F35 違憲、浪費の「選定」
機体に亀裂、いつ完成するか不明、どれだけ値があがるかも不明な中で、 「出来レース」による選定。一機約100億円、42機分と修理・整備費を含めると1兆円規模の浪費である。
そもそもステルス性能は、敵地奥地に進入し相手を叩くためのもので「専守防衛」とあいいれず、アジアの軍拡に拍車をかけることになる。
アメリカ言いなりの政府、とにかく「最新機がほしい」という防衛族とが、莫大な浪費と軍拡の悪循環がはじまろうとしている。
【社説:次期戦闘機 疑問多い「開発途上」機 毎日12/19】
【社説】 次期戦闘機 未完成F35で大丈夫か 東京新聞12/16】
【次期戦闘機選び 議論は尽くされたのか 中国新聞12/15】
そもそも、航続距離が長く爆撃能力をもつ戦闘機の採用は「憲法に触れる」(増田甲子七防衛庁長官、1967年3月29日衆院予算委員会)というのが、国会審議の到達点である。
ところが今回の選定では、「制空戦闘能力に加え、少なくとも航空阻止能力(空対地攻撃能力)を備えたマルチロール(多機能)機」を基準の1つにしている。敵基地攻撃能力を有するというのは、国会審議の到達点から言っても、憲法違反の代物である。
高知の地元紙も「専守防衛のなし崩しにつながりはしないか。そう不安に思う国民もいるだろう。」と指摘している。
また以下のような指摘がある。
ステルスと言っても、探知しにくいだけで、中国の技術は遅れており、仮に「開発」できても、その時には、探知技術はさらに進化している。よって不要。また、高度・高額なネットワークシステムが必要で、機体だけ買ってもムダになる。日本防衛に適していない。
【次期戦闘機(FX)に「ステルス」は不要だ 清谷信一・軍事ジャーナリスト、作家】
【社説:次期戦闘機 疑問多い「開発途上」機 毎日12/19】政府は、航空自衛隊が導入する次期主力戦闘機(FX)として、米英など9カ国が共同開発中のF35(米ロッキード・マーチン社)を内定した。現在、配備されているF4、F15、F2の3機種のうち老朽化しているF4の後継機となる。
将来的に約40機を配備する計画で、修理・整備費を含めると1兆円規模の高価な買い物である。
候補には他に米国製のFA18(米ボーイング社)と、英独など欧州4カ国が共同開発したユーロファイター(英BAEシステムズ社など)が挙がったが、F35だけが開発途上にある。防衛省が機体性能、維持管理を含む価格、国内企業の製造参加、納入後の支援態勢の4分野について点数制を初導入し審査していた。
F35の選定は、性能の高さを重視した結果なのだろう。3機種の中で唯一、敵のレーダーに探知されにくいステルス性に優れた「第5世代機」で、空自に待望論が強かった。
日本領空への接近を繰り返している中国やロシアは第5世代のステルス機を開発中だ。これに対抗し抑止力を高めるため、性能を審査の中心に置いたという。対米関係への配慮と、F35配備を計画する米空軍との連携を念頭にした「相互運用性」も重要な要素となったに違いない。
しかし、未完成のF35の採用には疑問もある。まず納入時期である。防衛省は16年度からの納入を計画しているが、F35は金属疲労試験で機体に亀裂が見つかるなどして開発が遅れ気味である。納入が17年度以降にずれ込む可能性が指摘されている。調達が間に合わなければ防空能力に「穴」が開くことになり、調達計画の変更を迫られる恐れもある。
F35はもともと他の2機種に比べて高価だが、開発が遅れればさらに価格が上昇することも予想される。オーストラリアなどは開発遅れを理由にFA18に変更する動きを見せており、他国の調達減少は価格を押し上げる要因ともなりかねない。
また、国内防衛産業の生産基盤・技術能力の維持、向上を図るためには、特許使用料を支払って国内企業が製造するライセンス生産がどこまで認められるかが重要となるが、米国が軍事機密保護を重視するF35の技術開示・製造参加の割合は、他の2機種に比べて極端に少ない。
日米共同開発機のF2は、三菱重工業による生産が9月に終了した。政府は、先端装備品の共同開発・生産を可能にするため武器輸出三原則の見直し作業を進めているが、戦闘機については、F35の選定によって国内企業の本格的な製造関与はしばらく途絶えることになる。
政府は、これらの疑問、懸念について納得のいく説明をすべきだ。
【次期戦闘機選び 議論は尽くされたのか 中国新聞12/15】政府は航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)に、米国主導で国際共同開発中のF35を選定する方針を固めた。来年度予算案に4機分の取得費を計上し、最終的には約40機を調達するという。
F35はレーダーに探知されにくいステルス機能が優れた次世代戦闘機である。「専守防衛」を基本とする日本の防衛に、これほどの性能が必要だろうか。
ステルス機は相手国の領空に入り込む能力が高く、ミサイル攻撃や空中での戦闘を優位に進めることができるとされる。
ところが自衛隊法では、領空侵犯してきた外国機は領空外に退去させるか、着陸させるよう求めている。攻撃については明確な記述はない。ステルスが自衛隊にそぐう装備なのかどうか、法制面も含め議論が深まったとは思えない。
日本としては、米国防総省が強く推奨するF35の導入により、安全保障面での対米重視を明確に打ち出すことはできるだろう。
とはいえ、遅れている米軍普天間飛行場の移設問題にも配慮した上での選定ならば、筋違いというほかない。
中国とロシアもそれぞれステルス機を独自に開発しているとされ、「有事」を想定した選択という面はあるのだろう。
だが韓国では、日本がF35を選ぶことで東アジア一帯での「ステルス競争」が加速するのではないかとの見方が出始めている。日本の安易な導入は隣国を刺激し、緊張をあおりかねない。
しかも日本は今、中国やロシアとの関係が決して良好とはいえない。信頼醸成よりも軍備競争が先行する事態は、かえって地域の平和や安定にマイナスとなる。
F35は最新鋭とあって、同じ機種同士やレーダーとのネットワーク機能にも優れるとされる。米軍側は、自衛隊に配備されることで運用面での連携が高まる相乗効果を期待しているという。
陸上、海上自衛隊はこれまでも米軍主導の作戦への派遣要請に応じてきた。これに戦闘機も加わる可能性が高まりそうだ。
FXの機種選定では、米国製のFA18や欧州製のユーロファイターも候補だった。
だが防衛省の審査は当初から、F35に肩入れしていた印象が拭えない。開発途中だとして実機による飛行審査も省略されたようだ。
価格が高騰する恐れもある。F35を米軍が取得すれば1機約6500万ドル(約50億円)というが、共同開発に参加していない日本向けは、はるかに高額となる。
東日本大震災で財政面でも危機的状況にある中、防衛費だけが聖域とはなるまい。ほかの2機種の方が割安とされるが、具体的な導入費用やその後の維持管理コストも含め、機種選定の詳細な過程はまだ公表されていない。
何よりF35の導入が日本にどんな安全をもたらすのか、国民への説明は省略されたままである。東アジアで無用の緊張が高まらぬよう、時間をかけ議論すべきだ。
【社説】 次期戦闘機 未完成F35で大丈夫か 東京新聞12/16】防衛省は次期戦闘機(FX)をF35とする方針を固めた。米軍でさえ運用していない開発途上の機体を選定する前代未聞の事態となった。未完成の機体を選んで「空の防衛」は大丈夫なのだろうか。
F35は開発が遅れ続け、先月、米政府が米議会に「二〇一八年ごろの開発終了」と正式に報告した。防衛省が納期とする一七年三月にどう考えても間に合わないが、米政府は「間に合う」と請け合っている。米政府が予算編成権を握る議会にうそをつくはずもないので「間に合う」は日本向けのセールストークか単なる意気込みの表明と考えるほかない。
米空軍では使えない未完成の機体でも、日本の航空自衛隊には提供するというのだろうか。その場合、日本は操縦士の安全や防空態勢の弱体化と引き換える形になる。F35の開発に出資したオーストラリア、カナダでさえ導入見送りを検討する中、日本は絶好のお得意さまなのだろう。
来年度予算で購入する最初の四機は米政府が価格や納期に決定権を持つ対外有償軍事援助(FMS)の枠組みで提供される。防衛省に示した価格、納期などの条件が一変するおそれがある方式だが、米国製を選んだ以上、言いなりになってしまいかねない。
一九八〇年代の次期支援戦闘機(FSX)選定では、米国製のF16戦闘機を母体に日米が共同開発すると決まった途端、米国は約束をほごにして心臓部にあたるソフトウエアの開示を拒否した。ちゃぶ台返しは経験済みである。
FMSで納入される四機の価格が高騰したり、納期が遅延すれば、その後、導入される四十機近い機体の価格も上がり、導入時期がずれ込む。F35と交代するF4戦闘機は退役するため、戦闘機が不足する事態も予想される。それさえも織り込み済みというなら、航空機業界でささやかれていたように、FX選定はF35を導入するための「出来レース」だったと批判されても仕方がない。
選定作業の途中でF35の深刻な不具合が伝わり、与野党の防衛族議員から「FXは空中戦に強い欧州製のユーロファイターとし、およそ十年後に予定されるF15戦闘機の後継機選びでF35を候補にする」との二段階論が浮上したが、実現しなかった。
「最新鋭機がほしい」という航空自衛隊のがむしゃらな突っ張りが日本をとんでもない方向に導くおそれが強い。
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