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歴史的な円高・ドル安をどうみるか  備忘録

 「歴史的な円高・ドル安をどうみるか」 建部正義・中央大教授に聞く~10問10答(経済2011/11号)の備忘録。
 ドル安是認、TPP・・・ 輸出にしかはけ口を見出せないアメリカの状況。それは「露骨な近隣窮乏化政策は、他国の為替切り下げ競争を招き、ドロ沼に陥らざるを得ない」。
 日本にも「輸出依存型経済」で円高を招いてきた責任がある。円高是正は、内需主導型経済への転換がカギ~「転換のために不足しているのは、経済的条件でなく、国民の運動量」と語る。

【歴史的な円高・ドル安をどうみるか】

 建部正義・中央大教授に聞く 経済2011/11号

1.「ドル安容認」の背景

・アメリカは、国益のためにダブルスタンダードを辞さない国
  →85年プラザ合意 それ以前はクリーンな変動相場制の維持の主張/が、円、ドイツの切り下げ迫る

・今回も、グローバリゼーションを推進する中、地方で意識的にドル安を放置し、率先して近隣窮乏化政策(貿易相手国に失業などの負担を押しつけることによって自国の経済回復と安定を図る)
→ そこまで追い詰められている。/住宅パブル崩壊後、金融面で「非伝統的政策」を相次ぎ発動/が、効果をあげていない。~金融政策は、金融機関に流動性資金を提供できても、企業部門、家計部門の需要を作り出すことができない。

・財政政策は、公共事業などに投入されれば需要をつくりだせるが、巨額の財政赤字により発動も限界
・その窮状が、格付けの低下につながり、よりいっそうのドル安に拍車

・八方ふさがり/輸出にしかはけ口を見出せない
→ 長期的に見れば、この方向も希望を託せない /アメリカが産業で比較優位を有している部分は、軍事を除けば、宇宙、バイオ、ITなど数えられないほどの分野しかない。/露骨な近隣窮乏化政策は、他国の為替切り下げ競争を招き、ドロ沼に陥らざるを得ない
→ では打開策は・・・ 2010年10月20か国地域財務省・中央銀行総裁会議「通過安定競争を回避」の共同声明 ~アメリカもこの共同声明を忠実に遵守する義務を負っている

2.「米国債の格付けの引き下げ」の評価

・「金・ドル交換停止」にも匹敵という見方について
~ 金・ドル交換停止とは/①金1オンス35ドルでの米政府と他国通貨当局との交換(IMF協定てばなく、米国内法での規定)。②固定相場制の維持 /1950年代以降、経常収支の赤字が継続、海外諸国に過剰ドルが蓄積 ~ 71年8月に金・ドル交換停止、73年3月変動相場制に移行
→ 本来の意味の国際通貨体制が存在しなくなった(IMFは開発途上国などへの資金援助機関に)

・「ドルの覇権」を生み出した金・ドル交換停止
→「ドルの危機」とか言われたが実際は「覇権」をつくりだした /アメリカは、経常収支の赤字という足かせに拘束されず、安んじて金融覇権・経済覇権を追求できた。

・「格付け引き下げ」はどうか。/ なんの光の側面もない。より深刻な事態
→ ただ米国債には幅をもって考察を ①格下げによっても他国への販売が急激に減少することはない(新興国の外貨準備の運用先として、当面、米国債以外の金融商品はどこにもない)②共和党政権が誕生する可能性(厳しい財政緊縮政策の採用/ただこの方向は、米経済の回復をさらに遠ざける)

3.「ユーロ安とEU諸国経済」の評価

・根本的な原因/ 金融政策は統合されているが、財政政策は、各国の主権に委ねられている点
→ 財政政策は、租税政策、産業・雇用・社会保障政策にかかわっている。/このことが逆に財政危機に陥った国を他のユーロ諸国の支援を困難にしている。/「われわれの税金がギリシアの底なしの穴に注ぎこまれている」「ギリシアよりGDPの低いわが国がなぜ支援するのか」など

・ギリシアのEU離脱でも問題は解決しない/ 農業国で、これと言った輸出産業が造船以外ない。/他方、離脱する国が相次げは、独仏にとって何のための経済統合だったか、鼎の軽重が問われる
→結局、各国民の同意をとりつけ資金援助によって時間稼ぎしながら、中長期的に財政再建をめざすしかない

・全体としてユーロ安の中で、圏外への輸出が増加。その最大の恩恵をうけているのは、ギリシアに最も強行な姿勢をしめしているドイツ

4.「基軸通貨、大空位時代」の評価

・ドル、ユーロの通過不安はあるが、円、元が基軸通貨にはなれない/ 元は、資本取引は、依然として厳しい為替管理を継続~基軸通貨は、その国の通貨による当該国への自由な実質投資、証券投資、貸借取引が保証されることが絶対的な条件(保有者は、運用先を見出せないので)/ユーロは、金融市場の規模が小さく、運用する十分な場所がない。/SDRも、結局、受け取っても、通貨に交換して決済するしかない

・「腐っても鯛」/消去法から判断して、しばらく(10-15年)は、ドルが基軸通貨で生き残る/市場規模とともに、ニューヨークにおける決済システムの整備度合いも無視できない。
・為替取引の不安定性は、貿易取引の阻害要因に/輸出時に採算の見通しを立てることが困難に

5.「為替投機」の規制について

・直近の円高の背景に、投機マネーの動き/ 3月17日の円高は、震災後、保険会社が保険金を払うために、ドル資金を売却して、円に替えるという思惑からのもの(実際は、そんな事実なかった)

・ババ抜きゲームで円高/アメリカの経済財政危機、ユーロ財政危機、元は資本取引規制
 →外国人から見れば、日本は、世界最大の債権国、金融ビジネスも安定

・為替介入は、中長期的にはさほど効果がない
→①東京外為市場の1日取引高(07年)2380億ドル(28兆245億円)/東京リサーチ、1日4~5兆の介入では量的に不足 ②米欧・中国も含めた為替切り下げ競争が展開されている中で国際的な協力が得にくい

・ドーピン税による投機的取引規制を/外国為替取引に低率の課税、という提案、「目先の動きを読んだ投機家の思惑買いによる株価の歪みを抑制し、長期的で基本的な取引による株式の比重を高める」

6.「円高」は、通貨安競争の犠牲か

・日本人の立場に立てば、マイナス成長なのに円高というのは「通貨安競争」の犠牲と言える。

・より高い見地では日本の責任もある/為替相場は、短期的には投機マネーに、長期的には貿易収支の動向が大きな影響を与える
→ 戦後一貫した輸出依存型経済/変動相場制のもとで円高圧力を受けてきた
~ 輸出増→円高→労務費のリストラ→生産性の向上→輸出増→円高、という「悪魔のサイクル」
⇒経済を輸出依存型から、内需主導型にいかに転換するか、が課題解決のカギ

・想起すべきは「20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議 2010年10月」の共同生命
→「先進国は為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視すべき」「協調的でない対応はすべての国に悪い結果をもたらす」「過度の不均衡を削減し、経常収支を可能な水準で維持するためのあらゆる政策を追求」
→日本は、国際会議でこの内容を堂々と主張するとともに、内需主導型へ転換を実施すべき(メモ者、毎年、10兆円近い「貿易黒字」が続けるようなあり方は、「過度の不均衡」にあたる)

7.日本の財政赤字(869兆円)が、米欧ほど問題にされないのか?

・国債問題について、欧米との違いは、その「保有構造の差異」
→ アメリカ 半分近くが国外/ギリシアは7-9割程度が国外(独仏の銀行、投資家など)

・日本 国外は6.4%(08年度末)。国内の内訳は金融機関64.9%、公的年金11.8%、日本銀行8.2%/財務省→市中金融機関のうち銀行だけで36.2%が特筆される~大企業の借り渋り、中小企業への貸し渋りで、貸し出し難におちいり、やむなく国債を購入。
→日銀は、金融緩和策で、銀行に巨額の日銀当座預金を供給するため、銀行から大量の国債を購入 →銀行をこうして手に入れた資金で、再び国債を購入

★ギリシアのような事態はしばらくは回避できる/この仕組みが、将来ともに働き続ける保証はない

①日銀の「銀行券ルール」/日銀の長期国債保有残高を銀行券の流通高を上限とする
  →2011年4月末 流通残高約80兆円、長期国債保有残高約60兆円、と上限に近づいている

②アメリカ格付け会社による「日本の国債の格付け」引き下げ/2011年8月
 → 日本の国債は、財政危機のスペイン、イタリアよりも信用度が低いと評価された/ 要は、日本も財政再建の課題が待ったなしという点では違いがない。

8.財界のいう「6重苦」とは?

・「6重苦」とは/「円高の継続、国際的に高い法人税負担、現実味の乏しい温暖化対策、柔軟性に欠ける労働法制、経済連携推進の遅れ」「電力供給不足という課題が新たに生じた」(経団連会長講演6/27)

・法人税は「見かけほど高くない」(経団連・阿部経済基盤本部長/税制問題担当)
~「表面税率は高いけれども、いろいろな政策減税、減価償却から考えれば、実はそんなに高くない。今でも断言できますが、特に製造行は欧米並み」(「税制広報」2010年1月号)

・TPP  農林業と関連産業で、GDP7.9兆円、就業機会340万人減少(農水省)/(メモ者 自由貿易というが「原産地規制」コストがかかり実質の恩恵ない。要は、安い農産物の輸入による労働力の価値の低減と、福祉・医療・保険などの公的規制を解除し、大胆に市場化、多国籍企業に日本の主権を明け渡すことが最大の目的)

・電力不足はわが国だけてない/日経9/1「中印電力供給不足が常態、企業進出の足かせにも」
・労働法制/ 非正規雇用率36%(1900万人)、少子高齢化で生産年齢人口減少が叫ばれているのに、若者への十分な技術継承がなされず、日本経済の将来に向けた着実な成長が期し難い事実を、財界をどう見ているのか。

⇒ 財界はなにかと理由をつけ「海外に出て行くぞ」日本経済は空洞化するぞ」と脅して、自己の要求を貫徹しようとしている。

9.必要な円高対策とは?

・円高でまっさきに被害をこうむるのは、労働者と中小企業~ 中小企業は、労働者の雇用先、サプライチェーンの底辺、先端技術の支え手として、日本経済に不可欠な役割を担っている「宝物」。

①短期的対策/中小企業向け円高対策支援金制度、労働者向けの雇用維持給付金制度を設け、救済を図る。/日本政策金融公庫による低利・長期融資の活用/大企業による下請け単価切り下げへの監視強化
②長期的対策/経済の体質の内需主導型への転換 ⇔ 一握りの輸出大企業が、貿易黒字を稼ぎ出し、円高を演出しているから。/「悪魔のサイクル」の是正なしには、労働者・中小企業の苦難は繰り返される。

10 「異常な円高水準」の問題点

・異常な円高が続けば、産業も雇用も地域も財政も空洞化してしまう。
・「悪魔のサイクル」と並ぶ、もうひとつとのサイクルの重いくびき
景気停滞→労務費のリストラ→内需低迷→景気低迷→労務費のリストラ→内需低迷・・・・
~ 産業、雇用、地域、財政が疲弊する道

★内需主導型経済への転換をどうすすめるか
・「サービス残業解消型の時短」によるワークシェアリング  賃金減少をともなわない雇用創造
→総務省「労働力調査」(実際の就業時間)と厚労省「毎月勤労統計調査」(賃金を払った時間)差/労働者1人あたり年間約350時間/ 仮に250時間としても、サービス残業解消で400万人雇用可能(森岡孝二)
/年間賃金300万円としても12兆円。/大企業の内部留保257兆円の5%弱、400万円なら16兆円~ これだけで20兆円のデフレギャップの過半を埋められる。

・転換のために不足しているのは、経済的条件でなく、国民の運動量

・注目すべき点/ 2つのサイクルのどちらにも「労務費のリストラ」が含まれること。
→個々の企業のリストラは「合理的」でも、マクロ的には、内需低迷・景気後退という「合成の誤謬」となる。/わが国の大企業は、完全に「合成の誤謬」に陥っている。

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