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障害者制度改革の現状と課題 (メモ)

  医療、介護、福祉関係の施策は、頻繁に変更され、複雑化しており、ついていくのか大変な状況にある。また、大きな政策転換などもからまっている。
 障害者分野について、今後、地方議会でとりあげていくために「きょうされん第34回全国大会基調報告」「議会と自治体論文」よりの課題整理のメモ(11/25補筆)。

【障害者制度改革の現状と課題2011】

・日本の障害者数 750万人。うち障害者福祉制度の利用は61万人。
 多くは家族によって支えられている。介護者の64%が母親、うち49%が60歳以上
・雇用。一般雇用(障害者雇用促進法)と福祉的就労に大別されるが
  賃金08年  常用労働者平均27万に対し、一般雇用の身体25.4万、知的11.8万、精神12.9万
         福祉的就労06年 授産施設1.9~1.1万、小規模作業所・支援センター7639円

・07年、政府が障害者権利条約に署名。批准にために関連法の整備がもとめられていた。/09年、障害者「自立」支援法の違憲訴訟と和解、「基本合意」。
→「十分な実態調査せず」「障害者の意見を十分に聞かず」「応益負担の導入」が「悪影響」と「尊厳を傷つけた」と「反省」。
→ その反省を無視し、「改正」法を成立。  

【障害者制度改革の進捗状況】

・自立支援法の「改正騒動」/昨年6月に廃案となった自立支援法の「延命法案」は、昨秋に再上程され、まともな審議がないまま2010年12月3日に成立。

・障害者基本法(以下、基本法)の改正や新法づくりも新たな段階に入っている。
障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)の意見が十分には反映さなかったが、旧法と比べて前進面が少なくなく、最終的には全会一致という形で7月29日に成立。

・自立支援法に代わる障害者総合福祉法(仮称)(以下、総合福祉法)の制定に向けて、推進会議や障がい者制度改革推進会議総合福祉部会(以下、総合福祉部会)において論議が重ねられ、8月30日に法律案の礎となる「骨格提言」が取りまとめられた。

・2013年の障害者差別禁止法(仮称)(以下、差別禁止法)成立を目指して「禁止部会」で本格的な議論に。

・国際ルールである障害者権利条約の水準にどこまで接近できるか、大きな山場。

◆改正障害者基本法の概要と評価  /改正法7月29日成立、8月5日公布
・権利条約の実質的批准に向けた抜本改正とは程遠いが、成立に賛意を表した。論拠(きょうされん)は

①今改正の根幹となる「障害者政策委員会(以下、政策委員会)」の設置。
政策委員会には、全ての国務大臣に勧告する権限。勧告にもとづく大臣の施策の報告義務。政策委員会を早期に機能させることが、障害者施策全般を前進させる原動力。

②総合福祉法案の各条項が、より進歩的な内容となった
 第2条1項では障害者の範囲について「その他の心身の機能の障害」が新たに入り、障害の谷間をなくした。「社会的障壁」の文言どおり、社会モデルの立場を取り入れた。
第3条3項で手話を言語と認めることを明記。
 他にも「防災および防犯」(第26条)や、政治参加について初めて規定した「選挙等における配慮」(第28条)、「司法手続における配慮等」(第29条)が新設されたことも注目に値。

③基本法が今国会で成立しなければ、その後の総合福祉法と差別禁止法にもマイナスの影響が及ぶ。成果を確認し、次のステップへの足がかりにする
・基本法の運用の詳細は政令。政策委員会が人選を含めどのように形作られていくのかなど、引き続き注視し、場合によっては運動課題となることを念頭におく必要がある。

 ★改革の本流でない「改正」法と虐待防止法(議会と自治体)

①今後、財政難を理由に「改正」自立支援法の水準におしとどめた「総合福祉法案」提出の危険性。

②「応益負担」が残る~ 政府は「家計に与える影響その他の事情をしん酌して政令で定める額」として「応能負担」を取り入れたが、「応益負担」の仕組みを残した。応能負担額より、一割負担が低ければ、一割負担を優先させるというもの。/かつての「応能負担」ではほとんど自己負担はゼロ。なぜ残したか。

③障害児施策が大きく変化。 通所支援(市町村)と入所支援(福祉型・医療型/都道府県)に再編。児童ディサービスが、「自立」支援法から児童福祉法に戻る
・学齢期の放課後活動がはじめて法制化/「放課後等デイサービス」

・「保育所等訪問支援」の新設。個別の支援で、申請と支給決定が必要。負担が生じる
自治体毎に実施している保育所の巡回指導とは別物だが、組み替えられ自治体が撤退する危険性 
集団活動が実施している場での個別支援の効果への疑問。
「気になる子ども」の増加に対する対策にはまったく触れられていない。
・ 障害児入所施設にいる18歳以上の入所者は、自立支援法の対象。/また施設は、5年以内に、「児」施設として維持するか、「者」施設に転換するか、併設するかを検討する
→まず実施すべきは、職員の配置・面積基準の改善、施設の小規模化、契約制度・応益負担・日払いの解消

★「骨格提言」では、子ども子育て新システムを前提。障害児分野も契約制度、応益負担が残っている。

④グループホーム、ケアホーム支援、同行援護
・家賃補助 10月分より。本人や配偶者が非課税が条件。1万円補助
・視覚障害者の移動支援(地域生活支援事業)のうち「重度」の場合、個別給付化。
   また、移動支援事業で、「等級」基準から「同行アセスメント票」の基準へ。

⑤相談支援、自立支援協議会
・支給決定の前に、必要と認められる場合、特定相談支援事業者がつくった「サービス等利用計画案」の提出が求められ、これを勘案して決定する仕組み。
・相談支援事業の中核をになう「自立支援協議会」が法制化/ 計画策定にあたり意見を聞く努力義務
   → 2012-16年「第三期障害者福祉計画」にむけ、「自立支援協議会」を位置づけることが大事
・成年後見制度利用支援事業の必須化。 経費について、一定の補助制度新設

⑥虐待防止法
 ・体制整備の国の費用負担の規定がない。
         →専門家配置、市町村障害者虐待防止センター、県障害者権利擁護センターに支援を 
 ・虐待行為の範囲が、養護者、障害者施設、企業と狭い。病院、学校などが対象外、

 ★権利条約にもとづく水準からは不十分だが、前進面も

①目的。「権利保障」の明記が課題だったが、「障害のあるなしかかわらず基本的人権が尊重される」。「共生社会の実現」などが書き込まれた。

②障害者の定義
  「その他の心身の機能の障害」と広く定義。障害は、「障害及び社会的障壁により」日常生活などに制限を受けている状態とし、「社会的障壁」を生活を営む上で障害となるような「社会における事物、制度、慣習、観念その他一切のもの」としたことは前進。
 ただ、明確な「社会モデル」、権利条約の表現からは不十分。

 ・障害者の範囲の「継続的」/村木厚子内閣府政策統括官は「…断続的なもの、周期的なものも含んで、幅広くとらえる…」と答弁

③「可能な限り」規定の削除を /基本法に「可能な限り」の表現があるのは消極的。
・「可能な限り」について、細野担当大臣「…基本的な方向に向けて最大限努力をする…しっかりとその趣旨を踏まえて、今後様々な政策を実現していきたい…」と答弁

④差別と合理的配慮
「合理的配慮」について、権利条約2条と、同じ概念であることがわかる書き方の点で不十分。

⑤教育、労働は、旧法とほとんど変わらぬ条文にとどまる。

⑥前進面/ 言語に手話が含まれた。「防災・防犯」条項の新設など

⑦障害者政策委員会 政策のモニタリング。その「審議会・その他の機関」は、地方にも同様の機関を設置する。当事者の過半数の参加にすべき。 

◆政策に関わっての当面の課題

・改正自立支援法/ 相談支援事業の体制とその支給決定プロセスが変更される(来年4月1日)
2013年8月には総合福祉法が施行。その1年前に大きな変更を行うことについて、厚労省は「あくまでつなぎ法」と説明。
→総合福祉法を「改正自立支援法」の枠に留めない新法にしていくための運動を展開していく必要がある

・障害者基本計画(来年改定) 2013年から10年間の計画。 制度改革に沿った中味づくりを
→ 当事者の参加。「自立支援協議会」など

・小規模作業所 都道府県の補助金制度の存続を
   最低20人という定員要件が制約になっている⇔「地域主権改革」の「根拠」を与えている。

【障害者医療の制度改革問題】
①自立支援法による影響
・精神保健福祉法による通院医療費補助、身体障害者福祉法による更生医療、児童福祉法による育成医療
~成り立ち、目的、対象範囲の違う制度を、「統合」し、一割の応益負担導入する乱暴なもの。
・大きな反対運動で/育成医療の負担上限額、精神通院医療の「重度かつ継続」範囲の大幅拡大など、一定の改善。/しかし、更生医療は、いっさいの改善がされず、現在に至る。
・重度心身障害者医療費助成制度(都道府県実施)の連動した改悪/一部負担増、所得制限、入院時食費負担の対象除外などを先導した。
・自立支援医療は、施行後、一度も実態調査をしていない。

②「骨格提言」における医療の提起
・「障害に伴う医療の自己負担分を公費負担」/更生医療は、「改正」法後も、人工透析、心臓移植後の免疫療法など限られた治療以外の市町村税課税世帯には、負担上限額がなく、1割負担のまま。
・負担軽減の仕組みを「総合的に検討する必要がある」、「難病などの慢性疾患・・・遠方の専門医療機関への通院交通費」も「緊急な対応が必要」/医療費だけでなく、医療へのアクセスの負担の対応を指摘。

③新制度にもとめられるもの
・自立支援医療をどうするか。「骨格提言」では、新法の法体系にも入っておらず、「医療費公費負担制度の総合的な検討に委ねる」とされたが、いつどこで行われるか決まっていない。/低所得者の利用料の無償化」(基本合意)に政府は回答してない。
・自立支援医療の対処拡大、キャリーオーバー疾患、高額の薬など難病や慢性疾患の助成が必要
→ 「社会保障・税の一体改革」では「総合的な検討」が反映されていない。

・積み残した課題の議論の開始/ 障害者制度改革推進会議
・自治体の障害者医療費助成制度 → 国の制度として総合福祉法に組み入れていくことも大事


【小規模作業所問題】

◆ 小規模作業所の実態  ~小規模作業所・地域活動支援センター実態調査結果から~

・厚生労働省 2005年4月 5777カ所→2010年4451カ所(74.7%) 自立支援法事業体系に移行
移行した事業所の54.3%が地域活動支援センター。半数は、不十分ながら国の財政責任を明確化した自立支援給付事業ではなく、財政の不安定な市町村事業に。

・地域活動支援センターの運営実態
①公費が小規模作業所の水準を下回り、低水準な運営実態を継続しただけ。
②利用者負担/小規模作業所及び地域活動支援センターの利用者の8割が障害年金や生活保護を受給。月額平均工賃はともに1万円未満。

→多くの利用者が非課税世帯なのに、利用料や実費負担を課せられたりしている。

*就労継続支援事業B型の月額平均工賃が13,087円(平成21年度実績、厚労省)だがれ、非課税世帯の応益負担上限額がゼロ円になったことと比較すると、大きな矛盾。

・自立支援給付事業に移行できない理由
→最低20人という定員要件が制約(特に地方。現在も1000カ所以上の小規模作業所が移行できず、2011年度をもって都道府県の独自の補助金が打ち切られる予定となっているところでは不安が募っている)
→ 小規模作業所補助金制度の存続を求める要望の提出を

◆総合福祉法と就労支援施策・小規模作業所問題の解消

・骨格提言で示した新たな方向
① 新たな支援体系における就労支援は、「障害者就労センター」「デイアクテビティセンター(作業活動支援部門)」を創設。多様な働き方の試行事業(パイロットスタディ)を実施し施行後3年をめどにこれを検証。  その検証結果を受け、賃金補てんの導入や労働法の適用のあり方について検討。
② デイアクテビティセンターは、作業活動支援、文化・創作活動支援、自立支援(生活訓練・機能訓練)、社会参加支援、居場所機能等の多様な社会参加活動を行う。
③ 障害者雇用促進法の改正あるいはこれに替わる新法を制定し、労働への権利、障害に基づく差別の禁止、職場での合理的配慮の提供を確保することを規定する。
④ 雇用義務対象をあらゆる種類の障害者に広げるとともに法定雇用率を見直し、これを達成する。
⑤ 所得保障制度(障害基礎年金等)との関係を整理しつつ、賃金補てん制度の導入について検討。
⑥ 労働施策と福祉施策を一体的に展開できるよう体制の整備を行う。

★骨格提言の評価と課題

・骨格提言で「労働施策と福祉施策を一体的に展開できるよう体制の整備を行う」と明記された意味は大きい。→その具体化として行政組織の再編、ワンストップの相談窓口の整備等の実現。
・賃金補てん制度の導入を検討。大いに評価できる。
・他にも、政策提言の多くを反映。
→障害者権利条約や日本国憲法等の考え方に立脚した我が国の障害者施策の方向性をまずは明確にした上で、推進への手順や関係予算のあり方を調整していくことが肝要。

◆安定した経営体づくりと骨格提言の行方

・報酬の日額払い、支援費制度時に比べ大幅後退した報酬額、各種加算制度を組み合わせた複雑な報酬体系、常勤換算方式などの強行は、「事業所維持の最優先」という経営主義的思考を濃くし、過酷な労働条件と低务な給料によって、人材流出が続き、利用者支援水準の低下へとつながり、障害のある人たちを真ん中に置いた事業運営を見えにくくさせた。

★総合福祉部会の骨格提言(8/30)  事業報酬と人材確保にも踏み込んだ提言

・基本理念には、「障害者の地域生活の基本的権利保障のために必要なサービスを確保するため、適正な事業報酬と必要な人材確保すべき」。
・報酬は、「支援の質を低下させない、わかりやすい制度にする、利用者に不利益をもたらさない」という基本的方針の下、「減算を防ぐため定員超過を必要としている採算ラインの利用率見直しや、常勤換算方式廃止」が盛り込まれている。
・支払い方式は、施設系支援と在宅支援に分け、施設系報酬を日額払いと月額払いを統合した視点から「利用者個別給付報酬」「事業運営報酬」の大別することや、すべての報酬体系において基本報酬だけで安定経営が図られること。
・実現するために財政規模の増額、公的責任の明確化、利用者負担の増加につながらないことが留意すべきこと。
・人材確保は、「障害者地域生活実現の鍵であること」などが基本視点に述べられ、「誇りと展望を持って支援を継続できるような適切な水準の賃金を支払う必要性」が記された。

→ これらの内容を、総合福祉法案にどうもりこんでいくか。
法案は、個々の事業所運営の死活に関わる問題/ 利用者の支援水準(権利性の水準)/職員の労働条件(労働)などとも深く関わる。

◆手遅れがゆるされない「人づくり」

・事業所運営の鍵となる「人づくり」/ 「職員が長続きしない」「求人を出しても来ない」など、同様の悩み・課題を抱えている事業所が多い。

①自立支援法など強引な制度改変によって導入された不十分な制度の影響
共通点の多い介護分野に目を転じると、2010年度介護労働実態調査(財団法人「介護労働安定センター」:2010年10月1日時点調査)では、介護保険サービス実施事業所の半数以上が「人手不足」と答え、職員の離職率も17.8%に。過半数の介護事業所が「今の介護報酬では人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」。障害分野においても同様の状況にあることは明白。

②30年余の作業所づくり運動の「歴史のつなぎ目」に苦戦している点

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