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「福祉国家型地方自治と公務労働」 備忘録②

 「福祉国家型地方自治と公務労働」の備忘録②~ 「福祉国家的公共圏と公務労働の展開」より

 戦後公務労働論の検討ととにも、資本蓄積論、独自な資本制的生産様式、工場監督官の意義など、資本論がこういう形で生きるとは・・資本主義社会の分析を基礎においた解明は、興味ぶかい。

■福祉国家的公共圏と公務労働の展開

◇はじめに 「分権の日の出、福祉国家の黄昏」説の問題点

・現代資本主義の行財政の特徴の1つ/ 「歳入の中央集権」と「歳出の地方分散」
→ 税収が中央政府に集中するのは、基幹税の累進課税、応能負担原則を貫こうとすれば集権化が不可欠/ また福祉国家に求められる行財政課題は、大半が地方行政で担われることからくる
・もし「歳入の中央集権、歳出の地方分散」を集権体制ととらえると、歳出の地方分散にあわせた「歳入の地方分散」が課題となる~ そこから現代の分権化論は、「財源の分権化」の主張となる。

・重要な点/ 地方に移譲される財源は、応益負担原則とならざるを得ない~高い税金を嫌う所得は、逃げ足が速いので、逃げられない税源・人頭税所得税、消費税に主幹税を求める
→ 歳入面での地方分権が進むと、福祉国家は弱体化する。

・問題は/「分権の日の出、福祉国家の黄昏」の出発点となった、「歳入の中央集権」と「歳出の地方分散」のギャップをどうとらえるか。
→ 今世紀以前の機関委任事務を媒介にした中央による地方の集権的体制のもとでは「集権か分権か」の対立的構図は重要な意義をもっていたが、
→ 現在は「官僚機構VS公務労働」の視点からの再構築が必要

・「歳入の中央集権」は、資本主義のもとでは避けがたく、それ自体に問題があるのではない
→問題の核心は/集中した財源の使い方の官僚的な統制。政財官トライアングルのもとでの行財政支配
・「集権的政官財癒着」、中央政府は官僚的特権の支配下に。/ 他方、「歳出の地方分散」は、実際の業務が地域に結びついた広範な公務労働で担われてきた。一方、地方でも中央官僚機構の下請けとしての地方官僚機構が自治体の公務労働を統制した。 
→「中央・地方の特権的官僚機構と公務労働との対立」が「集権VS分権」の対立関係に平行し存在

1.戦後の公務労働論の始まりと公務労働の階級性

◇戦後第一期 「役人と労働者の二面性」論の意義

・芝田進午 第一期「二面性論」、第二期 革新自治体を背景にして公務労働の理論的規定の試み 第三期 自治体労働運動のあり方をめぐった論争 第四期 労働論と運動論の展開
・公務労働の二面性が問題化/ 戦前来の官吏・役人の地位におかれながら(憲法上は、全体の奉仕者に質的転換)、民間以下の低賃金労働者として広がった公務員の増加
→重要な点/一般公務員が労働者階級の一員として増大するにしたがい、官僚制内部から官僚機構を掘り崩す可能性が生まれる、という論点(明示的には島恭彦、「ビューロクラシーの矛盾」)/「官僚機構VS公務労働」の視点
→ M.ウェーバーの官僚制に対する根本的批判
 官僚制による合法的支配は、合目的性、仕事の専門性にそった分業に担われ、その分業は、合理的規則、没主観的処置、ヒエラルキー的階級的秩序、専門的職業専念義務、資格制等をつうじて組織される。ここから「行政の官僚制化がひとたび完成されると、支配関係は事実上不滅に近い形態がつくりだされる」とする見方~ 現代においてもこの官僚制論が支配的/「官僚機構VS公務労働」の視点は、この論の急所をつく批判

*「役人と労働者の二面性」論の成果
①官僚内部における労働者の増大、官吏の二極分解の過程を明らかにした
②増大する一般公務員を、労働者階級の一員をして把握されなければならないことを解明
③労働者階級の一員としての公務労働者は、官僚機構を内部から掘り崩す可能性を持つ独特の労働者

◇「官僚機構VS公務労働」の中の階級的視点

・公務労働が官僚機構を克服する道を切り開く根拠は何か
→「公務労働の階級性」「公務員の労働者性」の視点に立つと、その根拠は、一般公務員が労働者階級の一員として労働運動の戦列に加わり、資本と権力から独立した社会的力を発揮すること
・芝田「自治体労働者は、その専門性というヤイバを、つねに階級性という砥石で磨きあげることが要求され、専門的知識人であることと労働者であることを、階級的という一点で統一することが強く要請される」
→「専門性と階級性の統一」が、官僚制を掘り崩すときの自治体労働者の武器とした

*問題は、いかなる専門性で官僚機構を掘り崩す力を発揮するのか?/第一期の「階級性」の視点が土台。
→ ここでの「専門性」は、個々の公務分野の専門性ではなく「公務労働一般の専門性」/個々の分野の掘り下げは、もっと後のこと

2公務労働論争の高揚期における「公務労働の二重性」

・革新自治体高揚期の「公務労働論」~ 住民運動、公務労働運動、自治研活動の前進を背景に、「役人と労働者の二面性」論議を「公務労働の二重性」の形で引継ぎ展開される
→ 公務労働の二重性は、資本主義国家と官僚制、公務一般の関係、つまり資本主義国家と公共部門の役割にかかわる議論。国家論が問われる議論/ その議論は…

①国家と共同業務(の二重性) ②国家機能の二重性 ③国家と住民自治(との二重性)
・・・・以下、議論の経過とその評価と総括

☆「国家による共同業務の包摂」説 /芝田進午
・歴史貫通的な共同業務の存在を前提とし、国家はそれを担うのは、支配階級の利益、住民を統治するためであり、そのため共同業務の担い手としての公務労働は疎外された形態をとる、とした。
→ 公務労働は、国家の階級的支配抑圧の目的を担わされ、他方で、住民の共同業務、社会の共同利益の担い手として期待される。という二重の規定性のもとにおかれる。
→芝田の結論/階級的視点を明確にし、国家権力に対する階級的対抗関係の立場にたち、住民の共同利益のために労働運動をすすめること、そして共同業務の担い手として仕事上でも専門的力を発揮すること、を公務労働の課題とした。
~ 芝田説は、公務労働の存在理由を、共同業務、共同利益においた/ これ移行、活発な議論が展開

☆「国家の二重機能」を反映した「公務労働の二重性」論
・「国家機能の二重性」とは、国家には階級的機能と公共的機能との2つが存在する、というもの
→ 芝田説が、一方での「階級国家」と他方での「共同業務」との二重性を論じたが、ここでは二重性が国家そのものの機能の二重性に置き換えられた。/ 両説を総括すると・・・三点

①「国家=官僚機構」と「公共的共同業務=公務労働」との対抗関係を両論とも明確にしている。/対抗関 係にある両極を分かつものは「階級性」
→ 公務労働が、官僚機構から独立して発展するには、階級的視点を明確にし、憲法の活用、民主主義の発展を期さなければならない/自治体にあっては、民主主義と住民自治への依拠

②公共性を社会の共同業務、住民の共同利益に求めている。
→ この主張は、現代の公共性(公共空間の基準)を、明らかにしようとするときに大きな意味を持つ

③社会の共同業務の存在を、歴史貫通的な前提においている。

*問題点、問題意識… ③の「共同業務の前提」が妥当かどうか

 あらかじめ結論を言うと/資本蓄積論から見て大きな欠陥をもつ。公務労働論としても、新自由主義による公務労働の市場労働化の時代に、その効力を失う 
~ 資本主義的生産様式のもとでは、共同業務が国家にではなく、何よりも資本に包摂され、解体される傾向にある。

◇資本主義生産様式による共同業務の営利材料化

・「共同業務」の視点で最も重要な点/資本主義に独自な生産様式が確立するまでの社会と、それ以降の社会を区別すること
→ 機械性大工業が支配的になった時期から、古くから維持されてきた共同業務は、ことごとく営利の材料に。
/社会資本整備 建設会社など高い生産力と大量の長期資本の調達に株式、信用制度が活用
→それ以前/個々の私的業務の生産力が低いため、社会の共同作業が不可欠。社会成員の協業と共同体の存在が諸個人の生存に先行していた/この時代には、共同業務を掌握する国家が住民を支配する関係が生まれる
/エンゲルス「どこでも政治的支配の基礎には社会的な職務活動があった」「政治的支配は自分のこの社会的な職務活動をはたしたばあいにだけ長くつづいた」

*歴史区分にした問題の整理
①生産力の低い社会では共同体と共同業務が諸個人の生存の前提
②国家は諸共同体間の共同業務を包摂して共同体と諸個人を支配する
③機械制大工業以前の生産力の未熟な社会では、共同業務を掌握した国家による住民支配が続く
④資本主義生産様式は、高度な「資本の生産力」により社会の共同業務を市場化、営利材料化する
⑤資本主義に独自な国家は資本によるこの共同業務の営利材料化を促進する。
 (メモ者 資本の横暴と対決する労働者の運動が会権を生み出すという弁証法的関係がある、)

・資本主義以前の国家は、「階級的機能+公共的機能」の二重機能国家/ しかし、資本主義国家の本質は共同業務や公共的機能を担うことではなく、逆に資本の営利対象に転化しようとする点にある。/階級国家としての政治的性格を一層鮮明にする。
→ 国鉄、住宅公団・道路公団の民営化、公共事業の企業化(PFI)、保育・福祉・医療の市場化/社会の共同業務が、官僚機構を通じて資本主義的市場に投げ込まれていく

~この視点から公務労働を「官僚機構VS住民自治の対抗関係」として把握した池上惇説

3 官僚機構と住民自治との対抗関係のなかの公務労働

◇資本主義国家の本質にかかわる池上説

・従来の「国家による共同業務の包摂」説、「国家の二重機能」説と違うのは資本主義国家の捉え方
→ 資本主義国家の独自性 /共同業務を住民からとりあげて、資本の営利材料に再編成する。共同業務を解体する点にある
→ 「共同業務の営利材料化」をすすめるのは官僚機構/ では、資本主義国家のもとで、公務労働が生まれ成長してくる存在根拠は…? 

◇新しい公務労働の原型としての工場監督官

・工場法 マルクス「社会がその生産過程の自然発生的な姿に加えた最初の意識的な計画的反作用」/であり、労働者階級がはじめて獲得した国法、「階級として、殻の自身が資本との自由意志的契約によって自分たちと同族とを死と奴隷状態とに売り渡すことを妨げる1つの国法」
~ この規制を実行させるため、工場監督官が任命/ これが資本主義のもとでの新しい公務員
→ 資本主義国家は、労働者階級の力と知恵によって、逆用され、資本主義生産様式に介入することを義務付けられた。

・新しい公務労働の起源
①資本主義蓄積過程は、階級対立に起因し、自由権とは異なる生存権、発達権など社会権が生まれる
 ② 社会権は、社会にたいする国家の介入を呼び起こす
 ③ 新たな公務労働は社会権の保障を共同業務とする住民の利益を担って発展する

~ 自治体労働者の場合/ 社会権をみにつけた住民は、社会権を担う公務労働を自由に使いこなして自治能力を発揮する。よって公務労働がその本来の役割を発揮するためには住民自治の力に依拠しなければならない。
→ ここに福祉国家的公共圏が形勢され、新たな福祉国家型自治が形勢される。

・同時に、新しい公務員といえども、資本主義国家のもとでの公務労働、官僚機構の末端に位置づけられた公務労働でもある。

 ~ 工場法は、女性・児童労働を制限するかたわら、男子成人労働とリレー形式の児童労働を組み合わせ利用する都市型工場の農村型工場に対する優位性を保障し、機械制大工業の資本蓄積を推進する手段に逆用し、工場監督官をその監視にあたらせようとした。

・住民、労働者の側か、官僚機構、資本の側か、新しい公務員は選択を迫られた
~ 工場監督官、保健監督官、教育監督官、救貧法補助委員、慈善委員会監督官、刑務所監督官など

4.「新しい公共」のガバナンスで問われる公務労働の公共性

◇公務労働が依拠する「共同性プラス権利性」の公共性
・前節までの「戦後公務労働論」の成果/ 公務労働の存在理由・根拠を明らかにするもの
→ 自治体労働者の場合/①地域社会の共同業務、住民の共同利益 ②社会権に代表される現代的人権
(メモ者 2つと言うより、②を軸に、資本に営利材料化、解体する①に対し、対抗・再構築するという関係ではないか。権利性と権利性にふさわしい共同性という意味か?)

・共同性プラス権利性の2つが自治体そのものの存在理由を示す基準(公共性)

①共同性/地域社会の共同業務であり、住民の共通利益を担う課題、領域は公共性をもつ
 地域の環境保全、健康・安全、子どもの保育・教育、コミュニティ共有の文化など

→ ★問題は「共同・共通利益」という概念が現実に存在するか?
・ 資本主義社会では、階級的利害対立を基本に、住民相互の利害が分断され、対立する関係にあり、/社会構成員すべてにまたがる「共同性」は成立しない。
   ~ 環境保全をもとめる住民 VS 開発を推進する業者 など
・共同性は無意味になったか、というと、そうではなく、ここに住民自治による公共空間の意義が出てくる。

~利害の分断・対立を克服して共同性の世界を開くためには、公共空間によるコミュニケーションによる了解・合意に向かうほかない/ 住民自治とは、公共空間における共同性の確立・合意

②権利性/ 国民が互いの共同利益と認めたものを法制度化したもの/共同性の歴史社会的蓄積。共同性を個人化した蓄積物

→ ★重要なのは、人権として確立した課題は、社会構成員内部の利害対立・意見の違いがあっても、公務として位置づけられる。

◇新自由主義のもとでの「市場機構VS公務労働」の対立関係

・資本主義国家の官僚機構にたいして公務労働が立ち向かうときには、①階級性 ②公共性、を武器にするというのが、戦後公務労働論の結論
・ところが90年代以降の新自由主義分権化のもとでは、「官僚機構VS公務労働」の対抗関係にあわせて、「市場機構VS公務労働」の対抗関係があらわれ始める。今世紀には、後者が主要な争点に
→ 官僚機構が主要な相手の時代は、公務労働が官僚機構に組み込まれるかどうかがまず問題だった/新自由主義のもとでは、公務労働が市場労働に変質させられるかどうかが主要な争点
→ より正確には/「官僚機構VS公務労働」の対抗関係が、資本蓄積の新たな展開を背景に、「市場機構VS公務労働」の対決軸を生み出した。
→ 資本主義国家(官僚機構)は、「共同性プラス権利性」の福祉国家的公共圏を打ち砕き、公務の諸課題を市場の世界に投げ入れ、資本の営利材料に変質させる方向性をもつから/ 新自由主義国家は、資本主義国家に独自な本性をむき出しにした国家

★重要な点/ 新自由主義が「官から民へ」の名の「公務労働の市場化」を、「国から地方へ」という「分権化路線」をセットで提示していたこと。/分権化が「中央集権VS地方分権」の対決構図で進められた
→ 新自由主義が「分権化」と「市場化」と一体で持ち出すとき、「分権化」の接点によって新自由主義に飲み込まれてしまう「地方分権論」は、「公務労働の市場化」の面で、新自由主義に飲み込まれてしまう。

・その典型/「ローカル・ガバナンス論」~「福祉ガバナンス」論もその一種
→ ガバナンスはガバメント(政府)に対置されるもので、国、自治体の公的責務、役割を副次的にするもの
・ガバナンス概念は、第一に、自治体と公務労働の公共性を薄めるもの~その集大成が「新しい公共」論/よって「市場機構VS公務労働」の対抗関係の検討には「新しい公共」論の内容を見なくてはならない。

◇「新しい公共」による公共空間の協働化、断片化

・核心は「協働」/ 複数の主体が協働のパートナーシップ関係によりつくりだす公共空間
→ 「公務労働の場」を「協働の場」に切り替えるもの。「多元的な主体に担われる『公共』」(総務省05)
・その目的/「地域の課題やニーズに対応するとともに、簡素で効率的な行政を実現」(地方行革指針05)
→  自治体の安上がり化をねらったもの。/「行政が主として提供してきた公共サービス」を「住民団体をはじめNPOや企業等の多様な主体が提供する仕組み」
→ 自治体が直接担うのは、「地域経営の戦略本部としての機能」(「刷新戦略」研究報告書)/実働部隊は、住民団体、NPO、企業など

*「新しい公共論」の特徴
①地方自治体を「公共団体」というより「(地域)経営体」として把握する
 →経営体の目的は、「効率性」であり、それ故、行政手法にNPMがとられる。
②行政機能を「地域経営体」の「戦略本部」に特化する。/企画立案など少数の特権的官僚集団
③実働部隊は行政の外部にアウトソーシングされる  営利企業と市民団体/目的は安上がり化

 ~つまり、「新しい公共」では、新たな官僚主義がはびこり、営利主義が横行する。/住民は、「地域協働」の名で、地域経営目的に動員される。またはサービスの値引き競争に煽られる顧客となる。
 →「官僚主義的空間」「営利主義的空間」「住民=顧客」の3つの断片化される。

◇NMPの適用による自治体のガバナンス化

・ニューパブリックマネジメント/ 民間企業の経営管理方式を公共空間に適用する手法/その特徴
①「事業仕分け」/公共的業務を、「効率第一」に、行政、企業、市民の3者に割り当てる作業
②公共業務のアウトソーシング化 /市場化テスト、独立行政法人、指定管理者
→ 担い手が、行政・企業・市民以外の準政府機関にひろがり複雑化・多元化・断片化がすすむ。
/これが地方政府のローカル・ガバナンス化を呼び起こす
③行政部門内部の効率化をはかる方式/ 公務員制度改革~ 雇用面では非正規雇用が拡大、賃金では成果・成績主義による総人件費圧縮 

・NMPの適用によって生まれた「新しい公共」とは、多元的な主体の調整・協働化させ、統合させていく「自治体のガバナンス化」が迫られる。

◇ガバナンス化のもとでの公務労働の変貌

①効率第一主義が進行/ コストパフォーマンスが第一とされ、効率の第二基準(政策と成果)の観点からみた政策達成度は軽視される。/公共性が効率性の犠牲となる。
→財政効果を第一とした地方行革は、アウトソーシングなど公務に問われる専門性の軽視に向かう

②公務労働の市場労働化が進行/ NMPが、公務労働と住民の関係を、市場における需給関係に置き換える傾向を持つから。その傾向は
→ 1.契約利用方式 2.消費者主権に擬した選択の自由 3.市場原理に近い受益者負担主義

・こうして公共的専門性にあるべき公務労働が、市場労働に変質し、その過程で公務の専門性が希薄化する
~ 故に、公務労働の専門性が問われている

5.コミュニケーション労働としての公務労働の専門性

◇住民生活と人間の労働の三大領域

・公務労働を必用とする住民の暮らしを見る/ 住民の暮らしを担う労働は3つに分類される。 
①人間と自然との間の物質代謝を担う労働
②人間が人間を世話(ケア)する労働/保育、教育、医療、福祉、介護など社会サービス労働
③物質的生産労働、社会サービス労働の発展の中で生まれた「情報関連労働」
→ 言語・情報の持つ独自機能は「制御」と「コミュニケーションの媒介」。この発展を呼び起こす。

◇コミュニケーション関係を媒介にした公務労働全般の専門性

・人間の主要労働が「物質的生産労働」「社会サービス労働」「情報関連労働」の3つに分かれるとすれば、公務労働の領域も3つの分野に分かれる

①道路、河川、水路、港湾となど公共事業、上下水、住宅・環境・衛生・公園整備、公害防止、廃棄物処理、防災・防火、などの公務労労働~ 社会資本関連労働(インフラ労働)

②社会サービス労働/ 娯楽、家事代行などは、現時点では市場で売買される私的サービスとして除外

③研究、調査、統計、企画、立案、広報、法務、司書など直接に情報に関する労働 /人口、地理、議会、都市計画、衛星、治安、税務などのほとんどの行政領域にかかわる情報の収集、加工、保存、提供が情報関連部門の労働

・ローカル・オプティマム(地域最適保障)との関係
①の社会的資本関連労働部門は、ナショナル・スタンダードにもとづく追求が課題
→ 地域の自然、地理、歴史的特性が重視されざるを得ず、地域毎の評価・判断能力が問われる/それだけ地域それぞれにそくした知的熟練が強くもとめられる。

②の社会サービス労働部門は、ナショナルミニマム保障されてローカル・オプティマムが実現
→ 職員配置、施設・環境など最低基準が保障されてこそ、コミュニケーション労働という特質上、専門的裁量権を発揮し、マニュアルを超える労働に従事できる。/ ナショナルミニマム保障とプロフェッショナルフリーダムの統一がローカル・オプティマムの実現が可能となる。
(メモ者 枠付け・義務付けの廃止、契約制度による細切れ労働〔介護保険〕という分権化・市場化と対決関係にある)

③ 情報関連労働では、3つの基準のうちどれにおくかは、部門毎の具体的検討が必要

・公務労働は、3つの労働分野で、専門的判断を必要とする /この能力は、二重の根拠から生まれる
①全国的・一般的知識のうえに、地域の現場に精通しておくことが必要
②地域住民との直接的、間接的コミュニケーションにより進行。住民自治と地域民主主義に立脚して進められる。地域民主主義の水準は、住民相互、地域と公共部門のコミュニケーションの密度で決まる

 ~ 地元に対する精通、地元とのコミュニケーション応答関係にもとづく公務労働の専門性は「知的熟練」
 → 「知的熟練」は、雇用面での恒常性・継続性・安定性が必要となる。/熟練は、一定の経験の蓄積の中で形成される。

・「公務労働の市場労働化」の最大の問題は、知的熟練の衰退を招くこと/公共性とともに専門性を犠牲

◇自治体公務労働における「ヨコの知的熟練」と「タテの熟練」

・公務員の知的熟練とは・・・
・公務労働は、①「全体の奉仕者」〔憲法15条〕として、職種に関係なく、地域社会総体に貢献する ②その担当部署における専門的業務をつうじて、地域社会に貢献する。
→ よって、その知的熟練には「ヨコ広がり」と「タテに伸びる」2つがある。

・「ヨコ広がり型」/自治体の様々な部署を経験して身につける専門性
→ 地域全体を相手にして貢献する公務労働には、総合的判断能力や広い視野が求められる。〔この重要性は、大震災の被災地における公務労働者の不眠不休、粉骨砕身の働きぶりで見事に実証された〕
→ この点は、新自由主義のもと、業務の個別断片化し、安上がりを目的とした民営化のもとで特に重要

・「タテ伸び型」 それぞれの専門職種に必要とされる専門能力
→ 一定期間その業務に専念できる雇用の安定性、継続性 (メモ者 成果主義、多忙化で分断され、孤立化した中では、共同作業・討論を通じた知的熟練は期待できない、)

6.おわりに

・戦後公務労働の成果を確かめ、公務労働を「階級性」「公共性」「専門性」の3つの視点から検討してきた。
・この検討のまとめとして最も重要な点/新自由主義分権化路線がこの3つの内容を攻撃していること
→ この対決には、公務労働者が住民と一緒になって階級性を堅持すること/ 公共性の担い手としての誇りをもって公務労働に従事すること /官僚主義、営利主義には期待できない専門性をもって地域住民の信頼を獲得すること ―― これが一人ひとりの公務員に問われている。

・公務員バッシングにたじろいではならない/公務員バッシングは「役人バッシング」の偽装形態/ マスコミなどの論調・風潮は、すべて古来の役人イメージによりかかっているにすぎない
→  ただし論調に手を貸している勢力が2つある。/エリート官僚とそのもとでの小役人、自治労主流派。(部落解放同盟と一体なった行政のゆがみも)
→ 今必要な、2つの勢力と手を切った、新しい公務員の姿(本来の姿)を、仕事そのものと労働運動を通じて明らかにすること/その時の公務労働者の拠点が「階級性」「公共性」「専門性」。/一人ひとりの公務員が、地域の現場で、「階級性」「公共性」「専門性」を発揮するとき「役人バッシング」を偽装した「公務員バッシング」の本質が暴き出される。

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