富裕層増税で格差是正を OECD
「拡大する所得格差」に対する各国向けの政策戦略として、良質な雇用、教育の充実、所得再配分機能の強化、質の高い公共サービスを示し、「政府は富裕層に公正な比率の税を負担させるために所得再配分における租税の役割を再検討する必要がある」としている。
「日本では、上位20%の所得層の租税負担率は24%で、OECD 平均の37%より低い。」のだから、証券優遇税制の廃止などに踏み出すべきである。政府税調にも各国の状況が資料として出されている。
【報告書「拡大する所得格差」12/5 OECD東京事務所】
【金融・経済危機を背景とした欧米諸国における議論 内閣府11/8】
【「Divided We Stand(拡大する所得格差)」からのOECD諸国向けの主な政策戦略】
最も効果のある格差解消策は就労である。最大の課題は将来性があり、貧困から抜け出す真の機会を提供する雇用の量的・質的な拡充を図ることである。
人的資本に投資することが鍵である。これは幼年期に始まり、義務教育を通じて持続される必要がある。教育から就労への移行後は、就労生活を通じて労働者と雇用主がスキルに投資するための十分な動機付けが必要となる。
租税と社会保障制度改革は所得再配分の効果を高める最も直接的な手段である。景気後退後に低所得層が被る大幅で永続的な損失は、政府による移転と巧みに考案された所得支援策の重要性を明らかにしている。
所得に占める最富裕層の割合の増加は、この集団が現在、より大きな租税能力を持っていることを意味している。こうした状況では、政府は富裕層に公正な比率の税を負担させるために所得再配分における租税の役割を再検討する必要があるだろう。
教育、医療、介護など、誰でも利用できる質の高い公共サービスの提供が重要である。
【日本】
日本の生産年齢人口の所得格差はOECD 平均よりやや大きい。日本の生産年齢人口の所得格差は、OECD と足並みを揃えて1980 年代半ば~2000 年に拡大した。2000 年に最大となり、その後縮小したものの、2003 年以降再び拡大に転じている。2008 年の日本の上位10%の平均所得は754 万円で、下位10%の平均所得(75 万円)の10 倍であった。これは1990 年代半ばの8 倍、1985 年の7 倍より大きい。
過去20 年間、日本政府は所得再分配の強化に大いに力を入れている。税と給付による所得格差縮小率は、1985 年には12%であったが、2006 年には21%へと上昇した。これは、OECD 平均(25%)よりは小さいが、それに近づいている。[Figure6.1]
◆主要な調査結果
全体では過去25 年間に実質平均家計所得はやや増えた(年率0.5%未満)が、日本の下位10%の実質平均家計所得はやや減少した。この結果、所得格差は拡大している。
日本では、上位1%の総所得構成比は1970 年代~2000 年代半ばに8.2%から9%へとわずかしか上昇しなかった。同時に、最高限界所得税率は75%から2010 年の40%へと著しく低下した。[Table9.1].
大多数のOECD 諸国とは逆に、常勤労働者賃金の分散(ばらつき)には有意の上昇傾向は見られない。賃金格差は過去30 年間、驚くほど変化がなく、賃金分布の下半分では縮小もある。
自営業者所得の総所得構成比は約10%と、OECD 平均の13%よりやや低いものの、1980 年代半ば以降上昇している。高所得層では自営業者所得の構成比は10%であるが、低所得層ではもっと大きく、20%である。
公的現金給付の総所得構成比は、1985 年の約7%から現在の12%へと一貫して上昇している。しかしながら、これは依然としてOECD 平均の16%よりは低い。現金給付の貧困世帯所得構成比は、OECD 平均の約50%に対し、20%である。日本の失業者向け所得支援は、給付期間の長期化と連動して、1990 年半ば以降手厚くなっている。
租税負担率は1990 年代半ばまでやや低下していたが、その後、OECD の全般的傾向とは逆に、わずかであるが上昇している。しかしそれでも租税負担率はOECD 平均以下である。日本では、上位20%の所得層の租税負担率は24%で、OECD 平均の37%より低い。
再分配は現金に限定されない。公共サービスも資源の再分配に影響する。日本の保健医療、教育、介護など
の公共サービス関連支出はGDP比で約12%と、OECD平均の13%よりわずかに低い。現金給付関連支出はOECD平均並みの約10%である。[Figure8.1]
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