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「派遣法」 使い捨て温存、骨抜き修正

  格差と貧困を拡大した労働法制の改悪、その中でも「使い捨て」を加速させた労働者派遣法が急きょ修正可決されようとしている。
 製造業務派遣と登録型派遣を「原則禁止」する項目の削除、違法派遣があった場合労働者に派遣先企業が直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定の3年先送り―――中日新聞社説は「修正内容には驚くばかりだ。これでは現行案が目指す派遣労働者の処遇改善は到底困難だ。」「労働者保護の原点に立ち戻るべきだ。」と指摘する。「骨抜き修正」という見出しが「赤旗」と同じ。
 【派遣法改正案 骨抜き修正は禍根残す 中日新聞11/19】
【派遣法骨抜き修正 これでは労働者は救われない 赤旗・主張11/19】
【労働者派遣法を派遣労働者保護法へ早期抜本改正することを求める要請書 自由法曹団11/16】

【派遣法改正案 骨抜き修正は禍根残す 中日新聞11/19】

 懸案だった労働者派遣法改正案が大幅に修正され今国会で成立する可能性が強まった。社会問題化した“派遣切り”再現を防ぐ規制策が骨抜きになりかねない。労働者保護の原点に立ち戻るべきだ。
 二年前の政権交代を機に民主、社民、国民新三党の合意でまとまった労働者派遣法改正案は、ねじれ国会の影響でずっと継続審議となっていた。民主党はこのほど自民、公明両党と改正案の修正で合意した。
 主な修正内容は、現行改正案で原則禁止とした「登録型派遣」と「製造業派遣」の規定を削除するほか、偽装請負など違法派遣があった場合、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用制度」の導入を、三年後に延期するとしている。
 また短期(日雇い)派遣の禁止では、期間を二カ月以内から一カ月以内に緩和する。
 一方、派遣会社に対しては派遣料金と派遣労働者の賃金との差額の比率(マージン率)を明らかにすることなど、情報公開の義務付けを残すことになった。
 修正内容には驚くばかりだ。これでは現行案が目指す派遣労働者の処遇改善は到底困難だ。
 派遣法改正案の成立を急ぐのは来年の通常国会で、社会保障と税の一体改革の一環として契約社員などの待遇改善をはかる「有期雇用法制」や、厚生年金の支給開始年齢引き上げにともなう高年齢者雇用安定法の改正など、重要法案がめじろ押しのためという。
 だが現行案は雇用政策を転換させる一里塚となるものだ。労働者派遣法は一九八五年「派遣事業の適正な運営確保と派遣労働者の就業条件整備」を目的に制定されたが、相次いで緩和された結果、労働者保護が薄れてしまった。
 派遣という働き方が問われたのはリーマン・ショックの時だ。失職したとたん仕事も住居も失う。全国に出現した“年越し派遣村”は大問題となった。不安定雇用の削減・解消が大切なのだ。
 派遣会社の中には禁止業務である建設現場に労働者を送り込んだり、データ装備費と称して多額の手数料を徴収するなど違法・不法行為が目立っていた。
 製造業への派遣禁止は残すべきだ。すでに自動車など主要企業は派遣から期間工採用など直接雇用への転換が進んでいる。
 連合が修正案を容認する姿勢を打ちだしたことは残念だ。これでは「すべての労働者の処遇改善」のスローガンが色褪(あ)せる。

【派遣法骨抜き修正 これでは労働者は救われない 赤旗・主張11/19】

 国会で継続審議になっている労働者派遣法改定案について民主、自民、公明の3党間で「修正」に合意しました。製造業務派遣と登録型派遣を「原則禁止」する項目の削除、違法派遣があった場合労働者に派遣先企業が直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定の3年先送りなどです。
 これは派遣労働者を保護する立場で派遣法を改正しようとすれば絶対避けるわけにはいかない根幹をことごとく崩して、無意味、無内容な法案にすることにほかなりません。これでは派遣労働者はまったく救われません。

◆不安定で使い捨ての労働
 もともと禁止されていた労働者派遣が急速に広がり、「日雇い派遣」などの不安定雇用や「派遣切り」などの使い捨てが大問題になったのは、財界とアメリカの要求で労働者派遣法がつくられ、改悪が重ねられたからです。とくに1999年の改悪による原則自由化と2003年の製造業への拡大が大きなきっかけになりました。
 日本共産党は、08年秋以降の大量「派遣切り」による深刻な事態を繰り返さないために、少なくとも次のような改正が不可欠だと主張してきました。(1)製造業務派遣はどんな形であれ禁止する(2)仕事があるときだけ派遣される登録型は専門業務を厳しく限定、縮小し原則禁止する(3)「みなし雇用」規定は派遣先への正社員雇用を義務づける(4)均等待遇のルールを明確にする―などです。
 2年前政権についた民主党の鳩山由紀夫首相(=当時)は、派遣労働者をめぐる雇用、労働条件改善を「内閣の最重要課題」と大見えを切り、「労働者を保護する方向」での派遣法改正を表明していました。ところが提出された政府の改定案には大きな「抜け穴」があるものでした。
 政府案が「原則禁止」としている製造業務派遣は、派遣元に常時雇用されている労働者が除かれています。常時雇用といっても2カ月などの短期雇用を反復して1年を超えているか、その見込みがあれば「常時雇用」とするのが厚生労働省の解釈です。派遣元への短期・反復雇用の形態をとれば、何の問題もなく派遣が可能です。
 同じく「原則禁止」になっている登録型派遣も、対象外にする専門的な知識、技術が必要な業務は26業務もあります。電子計算機やタイプライターを使う「事務用機器操作」という業務はいまや一般業務と変わらず、そこには45万人も派遣されています。禁止は名ばかりで、労働組合や法曹界などから「労働者保護に値する抜本改正にはほど遠い」(日本弁護士連合会・宇都宮健児会長)と失望と怒りの声があがり抜本修正を求める運動が続いてきたのは当然です。

◆抜本修正求める運動を
 日本共産党は政府にたいして抜本的な修正と、改定案の徹底審議を要求してきました。改定案が国会に提出されて以降、審議入りできず棚上げ状態が続いてきたのは、財界の抵抗と、自民、公明両党の反対によるものです。
 民主党が、自民、公明両党に妥協し、問題だらけの改定案をさらに骨抜きにする「修正」にうごいたのは、まさに屈服というほかありません。国民への約束を投げ捨てる民主党の骨抜き修正を許さず、労働者保護の立場で抜本修正を求めるたたかいが急がれます。

 【労働者派遣法を派遣労働者保護法へ早期抜本改正することを求める要請書 自由法曹団11/16】

政府が2010年4月6日に労働者派遣法改正案を国会に提出して以来、既に2年7か月が経過しています。この間、2010年10月時点で非正社員の割合が過去最多の38.7%になり、2006年以降年収200万円以下の給与所得者が5年連続で1000万人を超えるなど、国民の貧困と格差はますますひろがっています。  
 今年3月の東日本大震災以降、震災に便乗した派遣工や期間工の解雇、雇止めも相次いでいます。
 偽装請負等の違法派遣があっても派遣先の雇用責任を否定したパナソニックPDP事件最高裁判所第二小法廷以降、パナソニック若狭事件福井地方裁判所平成23年9月14日判決、日本トムソン事件大阪高等裁判所平成23年9月30日判決など、違法派遣があっても派遣先の雇用責任も損害賠償責任も否定する地裁・高裁判決相次いでいます。これらの判決は、その理由の一つに、「労働者派遣法は取締法規であり、派遣労働者に何らかの権利・権限等を認めるということまでは認めていない。」ということをあげています。
 このような事態を見る時、私たちは、「製造業派遣・登録型派遣の全面禁止」、「違法派遣の場合の派遣先による無期契約での直接雇用」、「派遣先の正社員との均等待遇」などを含む、労働者派遣法の抜本改正が早急に必要であることを痛感するものです。
 私たちは、労働者派遣法改正について早急に審議入りし、派遣労働者の声を聞くなど審議を尽くし、労働者派遣法を派遣労働者保護法へ抜本改正することを強く要請するものです。

 以上

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