ゆがめられた原発行政 毎日特集
経産省が指示した「やらせ」問題の最終報告が発表された。
【最終報告書 9/30】
このようにゆがめられた原発行政についての毎日の特集(うち1-3)。「公務員制度改革」として進められた「官民交流」の狙いがよくわかる。
先日の志位さんの質問で明らかになったが、「人災を認めない」東電、「全面賠償に立たない」政府と、あくまで原発を擁護する、その関係は根深い。
【東電:官僚天下り50人以上 ゆがむ原発行政(1) 毎日9/25】
【東電:公益法人へ「億円単位」拠出 ゆがむ原発行政(2)】
【東電:原子力中枢は天上がり指定席 ゆがむ原発行政(3)】
【東電:官僚天下り50人以上 ゆがむ原発行政(1) 毎日9/25】東京電力に「嘱託」などの肩書で在籍する天下り中央官僚が47人(8月末)に上ることが24日、毎日新聞の調べで分かった。次官OB向けの「顧問」ポストも加えれば50人を超え、出身は所管の経済産業省から国土交通、外務、財務各省、警察庁、海上保安庁と多岐にわたる。東電福島第1原発事故では安全規制の不備が指摘されるが、原子力行政に携わった元官僚は「(当局と電力会社との)癒着が安全規制の緩みにつながった」と認める。
6月28日、東京都港区のホテルで開かれた東電の株主総会。株価暴落で多額の損失を出した株主から「なぜムダな天下りを受け入れ続けているのか」との質問が相次いだ。山崎雅男副社長は「電力事業には(いろいろな)知識を持った方が必要」と答弁。事故の巨額賠償負担で経営が揺らいでも天下りを切れない電力会社の体質を浮き彫りにした。
経産省キャリアOBの最上級の天下り先は東電副社長ポスト。次官OBの石原武夫氏に始まり、資源エネルギー庁長官や次長経験者が10年前後の間隔で就いてきた。今年1月には、昨年8月に退任したばかりの石田徹エネ庁前長官(当時)が顧問に天下り。東電は「慣例通り副社長に昇格させる予定だった」(幹部)。しかし、「退職後2年間は所管業界に再就職しない」という自民党政権時代に作られたルールを逸脱していた上、原発事故による行政批判も重なって、4月に顧問を退任せざるを得なかった。
経産省は関西など他の電力各社にもそれぞれ元局長や審議官、部長クラスを5人前後ずつ役員や顧問として再就職させている。◇報酬、霞が関以上に
中央省庁OBを幅広く受け入れる東電のような余裕は、独占事業ではない他の民間企業では考えられず、経済官庁幹部も「東電など電力は再就職の最大の受け皿」と認める。
東電関係者によると、天下り官僚の肩書はキャリアOBなら「顧問」、ノンキャリア出身者なら「嘱託」。報酬は「霞が関での最終ポスト時代を下回らないのが暗黙のルール」(経産省OB)だ。
東電は「国交省や警察庁OBに電源立地対策で知見を発揮してもらうなど、経営に役立っている」と説明。しかし、財務や外務官僚OBの場合「本命の再就職先が決まるまでの腰掛けで東電に入り、給料だけ払うケースも多い」(東電関係者)。◇「世話になれば無言の圧力」
天下りを通じた当局と電力会社のもたれ合いの弊害は原発行政にも影を落とした。1979年の米スリーマイル島の原発事故などを教訓に、欧米当局は、原発事業者に地震など災害対策や炉心溶融など過酷事故への実効ある対応策を厳しく義務付けた。しかし、日本では事実上、電力会社任せとなり、津波で全電源が喪失した福島原発のようなずさんな対応が取られた。
元原子力安全・保安院長は「欧米並みの規制を導入すべきだとの意見もあったが、コスト負担に反発する電力会社に押し切られた」と説明。元原発検査官は「上司のキャリア(官僚)が退官後、電力会社に世話になっていれば、無言の圧力がかかるのは当然」と話す。【三沢耕平、野原大輔】
【東電:公益法人へ「億円単位」拠出 ゆがむ原発行政(2)】電力会社と中央官庁とのもたれ合いは、各社が本体でキャリア官僚OBらの天下りを受け入れるだけにとどまらない。毎日新聞の調べでは、東電など電力会社が会員となっている経済産業省所管のエネルギー関連公益法人に再就職した官僚OBは少なくとも121人にのぼる。公益法人は会員企業の会費や寄付で運営しているが、電力会社は最大の資金拠出源だ。東電はこれら公益法人への拠出金負担額の詳細について「答えられない」とするが、業界では「すべて合わせれば、億円単位になる」との見方もある。
◇官僚OB120人以上在籍
福島第1原発事故で数兆円規模の損害賠償を迫られている東電。政府の「原子力損害賠償支援機構」から公的支援を受けることもあり、西沢俊夫社長は「聖域なき合理化を進める」と強調する。この言葉通りなら、公益法人への拠出金などは真っ先に整理対象になってもおかしくない。しかし、東電は一部の公益法人から退会したものの、今も25の公益法人に加盟し、拠出金を出し続けている。
エネルギー会社幹部は背景について「経産省をはじめ中央官僚の再就職の有力な受け皿でもある公益法人との関係が切れると、エネルギー行政への影響力が低下しかねないとの不安感があるのではないか」と解説する。
東電が加盟する公益法人には、原発周辺自治体の住民らに適用される電気料金の割引業務の事務手続きを長年、独占的に受注し、批判を受けた財団法人「電源地域振興センター」も含まれる。同センターの独占受注の背景には「霞が関の天下り先温存への思惑も透けて見える」(与党関係者)とも指摘される。枝野幸男経産相は今月20日、こうした業務を扱う団体を公益法人に限る省内規定を廃止する方針を表明したが、東電の西沢社長は今も同センターの役員(理事)だ。
また、東電が加盟する公益法人の中には、取引先の大手原子炉メーカーやゼネコンのトップや役員らと定期的に歌舞伎や落語鑑賞会など親睦活動を行う法人もある。東電は火力発電の燃料費上昇などを理由に値上げを探るが、電力事業に関係が薄い公益法人に資金拠出を続けたままでは利用者の反発は必至だ。
【東電:原子力中枢は天上がり指定席 ゆがむ原発行政(3)】「天下り」でもたれ合ってきた霞が関と電力会社。逆に電力会社に籍を残したまま、社員が非常勤の国家公務員として採用される「天上がり」も盛んに行われ、行政との一体化の象徴となってきた。01年の中央省庁再編以降、電力会社からの天上がりは少なくとも99人に上り、内閣官房や文部科学省、内閣府などの中枢部門に配属され、原子力委員会など電力会社の利害に直接かかわる業務も行ってきた。
国の民間からの人材登用は人事院規則に基づく公募採用が原則。しかし、電力会社の場合は「専門知識を有する場合は公募しなくても良い」との特例を適用した“抜け道採用”が常態化している。
政府によると、これまでの非常勤国家公務員としての採用実績は東電のほか、北海道、関西、中部、東北、四国、九州電力など。その多くが、原子力安全委員会事務局(内閣府)や原子力研究開発課(文科省)など原子力行政の中枢で勤務。
採用期間は2~3年程度で、その間は国から給与を受ける。期間が満了すると、間をおかずに同じ電力会社から別の社員が連続して採用されるケースも頻繁。文科省原子力研究開発課は東電から、同ライフサイエンス課は北海道電力から、内閣府政策統括官は関西電力からそれぞれ連続採用され、各社の「指定席」となっている。
東電の天上がり社員の一人は、天下り規制を担当する「公務員制度改革推進本部事務局(内閣官房)」で勤務。過去には公益法人改革を担当する部署にも配属されたが、天下りの最大の受け皿である電力会社社員が霞が関改革部門で働く姿はブラックジョークにも映る。
電力会社の天上がり問題については、5月の衆院経済産業委員会で吉井英勝委員(共産)が「まるで『東京電力・霞が関出張所』ではないか」と是正を求めている。【三沢耕平、永井大介】
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