伊方原発の脆性劣化 緊急冷却で破損?!
中性子照射により鋼材の粘り気がなくなり、緊急時に炉心に水を注入すると「熱いガラスのコップの中に冷たい水を入れたらぱりんと割れるように」圧力容器が損傷する・・・ これは手当てしようのない危険。
06年に吉井議員が国会で追及している。原子力安全・保安院長もその危険性とともに、この脆性劣化は、加圧水型で大きい(伊方はこのタイプ、1号は34年、2号は29年経過)、そしてプルサーマル運転では、その中性子量が5%ほど増え、劣化の進行が早い(3号機は16年経過)。日本では、危険性の実証実験もしてない・・・ことを認めている。
この問題は、私も、吉井さんの本から学び、この間の学習会で話をさてもらったが・・・以下は議事録の摘要
【衆議院内閣委員会 2006年5月12日 「中性子照射による脆性劣化についての質疑」
質問者: 日本共産党・吉井英勝議員 参考人 広瀬研吉・原子力安全・保安院長】
〇吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
「中性子によって材料がたたかれることによってもろくなってくるという問題があるんですね。わかりやすく言いますと、要するに、熱いガラスのコップの中に冷たい水を入れたらぱりんと割れるように、もろくなるということはそういう意味なんです。」
「加圧水型原発については、高速中性子が、要するに、今言いました圧力容器の壁、炉壁などに、母材に照射されることによって、中性子が当たりますと金属格子がきちっとした組み合わせのところからずれるものですから、格子欠陥というんですが、これが生じます。そうなりますと、緊急事態発生時などに原子炉の急冷を行ったときに、急に冷やしたときに、金属がもろくなっていて熱衝撃などに耐えられなくなる問題、つまり、原子炉が壊れるという問題を抱えてくるというのが原発の老朽化ということです。」
「もろくなる状況を示すこの脆性遷移温度(メモ者 脆くなる状態が生まれる温度)が、これはどんどん温度が上がっていって、美浜一号ですと七十四度C、美浜二号で七十八度C、高浜一号で八十八度C、大飯二号で七十度C、玄海一号で五十八度Cというふうになっていますけれども、いずれも、運転開始前はマイナス数度とか、あるいはマイナス三十度ぐらいが脆性遷移温度であったものですから、やはり三十年、四十年近く運転してくると、そのことによって脆性遷移温度がうんと上がってきているということをまず読み取らなきゃいけない。もろくなってきているという問題について真剣に取り組んでいかなきゃいけないというふうに思うわけです」
〇広瀬政府参考人 「高経年化に伴う主要な劣化事象の一つであります中性子照射脆化によるものであると認識をいたしております。核分裂により発生する中性子が長期間にわたり圧力容器に照射されることにより、破壊靭性が徐々に低下されるものでございます。」
〇吉井委員
「相対的に、つまり、どれぐらいもろくなったかという点で・・・(運転前との比較で)美浜二号では八十一度C、大飯原発二号では八十八度C、玄海一号では七十二度Cなど、上昇が非常に大きい」。「長期に運転してきて、材料の面ではもろさということについて真剣に考え、取り組んでいかなきゃいけないという問題を抱えてきている」
〇広瀬政府参考人
「加圧水型の原子炉の方が中性子照射量が多くなる傾向にございます。」「一般に、不純物の含有量が多いほどその傾向が大きくなると言われておりますので、このような中性子照射量、また材料の不純物の量等をこれからしっかり管理していくことが重要だと考えております。」
〇吉井委員
「沸騰水型の敦賀一号は、下の方は確かに低いんですが… どんどん使用しているうちに高くなってきて、これは五十度を超えるものになってきている。福島第一原発の一号機については…急速に、わずかの調査期間にぐんと上がっているんですね。」「沸騰水型原発の場合であっても圧力容器の脆化がコアシュラウド(メモ者 水流を安定させるために燃料棒全体を覆っている筒)の問題だけじゃなしに進んでいる。このことを、加圧水型だけじゃなくて沸騰水型についてもこの脆化という問題はかなり深刻に受けとめる必要がある」
〇広瀬政府参考人
「中性子照射脆化によります遷移温度の上昇につきましては、運転管理の面でも十分対応していくことが必要である」「特に脆性破壊に厳しくなりますのは、運転中あるいは事故時に低温かつ高圧力になることでありますので、先生御指摘の沸騰水型原子炉につきましても、特にそのような状況になる事態、例えば原子炉圧力容器の耐圧試験時によく注意をするということが必要になってくる」
〇吉井委員
「東京電力は福島第二原発三号機で、溶接線ナンバーH2というところでひび割れを起こしていますね。」「今までは圧力容器についてはこの程度なら大丈夫だろうと思っていた領域で、実は中性子照射が非常に多いものですから、東京電力のコアシュラウドではひび割れが起こっていたというのが幾つも観測されたというのが事実の問題としてある。」
〇広瀬政府参考人
「東京電力の福島第一・四号機、第二・二号機、第二・三号機、第二・四号機、また柏崎刈羽一号機のシュラウドの溶接線、これはそれぞれ場所が異なっておりますけれども、その溶接線のところで中性子照射によるものと思われますひびが生じております。」
〇吉井委員
「NRC、アメリカの方では、脆性遷移温度が華氏二百七十度、摂氏百三十二度以上になると詳細な安全解析を行えと指示している温度なんですね。つまり、それぐらい原発の老朽化、脆性劣化は深刻だというのがアメリカの原子力規制委員会などでは指示が出されているわけです。
既に炉心隔壁、コアシュラウドではひび割れが生じているわけですし、ほどなく脆性遷移温度も上昇して、百三十二度というNRCが安全解析を指示しているラインに近づいてきているわけです。そこで、私、この点も伺っておきたいんですが、NRCはどういう安全解析を求めているのか、日本はどういうふうな実証試験をやっていこうと考えていらっしゃるのか。」
「十七年一カ月やっていないのは伊方二号ですけれども、そういうものもありますが、どのような実証試験をやっていくのか。」
〇広瀬政府参考人
「加圧水型原子炉の加圧熱衝撃事象、… 低温で高圧力になる事態であるわけでございますが、この加圧熱衝撃事象に、内圧が高い状態で原子炉容器の内面が急冷され、容器の靱性が急冷によって低下をして、内圧と熱応力による高い荷重が発生するという事象が最も厳しい事象と想定をいたしております。」
「現在まで得られております監視試験のデータ等を用いて十分安全性を評価していくということが必要ではないかと思っております。現在まで、我が国では九つのプラントの中性子照射脆化の予測と監視試験データの突き合わせをしてきておりますが、特に加圧水型原子炉につきましてはこの予測がほぼ一致をしておりますので、今後さらに、このような評価手法を向上させていきたいというふうに考えております。」
〇吉井委員
「緊急炉心冷却とか急冷するということもありますから、それにもつかということももちろん大事なんです。
その実証試験も必要ですが、実際にこれだけ脆性遷移温度が上がってきた、劣化してきたといいますか老朽化してきた原発を、日本は地震国ですから、大規模地震のときにもつかどうかということについてちょうどいい装置が実はあったんですね」
「財団法人原子力発電機構が四国の多度津に大型の振動台、起震台を持っていました。これは、兵庫県にE―ディフェンスという新しい振動台をつくったからもう古い方をほうってしまおうということで、スクラップにして完全に解体してつぶしてしまったんですね。
ところが、原発の容器というのは放射化されていますから、一度振動台で実験をやりますと、その装置そのものを管理区域にしないともう使えないんですね。ほかには新しいものを使ったりするわけにいかないんですね。ですから、これを解体する前に、今問題になっている脆化した、老朽化した原発の各機器について、何か、大型振動台を使って耐震性の試験、大型地震に相当するものが来たとしても脆性劣化した部分は大丈夫だという試験を行ったデータがあるのかどうか、伺います。」
〇広瀬政府参考人
「これまで行いました試験の中に、高経年化したものを実際に用いた試験というものは行っておりません。」
〇吉井委員
「通常の軽水炉と、そこで既にもう中性子で脆化している中でプルサーマルだといってプルトニウム燃料を燃やすこと、その場合で発生する高速中性子の数はどのように変化すると見込んでいらっしゃるか」
〇広瀬政府参考人
「プルサーマルにおきますMOX燃料の使用に伴いまして、プルトニウムの熱中性子の吸収がウランよりも大きいために、高速中性子束が若干増加をすることになります。原子炉容器等の中性子照射による脆化についても若干の影響が考えられます」
〇吉井委員
「大体プルサーマル利用で五%ぐらい増加する、約五%というお話でした。」「プルサーマル利用でさらに中性子をたくさん照射させれば、さらにこの軽水炉の傷み方はひどくなってくる。」
「新品の原発の話じゃなくて、老朽化した原発でプルサーマルをやっていこうとする。脆性劣化が進んでいるのに、さらに壊れやすい事態をさらに速いスピードで進めようというやり方が、果たして本当に国民の皆さんにとって安全を守りますと言えるような話なのか」
〇安達政府参考人 お答え申し上げます。
「プルサーマルを含む核燃料サイクルの推進は、エネルギー資源に乏しい我が国にとって、エネルギー安全保障や地球環境問題への対応を考える上で不可欠な取り組みでございます。」
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