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廃炉工程表とメルトアウト

 廃炉に向けた工程表は「核燃料を取り出す作業を開始する時期の仮の目標を10年後」「最終的に原子炉建屋を解体し撤去するまでには数十年に及ぶ作業」というもの。
 しかし「燃料棒」が実際、どうなっているか不明である。核燃料が原子炉建屋の外部に直接漏れ出て、周囲に超高濃度の放射性物質を撒き散らす「メルトアウト」の指摘もされている。
【廃炉に向けた工程表案明らかに NHK 7/9】
【メルトアウト「核燃料」地下水直撃の恐怖! メルトスルーを超える最悪の事態 現代ビジネス】
【汚染水漏洩を防止する地下遮蔽壁はいつできるか ダイヤモンドオンライン】

 そうなれば、汚染の拡大も収束のメドも大きく違ってくることになるのだろう。

 汚染の拡大を防ぐには、地下遮蔽壁をつくるしかない、という意見があり、東電も案をもっているようだが、1000億円の費用を前に、株価対策で後回しにされているとのこと。
【風知草:株価より汚染防止だ=山田孝男 6/20】

 ちなみに、政府は今、原子炉の「冷温停止状態」を目指しているが、「運転」しているわけでもなく、そもそも「核燃料」は燃えているわけでなく、核分裂しているだけで、冷やしても空気を遮断しても「停止」はしない。

 崩壊熱で温度があがりすぎないように、ただ冷やしているだけ。
 そして高濃度の汚染水をつくりつづける。それが地下に流れ出しているとすれば・・・ また「除染」した超高濃度物質の行方は・・・  

 チェルノブイリでも地下ダムを建設しているが、廃炉の作業にも地位ダム建設の作業も高濃度の放射性汚染という環境のもとでの取り組むとなる。 
 

以下、上記記事からの抜き出し。

◆京大原子炉実験所の小出裕章助教
「溶けた核燃料であるウランの塊=溶融体が、格納容器の底をも破り、原子炉建屋地下のコンクリートを溶かして地面にめり込んでいるのではないかと考えています。核燃料の炉心部分は、2800℃を超えないと溶けません(現在の温度は高い放射線量のため測定不能)。溶融体の重量は100tにもなります。圧力容器や格納容器の鉄鋼は1500℃程度で溶けてしまいますから、溶融体は原子炉建屋地下の床に落ちているはずです。その一部は地下の床を浸食し、一部は汚染水に流され周囲の壁を溶かしているでしょう」「もし溶融体が地下水を直撃していれば、いくら循環冷却しても放射性物質の拡散は防ぐことはできません。地下水の流れを止めない限り、周囲の海は汚染され続けるのです。汚染を防ぐためには、原子炉建屋の地下の四方に遮蔽壁を作るしかないでしょう。溶融体や汚染された土壌と、地下水の接触を断つのです」

◆元東芝の原子炉格納容器の設計技術者 後藤政志氏
「圧力容器の鉄鋼の厚さは、十数cmもあります。一方の格納容器の厚さは、20~30mmしかありません。また圧力容器は70気圧にも耐えられるように設計されていますが、格納容器の設定は4気圧です。もし圧力容器を溶かすほどの核燃料が漏れ出たら、格納容器はひとたまりもない。ましてや原子炉建屋地下のコンクリート壁などは単なる覆いであって、超高温の溶融体を防ぐことはできないのです。
そもそも圧力容器も格納容器も、炉心溶融することを前提に作られていません。すでに設計上、破綻しています。ですからメルトダウンして何の対策も採らなければ、溶融体が圧力容器から格納容器を突き抜け、原子炉建屋地下の床に溶け出てしまうのは時間の問題なのです」

【廃炉に向けた工程表案明らかに NHK 7/9】

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、国の原子力委員会や東京電力などが検討している中長期的な工程表の案をNHKが入手しました。この案では、廃炉に向けて最も重要となる溶け落ちた核燃料を取り出す作業を開始する時期の仮の目標を10年後に定めるとともに、最終的に原子炉建屋を解体し撤去するまでには数十年に及ぶ作業が必要だという見方を示しています。

この工程表の案は、先週、国の原子力委員会や原子力安全・保安院などの国の関係者のほか、東京電力や原子炉のメーカーなど原発事故に対応する関係機関が一堂に集まった会議で示されたものです。それによりますと、廃炉に向けての作業は、まず1号機から4号機の使用済み燃料プールに保管されている核燃料の取り出しを3年後の2014年度の初めに開始し、2016年度の末以降、順次各号機で終えたいとしています。最も重要となる溶け落ちた核燃料を取り出す作業については、10年後の2021年度から開始することを仮の目標とし、必要な技術開発を進めていくとしています。この目標はアメリカのスリーマイル島原発事故の処理でかかった時間などを参考に決めたとされています。しかし、福島第一原発の場合、スリーマイル島原発とは違い、格納容器が損傷しているため、作業を進めるには格納容器を補修し、水で満たせるかどうかなどが重要なポイントになるとしています。最終的に原子炉建屋を解体し、撤去するのは、これらの核燃料を取り出す作業を終えたあとのことで、工程表の案では「数十年オーダーの長期に及ぶことが想定される」として、廃炉には長期間の作業が必要だという見方を示しています。福島第一原発の事故の収束に向けた来年1月ごろまでの短期的な工程表はすでに公表されていますが、廃炉に向けた中長期的な工程表の案が明らかになったのはこれが初めてです。国の原子力委員会などでは、この案を基に廃炉に向けた工程の検討をさらに進めることにしています。福島第一原発の廃炉を巡っては、細野原発事故担当大臣が原子炉を安定冷却させるめどとしている今月中旬には、廃炉までを見通した中長期的な道筋を示したいという考えを明らかにしていました。


【風知草:株価より汚染防止だ=山田孝男 6/20】

 そろそろ原発以外の話題をとり上げたらどうかと心配してくださる向きもあるが、そうもいかない。福島原発震災は収束どころか、拡大の兆しが見える。この大事と無関係に政局を展望することはできない。
 京大原子炉実験所の小出裕章助教(61)といえば、いま最も注目されている反原発の論客の一人だ。原発が専門だが、名利を求めず、原発に警鐘を鳴らし続けてきた不屈の研究者として脚光を浴びている。
 その小出が16日、テレビ朝日の番組に登場し、こう発言して反響がひろがった。
 「東京電力の発表を見る限り、福島原発の原子炉は、ドロドロに溶けた核燃料が、圧力鍋のような容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。一刻も早く周辺の土中深く壁をめぐらせて地下ダムを築き、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を食い止めねばならない」
 さっそく政府高官に聞いてみると、いかにも地下ダムの建設を準備中だという。
 ところが、さらに取材すると、東電の反対で計画が宙に浮いている実態がわかった。原発担当の馬淵澄夫首相補佐官は小出助教と同じ危機感を抱き、地下ダム建設の発表を求めたが、東電が抵抗している。
 理由は資金だ。ダム建設に1000億円かかる。国が支払う保証はない。公表して東電の債務増と受け取られれば株価がまた下がり、株主総会を乗り切れぬというのである。
 筆者の手もとに、東電が政府に示した記者発表の対処方針と応答要領の写しがある。6月13日付で表題は「『地下バウンダリ』プレスについて」。バウンダリ(boundary)は境界壁、つまり地下ダムだ。プレスは記者発表をさしている。
 対処方針は5項目。要約すれば「馬淵補佐官ご指導の下、検討を進めているが、市場から債務超過と評価されたくないので詳細は内密に」だ。
 応答要領の中でも愚答の極みは「なぜ早く着工せぬ」という質問に対するもので、ぬけぬけとこう書いている。
 「地下水の流速は1日5センチメートルから10センチメートルなので、沿岸に達するまで1年以上の時間的猶予があると考えている」
 記者発表は14日のはずだったが、東電の株主総会(28日)の後へ先送りされた。
 福島原発の崩壊は続き、放射性物質による周辺の環境汚染が不気味に広がっている。株価の維持と汚染防止のどちらが大切か。その判断もつかない日本政財界の現状である。
 政府当局者の一人がこう言った。「あの(太平洋)戦争でなぜ、指導部が的確、着実に作戦を遂行できなかったか。いまは分かる気がします」
 誰も信じない、東電の「収束に向けた工程表」という大本営発表が続いている。
 菅直人を東条英機になぞらえる向きがある。万事に細かく部下を怒鳴るからだ。東条はサイパン島陥落で敗戦濃厚となった1944年7月退陣。後継首相の小磯国昭が8カ月半。さらに鈴木貫太郎に代わり、原爆を二つ落とされ、天皇の聖断を仰いで戦争は終わった。
 なぜ、早く停戦して戦禍の拡大を防げなかったか。無理筋の戦局打開案が飛び交い、常識が見失われ、国の意思決定が遅れたからだ。今と似ている。いま最も大事な課題は放射能汚染阻止だ。空論に惑わされず、核心へ集中するリーダーシップが求められている。

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