「慰安婦」問題 千回目の水曜デモ ~戦争責任を問う意味
日本政府に賠償と謝罪を求め、毎週水曜日に挺対協が同大使館前で開いてきた「水曜集会」が千回目をむかえた。数十万人の女性を性奴隷としてきた日本軍の蛮行――「慰安婦」問題の解決は、歴史と向き合い、人権を守り、未来をつくるたたかいである。「像」ではなく解決に背を向けている日本政府の姿勢が「尊厳」を傷づけているのである。「像」は、日本の向き合い方で、「あやまちを繰り返しません」という平和と友好のシンボルになりうる。マスコミの報道姿勢も…過去に学んでない。
以下は、吉川春子前参院議員、林博史・関東学院大学教授の論文(前衛2012.1)からのメモ。
【ソウルの日本大使館前に慰安婦像 抗議集会は千回に 共同11/21】
【「慰安婦」問題 吉川春子】
●転換点 韓国憲法裁判所の決定(2011年8月30日)
「日本軍慰安婦として日本政府に有する損害賠償請求権が消滅したか否かについて、韓日両政府間の解釈上の紛争を解決せずにいる韓国政府の不作為は違憲である」と決定。
韓国政府はこの決定をうけ、外交交渉を行い、解決できない場合は、日韓請求権協定第三条にもとづく仲裁手続きで紛争を解決する方針
仲裁人は、日韓双方1人と第三国から1人。この仲裁委員会の決定に両国は拘束される。
また、10月11日の国連総会の人権担当委員会で、個人補償問題をとりあげた。
●日本政府の態度変更
・日韓請求権協定(1965)/「日韓の国と国民の間の請求権に関する問題が・・・完全かつ最終的に解決されたことを確認する」/しかし、従来、日本政府は、「慰安婦」問題については解決済みだが、被害者個人の損害賠償請求権までは消滅してないとの態度をとってきた。
→ 個人補償が消滅しないのは当然。慰安婦被害者が名乗りをあげれたのは1991年。65年当時は、「慰安婦」問題は遡上にすら上っていない。/93年「河野談話」で政府の関与をようやく認める
・韓国政府は05年、日韓条約締結に関する外交文書を公開。このなかで、対日請求権要綱には「慰安婦」が含まれていないことが明らかになっている。韓国憲法裁判所の判決も、この事実が明らかになったから。
・05年、日本政府の態度変更/個人請求権そのものを否定。07年、最高裁も政府の主張を追認。
・一方、韓国政府は、03年時「損害賠償を要求しない立場」と言っていたが、05年慰安婦問題で「日本政府の法的責任が日韓請求権協定第2条1項により消滅せずに残っていると認定」した。
→ 背景に、国際世論の後押しと被害者女性の訴え、行動
●国際社会で孤立する日本
・国連/96年人権委員会で、公式謝罪と補償をもとめる「報告」を採択。/98年人権小委員会の犯罪者訴追要求等の報告/01年社会権規約委員会、女性差別撤廃委員会/07年拷問禁止委員会/08年人権理事会、自由権規約委員会/09年女性差別撤廃委員会(再度)で勧告/ILO専門家委員会96-2011まで類似の勧告
・諸外国の非難決議 07年アメリカ下院、オランダ下院、カナダ下院、EU議会
●歴史と向き合う
・12/14 韓国の「慰安婦」被害者らが日本大使館で毎週行う「水曜デモ」が1000回に。
東京では、外務省を「人間の鎖」で包囲する行動、院内集会が実施され。加害の責任を自省し行動する日に
(メモ者 先日、高知の平和資料館「草の家」が、中曽根康弘氏が慰安所づくりにかかわっていたことを示す新資料を見つけ発表した。)
・「学校で戦争について何を学んだか」アンケート/馬暁華准教授・大阪教育大
①原爆 ②空襲 ③真珠湾攻撃 ④戦地からの引き揚げ ⑤田舎への疎開
~ など自分たちの苦労が主にあがり、他国への思いがない。と指摘している。
それに関連して・・・
【(私は貝になりたい)と日本人の戦争観】
林博史・関東学院大学教授「いま戦争責任を問いかける意味」より
・ある事実に直面しても都合のいいような解釈でしか受けとめない戦後日本の戦争総括の仕方を変えなくてはならない。~ その例として「私は貝になりたい」の映画、テレビ化
・加藤哲太郎(元陸軍中尉)の原作と映画はまったく無関係。
・原作はこうなっている
「・・・・天皇は、私を助けてくれなかった。私は天皇陛下の命令として、どんな嫌な命令でも忠実に守ってきた。・・・天皇陛下よ、なぜ、私を助けてくれなかったのですか。・・・私は死ぬまで陛下の命令を守ったわけです。でから、もう貸し借りはありません。・・・もし私が、こんど日本人に生まれかわったとしても、決してあなたの思うとおりにはなりません。二度と兵隊にはなりません。/けれど、こんど生まれかわるならば、私は日本人にはなりたくありません。いや、私は人間にはなりたくありません。牛や馬にも生まれません。人間にいじめられますから。どうしても生まれかわらなければならないのなら、私は貝になりたいと思います。貝ならば海の深い岩にヘバリついて何の心配もありませんから、何も知らないから、悲しくも嬉しくもないし、痛くも痒くもありません。頭が痛くなることもないし、兵隊にとられることもない。妻や子を心配することもないし、どうしても生まれかわらなければならないのなら、私は貝に生まれかわるつもりです。」
→ これは痛烈な天皇制批判。映画ではこの点がない。
・加藤は、捕虜収容所の所長で、死刑判決のあと、禁固刑に減刑され、釈放されている。「本」では、ある陸軍曹長の遺書として書いている。
→ところが「映画」は、二等兵の主人公が死刑になり、「最末端の、命令に抵抗できないものまで死刑になるなんでひどい裁判だ」という話になっている。/BC級戦犯裁判で、二等兵で死刑になったものはいない。
・命令にしたがったものの責任/ 加藤は、先の引用のすぐ後に
「戦争という人間の概念が無数の人命を奪ったのではない。戦争に従事したあなたが、あなたの手で張三、李四を殺したのだ。山田や鈴木を殺したのだ。あなたとは誰か? それはあなた個人である」
と書いている。/加藤は自らの責任について「命令にしたがっただけ」でいいのかと考え、その結論として“命令するものだけでは戦争はできない。必ず実行するものがいるから戦争はできる。だから実行したものとしての責任をきちんととらなければならない。そのうえで課した上官、天皇にとらせるべき”と考えた。
→ 「映画」は、この加藤の優れた思想、加害責任が完全に切り捨てられている。
・戦後平和意識の問題点~ 根付いた厭戦感、戦争はやってはいけないいう意識は貴重/が、加害責任、侵略戦争の責任を問わないままにきた。それが戦争責任のある勢力が戦後も権力を握るという構造を温存
→ 加藤の加害を認識し、個人責任をみつめた姿勢からまなばないといけない。
(メモ者 その要因として、最大の責任者「天皇」の免罪されたこと。戦争犯罪人の復活では、中国革命を受け、日本を反共の防波堤として復活させる対日支配戦略の変更、それを実践するために、高揚する労働運動などを押さえ込む国内の支配体制強化というアメリカの意図による。~ 命を救ってもらい、支配者として復活させてもらった戦犯勢力・支配層の「対米従属」のルーツがここにある。)
☆国民意識とメディアの責任
・原発を推進してきた構造、基地を押し付けてきた構造、侵略戦争を推進してきた構造の関連
・「原発安全神話」に全面協力したマスコミ。政財官、御用学者と一体となり、反対派を排除、/原発を地方に立地し、都会の「捨石」にする。
→ 沖縄を本土の捨石したこと、米軍基地を押し付けたのと同じ構造/ 使用済み核燃料の後始末の見通しも無いままの原発推進は、太平洋戦争に突き進んだ無謀・無責任と同根。
・在日米軍基地の米本土や諸外国と比べての異常な基地特権も、ほとんど報道しない。
・中韓の領土問題などでナショナリズムを感情的に煽っていることにも注意必要
1930年代「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」と国民を煽り、国民が排外主義、対中強硬論に染まっていく/結果、支配層の選択肢が狭くなったという構図(メモ者 排外主義を煽る新聞の方が拡販が進む、のでより強硬な論調になる、という悪循環を招いた)
→ 情報統制のもとで「戦果」報告により戦争を推進/結果として、引き下がることを国民が許さない状況がつくられた。(情報が統制され、民主主義制度もなかった当時と今とは違う。今日の国民の責任は大きい)
→ 当時の軍部、支配者に責任があるのは当然/同時に、なぜ国民が煽られ、排外主義になったのか、私たち自身がかわるためにも、1人ひとりの民衆のあり方を考える必要がある。
【ソウルの日本大使館前に慰安婦像 抗議集会は千回に 共同11/21 】除幕式を前に設置された、旧日本軍の従軍慰安婦の被害女性を象徴する少女のブロンズ像「平和碑」=14日、ソウルの日本大使館前(聯合=共同)
【ソウル共同】旧日本軍の従軍慰安婦にされた韓国人女性を支援する韓国の市民団体「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」は14日、ソウルの日本大使館前の歩道に、被害女性を象徴する少女のブロンズ像「平和碑」を設置した。
日本政府に賠償と謝罪を求め、毎週水曜日に挺対協が同大使館前で開いてきた「水曜集会」は同日で千回目。正午(日本時間同)からの集会で被害女性らも参加し、除幕式を行う。
日本政府は外交公館の尊厳を損なうとして韓国政府に像設置の阻止を求めてきたが、韓国外交通商省は13日、求めを拒否する考えを示し、逆に日本が慰安婦問題解決を図るべきだと表明した
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