「九電の失敗」の成果~脱原発へのエール
やらせメール、それを調査する自ら任命した第三者委員会の報告を否定、社長辞任も撤回し、傷口をひろげた九電。「失敗のらせん階段は深く暗い」とコラム。
そのおかげで「国民は原発の立地自治体と電力会社の関係の実相を知ることができた。」とも。それに、電力会社の信用はますます低下し、原発再稼動ストップに大いに貢献した。
読売が“これでは再稼動に必要な地元自治体や住民や理解が得られない”と「社説」で心配している。
【余録:人は失敗をおかすものである… 毎日10/19】
【九電やらせ問題 報告の再提出で説明尽くせ 読売社説10/18】
【余録:人は失敗をおかすものである… 毎日10/19】人は失敗をおかすものである。だが「失敗の収拾には失敗するな」というのが危機管理の要諦だ。言いかえれば失敗に浮足立つことなく、損害を最小にする策を尽くすことである。およそ現代の組織を率いるリーダーなら、それは知っていよう▲だが「悪いことは重なる」という意味のことわざが世界中にあるのは、単に運の悪い人がいるからだけでもなかろう。最初の失敗をもたらした自らの落ち度の点検もせず、失敗の収拾策でも同じタイプの失敗を繰り返す人が多いからだ。失敗のらせん階段は深く暗い▲そのらせん階段にすっぽりとはまりこんだ九州電力である。玄海原発の再稼働をめぐるやらせメール事件が発覚し、組織的な情報操作で地域住民の意思決定を左右しようという策略が世の指弾を浴びたのが3カ月前だった▲さてその「失敗」の収拾のための第三者委員会の調査である。だが九電は、事件の発端が古川康佐賀県知事の発言だとする委員会の認定を盛り込まずに最終報告書を経済産業省に提出した。信頼回復のために設けた第三者委を自ら否定しては事件の収拾はおぼつかない▲結局は経産相の批判を受けて最終報告を改めて提出することになり、九電の傷口はますます広がった。公平を装ったイベントに自らの利害を忍び込ませようとして破綻する図は、やらせメール事件も第三者委を使っての事件収拾も同じだ。「失敗」の根は健在である▲その九電のおかげで国民は原発の立地自治体と電力会社の関係の実相を知ることができた。それに企業危機管理マニュアルの書き手も、戒めとなる新事例の提供に“感謝”しているかもしれない。
【九電やらせ問題 報告の再提出で説明尽くせ 読売社説10/18】信頼回復へのハードルを自ら上げる行為ではないか。これでは、原発再稼働に必要な地元自治体や住民の理解が得られるかどうか心配だ。
九州電力は先週、玄海原子力発電所の再稼働をめぐる「やらせメール問題」の最終報告を経済産業省に提出した。
これに先立ち、九電の第三者委員会は、古川康佐賀県知事が九電幹部と面談した際、国主催の説明会で原発の運転再開を求める意見が増えることに期待を示し、やらせの実行に「決定的な影響を与えた」などと認定していた。
しかし、最終報告では、第三者委報告の記述を簡単に紹介するにとどめ、知事の関与や責任について言及しなかった。
枝野経済産業相は、九電が都合のいい部分を「つまみ食い」したと批判した。17日の記者会見では「国民や地域の信頼を回復するためどうすべきか、九電自ら判断すべきだ」とも述べた。
九電は批判を真摯(しんし)に受け止め、より丁寧な説明を盛り込んだ報告書を再提出する必要があろう。
やらせ問題の影響で、玄海原発の再稼働は今もメドが立たない。九電が説明不足のまま問題の幕引きを急げば、再稼働に地域住民などの理解を得ることは、一段と難しくなりそうだ。
九電以外の電力会社や原子力安全・保安院による原発賛成派の動員、やらせ質問依頼などの事実も発覚し、原子力関係者の情報発信に対する信頼は傷ついた。
全国的にも、今冬から来年にかけて電力不足に陥りかねない状況にある。九電の混乱が長引くと、他に与える影響は大きい。
そもそも九電は、やらせの原因究明と再発防止を徹底する狙いで弁護士ら有識者をメンバーとした第三者委を設けた。社内調査では身内に甘くなり、信用されないと判断したためだ。
ところが、九電の真部利応社長は、結論の違いは「見解の相違」であり、第三者委に合わせる考えはないとしている。これでは外部に調査を依頼した意味がない。
真部社長は7月に国会で、やらせ問題に関連し、事実上の辞意を表明したが、最終報告の提出にあわせて辞意を撤回し、続投する考えを示した。
「個人的な考えだけで、社長はやめられない」との釈明は、分かりにくい。
何よりも原発の再稼働が急務である。地元の不信感を払拭し、事態を打開できるよう、九電は知恵を絞ってもらいたい。
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