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福祉国家型地方自治と公務労働 備忘録①

 二宮厚美、田中章史両氏による「福祉国家型地方自治と公務労働」よりの備忘録その①。
  古典的市民自治と違い、憲法のもとで社会権の保障を国に迫る権利主体としての住民という視点をすえて、福祉国家を解体する新自由主義的分権論の仕掛け、「集権VS分権」を地方自治論の流れを踏まえて系統的に批判解明している。補完性の原理論などに象徴的だが氏が、25条を空洞化させる「分権論」へ、深まりをもって迫っているのがわかる。
 新自由主義、福祉ガバナンス、発達論や平等論、コミュニケーション労働などそれまでの著作の解明や渡辺治氏、後藤道夫氏、進藤兵氏の論考と立体的にとらえると、より深く考えるところがある。
 この福祉国家型地方自治をうけての現代の対決点、「官僚主義VS公務労働」の備忘録は②で。実はこれが肝!

【福祉国家型地方自治と公務労働①】          2011/9   二宮厚美、田中章史

■「国と地方の役割分担」と「補完性の原理」

◇地域主権改革が描く3つの自治体像

①「国と地方の役割分断論」②「住民に身近な行政」を「総合的に担う」総合行政体 ③「自己完結型自治体」~「自己決定・自己責任・自己負担」の団体、団体自治の強化の徹底
 ~ 立法権を強化して、日本を連邦制の国に近づける/ ナショナルミニマム保障の解体路線

◇「国・地方の役割分担論」

①地方は身近な行政課題を1手に引き受ける。②国は国防、外交、司法、通貨管理などに主張 
~ 基礎自治体は福祉国家的機能、中央政府は軍事国家的機能、広域行政は開発国家的機能

◇「補完性の原理」とは公的責任の配分の考え方
・憲法は「平和的生存権」保障を「国の役割」の第一に規定/前文。役割分担論が出てくる余地はない
→ ただ、多くの「分権論」が「役割分担論」が「補完性の原理」を導きだそうとしている。

・「補完性の原理」/もともとカソリックの個人主義、自助義務を中核としたもの/個人で出来ることは個人で、そして地域、基礎自治体、広域自治体、国家と単線型の補完関係を述べたもの。

・「公的責任の配分」の考え/公的責任とは住民に対する公的な応答責任~ この責任が「最も身近な地方自治体に課せられている」点に最も重要な意味
→ 国と地方の役割、機能の分担でなく、公的責任の配分/国は地方の公的責任を補完する関係/責務の補完的分有、共有関係 ~住民は地域の環境保全についても地方自治体を通して国の補完的責任を追及できる。「役割分担」では、追及できない。

◇「補完性の原理」の限界――憲法のもとでは住民は権利の主体
・「役割分担」でなく本来の「補完性の原理」で問題ないか、というと、大きな限界がある

①補完性の原理が、個人の自助責任を出発点にしている点
 → 現代の住民は、生まれながら自助義務を課せられた市民ではない。生まれた瞬間から社会権を持つ公民  
/「補完性の原理」によらなくても社会権の保障を国・自治体に求めることができる。
/自助を基礎とする「補完性の原理」は有害でさえある。古い市民道徳の蒸し返しの根拠
・現在必要なのは「公共性の原理」~ 国・地方に公的責任を果たさせる原理

②ナショナルミニマム保障を曖昧にする「補完性の原理」
・市民的自助責任・義務を出発にしたことの裏返しで起こる問題 
→「補完性の原理」では、直接責任を問えるのは自治体。補完的責任を負う国には間接的に問えるだけ。
・社会権を憲法で保障された住民は、保育・教育・福祉・医療など公的責任を直接国に問える ~ ナショナルミニマム保障は、国の直接責任に属すること

③「新しい公共」の露払い
・「補完性の原理」には、「公民館責任分担論」のつけ入るスキがある
・「公民館責任分担論」とは、自治体の公共空間を「自助、共助、公助」の三者構成によって描く議論
(メモ者 包括ケア研究会は、介護保険、医療保険を「共助」に位置づけ、住民ボランティア・NPOを「互助」と4者構成にしている。ここには社会保障、社会権の思想はない。)
 → 「自民の自助→ コミュニティの共助 → 基礎自治体の公助」という下位から上位に向けての責任の補完関係を捉える論理は、「補完性の原理」と瓜二つ


*民主党の「地域主権戦略」の描く自治体は、「補完性の原理」と「国・地方の役割分担論」の混同・混交
 → その産物が「自己完結型自治体」となる。
  「役割分担論」で、ナショナルミニマムの責任を自治体に負わせる / 立法権、財政権を地方に「分権」する ~ ナショナルミニマム保障が問われる行財政領域・範囲とその水準の二面で、自由裁量権が拡大し、ナショナルミニマム保障は解体される。/そのため自己責任・自己決定・自己負担の総合自治体が必要となる。
 → 義務付け・枠付けの廃止、一括交付金化は、その先行的な実施

■福祉国家型地方自治とナショナルミニマム保障

・「地域主権改革」の描く自治体は、地方自治論の系譜にそくせば、①古典的市民自治論 ②戦後正統派自治論(便宜上の仮称/シャウプ勧告)③新自由主義分権論の3つの混成の産物

Ⅰ.近代社会の古典的市民自治

◇近代の集権国家と市民社会の共同事務
・市民を主体とした自己完結型自治 ~ トクヴィル 1830年のアメリカ・タウンシップ型市民自治
→ 近代市民社会は、過去の市民社会と異なる点は、上部構造としての国家としては分離の関係にある。/市場原理が共同体を解体する以前の市民社会は、共同体的諸関係によって市民社会と国家とが硬く結びついていた(中世都市国家)

~ 近代市民社会における市民自治は、国家からの自由を基本とした「地域共同体」の自治として成立
/古い共同体の「狭さ」は、市場原理の自由な展開にとって障害物として打ち砕かれた。/自己完結型団体自治

 → しかし、それは理念型。実現してない。唯一の例外は、アメリカ・タウンシップ型市民自治
/なぜか? 近代市民社会は、現実には近代資本主義がとる社会形態。現実にあるのは資本主義の内実であり、近代市民社会はその形式/資本主義の現実とは市民社会でなく階級社会/市民社会は、現実の姿を多い隠すベール。仮象 /アメリカは過去の封建制が存在せず、独立自営の清教徒市民を担い手とした。国家なきタウン

・賃労働者階級の都市型共同業務は、国家からの自由ではなく、逆に国家によるナショナルミニマム保障を引き出す性質をもっている。

・「地域主権戦略」が描く自治体像は、古典的市民自治の自己完結型自治体の盗用である

2.戦後日本における正統派系譜の自治体

◇出発点としてのシャウプ勧告 ~ 憲法とシャウプ勧告を父母として生まれたのが戦後地方自治。これを共有し正当とみなす立場を「戦後日本の正統派自治論」とする
・戦後地方自治は「古典的市民自治論」の継承と断絶の二面性をもつ

①シャウプ勧告は、古典的市民自治を継承したもの
・国・地方間の事務配分と行政責任の明確化、事務配分にあたって特定の事務を特定の1つの政府機関に割り当てる
 → 基礎自治体に割り当てる事務と責任を明確にすることで、その財政責任も課すこととなり「自己決定・自己責任・自己負担」の自己完結的自治体を想定したもの。
・市町村優先の考え方も同様 「市町村が適切に遂行できる事務は」県・政府に「あたえられない」
 → 「補完性の原理」の日本への手協

②平衡交付金の創設 ~ 古典的市民自治との断絶
・ナショナルミニマム保障に必要な財源に不足する自治体に対して国から給付する交付金/ 自治体サイドの積み上げ方式であり、自治体に最低必要な財源を保障するもの
 → シャウプ勧告は、国庫補助負担金を廃止し、平衡交付金により、自治体の一般財源を保持しようとしたが、平衡交付金の創設は、「独立財政主義」の破たんを意味する。

・なぜ平衡交付金が必要となったか  地域間の不均等発展 / 生存権をはじめ社会権の登場!
 → ナショナルミニマム保障が国民国家の課題に。/福祉国家的公共圏の誕生

◇戦後日本にあらわれた福祉国家的公共圏
・自由権を土台にした市民社会的公共圏/ 国会からの自由になった市民が共同業務のために作り出すもの
・福祉国家的公共圏/ 住民が社会権保障のために国家の関与を要請し、作り出すもの
→福祉国家の住民は、生存権などナショナルミニマム保障を要求できる権利主体/ その市民は、かつての独立自営の市民でなく、資本主義の労働者階級

・平衡交付金は、福祉国家型地方自治の萌芽/主役はあくまで、自己完結型自治体・古典的市民自治

◇主役「古典的市民自治」と脇役「福祉国家型自治」として地方自治論
・重大な矛盾を内包/不均等発展のもとで独立財政主義が進行→ 地域間財政調整の必要性 → 主役が脇役の役割を高める / 独立財政主義にこだわると、逆に平衡交付金がますます必要となる
 → 財政調整が不十分だと、ナショナルミニマム保障を自治体の責任にできず、国家の関与が必要に。/実際、  シャウプ勧告により廃止された「義務教育国庫負担金」が、すぐに地方の要求で復活/医療では、予算補助(51年)、国民皆保険制度の発足(61年)と国庫補助抜きに成立しない状況に。

*ナショナルミニマム保障の課題が重要になると、国・地方の事務配分と自治体の独立財政主義を提起したシャウプ勧告は大きな矛盾を抱えこんだ。

・この矛盾が今世紀に入るまで表面化しなかった/ 自治体が国の機関事務のもとにおかれ、開発優先の集権的体制が続いている間は、「古典的自治」と「福祉国家的自治」は、ともに「地方行政の集権的動員」に反対する点で一致していたから 

3.台頭する新自由主義的分権化路線

◇「財政錯覚論」を起点にして
・新自由主義にもとづく分権化は、福祉国家の課題を自治体に転嫁し、その解体をめざすもの。その道具立てが「財政錯覚論」

・財政錯覚論/ 公的財政支出の世界では、市場の中とちがい受益と負担の関係が不明確/よって住民は、負担抜きの利益をもとめ(負担抜きの受益が可能という「財政錯覚」)/福祉国家は、無条件に生存権保障の利益を与るものだから、「国民のたかり」がうまれ。/国家財政が破たんする、というもの

◇地域単位の受益者負担主義から福祉の市場化へ
・「財政錯覚論」の結論は、地域を単位にした受益者負担主義 /受益と負担の透明化・自己完結型自治体
 → 福祉国家の課題を自治体に転嫁する意味がここにある/ 福祉国家の分権的解体
 → 受益者負担主義に包摂された福祉は、あと一歩で「市場原理」に結びつく

◇典型モデルとして「自己完結型自治体」
・「福祉国家の分権化→地域受益者負担主義→福祉の市場化と「三段跳び」で 福祉国家を解体する
 → この筋書きをすすめるためには、自治体を「地域受益者負担主義」に染め上げる必要がある。
 → そこで、新自由主義は、古典的市民自治にもとづく自己完結型自治体に目をつける。
(メモ者 その「アメ」的道具立てが、団体自治の強化)

・自己完結型の自治体は、応益負担原則に向かわざるを得ない
→ 自治体ごとの税率が違えば、企業・高額所得者は、累進性の低い地域に移動するので、地域ごとに応能負担を強化することは極度に困難
(メモ者  財界は、地域間の減税合戦を期待し、「分権化」を推進する)

◇「福祉国家の黄昏論」
 グローバル化のもとでは、税率の安い国に企業や高額所得者が移動するので、国民国家といえども応能負担をつらぬくことはできず、「所得・資産税制の空洞化」、「福祉国家の黄昏」をもたらすと展開される。

・福祉国家にかわり、福祉課題を担う「地域主権型自治体」
→ 応能負担原則による福祉国家に変わり、地域単位の応益負担、という論理につながる

・アンチ新自由主義論も籠絡させる「グローバル化のもとでの福祉国家の黄昏論」
→グローバル化を所与の前提とすると、「地域受益者負担主義」の隘路に陥る。 
(メモ者 GDPの6割は、家庭消費である。いくらグローバル化しようが商品は売れなければならない、という制約からはのがれられない。ここには生産と消費をめぐる矛盾と階級的な対決点がある。)

4.現代的地方自治から福祉国家型地方自治へ

◇現代的地方自治とは何か
・「国民の生存権保障を地方自治と全国財政調整によって実現しようとするもの」(重森暁)
~福祉国家型地方自治 /市民社会的公共圏が、福祉国家型公共圏に変化する過程で誕生

◇2つの「公共圏」の異同
①社会の共同業務の連続・断続面 
 →共同業務が公共性の第一の構成(治安、相互扶助、教育、道路河川の改修管理、防災、公衆衛生など)
 /現代社会は、多数が賃労働者であり新たな共同業務が発生(保育・介護など福祉、地域医療、住宅・交通、上下水道、社会教育、失業対策、環境保全、文化・スポーツなど)
 ⇒重要な点/「拡大する共同事務」は、福祉国家型公共圏への推転の際の連続面を示す/現代において公務労働が増大せざるを得ない根拠

②住民の有する権利の転換/消極的自由の「自由権」から、積極的自由としての「社会権」~「国家になにもさせない自由」から「国家に何かさせる自由」へ/ 公共圏空間の構造転換
 →市民社会公共圏は「何もさせない自由」を武器に、市民相互の共同業務を自発的かつ自由に担う自治体を創出。福祉国家型公共圏に生きる住民は「国家になにかさせる自由」をもった「権利主体」

◇憲法の保障する3大社会権と国家の役割
・教育権/国民の教育を受ける権利→国家の教育保障の義務→国民は教育保障の義務を国家に果たさせる義務

⇒最も重要な点/国民は「国家に対し生存・教育・労働の保障を義務付ける権利」があり、国家はただ「生存・教育・労働を保障する義務」があるだけ
・福祉国家的公共圏の住民は国家に対し「やらせない自由」と「やらせる自由」の両方を持つ

・国・地方自治体は、①社会の行同業務を反映した共同性 ②国民住民の権利水準を反映した権利性 の2つの実現を担って存続している。

◇福祉国家からみた「地域主権戦略」の問題点
①国庫補助負担金の一括交付金化 /(メモ者/団体自治の裁量権の強化)
②国から義務付け・枠付けの廃止
③国の制定する行政水準の撤廃が、地方の条例制定権を拡大/ 立法の分権化
 
~ これら3つの内容は「古典的」「戦後政党派」「新自由主義的」までが一致する内容/翼賛状況の根拠

◇「三位一体改革」の評価をめぐり
・「地域主権戦略」の先例は、小泉改革の「地方税・補助金・交付税の三位一体改革」
→ 多くの地方自治論者は、主旨には賛成し、地方自主財源の拡充がなかった点を批判しているだけ。

◇今必要な批判、その試金石/ 国庫補助負担金の廃止、義務付け枠付けの廃止をどうみるか
・ナショナルミニマム保障と国庫負担金の役割
 → 国民の側が国に負担を義務づけた財政 //国民の人権保障のためにもの
 → 福祉、教育、労働の権利にかかわる負担金と、道路建設の負担金は同列ではない。
・社会権には、「義務付け枠付け」が必要 
 社会権は、憲法上、地方自治に優先する! /地方自治の名で社会権を侵害することはできない
 → 保育所など基準以上充実は今でも可能。/廃止は「引き下げ」の自由~ 知事会の主張の誤り
・自治体の一般財源にも影響する「義務付け・枠付け」の廃止
 → 国庫負担金の基準(それとセットされた地方負担分)が地方交付税の算定を左右している

*国庫負担金は、社会権にかかわる行政領域では、それ自体がナショナルミニマム保障を担うと同時に、地方交付税の算定を通して、ナショナルスタンダードを左右するもの。
~「独立税プラス財政調整」の限界は、シャウプ勧告で実証済み

*一般財源化の「矛盾」
→ 自己完結型の地域受益者負担主義が貫徹すると、費用・便益分析による効率化が課題となる/ それは個々の行政目的。課題を特定しないと評価できない /それは自治体と国の関係でも同じ
→ 自治体向けの包括的一括交付金は、その財政効率を引き上げるためには、目的も使途も特定された「ひも付き補助金」(国庫負担金)に切り替えたほうがよい、という議論が必ず出る/(メモ者 でないと一括交付金は、算定根拠のない「つかみ金」になる ~ 都市と地方の財政調整を説明できない)

◇ニューディールの教訓と現代的地方自治――分権化に待ったをかけたGHQ
GHQ覚書「行政事務配分の基本原則」(1950/9)
~ シャウプ勧告(49/9)から、勧告に基づく日本型の「行政事務再配分に関する勧告」(神戸勧告50/2)の間に出されたもので、神戸委員会に対し、福祉と公衆衛生分野を対象にして「分権化」に待ったをかけようとしたもの。

/その内容は
①公衆衛生、福祉行政の市町村単位への分権化は、30年代以降のアメリカでは破たんしつつあり、行財政責任は、州を中心にしたより上位の団体に移行している。
→連邦政府のニューディール政策で失業対策など改良政策に伝統的分権主義が妨害した経験をのべたもの
②アメリカには存在しない憲法25条と福祉立法を高く評価。それはアメリカが目指しているもの
~公衆衛生・福祉の中央政府による財政負担を、「どの国においても完成してない成果」と評価
③シャウプ勧告の「分権化」構想は「誤り」で現行組織を「めちゃくちゃにしようと企てることは一大後退」と警告を発した
として、神戸委員会の「行政事務再配分」案に同意しない、日本国民の衛生福祉に好ましくない。

→生存権保障行政と国家・自治体/ナショナルミニマム保障が問われる領域では、「単一の行政主体で事態が完結すべしというシャウプ勧告」は通用せず、国家的責任及び全国的財政調整機能と地方自治によって担われるべき。

5.福祉国家型自治体によるローカル・オプティマスの達成

◇福祉国家の対抗線上にある「市民が主役」のシビルミニマム論
・シビルミニマム論/都市型市民自治が「市民福祉」を実現する際の政策公準を意味し ①生存権=社会保障 ②共用権=社会資本 ③環境権=社会保健 の三領域で設定(松下圭一)
→ 70年代の革新自治体高揚期に一定の役割を果たしたが、/現代の政策公準としては役だってない
・今、求められる自治体の指導理論は、ローカル・オプティマス(、ナショナルミニマム保障を土台としての地域最適保障)
・松下の議論 「補完性の原理」と同構造で、結論的には、シビルミニマムが主役、ナショナル…は脇役。
・この論は、「自発的独創的市民活動」を起点に導かれもので、国・自治体の役割を極めて限定的に押さえ込む「小さな政府論」
 →松下「行政は、市民生活の最低保障、つまりミニマムだけをおこなうのであって、それ以上の市民要求は市民個人の負担と責任において市民の自由な選択にゆだねられるべき」/新自由主義の「民活」論と同構造
・新自由主義と対抗できない地方自治論は使い物にならない ~  憲法のもとでの地方自治の指導理論ともなりえない。

◇ナショナルミニマムの担い手は国民・住民
・福祉国家型地方自治は、シビルミニマムを理念にした市民自治を逆転し、最初にナショナルミニマムを置く
→その起点は住民自治であるが、その住民は、社会権の実現を国家に突きつける権利主体。/よってこの自治は、国家によるナショナルミニマム保障を自由に使いこなす自治
→「ローカル・オプティマス」とはナショナルミニマム保障を自由に駆使して自治体の行政水準/「ポストの数ほど保育所を」は、ナショナルミニマム思想による先駆的運動であった

◇ナショナルミニマムの持つ三つの性格
・ ローカル・オプティマスとの関係/
①いつでもどこでも保障されるべき最低限の基準・水準/生存権、教育権など/住民自治も侵害できない
②全国標準(ナショナルスタンダード)の意味/最低基準より緩やかな概念/道路、河川整備など
③全国的指針(ナショナルガイドライン)/将来の方向性。ナショナルミニマムを起点した選択肢

~ この分類は相対的なものだが、福祉国家型地方自治でのナショナルミニマムは、住民自治による活用のもとで、この三重の性格のものに再編成されよう

◇ナショナルミニマムと地方自治、ローカル・オプティマスの関係
①「上積み、横だし」の行政/ナショナルミニマムからはみ出た領域を地域の実情にあわせ包摂
 → 財政的には、国庫補助負担金が、ナショナルミニマム保障として不可欠/戦後の国庫負担金の問題点は、それに依存したから地方自治に支障が生じたというのではなく、実際の国庫負担金があまりに低く、自治体の超過負担を強いて、地方自治を損なった点にある。/超過負担は主に、学校・保育所・公営住宅建設、保健所・保育所の職員配置などナショナルミニマム行政領域で発生していることに現れている。
→ 地域にあわせた「上積み、横だし」を保障する十分な国庫負担金が必要

②ナショナルスタンダード領域/国庫負担金は 地域の特性・属性に合わせ可変的な指標に則して、大括り・包括的なものに。/その代表は、道路、河川、港湾、公園など社会資本管理行政/官僚統制は排する

③ナショナルガイドライン/ 国庫負担金と包括交付金の併用。この領域では、国のイニシアチブが重要になる場合、自治体の自主的取組が重点となる場合もあるが、新たなナショナルミニマムの基準の構築に重要な意味を持つ

~ 福祉国家の役割であるナショナルミニマムと地方自治の課題であるローカル・オプティマスとが互いに結びついて「福祉国家型地方自治」の内実を形勢する/両者は対立や相互代替の関係ではない。

おわり 福祉国家型公共圏の世界
・伝統的各種の地方自治論の大半は、国家と地方自治を対立的関係でとらえてきた。それらの特徴は
①地方自治をなにより団体自治の側面からとらえる
②住民自治の担い手の有する「天賦の人権」を、近代的自由・平等の点からだけ把握して、社会権を外してします。

・ 国家からの自由を不動の前提にして市民自治と団体自治を構想するもの。
→「国家からの自由論」に立てば、「集権的統制」と「分権的自由」との対立的関係があらわれる/この「集権VS分権」が社会を席巻すると、集権派は「自由民主主義」に反する守旧派、抵抗勢力とみなされ、「分権ファッショ」というべき状況…大阪府知事、名古屋市長などの急進的新自由主義派が「独裁的」ふるまっても、市民主義的分権派がこれに抵抗できない根拠がここにある。

・福祉国家型地方自治/ 「国家からの自由」ではなく「国家に生存・教育・労働等を保障させる自由」をもった住民による自治は、国に保育、教育、福祉、医療などに行政責任を問うことを含む自治
→ 公共圏の形成原理が、自由権から社会権に転換する/「集権VS分権」は意味をなさない。

・問題は、福祉国家的公共圏の拡充 /そのための3つの検討課題
①公共圏を構成する原理は何か~ 現代社会における公共性とは何か
②その公共圏とどういう領域にまたがるか~福祉国家と地方自治が担う公共圏域の見定め。それは関り方の違いの呼び起こす/前述の「三重」の性格
③公共圏をめぐる対立関係はどこにあるか~「集権VS分権」でなく「官僚機構VS公務労働」

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