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TPPと「国民経済」

 内田樹氏が、大蔵官僚で、池田勇人のブレーンとして、所得倍増計画と高度成長の政策的基礎づけ下村治の著作『日本は悪くない、悪いのはアメリカだ』『日本経済成長論』を、TPP論議にからめて「国民経済」とは何か、その内容を紹介している。
 そして自由貿易の果実は“最終的にどの国の国民経済にも「義理がない」多国籍産業の手に帰すだろう”(内田氏)。と結ぶ。
 国民が貧しくなる一方で、大企業が内部留保をためつづけ、「使い道がない」(白川日銀総裁)という現状が、TPP参加の未来を示している。
【雇用と競争について】
 下村氏の主張で引用している部分は・・

 
「本当の意味での国民経済とは何であろうか。それは、日本で言うと、この日本列島で生活している一億二千万人が、どうやって食べどうやって生きて行くかという問題である。この一億二千万人は日本列島で生活するという運命から逃れることはできない。そういう前提で生きている。中には外国に脱出する者があっても、それは例外的である。全員がこの四つの島で生涯を過ごす運命にある。
その一億二千万人が、どうやって雇用を確保し、所得水準を上げ、生活の安定を享受するか、これが国民経済である。」

農産物についても“アメリカは日本が農産物について高い関税障壁を設けて保護していることを市場閉鎖的であると難じているが、それは文句を言うのが筋違いである。これには国民経済史的必然があるからだ。”と以下のように展開している。

「どうしてこうなったかと言えば、日本は明治維新から、日本列島に住む日本人に十分な就業機会を与えながら、かつ、付加価値生産性の高い産業を育成し、それで十分に高い所得を実現する、という目標を必死になって追求してきた。
ところが、雇用機会を増やすことと付加価値生産性の高い産業を育成することは必ずしも簡単ではないばかりか、同時に実現することはできないものである。
 というのは、多くの人に就業機会を与えるためには、それ相応の人手を産業に吸収させなければならない。しかし、付加価値を高めるには、なるべく人手を減らして生産性を高める必要がある。

このため、必然的に、生産高の割りには人手を多く必要とする生産性の低い部門と、徹底的に合理化して相対的に人手をあまり必要としない生産性の高い部門の両極端の産業が成立するようになったのである。その結果として、今日の日本人の生活があるということができる。
 したがって、今でも日本は、自動車のように生産性がきわめて高い産業がある一方で、コメに代表されるような、生産性のきわめて低い品目をむりやり維持している、という状況になっているのだ。」(75頁)

「それぞれの国には生きるために維持すべき最低の条件がある。これを無視した自由貿易は百害あって一利なしといってよい。(…)自由貿易主義の決定的な間違いは、国民経済の視点を欠いていることだ。」(96頁)
 
「完全雇用は自由貿易にもまして第一の優先目標である。完全雇用を達成するために輸入制限の強化が必要であれば、不幸なことではあるが、それを受容れなければなるまい。」(100頁)
「自由貿易とはそういうものである。決して、神聖にして犯すべからざる至上の価値ではない。
強大国が弱小国を支配するための格好な手段でもあることをもっとハッキリと認識すべきだ。」(100頁)

 しかし、この発想・・・「高知県民を食わせる」ことに力をつくす尾崎知事とダブル感じがする。大蔵省の大先輩の考え方をどう思っているか、一度、聞いてみたい。

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