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暗闇選挙…国際人権規約違反 

 谷本敏明前県議が、公職選挙法違反(法定外文書の頒布)容疑で書類送検された。後援会員へのニュース配布は内部行為であり規制されるものではないし、今までも行ってきた。なぜ今回だけ? と述べていると報道されている。地域のために私心なく頑張ってきたことは多くの人がみとめるところである。
 そもそも公選法の戸別訪問禁止や文書配付制限などの選挙活動規制の規定は、国際人権規約に違反した反民主主義的規定である。
【国際人権(自由権)規約委員会の総括所見 2008-10-30 日弁連仮訳】 
【国際人権(自由権)規約に基づき提出された第5回日本政府報告書に対する日本弁護士連合会報告書 07/12】

 大分・選挙弾圧大石市議事件では、「国際規約人権委員会」元委員のエリザベス・エバットさんは戸別訪問禁止や文書配付制限などの規定について、「規約に適合しない」と証言している。
 自由な選挙は議会制民主主義の根幹である。起訴すべきでない。

">【国際人権(自由権)規約委員会の総括所見 2008-10-30 日弁連仮訳】

 26.委員会は、表現の自由と政治に参与する権利に対して加えられた、公職選挙法による戸別訪問の禁止や選挙活動期間前に配布することのできる印刷物の数と形式に対する制限などの不合理な制限に、懸念を有する。委員会はまた、政府に対する批判の内容を含むビラを郵便受けに配布する行為に対して、住居侵入罪もしくは国家公務員法に基づいて、政治活動家や公務員が逮捕され、起訴されたという報告に、懸念を有する(規約19条、25条)。
 
 締約国は、規約第19条及び25条のもとで保障されている政治活動やその他の活動を警察、検察及び裁判所が過度に制限することを防止するため、その法律から、表現の自由及び政治に参与する権利に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである。


以下、日弁連の報告書より

【選挙運動の自由(規約25条、19条)】

◆A 提言と結論
 日本の公職選挙法は、全ての候補者と選挙人に戸別訪問を全面的に禁止し、選挙運動のための文書配布を大幅に制限している。これに違反した者は、禁錮又は罰金に処せられ、かつ5年以内の期間公民権を停止される。これは、全ての市民に言論や文書による自由な選挙活動を保障した規約25条及び19条に違反する。
 国は、速やかに公職選挙法を改正すべきであり、裁判所はこれらの事件の判決において、規約による保障を明確に宣言するべきである。

◆B 国際人権(自由権)規約委員会の懸念事項・勧告内容
1 日本における選挙運動の制限は、すでに第3回政府報告書審査のときから委員会が関心を抱く問題になっていた。同審査において、E・エヴァット委員が、選挙キャンペーンおける人々に対する非常に厳格な制約について懸念を表明し、この問題と規約25条における自由かつ真正な選挙に参加する権利との関係を明確にして欲しいと質問した。これは他の委員も疑問を抱いていた事項を代表した質問である。
  しかし国は、「・・戸別訪問が許されますと、贈収賄が発生する機会が生じるかも知れません。選挙の自由と公正が完全に確保されないことになります。この懸念から、この制約は合理的な根拠に基づくものであると考えています。」と答えるに止まり、厳しい制限がどのような意味で規約25条に適合するのか明確に説明しなかった。
 その結果、委員会は第3回審査総括所見の主要な懸念事項(第14項)で、「当委員会は、表現の自由の権利の尊重に関して、法律や判決の中には制限的なアプローチをしているものがあることを残念に思う」と懸念を表明した。

2 さらに5年後の第4回政府報告書にも、この問題について具体的な報告記載がなかったので、同報告書審査において、E・エヴァット委員が、戸別訪問、パンフレット配布、ファックス使用などを禁止することが、規約と両立するものとして正当化することがいかにして可能なのか、賄賂の恐れがあるとか、平等を確保するためであ
るといった説明は十分とは思われない、と再び質問した。
 しかし、国は、前回と同じく「・・わが国においては戸別訪問を禁止することが必要であると考えております。これは、このような戸別訪問は選挙の買収を誘発する恐れがありますし、残念ながら日本におきましては選挙の際に買収事犯が少なからず存在するところであります。」と5年前の答弁を繰り返すのみで、法律による厳しい制限の必要性について、規約との関係を詳しく説明しなかった。

3 第4回政府報告書審査総括所見の中には、この問題について、直接の言葉では懸念や勧告が言及されていないが、同見解(8項)が「『公共の福祉』の概念は、曖昧、無限定で、規約のもとで許される範囲を超える制限を許容しうる。前回の見解に引き続いて、委員会は、再度、締約国に対し、国内法を規約に適合させることを強く勧告する。」と記述していることの中には、明らかにこの問題も含んでいる。

 このように、委員会は、日本における選挙運動の厳しい制限に関して、法律が規約で許される範囲を超えて権利を制限していることに二度に亘って懸念を表明し、その改善を強く勧告していた。

◆C 政府の対応と第5回政府報告書の記述
1 しかし国は、委員会の度重なる要請に誠実に応えていない。今回の審査にあたって、政府は、コア文書「Ⅱ一般的な政治的構造 2立法機関」の項で、国会議員の選挙について、選挙権及び被選挙権の年齢、議員の任期、定数、選挙区などが定められた条文を説明するだけであり、また「Ⅲ人権が擁護される一般的法的枠組み 3憲法等による人権の保障及び制限 (1)人権の保障」の項で、憲法の規程が普通選挙を保障していること、表現の自由を保障していること等を述べるのみである。
 第5回政府報告書においても、「第2部 逐条報告 第25条:参政権」(パラ357)には、「これまでの報告のとおり。」とのみ記述しているにすぎない。

 2 上記のとおり、第3回審査以来、委員会は国に対して、日本における選挙運動の厳しい制限が、選挙運動の自由を保障する規約25条、19条とどのように適合するのか、政府が答弁する買収の恐れや平等の確保という目的と制限がはたして比例原則を満たしているか、について積極的な説明と対話を一貫して求めて来たが、政府がそれに直接かつ誠実に答えないため、規約違反の懸念と法律改正の勧告までした。
 第5回政府報告書は、これに対して、何ら進歩や改善の結果を記述していない。政府は、日本における選挙運動の制限について、もっと詳しい情報を委員会に提出するべきである。

◆D 日弁連の意見
  1 自由権規約19条及び25条は、すべての市民に、「自由かつ真正な選挙」において、選挙し及び選挙されることを権利として保障している。この権利は当然ながら、戸別訪問や文書配布による選挙運動の自由も含んでいる。それゆえ締約国は、規約2条により、規約19条及び25条の権利を保障した自由な選挙を実施する即時かつ無条件の義務を負っており、その義務の不履行は、国内の政治的、社会的、文化的、または経済的理由によって正当化することはできない。

2 しかし、日本では、公職選挙法によって、言論、文書による選挙運動が、刑罰をもって極端に制限されている。
例えば、戸別訪問はすべての候補者と運動員並びに選挙人がすることができない。これに違反すると1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処せられる(公職選挙法138条、239条)。自己への支持を訴える文書の配布も、各種の選挙ごとに種類と枚数が制限されていて、それ以外の文書は配布することができない。例えば、衆議院議員選挙(小選挙区)では候補者一人あたりハガキ35,000枚と2種類のビラしか配布することができない。市議会議員選挙では候補者一人あたりハガキ2,000枚しか配布することができず、自己に支持を訴えるビラ、パンフレットは一切配布することができない。これに違反すると2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処せられる(同法142条、243条)。さらにこれらの罪で有罪になると、判決で5年以下の期間公民権
が停止される制裁があり、候補者がたとえ当選しても失格になる(同法252条)。

3 警察庁の犯罪統計によれば、日本では1946年以来今日まで、戸別訪問罪で41,697人、文書配布罪で49,592人の市民が検挙され、有罪判決を受け、これらの人々の公民権が剥奪された。自由権規約を批准した1979年以降でも、それぞれ4,780人及び7,434人の市民が処罰されている。

  言論表現の自由が最も尊重されるべき選挙に関して、これほど多数の市民が処罰され、資格を剥奪されている事態は、民主主義社会では許されない重大な問題である。

4 日本における厳しい選挙運動の制限については、早くから憲法学者や言論界、政治家の一部の人々から、撤廃するべきであるとの意見が強かった。1967年に、政府の設置した選挙制度審議会も、戸別訪問の自由化や文書配布制限の緩和を政府に答申したが、政府は法改正に取り組まなかった。ようやく1993年10月に、政府
(細川内閣)が、小選挙区制の導入と併せて戸別訪問を解禁する公職選挙法改正法案を国会に提出した。この法案は、衆議院では可決されたが、参議院で否決された。その後両院協議会の協議の結果、翌1994年3月、戸別訪問を禁止する内容に改訂した公職選挙法改正法案が、政府与党と野党との合意により議会で可決されて成立した。結局戸別訪問の解禁は、日の目を見ないまま葬られて、禁止法制は依然として続いている。
 この一連の国会における議論の中で、政府も議員も、日本が自由権規約を批准したことにより、規約が要求する「自由かつ真正な選挙」を国内で実施する義務を負っている旨を説明した者は誰もいなかった。政府も議会も、規約25条が要求する自由かつ真正な選挙を実施する積極的な熱意を持っていないと言わざるを得ない。

5 裁判所も、選挙運動の自由を保障することに極めて消極的である。日本国憲法21条は、言論、出版その他一切の表現の自由を保障している。そのため、戸別訪問罪や文書配布罪で起訴された少なくない市民は、公職選挙法の制限が憲法21条に違反すると主張した。1970年代から80年代にかけて、地裁と高裁で合計10件の
判決が、制限が憲法21条に違反すると判断して無罪判決を下したこともあったが、最高裁判所は、公職選挙法による制限は「公共の福祉」のために必要やむを得ない制限であるから憲法21条に違反しないと判断する判決を繰り返しており、現在では裁判所が選挙運動の自由を保障する判決を下す見込みはない状況にある。

6 1979年に日本が自由権規約を批准した以後、規約19条、25条をたてに無罪を主張する裁判も登場した。1986年の衆参同時選挙に際して、戸別訪問、文書配布罪に問われた郵便局員の祝(ほうり)氏の裁判がそれである。このケースは、第4回政府報告書審査において、前記のようにE・エヴァット委員が取り上げて政府に
疑問を呈したものである。1998年11月に採択された委員会の最終所見(第8項)で、委員会が、「公共の福祉」を根拠として規約上の権利に制限が課されうることに懸念を表明したことには、このケースが反映している。

7 しかし、委員会の総括所見の発表にもかかわらず、このケースについて、1999年4月広島高等裁判所は有罪判決を下した。規約の解釈に関して次の理由を述べている。①規約25条は選挙運動の権利を保障していない。②規約19条は選挙運動の権利を保障しているが、戸別訪問等を禁止する公職選挙法の規程は、公共の福祉のために必要かつやむを得ない制限であり、憲法21条に違反しないのと同様の理由により、規約19条にも違反しない。
 この判決は、国内法の法概念である「公共の福祉」が、規約上の権利を安易に制限する理由に用いられていることを端的に示している。

8 祝氏は上告したが、最高裁判所も2002年9月上告を棄却した。その判決は、単に「公職選挙法の規程が自由権規約19条、25条に違反しないと解されるから、適法な上告理由にあたらない。」と述べるのみで、なぜ規約19条、25条に違反しないのかその理由を全く述べなかった。規約上の権利が日本国内でどのように保護
されているかは、規約人権委員会の重大な関心事であり、最高裁判所は、規約違反にあたらないという理由を説明するべきであった。

9 その後、再び自由権規約と日本の公職選挙法の矛盾を問うケースが発生した。それが今回報告する大石事件である。
  大石氏は、戸別訪問罪、文書配布罪で大分地方裁判所に起訴された。この裁判で弁護側は、公職選挙法の制限が自由権規約19条、25条に違反すると主張し、元規約人権委員会委員であったE・エヴァット氏の大分地裁での証人尋問が実現した。
 女史は、①規約人権委員会は規約の解釈について権限を与えられた条約上の機関であり、締約国は委員会の見解を尊重するべきである。②規約19条と25条は、共に選挙運動の権利を保障している。③規約で保障された権利の制限を考察する場合には、委員会は「比例原則」に照らして考察している。④「比例原則」によれば、除去すべき脅威ないし弊害の存在が明確に立証されなければならず、制限は脅威に比例した必要なものに限られる。⑤自由な戸別訪問や文書配布が、真正な選挙に対する脅威となることが明らかでなく、制限の必要性が正当化されない。⑥大石氏の行為は何らの脅威も生じておらず、処罰と制裁は極端すぎて「比例原則」に適合しない、等と明確に証言した。

 しかし、2006年1月大分地裁は、大石氏に対して、罰金15万円、公民権停止3年の有罪判決を下した。
  判決の要旨は次のとおりである。①規約25条は選挙運動の権利を保障していないが、規約19条はこれを保障している。②公職選挙法の制限は、法律によって定められ、選挙の自由と公正という「公の秩序」を目的としている。③戸別訪問や文書配布を自由化すれば、買収の温床になったり、選挙費用がかさみ、選挙の自由と公正を侵害する。④制限は、数ある運動手段の一つを制限するのみであり、最小限の制限である。⑤従って、制限は目的に照らして合理的な最小限のものであり、必要なものとして正当化できる。
 これはエヴァット氏が説明した「比例原則」を正しく理解せず、「合理性の基準」に依拠して制限を許すものであり、規約人権委員会の見解と異なる。

10 大石氏は控訴したが、2007年9月福岡高等裁判所は、原判決の公民権停止3年の宣告は取消したが、罰金15万円の処罰は維持した。この判決の特徴は以下の点である。①規約25条は選挙活動の自由を保障していないが、規約19条が保障している。②規約は特定の選挙制度を締約国に義務づけていない。③選挙制度をどの
ように設計するか、選挙活動をどのように制限するかは、締約国の国情も考慮に入れて、議会の立法裁量に委ねられている。④選挙活動の制限の正当性審査については、LRAの基準や比例原則などの「厳格な基準」はあてはまらず、制限と目的との合理的関連性、制限によって失われる利益と制限によって得られる利益の利益考量、代替手段の有無、などを総合して判断するべきである。⑤自由な戸別訪問や文書配布は、日本の国情の下では種々の弊害があり、制限は合理的で必要やむを得ない限度を超えるものではないから、国会の立法裁量の範囲内に止まっており、規約19条に違反しない。

 しかし、規約上の権利を、規約と異なった基準でもって制限することは許されず、また締約国の政治的、文化的、社会的事情によって、規約の義務の不履行を正当化できない。これは、規約人権委員会が明言するところである。福岡高裁判決は規約上の義務に反している。大石氏は上告し、事件は最高裁判所に係属している。
<付記>2008年1月28日最高裁は、戸別訪問禁止は規約19条、25条に違反しないとして、上告を棄却した。その理由は示されていない。

11結局日本の裁判所は、規約人権委員会の見解を尊重せず、規約を適正に解釈していない。大石事件は、日本において、規約で保障された権利が、規約と異なる基準によって、規約で許される範囲を超えて制限されている現実を典型的に示す例である。
  国は早急に公職選挙法を改正して戸別訪問を解禁し、文書の配布を自由にするべきである。それに至るまでは、裁判所は、選挙運動に関する事件において、自由な選挙運動が規約で完全に保障された市民の権利であることを宣言するべきである。

以上

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