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「原発推進」を擁護してきた最高裁

 毎日新聞のコラム・・・最高裁は通常、改めて事実認定はせず、原審の法解釈に誤りがないかを調べる、法律審である。
 だが、最高裁はもんじゅ訴訟の際、住民側が勝訴した高裁の事実認定を大幅に書き換え、判決をひっくり返した。09年の柏崎刈羽原発訴訟では、法律審であることなどを理由に高裁判断を追認し、国の安全審査が違法かどうかの判断に具体的に踏み込まないまま住民の請求を退けた。「一貫しない態度で、国側を勝たせたいことだけが一貫している」との住民側弁護士の発言を紹介している。
【反射鏡:裁判所は原発と向き合ってきたか=論説委員・伊藤正志 6/5】

 国民の生命財産、憲法擁護よりも「国策」を優先する最高裁のあり方を、国民が監視していかなくてはならない。
 

【反射鏡:裁判所は原発と向き合ってきたか=論説委員・伊藤正志 6/5】

 東京電力福島第1原発事故の後、「多重防護」という用語をよく目にする。
 電力会社が会員となっている電気事業連合会のホームページには「原子力発電所の安全確保の考え方は多重防護を基本としています。多重防護とは、文字どおり何重にも安全対策がなされていることを意味します」と、皮肉にも書かれている。
 なぜ何重もの壁が破られ、放射性物質の封じ込めに失敗したのか。原因解明はこれからだが、想定外の津波や地震だけに責任を押しつけられないのは、今や明白だ。
 そして、多重防護の最も外側にある壁が「チェック機能」だと思う。一義的には原子力安全・保安院や原子力安全委員会だが、「最後の砦(とりで)」として思い浮かぶのが裁判所だ。
 原発をめぐっては、約40年前から全国各地で訴訟が起こされ、住民らは事故や大地震が起きた際の安全性への疑問を法廷で繰り返し訴えてきた。
 いったい裁判所は、チェック役を果たしてきたのだろうか。
 福島原発事故の事故調査・検証委員会メンバーに選ばれた作家、柳田邦男さんは「あらゆる前提条件が破られた。前提条件とは、いつか破られるもの。この震災の教訓は、そこにあります」(3月29日毎日新聞夕刊、東京本社版)と指摘する。
 国策である原子力エネルギーの推進。それと住民が真っ向からぶつかり合ってきた原発訴訟の歴史を振り返ると、裁判所、特に最高裁の中に、ある「前提条件」が垣間見える気がする。
 その説明の前に、原告の請求を認め、原発の安全性に対し明確にノーを突きつけた判決が2件あることを述べておきたい。
 もんじゅ設置許可の「無効」を確認したもんじゅ訴訟の2審・名古屋高裁金沢支部判決(03年1月)と、志賀原発2号機の運転差し止めを命じた志賀原発訴訟の1審・金沢地裁判決(06年3月)である。
 いずれも高裁や最高裁で見直され、住民側の敗訴が確定した。もんじゅ訴訟は、最高裁が05年、直接ひっくり返した。
 最高裁は通常、改めて事実認定はせず、原審の法解釈に誤りがないかを調べる。専門用語では一般的に「法律審」だから、と説明される。
 だが、最高裁はもんじゅ訴訟の際、高裁の事実認定を大幅に書き換え、判決を下した。
 一方、07年の中越沖地震を受け注目された柏崎刈羽原発訴訟で最高裁は09年、法律審であることなどを理由に高裁判断を追認し、国の安全審査が違法かどうかの判断に具体的に踏み込まないまま住民の請求を退けた。
 同訴訟の住民側代理人、伊東良徳弁護士はホームページで、そんな最高裁の姿勢を「一貫していない。原発訴訟は国側を勝たせたいということだけが一貫していると見るのは私のひがみでしょうか」と批判する。
 確かに、原発を推進する国の判断に従うのが最高裁の「前提条件」だと批判されても仕方ないように見える。
 菅直人首相の要請を受け運転がいったん停止された中部電力浜岡原発1~4号機の運転差し止めを求め、地元住民らが提訴した訴訟は今も係争中だ。
 静岡地裁が住民の訴えを退けた07年10月26日、石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)は、地裁前で記者らにこう述べたのだという。「判決の間違いは自然が証明するだろうが、その時は私たちが大変な目に遭っている恐れが強い」
 地震による原発事故の放射能災害と震災とが複合・増幅し合う「原発震災」を石橋氏は長年警告してきた、その懸念は、残念ながら現実となった……。
 石橋氏は、浜岡原発訴訟で地裁、高裁と2度、証人として法廷に立った。別の訴訟では、裁判官の勉強会で講師役をした。
 裁判所の印象を聞くと「論理が通らない世界。たぶん最高裁の影響もあり、原発は国策との意識が働いてきたのだろう」と答えが返ってきた。
 先月23日、参議院行政監視委員会に参考人として呼ばれた石橋氏は、手書きのイラスト付き資料を配布した。原発の上に大ナマズが乗っかり、日本の原発は「地震付き原発」とある。
 係争中の主要な原発訴訟の中には、浜岡訴訟以外、住民がやはり耐震性の不十分さを理由に運転差し止めを求めた島根原発訴訟がある。いずれも高裁段階にあり、住民らは福島第1原発事故を踏まえた審理計画や、証拠調べを求めていく方針だ。
 裁判所は「原発と地震」について、予断なく真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。


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