「政策仕分け」~貧困拡大に「提言」
「提言型政策仕分け」に生活保護が議論されたが、貧困拡大こそ問題であるのに、とにかく「減らせ」の人権無視、憲法無視の暴論が続出した模様。政治家は、まず政党助成金を返上したらどうか。
さて、湯浅誠氏などが、レセプト強化や低家賃住宅などの「不正受給(全体の0.3%)対策の強化」策、「第二のセーフティネット」整備、地方での自立にかかせない「自動車保有要件の緩和」、公的な特別就労事業など「雇用創設」と現実的な提言をしている。
【 「提言型政策仕分け」開催にあたり 私たちも「提言」します! 11/18】
【政策仕分け 生活保護切り捨て迫る 「医療機関・住む場所制限しろ」赤旗11/24】
【 「提言型政策仕分け」開催にあたり 私たちも「提言」します! 11/18】***************
政府の行政刷新会議は11月20日~23日に初めて実施される「提言型政策仕分け」で生活保護などの社会保障分野が取り上げることを決めました。
「提言型政策仕分け」は、「無駄や非効率の根絶といったこれまでの視点にとどまらず、主要な歳出分野を対象として、政策的・制度的な問題にまで掘り下げた検討を行い、改革を進めるに当たっての検討の視点や方向性を整理」するものとされています。
私たちは、これまで社会保障分野に関する政府関連の審議会・検討会に参加してきた者として、「提言型政策仕分け」における議論が「とにかく予算を削ればいい」といった拙速なものになるのではなく、従来からの議論を踏まえた上で社会保障政策の改善に結びつくことを望んでいます。
「仕分け」の目的は「よりよい政策の実現」を目指すことにあると信じるからです。
その上で、十分に「市民目線」が生かされるよう、私たちからも生活保護制度に関する提言をさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。1)不正受給対策の強化
今般、生活保護医療費の不正受給が課題になっていると報道されています。不必要な往診等があれば、それで利潤を得るのは医療機関ですから、厳正なレセプトチェックが必要になります。
現在、レセプトチェックは非常勤の嘱託職員などに委ねている自治体がありますが、レセプトの複雑さ・専門性を考えると、より長期的に関わる職員が必要だと考えます。また、悪質な「貧困ビジネス」は生活保護受給者を囲い込んで保護費を取り上げるばかりでなく、不必要な介護サービスを受けさせることで不当な利潤を上げています。
背景には、行き場のない入居者の施設管理者に対する立場の弱さがあります。
施設と結託して不当な要介護度をつけたケア・マネージャーに対する罰則を強化するとともに、生活保護費の住宅扶助相当額で入居可能な高齢者向け低家賃住宅が増えれば、大幅に改善するでしょう。
会計検査院から不必要な長期入院に国費分だけで計約4億2千万円の生活保護費が使われているという指摘があった問題についても、居宅移行支援の拡充により解消できるはずです。2)第二のセーフティネットの整備
しかし、全体の予算額の0.3%しかない不正受給をいくらいじっても現下の課題は解決しません。
「最後のセーフティネット」である生活保護制度が「最初のセーフティネット」にならないためには、生活保護の手前にセーフティネットを張る必要があります。
昨年、非正規労働者の雇用保険加入要件が緩和され、現在、健康保険・厚生年金の加入要件が緩和されようとしていることを歓迎します。
加えて、求職者支援制度が恒久法化されました。これと、現在行われている住宅手当の併用が可能になれば、多くの地域で生活保護水準以上の収入を得ることが可能になります。寄添い型支援が付随すれば、さらに効果は高まるでしょう。
第二のセーフティネットの整備を急ぐ必要があります。3)自動車保有の要件緩和
地方の公共交通の衰退は著しく、就労を含めた日々の活動に乗用車は欠かせないものになっています。
にもかかわらず、ほとんどの地域で乗用車は借用すら認められておらず、生活保護受給者の自立を著しく妨げています。
シングルマザーが生活保護利用を躊躇する要因にもなっています。
資産価値の低い乗用車については原則として保有を認めるなどの要件緩和があれば、子どもを保育園に送って出勤するといったことが可能になり、就職の可能性が高まります。4)雇用創出
もっとも重要なことは雇用創出です。
1950年代に生活保護受給者の6割近くを占めた「その他世帯」が生活保護から抜けられたのは、高度経済成長による勤労所得の大幅な向上でした。勤労所得が上がれば、自然と生活保護受給者は減ります。
民間企業に要請することには限界があります。低所得者向け特別就労事業の拡充などが求められています。また、生活保護の自立支援給付を制度化すれば、地域の受け皿として健全なソーシャルビジネスが育ち、受給者と地域の活性化に貢献するでしょう。2011年11月18日
赤石千衣子(税と社会保障一体改革集中検討会議一般委員)
雨宮処凛(厚労省ナショナル・ミニマム研究会委員)
有吉晶子(社会保障と税一体改革集中検討会議一般委員)
稲葉剛(厚労省生活保護受給者の社会的な居場所づくりと新しい公共に関する研究会委員)
小川泰子(税と社会保障一体改革集中検討会議一般委員)
布川日佐史(厚労省社会保障審議会福祉部会・生活保護制度の在り方に関する専門委員会委員)
藤井智(厚労省生活保護受給者の社会的な居場所づくりと新しい公共に関する研究会委員)
湯浅誠(社会保障と税一体改革集中検討会議一般委員、厚労省ナショナル・ミニマム研究会委員)
【政策仕分け 生活保護切り捨て迫る 「医療機関・住む場所制限しろ」赤旗11/24】政府の行政刷新会議の「政策仕分け」は最終日の23日、生活保護の受給者の急増によって保護費が膨らんでいるとして、いかに削減するかを議論しました。
仕分け人からは、「生活保護受給者は自立した個人といえないのに、医者を自由に選んでいいのか」「住む場所も、好き勝手にやらせているから問題が起きる」「家計管理能力が低いので保護費をアルコールやたばこ、不要不急のものに使いがち。そういった支出の分、保護費を減らせる」などの意見が続出。生活保護受給者について▽受診できる医療機関を制限する▽医療機関において価格の安い後発医薬品の使用を義務付ける▽住む場所を制限する▽最低賃金の適用を除外する―など、受給者の人権を侵害し、偏見を助長し、法の下の平等に反する施策を迫る暴論が相次ぎました。
医療費の増大が保護費急増の要因になっているとして、医療費削減の方策を議論。「医療費の抑制に一番いいのは自己負担を増やすことだ」との意見が出され、現行は無料で受けられる医療に自己負担を導入するなど、「あらゆる方策」で医療費を抑制するよう求めました。
また、最低賃金や年金水準の低さを問うことなく、「生活保護費が年金や最低賃金より高い場合があり、就労意欲を阻害している」などとして、生活保護支給額の引き下げを強く示唆する提言をまとめました。
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