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世界の貧困撲滅を阻害するWTO

 9.11から10年。テロとの戦争は、膨大な犠牲、世界の不安定化と米国の影響力低下をもたらしたが、米国に追随した日本外交の検証はされていない。
 テロの根絶には、貧困を解消し、絶望から抜け出す道を構築する地道な努力が土台だが、それを困難にしているのがWTOやTPPなど自由貿易協定、新自由主義であることを、あらためて想起したい。

 以下は、「グローバル化段階の農業と農政/村田武教授」「TPPの影響調査/人口・開発研究委員会」からの関係部分などの備忘録。

■食料の安全保障めぐる世界の動き  ~ グローバル化段階の農業と農政/村田武(自治体農政の新展開)より

・グローバルリズム推進、新自由主義支配の強化に、アメリカの金融国家化と世界の独占企業の多国籍企業化がある/農業・食料分野でも、カーギル社など巨大穀物商社など関連企業の多国籍企業化が強まる
→ この力を背景に、農業分野にも例外ない自由貿易体制を強制することになるWTO体制が推進

1.低開発途上国の貧困と飢餓の克服めざす国際社会の流れ

~ 70年代初めの世界食料危機以来、冷戦体制下の緊張緩和と並ぶ最重要課題と合意していた
・96年「世界食糧サミット」の「世界食糧安全保障に関するローマ宣言」
・「食糧安全保障は国連規約の中で確認された人権」(国連社会権規約 78年発行)
・50年代以来の「緩衝在庫」「輸出割当」などによる佐藤、コーヒー、ココアなど一次産品の国際価格の安定をめざした国際協定、「一次産品総合プログラム」国際貿易開発会議(76年採択)など、途上国農業の安定的発展をめざす貿易管理体制など

◇食糧安全保障を妨げるWTO

・80年代、アメリカとEUの間で深刻となった農産物過剰、貿易摩擦の緩和を優先し、ガットの多国間貿易交渉あるウルグアイラウンド(86-93年)で、先進農産物湯出国に有利なWTO体制が構築
→ 工業製品と農業製品を事実上別扱いにし、農産物について輸入量制限など関税以外の貿易障壁を容認する「柔らかで現実的」であったガット体制を否定。関税しか認めない自由貿易体制が成立
→ このことが飢餓と貧困のたたかいに困難をもたらした

◇WTO体制/ 先進国農政を市場原理農政に転換

・アメリカ「96年農業法」 穀物生産調整(セット・アサイド)を廃止 ~世界最大の穀物生産輸出国が、穀物の需給調整を市場まかせとしたことが決定的(同時に、輸出払戻金でダンピング輸出の体制は維持)
→ 97年アジア経済危機をきっかけとした国際穀物相場の長期低迷に油を注ぎ、途上国の主食穀物農業に打撃を与え、小農民の所得向上の道を閉ざした
→途上国農業が、コメ、トウモロコシなどの主食の増産でなく、輸出向けの熱帯産品の生産に依存を強める/熱帯産品の過剰生産と国際価格の暴落、という悪循環に。/典型はコーヒー豆、コーヒー危機

2.反グローバリズムのオルタナティブ

・WTO体制に反対する世界的運動の登場~ 99年、シアトルWTO閣僚会議の反対運動をきっかけに
→ 自由貿易体制が、途上国の経済発展に結びつかず、貧困と格差拡大/ また、有力途上国の経済的地位の向上 / 反グローバルリズムの世界的NGO運動と途上国政府が連携

・03年 ドーハ・ラウンドの妥結失敗 /インド、ブラジルにリードされた途上国が反対
→ 先進輸出国主導のWTO体制は、発足後10年もたたず、巨大な抵抗勢力の成長に直面/その代表格「ビア・カンペシーナ」~ 農業をWTOから外して食料主権の確立をめざす「農業改革のためのグローバル・・キャンペーン」

・先進国の市民消費者のなかの「フェアトレード」の広がり

・後発開発途上国の食料安全保障を、国際社会の最重要課題とする動きの強まり
→01年「ドーハ閣僚宣言」で開始されたWTO多角的貿易交渉/途上国のニーズ及び関心を位置づけることで開始されたものだが、05年の交渉妥結の日程は大幅に遅延 /解決できないWTO体制の限界を露呈

☆08年秋「アメリカ発の金融危機」をきっかけとする金融・経済危機は、パックス・アメリカーナの終焉・米欧主導WTOの新自由主義型グローバリズムの修正へ向かう画期となるであろう

3.EUで見直される農村と農業~ 日本への示唆

・農業と農村に対する新しい考え方の広がり
  就業の多様化による農村の多面的役割 環境の方向 ~ エネルギーと環境保護をめぐる農村の機能
→ ドイツ 「100%再生可能エネルギー地域」づくり (固定価格買取制度)よるエネルギーの「再公有化」

☆日本/地球温暖化と世界的な食料需給逼迫のもと食料主権の確立が急務
・新興国の需要増大、米などバイオ燃料生産(トウモロコシの2割以上)、農地争奪

Kokumotuzyukyu
(80年代から収支曲線が低下。0以下は、供給不足)

・東日本大震災、原発事故の経験は、「FEC自給圏」(内橋克人/フード、エネルギー、ケア)の形成の重要性を示す
→ 膨大な山林資源と農業資源・水資源を一体的に活用し、再生可能エネルギーによる「エネルギー100%自給圏」という社会経済生活圏の形成へ

☆TPP参加に前のめりな民主党政権
・「包括的経済連携に関する基本方針」(2011/9)
→「戸別所得補償」を、経済連携交渉、自由化と一体的に実施される「国内対策」と位置づけ

■TPPは世界の飢餓と地球温暖化に拍車かける

・TPP参加(措置を完全に撤廃した場合)
カロリー自給率は40%から13%、小麦や砂糖の生産は壊滅、米も90%減少(農水省 2010/10)
約6割に当たる農地272万ha つぶれるか耕作放棄地になる(07年試算)
・「人口・開発研究委員会」による全中からの委託研究

◇ 飢餓人口を9億から12億に増やす

・米輸入は700万トンに達し、アジアのコメ需要をひっ迫させて米価を2倍に押し上げ、アジアの米食人口の1割、2・7億人が飢餓に陥る可能性がある。
~ 1993年大凶作時の日本の250万トンの緊急輸入、1979~81年の韓国の330万トン輸入の経緯から、ジャポニカ米の輸入が10%増加すれば国際米価は30%上昇すると推定。/世界貿易量2000万トンの3分の1に当たる700万トンを日本が輸入した場合、現在1トン600ドルの国際米価が630ドル上昇し、1230ドルに急騰すると

・米 アジア人口42億のうち27億人の主食/東南・南アジアの人々のエンゲル係数は40%程度で、その大部分が米に向けられている。
→ 現在3・7億人(13・8%)に達するアジアの米食民の飢餓人口がさらに2・7億人(10%)増え、世界の飢餓人口は10年の9・25億人から12億人に達する

・試算はアジアに限られている/最も飢餓が深刻なアフリカでもアジアからの米輸入が増えており、影響は世界的なものに深刻化する。

◇フードマイレージは43%増

・日本は世界最大の食糧輸入大国/ 食糧を輸入するために膨大な化石燃料を使い、CO2を発生~ 輸入量と輸送距離を掛け合わせたフードマイレージはダントツの世界一

・食料自給率が40%から13%に低下するとフードマイレージ43%増、CO2排出量は1290万トン増
→ 日本の09年の温室効果ガス(CO2換算)12億900万トンの1%/TPP参加は温暖化に拍車

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