない』方も決して少なくないということも、明らかになりました。
また、保険加入しているにもかかわらず、制裁の対象になっていないにもかかわらず、『医療費が払えない』「生活が出来ない」というのでは、社会保険の機能を果たしていない、社会保障として成り立っていないと考えます。2.稼働層へ貧困が拡大している
特に、注目した一面は、『稼働層』の貧困です。基本給が安く、歩合や手当て、残業代などでかさ上げされる、といった賃金構造の変化や雇用形態の多様化(非常勤化)があり、被用者保険の加入者が安定的な階層であることを意味しなくなった状況の広がりが見えます。常勤であっても生活保護基準を下回る収入であったり、貯蓄が出来なかったりする硬直化した家計の中で、医療費負担が更なる打撃となって生活破綻の危機に陥れていると予想できます。
3.医療費や介護費の支払い困難者に対する施策が貧弱である
「低所得者への負担緩和を一定実施している」ことにはなっていますが、その基準となる『非課税』のあり方が国民の生活実態に即していないと考えます。例えば、基礎控除のみであれば、一月の収入が10 万円そこそこでも『課税』となってしまうのです。これが、生活保護の一級地の場合では、生活保護基準以下の収入にもかかわらず、『課税』です。税制改革の中でこの基準が実は大きく変わってきているのですが、そこに焦点が当てられることはなく『低所得者の救済』は用を成さないものになり、必要な医療や介護から遠ざけられています。また、病気や怪我といったライフステージ上の事故が生活そのものを脅かすことになっているのです。
現在、高額療養費の限度額引き下げの論議も検討されていますが、各控除の廃止や縮小、税率の上昇を併せると、どれほどの効果があるのか、期待値としては低くならざるを得ません。また、その財源として受診患者への負担増が検討されていることは、本末転倒です。
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