My Photo

« 若者就労支援 「静岡方式」を読む | Main | 原発輸出すべきでない 現地調査踏まえ「共同声明」 »

地域主権改革に係る一括法 特徴と課題(メモ)

 地方議会対応のため地方自治研究機構・角田論文、自由法曹団見解などから整理・加筆したメモ。

・第1次一括法(2011/4/28)に続き、第2次一括法(8/26) まともな議論もなく可決、成立。
・一括法の内容 /①「義務付け・枠付け」見直し ②県から市町村への権限移譲。
・「従うべき基準」「標準」「参酌すべき基準」に沿って条例案を作成。来年4月からの実施に向け作業中。
①直ちに施行できるもの→ 公布の日(平成23年8月30日)
②政省令等の整備が必要なもの→ 公布の日から起算して3月を経過した日(平成23年11月30日)
③地方自治体の条例や体制整備が必要なもの→ 平成24年4月1日(一部は平成25年4月1日)
【地方六団体・地方主権改革一括法関係】

~地域主権改革に係る一括法 特徴と課題~

【Ⅰ. 義務付け・枠付けの見直し 】

①その意味
・司法権の分権であり、条例制定権の拡大に繋がると述べています。
・条例制定権の拡大は、かつての公害防止対策・運動で成果を上げたように、自治の発展に向けても重要。
・問題は、最低基準の引き下げや要件緩和、人員削減、民営化の促進、国のナショナルミニマム保障における責任と財政負担の縮減が露骨に意図されていること。

②基本的な考え
・憲法25条が保障する生存権など社会権を保障するため、最低基準や業務の質、専門性、安全性、機能等を担保する資格要件、技術的基準などは、国が法令で責任を持って定め、財源的にも担保すること。
同時に各自治体が地域の特性や置かれている状況を踏まえて、条例で上乗せ、横だしなど改善、充実の措置が講じられるようにすること

◆その概要 /括弧内は条例の制定主体。

・政府例示
(1)施設・公物設置管理の基準   
・公園等のバリアフリー化構造基準の条例委任
(2)協議、同意、許可・認可・承認
・地方債の発行に係る総務大臣・知事協議の一部見直し
・福祉事務所設置の知事同意協議の同意を廃止
・計量法の立入検査に係る県・市町村の協議を廃止
(3)計画等の策定及びその手続
・構造改革特別区域計画の内容の例示化等
・山村振興計画の策定義務の廃止
○自治体の国等への寄附に係る関与の廃止等


①児童福祉施設の設備及び運営基準 

・保育所の一部地域の面積基準(標準)(県、指定都市、中核市)、
→待機児対策と称して、東京など一部地域の面積基準は「標準」とし、自治体が条例で国の基準以下に定めることを許容。これを受けて厚生労働省は9月2日に一部地域に関する省令を公布。の要件は、待機児童が多く(100人以上)、地価が高い地域(住宅地の公示価格の平均額が3大都市圏を上回る)
 そもそも現行の最低基準は1948年に制定され、その水準は戦後の混乱期ということもあり、諸外国に比べて極めて低く、厚生大臣には省令で基準向上の義務が課されているが、1度も改善されず。引き上げこそ切実な課題でり、時限付き(3年間)であっても、基準引き下げを認めるのは本末転倒。
 (例)0歳児1人当たりの保育室面積基準 
   日本3,3㎡、パリ5,5㎡、ストックホルム7,5㎡
  職員配置基準 3歳児の場合の保育士と児童数の割合
   日本 1:20、フランス 1:8、アメリカ 1:7 、ニュージランド 1:6

・保育所の屋外遊戯場面積などその他の設備・運営基準(*)(参酌すべき基準) (県、指定都市、児童相談所設置市、中核市(一部)) 
~ 「その他の設備・運営基準」とは、「従うべき基準」「標準」とされた「配置従業者・員数、居室面積、児童の適切利用・処遇、安全確保、秘密保持」などを除くもの。
 
「従うべき基準」
・乳児室又はほふく室、保育室又は遊戯室及び調理室の設置
・居室(乳児室・ほふく室・保育室・遊戯室)の面積基準
・自園調理による食事の提供(外部搬入の際の必要な調理設備)
・必要な職員(保育士、嘱託医及び調理員)の配置基準
・保育内容(保育指針)

「参酌すべき基準」
・必要な用具の備え付け ・屋外遊戯場の設置及び面積基準
・医務室及び便所の設置 ・保育室等を2階以上に設ける場合の、耐火上・階段の基準
・保育時間 ・保護者との連絡
・認定こども園の私立認定保育所の入所の選考
・保育料以外の利用料

 ★子ども関係予算の包括交付金化/ 交付基準が、児童数や保育需要(待機児童数)によるため少子化、過疎化が進む地方で財政難となる危険がある。

②児童自立支援施設の職員規定(施行令)廃止に伴う措置~外部委託化方針(各県など)

・厚生労働省の研究会報告(2006年)は、①同施設には家庭裁判所の保護処分により入所してくる子どもや自傷・他害を伴う行動障害を有する子どもなども入所しており、安定した集団生活を維持・確保するためには極めて高い専門性が要求される、②非行少年に対する公の責任の観点、施設運営の安定性・継続性の観点、退所後のケア、学校教育の円滑な導入、他の福祉施策や関係機関との連携などの観点から、地方公共団体の公設公営原則を堅持することが必要であると指摘。都道府県1箇所しかない公的施設であり、直営が当然。
・知事会が職員規定によって「委託できない」との要望し削除に。

③養護及び特別養護老人ホームの設備・運営基準

・職員及びその員数、居室の床面積、運営関連事項であって入所老人の適切処遇・安全確保・秘密保持に密接に関連するものは「従わねばならない基準」、「その他の事項については」は「参酌」。
・養護老人ホームの入所定員(標準)
・特別養護老人ホームの居室(入所)定員、その他の設備・運営基準(参酌すべき基準)(県と指定都市、中核市)
→ 特養ホームの定員の弾力化/、待機者対応と、将来の市場化にむけた規制の撤廃/「その他の事項」として多くの項目が「参酌」基準化され劣悪化した施設に、入居定員の規制撤廃により多くの利用者が入居し、しかもその後の施設の廃止・休止・入所定員の減少が都道府県の規制から外れることは、利用者の地位を不安定なものとし、介護トラブルや介護事故を激増させるおそれがある/ 県の責任放棄をもたらす恐れ

④介護福祉サービス事業の設備・運営基準

・基準該当居宅サービス、基準該当予防サービス、指定居宅サービス、指定介護老人福祉施設、指定介護療養型医療施設、指定介護予防サービス(都道府県)
・指定地域密着型サービス、老人介護保険施設、指定地域密着型介護予防サービス(市町村)。
・職員数、施設ないしサービス事業に係る居室の床面積、利用者の適切処遇・安全確保・秘密保持は「従う」。
・各種サービス事業の 利用定員(標準)
・その他の設備・運営基準(参酌すべき基準) (県と市町村)
→ 入所定員を「標準」基準化して緩和。都道府県が利用者の動静・ニーズを把握して介護保険事業を支援する責任から免れさせ、「市町村任せ」とすることを意味する。

★財政的には、地方向け補助金21 兆円のうち介護保険は2 兆円。一括交付金化による削減の危険性。

⑤障害福祉サービス、障害者支援施設の設備・運営基準

・居室の面積、利用者及びその家族に対する人権侵害の防止(従うべき基準)、利用者数定(標準)・その他の設備及び運営に関する基準に係る規定(参酌基準)(指定都市、中核市)
→ 劣悪な環境への批判をうけ、厚労省は、入所施設の設置基準として、居室定員を4 人以下と定め、さらに1 人部屋や2人部屋を推奨し、施設運営者に対する指導をしてきた。/「標準」に緩和。

★「三位一体改革」で導入された「統合補助金」(分野ごとの大括りな交付金)による自治体格差/障がい者の分野では自立支援法の地域生活支援事業がその対象/移動支援の1人あたりの事業費~大阪府 約445,000 円、秋田県 約358,000 円、富山県 250,000 円

★計画策定への当事者参加が「努力義務」に後退

 「都道府県・市町村障がい者計画の策定」(障害者基本法)、「市町村障がい福祉計画の策定」(障がい者自立支援法)、「公務部門における障がい者の採用に関する計画の策定」(障がい者雇用促進法)、「移動等円滑化基本構想の内容、高齢者・障がい者等、その他利害関係者の意見反映」(バリアフリー新法)などの計画作成への当事者の参加が「廃止または意見聴取の努力義務・配慮義務化が望ましい」ものとして各自治体の判断に委ねられる。
 ~ 「地域福祉計画」「母子家庭及び寡婦自立促進計画」なども同様。

⑥医療計画、施設

1 医療計画の一部が「努力目標」に格下げ

 医療法30条の4では、都道府県は,「イ 救急医療、ロ 災害時における医療、ハ へき地の医療、ニ 周産期医療、ホ 小児医療(小児救急医療を含む。)」「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保に関する事項」「医療の安全の確保に関する事項」「基準病床数」などの「医療計画」を定めるとされているが、そのうち、「地域医療支援病院の整備の目標その他医療機能を考慮した医療提供施設の整備の目的に関する事項」や「その他医療提供体制の確保に関し必要な事項」については、「定めるよう努める」と,努力目標に格下げされている。
 地域医療支援病院とは,「患者に身近な地域で医療が提供されることが望ましいという観点から、紹介患者に対する医療提供、医療機器等の共同利用の実施等を通じて、第一線の地域医療を担うかかりつけ医、かかりつけ歯科医等を支援する能力を備え、地域医療の確保を図る病院として相応しい構造設備等を有するものについて、都道府県知事が個別に承認している」ものである(厚生労働省第6 回医療施設体系のあり方に関
する検討会資料2 より)。
 地域医療支援病院の整備の目的等を努力目標に過ぎないとすれば,都道府県が医療計画を策定するに際して,地域住民のためにいかなる施設が必要であるかという視点を抜きにして,国際的に競争力のある医療ビジネスを実現することばかりを重視した医療計画を立てることも可能となりうる。

2.人員配置や施設の基準

ア 人員配置について
・ 病院の従業員に関する基準のうち,「診療放射線技師,理学療法士及び作業療法士の資格並びにその配置する員数にかかる規定,事務員その他の従業員の員数に関する基準に係る規定については「参酌すべき基準」とされている。

・病床を有する診療所の従業員については、医師以外の看護師、准看護師、看護補助者の員数は、「従うべき基準」とし、「事務員その他の従業員の員数に関する基準に係る規定は「参酌すべき基準」とするとされている。

イ 施設について
・病院の施設について
「そのた厚生労働省令の定める施設」(21 条1 項12 号)として、消毒施設,洗濯施設,談話室,浴室,食堂などが定められていたが、条例に委任され、条例の基準については,「参酌すべき基準」としている。

・療養病床を有する診療所の施設について
厚生労働省令で定める施設(21 条2 項)として、省令では,談話室,食堂,浴室などが定められていたが、条例に委任するとされ,条例制定の基準については,「参酌すべき基準」とされている。

⑦公共職業能力開発施設の実施基準
・訓練生の数(標準) 教科・訓練時間・設備、無料の訓練対象者、高度職業訓練の指導員資格(参酌すべき基準)(県、市町村)

 職業訓練校以外の施設でおこなえる職業訓練について都道府県が厚生労働省令を参酌して条例で定めることができる。都道府県による職業訓練を民間委託する際の基準(委託可能範囲、必要訓練時間数等)を「参酌」
基準に緩和させているが、これにより受け皿となるべき良質な外部機関がないにもかかわらず安易な民間委託がおこなわれるおそれがある。

・「地域主権戦略大綱」は、都道府県労働局(労働基準監督署及び公共職業安定所を含む)も原則廃止の方向であり、廃止されれば、監督機能が地方によってどの程度働くのかにより、労働保護法による規制の程度に地域間格差が生まれるおそれがある。職業安定の機能が地方に移管されれば、勤労権の保障(憲法27条1項)を担う職業安定所の機能にも地方ごとの格差が生まれるおそれがある。
 すでに人員削減により労働行政に支障が出ている。地方移管されれば、地方の財政事情により、さらに人員が削減され、労働関係法の遵守の監督機能が低下することになる。

⑧食品衛生検査施設 (県、指定都 市、中核市、保健所設置市、特別区)
・食品衛生検査施設の設備(従うべき基準)及び職員配置(参酌基準)に関する基準を条例委任

⑨公営住宅の整備基準、入居すべき低額所得者の収入基準(参酌すべき基準)(県、市町村)

・整備基準について、「国土交通省令で定める基準を参酌して事業主体が条例で定めるものとする」(公営住宅法5条)に改定。条例によって国の基準の切り下げを可能となる。また、公営住宅の計画的な整備を定める公営住宅法6 条の廃止。

 整備基準の条例委託により、修繕,改修はさらにおろそかになる可能性がある。「国土交通省令で定める整備基準」(最終改正2009 年3 月)は「公営住宅の1戸の床面積は19 ㎡以上」,浴室などの設備やバリアフリー化・耐震化対策も定められている、この基準以下の旧宅においては、修繕や建て替えが必要であるが,自治体によっては「財政難」を理由に先延ばしされている公営住宅が少なくない。参酌基準となれば、現状追認となる危険、居住の権利、安心して住む権利(居住権)を脅かすものとなる。

・入居収入基準に関しても条例委任する(同法32 条)。公営住宅法23 条2 号(改正後1 号)で「入居者の心身の状況又は世帯構成、区域内の住宅事情その他の事情を勘案し、特に居住の安定を図る必要がある場合」にあたる者の対象範囲を条例に委任し,その場合の入居収入基準を条例に委任する他,「低額所得者の居住の安定を図るため」,条例によって「政令で定める金額を参酌し」て,「政令で定める金額以下」の入居収入基準を定めることを認めている(一括法案32 条)。
 公営住宅の入居収入基準は、2010 年の政令改定で、所得月額20 万円以下から15 万8 千円以下へと引き下げられたが、然として公営住宅への入居は狭き門となっている。収入基準がさらに引き下げられ門前払いがすすむことにより、公営住宅への入居範囲を狭くし、入居者の居住の権利が脅かされる可能性が出てくる。さらに,入居収入基準が引き下げられ,退去を迫られるおそれもある。
 また、世帯層の偏在を防ぐとして、基準を高くすれば、住居困難者の入所がますます限定させる。

⑩準用河川の技術的基準、都道府県道・市町村道の技術的基準(一 部)(参酌すべき基準)(県、市町村)

【河川】
・準用河川構造物の技術水準の低下
 現在、準用河川(一級河川及び二級河川以外の河川で市町村長が指定したもの)における河川管理施設、ダム、堤防その他の主要なものの構造について、河川管理上必要とされる技術的基準は政令で定められている(河川法100 条・13 条2 項)。準用河川」といっても、本流が一級河川や二級河川である場合も多い。
「政令を参酌すべき基準」となっても、技術的基準が従前よりも高められるとは期待できず、むしろ市町村の財政的制約、技術的制約によって、水準低下を招くおそれが多分にある。

・なお(1)一般国道の直轄区間のうち、一の都道府県内で完結するものについては原則移管すること、(2)一級河川の直轄区間のうち一の都道府県内で完結する水系に属するものについては原則移管することが基本とされ、円滑かつ速やかな実施のための仕組みを地域主権戦略会議の下に設ける。

【道路】
 都道府県道及び市町村道の設計車両、建築限界、橋・高架の道路等の設計荷重以外の技術的基準について、道路構造令を「参酌すべき基準」として、条例へ委任される。
 道路構造令は、道路の安全性・円滑性を確保する観点から、最低限確保すべき一般的技術的基準を定めたものであるが、条例に委任すれば、地方自治体の財政的制約によってこれを下回る基準が定められ、道路の安全が崩壊するおそれがある。

⑪公共下水道の技術的基準、終末処理場・都市下水路の維持管理 基準(参酌すべき基準)(県、市町村)

 河川、道路と同じような問題点が発生すると想定される。

⑫公民館、図書館、博物館の運営審議会・協議会の委員委嘱・任命基準(参酌すべき基準)(県、市町村)

 「学校教育及び社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者並びに学識経験のある者」などの要件が廃止され、「任命の基準、定数及び任期」は条例による。

⑬へき地学校の指定、へき地手当等の基準(参酌すべき基準)(県)

・文科省令で定める基準に「従い」条例で定めていたへき地学校の指定やへき地手当の基準について、「参酌」に緩和。
 へき地教育振興法は、へき地学校の人材確保のための教職員への手当支給、子どもの遠距離通学のための費用(スクールバス等)の補助、保健管理費の補助など、へき地における教育の機会均等を支える補助金が国から支給されているが、各地方の財政状況により、へき地の級地指定や手当の引き下げのおそれがある。

・幼稚園の設置配置が届出制に
 市町村立幼稚園の設置廃止等に必要とされる都道府県教育委員会の「認可」を、事前「届出制」に。市町村長の意思や財政状況によって幼稚園の廃園や民営化がさらに進行するおそれがある。

★義務教育費の一括交付金化問題
 「地域主権大綱」では、義務教育関係の「全国画一的な保険・現金給付」については一括交付金化の対象外とされているが、どのような費用がこれに含まれるのか明かでなく、しかも、一括交付金化の対象外とされる補助金も「できる限り使途の拡大」に努めるとされ、「サービス給付」や「投資」に整理される補助金にいたっては一括交付金化の方向とされる。自治体の財政力により、義務教育の教育水準に格差が生じ、国の義務である教育の機会均等すら維持できなくなる

⑭公立高等学校生徒収用定員の基準廃止

 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(5条)で「本校にあつては240人、分校にあつては政令で定める数を下らないものとする」としていたものを廃止。自治体の財政状況によっては、収用定員を増やし、学校の統廃合を進めるなどの事態が懸念される。定時制高校の統廃合が進み、多様な学びの場を求める若者を、学校教育から排除することになりかねない。

⑮保護施設の設備及び運営に関する基準、社会福祉施設 〃(県、指定市、中核市)

 医師等の職員の資格に関する基準に係る規定、配置する職員の員数に関する基準に係る規定、居室の面積に関する基準に係る規定並びに施設の利用者及びその家族に対する人権侵害の防止等に係る規定は「従うべき基準」・施設の利用者の数に関する基準に係る規定(標準)・その他の設備及び運営に関する基準に係る規定(参酌基準))を条例委任

⑯都市公園(県、市)

 配置及び規模に関する技術的基準、公園施設の建築面積割合に関する基準を条例委任(参酌基準)

【Ⅱ.都道府県から市町村への権限移譲】

・第2次一括法に盛り込まれ、まともな議論もなく成立。多くは2012年4月から施行。
・第1次地方分権改革により創設された「都道府県事務処理特例条例」により、市町村への権限移譲が行われてきた実績を評価し、「これを普遍化」するとして、市町村に一括で法定移譲。
・「特例条例」で移譲されている事務は、都道府県全体で1859件(2008年4月現在)。
→ 県は地方財政法で事務執行に要する経費(移譲事務交付金)を措置しなければならない。が、今回の一括法は法定移譲であり、経費は市町村の負担となる。財源確保が課題である。

 例
・未熟児の訪問指導  (保健所設置市まで→市町村まで)
・区域区分、都市再開発方針等に係る都市計画決定 (都道府県→指定都市)
・家庭用品販売業者への立入検査(都道府県→市)
・騒音、振動、悪臭に係る規制地域の指定(特例市まで→市まで)
・理・美容所などの衛生措置基準の設定(都道府県→保健所設置市)
・障害者相談活動(都道府県 → 市町村)

◆課題
①実際には多くの事務が事務処理特例で既に市町村に移譲されている。その実態を検証する。

②移譲対象事務の性格、内容、市町村の対応能力、財源、実施体制などを勘案し、移譲後の実施に支障がないようとりわけ県に対し積極的な対応を行わせる。

③フォローアップを行い、本来、どこがになうことが、住民の暮らし、福祉の向上、自治の発展に繋がるか検証し、改善させる。

◆権限移譲の“先進県”と言われる広島県での検証

【県の評価】
<移譲を受けた市町からみたメリット>
①申請から許認可までの処理時間の短縮、事務の簡素化による申 請者の負担軽減、既存の市町事務との一体的処理が図られた。
②事務処理のノウハウが市町に蓄積され、地域の実情を反映した きめ細かい事務処理が可能になった。
③窓口が身近になり、対応の迅速化が図られた。

 <移譲を受けた市町が挙げている課題>
①担当者の経験・習熟不足がある。
②専門職員の確保が難しいなど。

【市町村側の受けとめ】
・101件を受け入れ。『率直にフォローした』ところ、約2割の事業で住民サービスが向上。一方、約1割の事業でサービスが低下した」(三原市の五藤市長 09年10月県議会/自治日報・2009年10月30日)。

<住民サービスが向上した分野>
①認定期間の短縮 ~身体障害者手帳交付は60日間が15日間に、鳥獣捕獲等許可は5 日間が2日間に短縮
②迅速化と情報収集の充実~未熟児訪問指導など
③地元と一体的な経済振興
④業者の監視体制の強化~日本農林規格(JAS)法に係る立ち入り検査、宅地造成など開発行為の許可など
⑤利便性の向上~パスポート交付

 <住民サービスが低下した分野>
①県道の維持・修繕~予算の関係などもあり除草回数が減った。
②習熟度・人手不足~旅館・公衆浴場・理容院の申請受理や立ち 入り、障害福祉サービス事業者の指定受付や立ち入り、被爆者 の健診や指導、広告物の表示・設置調査など。

【考察】

①法的な問題も含めて県からの事務移譲になじまないものがかなり存在する、その的確な分類が必要になる、②サービスが向上した事業は、処理期間の短縮、迅速性、利便性など事務処理に係るもの、地元との一体的な運用などが期待できる分野に多い、
③サービスが低下した事業は、予算、職員の確保、習熟度(技術的な蓄積)などが求められる分野。
→周辺自治体との連携、共同対応、県からの人材派遣や技術的な支援、県が直接担った方がいいなど、実態を踏まえた検証が必要。

◆都市計画決定やまちづくり
・国土交通省関連の権限の多くが県から市に移譲。今回の権限移譲の重点。

①区域区分、都市再開発方針等に関する都市計画決定(指定都市へ)
②緑地保全地域・市街地開発事業などに係る都市計画決定(市町村へ)
③都市計画施設区域内や市街地再開発促進区域内等の建築許可、住宅街区整備事業施行地区内等の建築行為等の許可(市まで)など

・「都市計画決定やまちづくりなどの権限は住民に近い自治体に移すべき」というのが基本だが、真にまちづくり権を全うできるシステムになっているか、総合的な対応が必要。
→ 権限移譲、単に同意・協議という介入手法をやめるだけでは、国の責任放棄にしかならない
→ 規制緩和と乱発要求、癒着や不正の懸念などがあり、実効ある住民参加、必要な規制の確立が不可欠。

◆今後の取り組みの課題では

①影響について調査、分析を早急に行い、課題の克服、方策を確立する。
②財政問題の確保。
③事務事業の執行体制。人員増、専門的な対応。
④県のフォローアップ、支援。
⑤保健所や児童相談所の設置市の見直し(拡大)、共同設置も検討課題。
⑥民間委託に歯止めをかける問題。
⑦地域主権の取り組みは両刃の剣、最低基準の引き下げや要件緩和、行政の民間化、国の責任と財政負担の縮減などが明確に意図されている。/ 活用如何では住民の暮らし、福祉、地域経済、自治の発展に繋げていくことができる。~ 運動、力量が求められている。

★教育 / 都道府県から中核市への権限移譲の検討

 「地域主権大綱」で、「広域での人事調整の仕組みにも配慮した上で、都道府県から中核市に権限を移譲する方向で検討を行い、小規模市町村を含めた関係者の理解を得て、平成23年度以降、結論が得られたものから順次実施するもの」として、市町村立学校職員の給与等の負担、教職員定数の決定、県費負担教職員の任命権、学級編成基準の決定が掲げられている。
 中核市の権限強化の方向が示されているが、教員給与等の財政的な負担が増す上に、教職員定数や学級編成基準の決定権が移譲されれば、財政負担に耐えられない自治体は教員定数や学級数を減らしてしまうおそれがや、その負担を軽減するため「非正規教員」をさらに増やす自治体がでることは明らかである。
また、県費負担教職員の任命権の移譲により、都道府県内で人材の偏在を招き、一定水準の人材を確保することが難しくなる。

【Ⅲ 国の出先機関の原則廃止】

1.地方整備局
◆ 河川の管理維持の崩壊

・河川のうち、国の直轄管理区間は、総延長の約7%だが、想定氾濫区域内人口約4700 万人(約41%)、想定氾濫区域内資産約888 兆円(国土交通省)であり、一定の水準で管理をしてきた。
地方整備局は、洪水時、上流地域と下流地域との利害の対立にとらわれることなく、適切に洪水調整施設を操作することで被害を最小限に食い止め、また、渇水時の水利用調整においても、対立する都道府県間の利害を公平・中立な立場で調整し、もって、国民の生命、財産を守ってきたと言える(国土交通省「地方整備局の見直しに当たっての基本的な考え方」参照)。

・地方移管となれば、利害対立が生じる場面において、適切な措置をとれずに国民の生命・財産を害するおそれが大きい。

・近年、集中豪雨、ゲリラ豪雨が増大しており、より高い水準での河川管理が必要だが、治水予算は減り続け、災害予防対策への投資も減少している。地方移管されれば、地方の財政状況等による管理水準のばらつき、財源不足・維持費の削減により管理水準はさらに低下

・すでに、河川の維持費は削除されており、例えば、堤防除草予算が削減されている。河川管理の権限・事務が地方へ移譲されることによって、維持費が一層削減され、堤防の維持が十分になされなくなれば、洪水等で決壊するおそれさえありうる。
による予防対策の一層の遅れ、河川管理水準の一層の低下が危惧される。

◆ 道路の維持管理の崩壊

・災害復旧
 東日本大震災では、全国各地の整備局からの支援態勢で、短期間で主要道路を復旧し、被災地の救援、復旧で大きな役割を果たした。全国一律の基準で運営しているからこそ可能な成果である。

・橋梁の安全性
 国道は、地方整備局が管理しており、日常的な巡視によって日々橋梁の劣化の点検が実施されているが、都道府県やとりわけ市町村が管理する橋梁は、「技術力がない」、「財政的に困難」、「土木技術者数不足」等の理由でこのような点検が行われていない。 市区町村では過去5 年以内に1 度も点検を実施していない橋梁が88%もあり、上記通行止め及び通行規制がなされている橋梁の87%は、市区町村管理のものである(国土
交通省全建設労働組合調べ)。
地方整備局を廃止し、橋梁の維持・管理を地方自治体へ移管すれば、国道の橋梁についても十分な点検、維持、管理がなされなくなり、全国で崩落事故がおこるおそれさえある。

◆ 防災機能に不可欠である港湾・空港の整備

 港湾は、国民生活や産業活動をささえる重要な物流や生産基盤であると同時に、背後に多くの人口や工場を控えており、防潮堤などを設けて津波や高潮から人命、財産を守り、経済活動を支えている。
大規模地震が切迫するなか、地域の防災力と海上・航空輸送ネットワークの構築は防災機能として欠かせない。地方移管は、切迫している大規模地震等に対して、防災・復興を第一線でになう港の整備は国の責任で行うべきである。

2. 労働局
◆ 憲法が求める勤労権の保障と国の出先機関の役割

 労働基準法による労働基準監督官の権限は、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」(労働基準法1 条1 項)労働条件の最低基準を事業者に遵守させるために、地方の実情にかかわらず全国同一でなければならない。憲法27 条2 項は勤労条件の基準を法律で制定することを定めており、国が法律により基準を設定するだけでなく、法律の適用場面でも国の事務とすることが憲法上の要請である。勤労条件の基準を法律で定めても、その適用が地域 ごとに異なることになれば、憲法14条の平等原則にも反する。
公共職業安定所における無料職業紹介事業も、労働者の職業選択の自由や勤労の権利を保障するために実施されているものであり、地域によって格差がもうけられてはならない。

・ILO条約にも抵触
日本も批准している国際労働機関(ILO)の「工業及び商業における労働監督に関する条約」(第81 号条約)は、第1 条において、加盟国に労働監督制度の保持を義務づけ、第4 条において、「労働監督は、加盟国の行政上の慣行と両立しうる限り、中央機関の監督及び管理の下に置かなければならない」として、国の機関が労働監督を実施することを義務づけている。にもかかわらず労働監督機関たる都道府県労働局や労働基準監督署を地方移管することは同条約にも違反する。
「職業安定組織の構成に関する条約」(第88 号条約)は、第1 条において、加盟国に無料の公共職業安定組織の維持を義務づけ、第2 条において、「職業安定組織は、国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される」として、国の機関が無料職業紹介を実施することを義務づけている。にもかかわらず国の出先機関である公共職業安定所を廃止することは、同条約に違反する。

« 若者就労支援 「静岡方式」を読む | Main | 原発輸出すべきでない 現地調査踏まえ「共同声明」 »

備忘録」カテゴリの記事

地方自治」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/93067/53298529

Listed below are links to weblogs that reference 地域主権改革に係る一括法 特徴と課題(メモ):

« 若者就労支援 「静岡方式」を読む | Main | 原発輸出すべきでない 現地調査踏まえ「共同声明」 »

June 2017
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ