基地・TTP 「米国の顔色だけうかがう」 沖縄二紙社説
辺野古新基地へ、県民の頭ごなしに環境アセスメントの評価書の年内提出に動き出した理由は、「海兵隊のグアム移転をめぐる米議会での審議が12月にヤマ場を迎える」という米政権の事情であり、「沖縄の民意を背負って米政府と交渉すべき日本政府」の姿勢はあべこべだと沖縄タイムス。TPPについて「国民の不利益を顧みずに、米国の顔色だけをうかがう姿勢は、普天間飛行場移設問題にも共通する。嘆かわしい限りだ」と琉球新報。
アメリカ・財界の「使い走り」内閣である。
【[評価書年内提出]民主主義が泣いている 沖縄タイムス10/19】
【TPP民主論議 なぜ米国の顔色をうかがう 琉球新報10/19】
【[評価書年内提出]民主主義が泣いている】 沖縄タイムス10/19沖縄の米軍基地は、嘉手納飛行場のように旧日本軍の飛行場を整備拡張して継続使用しているものと、復帰前、絶対権力を背景に土地を接収し、新規建設したものがほとんどである。
米軍統治下の軍事優先政策と、復帰後の基地維持政策の結果、沖縄は今なお、「小さなかご(島)にあまりにも多くの卵(基地)を詰め込んでいる」(米国務省高官)ような状態だ。
この過重負担をどのように解消するかが普天間問題の出発点である。市街地のど真ん中にあって米軍の安全基準さえ守られていないような飛行場をこれ以上放置することは許されない。
もう一つの普天間問題の原則は、地元自治体や住民の意向を無視して頭越しに移設作業を進めてはならない、ということだ。
だが、野田政権は、米国政府から具体的な進展を求められ、この原則さえ、踏みにじろうとしている。
一川保夫防衛相は、県庁で仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向け、年内に環境影響評価(アセスメント)の評価書を県に提出する方針を伝えた。
評価書を受け取った場合、県知事は90日以内に意見書を提出することになるが、知事意見に沿って修正を加えれば政府は知事に埋め立てを申請することが可能になる。
県知事、名護市長をはじめ自治体、議会、政党そして大多数の県民が反対しているにもかかわらず、これを無視して評価書を提出するのは、原則からの重大な逸脱だ。政府には再考を促したい。
環境影響評価は(1)方法書の提出、公告・縦覧、意見書送付(2)準備書の提出、公告・縦覧、意見書送付(3)評価書の提出、公告・縦覧、意見書送付―などの手順を踏む。
政権交代後、移設先をゼロベースで検証していた鳩山政権は、評価書の提出を「当面先送り」する方針を確認。現在に至るまで凍結状態が続いていた。
この時期に凍結解除に踏み切るのはなぜか。理由はただ一つ。具体的な進展を求める米国の圧力に抗しきれなくなったからだ。
オバマ政権はなぜ今、圧力を強めているのか。これも理由はただ一つ。海兵隊のグアム移転をめぐる米議会での審議が12月にヤマ場を迎えるからである。
米議会が米政府に圧力をかけ、米政府が日本政府に要求し、沖縄の民意を背負って米政府と交渉すべき日本政府は逆に、米国の便益を優先して沖縄の頭越しにことを進める。こんなあべこべがまかり通っていいのだろうか。
海兵隊のグアム移転経費は、当初の想定を大幅に超えて膨らんでいる。米議会が現行計画の見直しを求めているのは、財政負担が大きいことが主な理由だ。
巨額の復興財源を必要とする日本も、台所事情は変わらない。復興増税に消費税増税、年金の支給開始年齢引き上げも検討されている。このような時期に、国は一体、どれだけの国費を辺野古移設に投入するつもりなのか。
【TPP民主論議 なぜ米国の顔色をうかがう 琉球新報10/19】政府・与党が、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加の是非をめぐる議論を加速させている。11月中旬に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに結論を出す方向だが、交渉参加の結論ありきで、あまりに性急過ぎないか。議論の形骸化を危惧せざるを得ない。
TPPは原則的に全物品の関税を撤廃するなど、アジア太平洋地域で貿易や投資、人の移動、サービスの垣根を取り払う自由貿易協定(FTA)とされる。現在、シンガポールやニュージーランド、米国など9カ国が参加するが、日本が加わった場合、米国以外の8カ国の経済規模が比較的小さいため実質的な「日米FTA」とも指摘される。
「平成の開国」(菅直人前首相)とされながら、TPP参加が日本経済や社会構造に与える影響について、どれだけの国民が理解しているだろうか。肝心の「ルール」について断片的で不確かな情報しか国民に与えられずに、将来への不安と政府に対する不信感だけが増幅しているのが現状ではないか。
実際、TPPで国内農業が大きな打撃を受けるとして農業関係団体が猛反発しているほか、公的医療保険制度の崩壊につながるとして日本医師会など医療関係団体なども懸念を表明している。
野田佳彦首相は17日、「高いレベルの経済連携で日本にとってプラスにしないといけない」と交渉参加に前向きな姿勢を示したが、国民の疑問に答え、不安を払拭(ふっしょく)したとは到底、言い難い。
「TPPを慎重に考える会」の会長を務める山田正彦前農相は「貧富の格差が広がり、日本の国の形が根底から変質しかねない」と、幅広い分野で米国流の規制緩和や自由化を迫られると指摘している。野田首相はメリットを主張する前に、民主党内の反対議員を説得し賛同を得るのが先決だ。
日本が、米国の国益が大きいとされるTPPの結論を急ぐ背景に、日米の協調関係を進展させたいとの思惑があるとされる。山田前農相が「対米一辺倒の発想から抜け出せない」と喝破するように、国民の不利益を顧みずに、米国の顔色だけをうかがう姿勢は、普天間飛行場移設問題にも共通する。嘆かわしい限りだ。
TPPは結論の期限を設けずに、徹底的に熟議を重ねるべきだ。党内論議を「ガス抜き」やアリバイづくりの場にしてはならない。
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