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「地方整備局廃止」論と国の災害対応

 「東日本大震災では、地方整備局と河川・国道事務所などが現地の建設業者と連携し、不眠不休の作業で寸断された道路15ルートを4日間で復旧させ」たとの赤旗記事。。
 「地域主権改革」の「二重行政の無駄」論は、以前にもふれたが、具体的な証明は何もない。独立した全国的な部隊としてあるから機敏に対応できるのである。
国、県、市町村という関係を、医療でいう高度医療、一般病院、かかりつけ医などが連携して住民の健康を支えているような関係をうかべればイメージしやすいと思う。
 下記に、四国整備局の支援内容、自由法曹団が3月に出した意見書の「社会資本整備」にかかわる部分の引用。問題は、無駄で、環境破壊の開発等をすすめる政官財の癒着構造を絶つことである。
【「地域主権改革」の名で 地方整備局の廃止・移譲 国は災害対応を放棄するのか 赤旗10/28】
【東日本大震災に対する四国地方整備局の対応状況について 5月】
【「地域主権改革」でくらしはどうなるか~社会資本整備 自由法曹団・意見書】

【「地域主権改革」の名で 地方整備局の廃止・移譲 国は災害対応を放棄するのか 赤旗10/28】

 東日本大震災や7月末の新潟・福島豪雨災害、台風12号、15号による災害―。こうした大規模災害の救援・復旧で大きな役割を発揮したのが、国土交通省地方整備局です。いま、政府が「地域主権改革」の名で、地方整備局をはじめとする地方出先機関を廃止し、地方移譲しようとしていることに対して、各地で反対運動が広がっています。 (行沢寛史)

◆15道路を4日間で復旧
 「防災官庁」とも呼ばれる国土交通省の出先機関である地方整備局は、国道や河川の管理など国土保全をはじめ、災害時の緊急対応を担い、北海道・沖縄を除く全国8カ所に設置されています。
 東日本大震災では、地方整備局と河川・国道事務所などが現地の建設業者と連携し、不眠不休の作業で寸断された道路15ルートを4日間で復旧させました。
 これにより被災地への物的・人的輸送が可能となりました。自衛隊や救急隊が被災地へ入れたのも流通経路の確保(復旧)が行われたからです。
 この作業には、全国から地方整備局職員2万人が派遣されました。こうした復旧活動は、台風12号、15号でも取り組まれました。
 全国一律で、迅速な復旧活動ができたのは、国の出先機関として、同じ法律や基準で災害対応機器を常備していたからです。地方整備局は道路・河川などの整備・管理、大規模災害での経験を蓄積しています。これらの活動を専門的に担っているからこそ、緊急時の対応ができます。
 地方整備局が廃止、地方移譲されれば―。国土交通労組の高津公明副委員長は、「地方ごとに指揮系統が異なれば、大規模災害時に全国的な支援が困難になる。国民の安全と安心を守るべき国の防災、災害対応に対する責任を放棄することになる」と指摘します。

◆地方へ移譲 負担は重く
 20日に開かれた政府の地域主権戦略会議で、野田佳彦首相が出先機関廃止の推進を表明。政府は昨年末、2012年の通常国会に法案を提出し、2014年度中に事務・権限の移譲を目指すとの閣議決定をしています。
 地方移譲されれば、各出先機関の機能を維持できるでしょうか。
 国土交通省は、2010年度までの5年間で予算1兆2800億円、職員2200人を削減されました。地方整備局の職員も毎年200人前後減らされ、深刻な人手不足です。
 その上、財政基盤が弱い自治体に移譲されれば、緊急の災害対応はもとより、防災のための河川整備や砂防事業、日常生活のための道路・河川維持、橋やトンネルなどの補修ができなくなる恐れがあります。
 しかも道路や河川の整備・管理の財源である建設国債(残高245兆円)も地方移譲に含まれる予定です。また、基礎自治体が管理することになれば、新たな地方債の発行など、重い負担を抱えることになります。
 出先機関廃止について議論している「アクション・プラン」推進委員会は、9月に「中間とりまとめ」をだす予定でしたが、先送りされました。
 今年、多発した災害への対応で、地方整備局が大きな役割を発揮したことから、その検証や大規模災害への国のかかわりを議論する必要に迫られたためといいます。

◆豪雨水害に 保守議員も
 この出先機関廃止に反対する運動が広がりつつあります。国土交通労組や全日本建設交運一般労組(建交労)など官民の建設産業にかかわる労組などでつくる生活関連公共事業推進連絡会議(生公連)が、地方議会に要請しています。
 九州生公連は8月、九州全域をまわるキャラバン行動を展開。国土交通労組九州建設支部の俵野陽一郎書記長は、「多くの市町村議会議員などは『地域主権』に疑問を持っている」と語ります。
 福岡県の遠賀川流域では22自治体のうち18自治体で、「遠賀川を引き続き国(整備局)で管理すること」とする意見書が可決されています。
 そのなかの一つである直方市の渡辺和幸市議(日本共産党)は、「この数年、豪雨水害が起こり、保守系の議員にも、自治体だけでは対応できない、国の責任が必要だとの認識が定着しつつある」と語ります。
 俵野書記長は、「出先機関の廃止、地方移譲は、『国と地方の合意がなければならないもの』とされています。地方がノーといえば実施できません。12月議会に向け、九州すべての自治体をまわって議員と懇談し、廃止反対の世論を広げ、断念させたい」と語ります。


【東日本大震災に対する四国地方整備局の対応状況について】より

◆緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)の派遣。四国地方整備局からは合計127人を派遣し、延べ約1,200人日の活動を行いました(5月30日現在)

・河川班 9人  宮城県・江合川堤防の亀裂・陥没等の現地調査を実施(3/12~19)
・河川被害分析班1人  直轄海岸の被害状況の調査分析を実施。(3/24~4/1)
・道路班9人  東北道・八戸IC~八戸市役所~八戸港および国道45号の橋梁・路面等の損壊状況調査を実施。(3/12~17)
・港湾空港班3人 久慈港の港湾施設の損壊状況調査を実施。(3/12~19)
・電気班7人 被災市町村等と連絡のための衛星通信機器の運転調整。旧北上川河口部・門脇水位観測所の現地調査、北上川河口光ケーブル・鳴瀬川河口光ケーブル調査を実施。石巻市においてKu-SAT設営、北上川電気通信施設の調査を実施。北上川・運河交流館(石巻市内)にて電気設備調査及び鳴瀬川CCTV調査を実施。江合川CCTV、光ケーブル調査を実施。(3/12~4/26)
・東北地方整備局本局の業務を補完するためTEC-FORCEとして派遣。
機械班30人  福島県新地町等において、自衛隊等の夜間救出作業支援のため照明車等を派遣。その後、宮城県名取市の仙台空港周辺、亘理町等で排水作業を実施。(3/12~ )
・東北地方整備局本局の業務を補完するためTEC-FORCEとして派遣。
東北TEC-FORCE総合司令部 7人  東北地方整備局本局に新たに設置された東北TEC-FO RCE総合司令部においてTEC-FORCEの派遣調整を実施。(3/19~4/26)
・市町村支援隊17人 名取市・亘理町にて情報連絡、調整業務に従事。名取市においては名取市長の依頼により名取市閖上地区の排水方法について検討。また、東北地整の名取市排水ポンプ車管理班との情報共有と自衛隊、名取市との連絡調整を実施。
亘理町においては、陸上自衛隊、消防レスキュー隊の行方不明者捜索活動の後方支援として浸水箇所の排水計画を立案し排水作業を実施。また、輸送路の確保のため、町道上の破損車両や瓦礫の撤去を実施。(3/22~4/26)
・総務班25人  派遣者の移送、物資調達等様々な後方支援 (3/12~ )
・本省派遣班6人  情報収集、連絡業務(3/14~4/9)
・海洋環境整備船13 宮城県塩竃市から名取市にかけての沖合い10km程度の海域を対象として、海面浮遊ゴミの回収作業を実施。(5/21~ )

◆災害対策用機械の派遣~ 四国地方整備局からは17台の災害対策用機械が出動しています。なお、大規模な浸水による排水作業がほぼ終了したことから、排水ポンプ車1台を東北地整管内に残し四国に帰還しています。
 など・・・


【「地域主権改革」でくらしはどうなるか~社会資本整備 自由法曹団・意見書】

 第5 社会資本整備

 社会資本整備は、災害や事故から国民の生命・財産を守る上で極めて重要な分野であるとともに、地域経済の活性においても重要な位置づけにあるが、「地域主権改革」によって国がその責任を放棄すれば、国民生活に大きな被害を及ぼすおそれがある。

 1 「地域主権改革」で地方まかせに

 国の出先機関の原則廃止を方針とする「地域主権戦略大綱」及び「アクション・プラン」(2010.12.28閣議決定)を受け、社会資本整備の分野では地方整備局を廃止するとともに、その事務・権限を新たに整備する広域行政制度に移譲することが検討されている。また、「地方自治体が特に委譲を要望している事務・権限」として、(1)一般国道の直轄区間のうち、一の都道府県内で完結するものについては原則移管すること、(2)一級河川の直轄区間のうち一の都道府県内で完結する水系に属するものについては原則移管することが基本とされ、円滑かつ速やかな実施のための仕組みを地域主権戦略会議の下に設けることとされた。

 「義務付け・枠付けの見直し」では、河川法及び道路法の「改正」によって、準用河川の河川管理施設等の構造の技術的基準や、都道府県道・市町村道の構造の技術的基準を条例へ委任することが、「地域主権推進一括法案」(第一次)に盛り込まれている。また、社会資本整備は、「ひもつき補助金の一括交付金化」の影響も大きく受ける。

 2 河川の管理維持の崩壊

 (1)地方整備局廃止による影響

 河川のうち、国の直轄管理区間は、総延長の約7%である。しかし、国直轄河川は、想定氾濫区域内人口約4,700万人(約41%)、想定氾濫区域内資産約888兆円とされており(国土交通省)、その管理は、地方整備局が財源的裏付けのもとで、一定の水準を保ってきた。

 地方整備局は、洪水時、上流地域と下流地域との利害の対立にとらわれることなく、適切に洪水調整施設を操作することで被害を最小限に食い止め、また、渇水時の水利用調整においても、対立する都道府県間の利害を公平・中立な立場で調整し、もって、国民の生命、財産を守ってきたと言える(国土交通省「地方整備局の見直しに当たっての基本的な考え方」参照)。

 これを都道府県や広域行政制度が担うこととなれば、利害対立が生じる場面において公平・中立な立場に立つことはできない。結果として、適切な措置をとれずに国民の生命・財産を害するおそれが大きい。

 とりわけ、近年、気候変動による影響から集中豪雨、ゲリラ豪雨が増大しており、より高い水準での河川管理が必要であることは明らかであるが、それにもかかわらず、治水予算は減り続け、災害予防対策への投資も減少しているのが現状である。地方整備局の権限・事務が地方へ移管されれば、地方の財政状況等によって管理水準にばらつきがでるだけでなく、財源不足による予防対策の一層の遅れ、河川管理水準の一層の低下によって甚大な被害を引き起こしかねない。

 (2)準用河川構造物の技術水準の低下

 現在、準用河川(一級河川及び二級河川以外の河川で市町村長が指定したもの)における河川管理施設、ダム、堤防その他の主要なものの構造について、河川管理上必要とされる技術的基準は政令で定めることとされている(河川法100条・13条2項)。ところが、「義務付け・枠付けの見直し」により、準用河川における河川管理施設や、ダム、堤防の設置基準について、政令を参酌すべき基準として、条例で定めることができるようにすることが「地域主権推進一括法案(第一次)」に盛り込まれている。

 しかし、「政令を参酌すべき基準」として条例で定めることができるようになったとしても、技術的基準が従前よりも高められるとは期待できず、むしろ市町村の財政的制約、技術的制約によって、水準低下を招くおそれが多分にある。「準用河川」といっても、水系数で2,524、河川数で14,253あり(2003年4月末現在)、大部分の準用河川は本流が一級河川や二級河川の場合、その水系に含まれる。実態においても、準用河川は、その管理の如何によって住民の生命・財産と密接な関係がある場合が多い。それにもかかわらず、安易に設置基準を条例に委ねることは、住民の生命・財産を水害の危機にさらすこととなる。

 (3)維持費の削減により管理水準はさらに低下

 すでに、河川の維持費は削除されており、堤防の保全に必要な維持・管理が十分になされていないのが現状である。例えば、堤防除草予算が削減されている。堤防除草は堤防の植生を守るとともに、モグラやヌートリア等、堤防に穴を掘ってその強度を弱める動物から堤防を守り、雨水や洪水によって堤防が決壊することを防ぐうえで不可欠である。それにもかかわらず、維持費の削減によって堤防除草の回数は従前よりも減らされており、十分な堤防の維持がなされていない(国土交通省全建設労働組合「国の出先機関の移管の問題点」)。

 河川管理の権限・事務が地方へ移譲されることによって、維持費が一層削減され、堤防の維持が十分になされなくなれば、洪水等で決壊するおそれさえありうる。

 3 道路の維持管理の崩壊

 (1)地方整備局廃止により全国で橋梁崩落事故を引き起こすおそれ

 2007年8月1日、米国ミネアポリス高速道路橋が崩落した事故では、50台以上の車が転落し、死者13名、負傷者100名以上という大惨事となった。比較的充実した定期点検が行われていた米国での惨事は、補修補強の遅れが致命的な事態を招くことを示唆している(道路橋の予防保全に向けた有識者会議『道路橋の予防保全に向けた提言』)。

 日本国内をみれば、地方には修繕されていない橋梁が多数存在する。崩落寸前の橋は121橋(「朝日新聞」2009.11.4付)、通行止め85橋、通行規制599橋あるといわれている(国土交通省全建設労働組合調べ)。また、2015年には、建設後40年を経過する橋梁数が6万橋を超えることが予想されている(上記『提言』)。したがって、十分な費用をかけて適切な点検・早期発見・診断・評価による予防保全が必要であり、これを怠れば、多大な死傷者を出す崩落事故が全国で急増するおそれさえある。

 国道は、地方整備局が管理しており、日常的な巡視によって日々橋梁の劣化の点検が実施されているが、都道府県やとりわけ市町村が管理する橋梁は、「技術力がない」、「財政的に困難」、「土木技術者数不足」等の理由でこのような点検が行われていない。現に市区町村では過去5年以内に1度も点検を実施していない橋梁が88%もあり、上記通行止め及び通行規制がなされている橋梁の87%は、市区町村管理のものである(国土交通省全建設労働組合調べ)。

 橋梁の維持、管理の技術や財政において、地方自治体が国におよばないことは明らかであり、地方整備局を廃止し、橋梁の維持・管理を地方自治体へ移管すれば、国道の橋梁についても十分な点検、維持、管理がなされなくなり、全国で崩落事故がおこるおそれさえある。

 (2)都道府県道及び市町村道の構造の技術的基準の条例への委任

 道路法29条によって、道路の構造は、通常の衝撃に対して、安全かつ円滑な交通を確保できるものでなければならないことが原則とされている。そして、同法30条により、道路を新設し、又は改築する場合における道路の最小限保持すべき一般的技術的基準として道路構造令が規定されている。

 ところが、「義務付け・枠付けの見直し」により、都道府県道及び市町村道の設計車両、建築限界、橋・高架の道路等の設計荷重以外の技術的基準について、道路構造令を「参酌すべき基準」として、条例へ委任されることが、「地域主権推進一括法案(第一次)」で狙われている。

 道路構造令は、道路の安全性・円滑性を確保する観点から、最低限確保すべき一般的技術的基準を定めたものであるが、条例に委任すれば、地方自治体の財政的制約によってこれを下回る基準が定められ、道路の安全が崩壊するおそれがある。

 (3)日本の道路行政は、交通事故「死者数」の減少には一定の成果を上げているものの、「死傷者数」は年間90万人を超えている。この数字は他の先進諸国に比して著しく多いものであり、これを早期に減少させる施策の実施が急がれなければならない。しかし、道路の維持・管理責任を国が放棄する「地域主権改革」はこれに逆行するものであり、国民の生命・身体の安全を一層危険にさらすものである。

 4 建設現場からの批判

 (1)全日本建設交運一般労働組合は、地方整備局の廃止により、建設業法の監督・指導が十分になされなくなり、違法な働かせ方をされている建設労働者が無権利状態におかれるおそれがあること等を指摘している(国公労調査時報No.575、「『がんばれ全建労』『地方分権・道州制反対』九州キャラバンの取り組みについて」)

 (2)NPO法人建設政策研究所の「『地域主権戦略大綱』に関する建設分野からの見解」は、一括交付金化によって、地方にまわる財源の総額が削減されれば、生活関連の公共事業が抑制されるおそれがあること、生活関連公共事業の発注が削減されれば、その担い手である地域建設業振興が危ぶまれることとなり、地場建設業が主要産業になっている地域も多いため、地域経済の衰退に拍車がかかることが懸念されること等について警鐘を鳴らしている。

 5 国の防災機能に不可欠である港湾・空港の整備は国の責任で

 地震の多い日本列島では、大規模地震の切迫性が指摘しており、こうした脅威から国土や国民の生命、財産を守ることは国の最重要課題である。

 港湾は、国民生活や産業活動をささえる重要な物流や生産基盤であると同時に、背後に多くの人口や工場を控えており、防潮堤などを設けて津波や高潮から人命、財産を守り、経済活動を支えている。阪神大震災では、緊急物資等の輸送において海上輸送が重要な役割を担ったが、大規模地震が切迫するなか、地域の防災力と海上・航空輸送ネットワークの構築は防災機能として欠かせない。「出先機関の廃止」により地方整備局を廃止することは、切迫している大規模地震等に対して、国民の生命と財産を脅かしかねないものであり、許されない(防災・復興を第一線でになう港の整備は国の責任で!(全運輸省港湾建設労働組合))。


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