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原発は高価な電源 大島推計

 維持可能な社会の研究で知られる植田和弘・京都大学教授が「地球温暖化防止の環境経済学」(eco japan)の中で、原発コストついて、立命館大学の大島堅一教授の試算を紹介している。
 『有価証券報告書』に基づき、さらに技術の開発や立地地域への財政支出も参入すると、発電コスト・推計は、原発10.68円と、公称「5.3円」の倍となる。
 これに原発に不可欠な揚水発電を加えると12.23円。 火力、水力より高くなる。
【原発の本当の発電コストを考える 5/30】

さらに、廃炉や高レベル廃棄物処分場コストがとれだけ膨らむかわからない。事故の損害補償も入る。そして、枯渇燃料としてはもっとも石炭、石油の数分の一のエネルギー量しかのこってないウランである。

◇小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)の論稿より
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【原発の本当の発電コストを考える 5/30】

◆政府推計と大島推計

 最大の対策をとっても残る危険はある。我々の自然に対する知識はもとより完全ではない。原発のあり方についてその分野の専門家だけの議論で決めるのは適切ではない。現在の科学的知見をもとに安全性に関してより広い観点から議論する場がなくてはならない。どこまで危険を軽減できればよいのか、最終的には社会的、政治的意思決定の問題になる。

 安全対策の強化は不可避だが、これは原発の安全対策費の上昇を意味する。つまり、発電コストが上昇する。これまで原発は通説的には安価といわれてきた。政府が原発を推進してきた大きな理由もそこにあった。しかし、その根拠はそれほど堅固なものとは言えない。
 原発の電力が安価だというのは、2004年に出された総合資源エネルギー調査会電気事業コスト分科会の報告書が根拠になっていた(表参照)。しかし、原発の発電コストは他の電源の発電コストよりも高いという研究結果が最近、立命館大学の大島堅一教授によって出されている。

●電源別発電コスト(円/kWh)
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(1)電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書(2004年1月23日) 設備規模、設備利用率、運転年数に想定値が置かれている。割引率3%で試算。 (2)大島堅一『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社(2010年)

 表で両者を比較すると、原発の発電コストは、報告書推計では5.3円/kWhと最も安価であるのに対して、大島推計では1970年度から2007年度までの実績値で10.68円/kWhと火力や水力よりも高くなっている。しかも、これは震災前の評価だ。つまり、今回の原発事故に伴う対策費や賠償費、今後上昇が予想される安全対策費を考慮しないとしても、大島推計では原発はほかの電源より高かったのである。
 なぜ両者の推計にこれほど大きな違いが生じているのだろうか。推計方法の違いと用いるデータの違いをまず指摘できる。

 報告書推計では、モデルプラントを想定して発電に要する種々の費用を集計している。これに対して大島推計は実績値である。電力各社が公表している『有価証券報告書』に基づいて電源別発電コストを推計する方法が、同志社大学の室田武教授によって開発され、大島教授が発展させた。

 推計の正確性には、いずれの方法についても議論があるかもしれない。モデルプラント方式では様々な前提が仮定されている。実績値は「実態」が反映されているわけだが、その場合も集計範囲などで何らかの標準化を図ることは避けられない。

◆原発の見えないコスト

 いずれの方法をとるにしろ、発電コスト比較で最も重要なのは、発電に伴うすべてのコストを勘定に入れることである。これは誰もが納得することだろうが、実際には容易ではない。

 例えば発電のために何らかの資源を海外から購入するとしよう。化石燃料でもウランでもよい。その採掘現場がすさまじい環境破壊を起こしていたとして、何も対策が取られていない場合には、購入した資源の価格には環境損害費用が含まれていない。環境損害の被害者や社会に転嫁されているのである。だが、規制がかかったり、賠償問題に発展したときには、そうした費用を価格に反映させる必要が出てくる可能性がある。

 しばしば推計が困難と指摘されるバックエンド(使用済み核燃料の再処理や放射性廃棄物の処分など)費用だが、報告書推計はこれを発電コストに算入している。その点は評価できるが、問題はバックエンド費用の見積もりが、核燃料サイクル政策が政府の計画通りに進むことが前提になっている点である。周知のように、核燃料サイクル政策は不確実性がきわめて大きく、現にまったく計画通りには進行していない。したがって、バックエンド費用の見積りは過小評価の疑いが大きい。
 大島推計は電力会社の実際の支出をまず集計している。発電に要する電力会社の支出は『有価証券報告書』に記載されている。しかし、電力会社の支出費用だけでは原発での発電は成り立たない、と大島教授は指摘する。発電技術の開発や発電所の立地や維持に巨額の財政支出が充てられている。立地地域への財政支出は火力や水力などに対してもあるが、原発はいわゆる電源三法交付金によってほかの電源に比べてきわめて手厚い財政支出がなされている。

 もしこの財政支出が原発に不可欠な支出ということであれば、仮に電力会社の費用にはカウントされていなくても(電力会社の『有価証券報告書』に計上されていなくても)、原発の発電コストの一部として計上すべきであろう。

 すべての電源に対して大島推計では、財政支出を含めた発電に要する総費用を集計している。すると原発は最も高価な電源ということになる(表の「財政支出を含む総計値」)。原子力発電は出力調整ができないため揚水発電で補完せざるを得ないと考えるとさらに高価になる(表の「原子力+揚水」)。

 大島推計に基づくならば、今回の事故によって原発の安全性に疑問符がついただけでなく、これまで喧伝されてきた経済性も疑わしいということになる。原発の経済性は巨額な財政支出による下支えがあって初めて成り立つ。「安い」というこれまでの評価は国家によってつくられた虚構と言わざるを得ない。

 原発が高価な電源ということになるならば、原発を推進してきた論拠の1つは崩れることになる。それでも原発を推進する場合、推進の論拠はどこにあるのだろうか。
 いずれにしろ、発電コストの徹底的な検証は、今後のエネルギー政策を考える前提と言わなければならない。

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