菜種・ヒマワリで放射能拡散?!
ネットで「放射性 ひまわり バイオ」と検索すると、次々と、「ひまわりが放射性汚染を20日で95%除去」という言葉が氾濫している。また各地で、高校生などをまきこみ取り組みが広がっている。
これについてチェルノブイリ救援に携わり、実際に現地で植物による汚染除去の実験をしてきた河田昌東氏が「そんなデータはない。土壌では不可能。水耕栽培ではないか」とインタビューに答えている。また河田氏の発言は慎重である。
【河田氏 インタビュー youtube 5/7】 また、「ナタネなどの植物を栽培するため土を起こせば、逆に、表面にとどまっていた放射性物質を深く入り込ませてしまう可能性がある」「今なら表土をはがすだけですむ」と指摘し、細かく汚染度をチェックし長期的視野で対策をとる必要を語っている。
【土壌への浸透浅い、汚染度に合った対策を (四日市大非常勤講師 河田昌東氏)産経3/30】
【菜の花で土壌の放射性物質浄化、農水省が研究着手 実用化には課題も 産経5/3】
茎や葉、菜種の搾りかすをバイオガスにしても放射性物質を含む排水が出る。排水を吸着剤に吸着させて低レベル放射性汚染物にする実験には成功しているが、実用化には至っていない。またヒマワリは、バイオガスにむかない・・・と課題を指摘し、軽々に取り組むべきでないとも発言している。
ようするに現状では、汚染物質を拡散、深化させる危険がある、ということ。また、地表近くの作業は、内部被曝を招きかねない。
農水副大臣が「「ヒマワリや菜種を植えれば、畑が荒れるのを防ぐのにも役立つ。福島にたくさんの花を咲かせたい」と発言したことが報道されているが・・・ 誤ったメッセージをすぐに訂正する必要がある。
【困ったこと 「ヒマワリ作戦」に高校生集結 農業情報研究所5/20】
【土壌への浸透浅い、汚染度に合った対策を (四日市大非常勤講師 河田昌東氏)産経3/30】食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が検出された野菜や雑草などは、土壌から吸収したというより、雨水や雪などによる降下物で直接付着したものだと考えられる。
高い数値が検出された放射性物質の中でも、放射性ヨウ素は量が半分になる半減期が8日と短いので、新たな汚染がなくなれば、3カ月以上たてば問題がなくなる。
これに対し、注意が必要なのは半減期が約30年と長い放射性セシウムだ。約60年後で4分の1、約90年後でも16分の1残るといわれ、すべてなくなるのは300年後とされる。また、セシウムは生育に必要なカリウムなどと化学的性質が似ているため、野菜が吸収しやすい。
ただ、チェルノブイリ原発事故による土壌汚染の調査で、セシウムは10年後でもほとんどの土壌表面から約5センチの深さにとどまっていた。25年たった現在でも表面から約20センチの浸透だという。
汚染した野菜をトラクターなどで畑にすき込んでしまったり、放射性物質を吸収しやすいナタネなどの植物を栽培するため土を起こせば、逆に、表面にとどまっていた放射性物質を深く入り込ませてしまう可能性がある。
今慌てても、福島第1原発の冷却機能は完全に復旧しておらず、放射性物質はいつ飛んでくるか分からない。まずは事態が落ち着くまで待って、具体的な汚染度を調査してから、その汚染度に合った対策に取り組むべきだ。
放射性物質の拡散は風向きと降雨などに大きく影響され、均一でなくまだら状に起きる。このため、広範囲できめ細かい測定が必要になる。チェルノブイリ原発事故の際は汚染範囲を500メートル区間ずつ区切って、それぞれ測定した。
仮に汚染レベルが高い所であっても、セシウムの土中への浸透が約10年で5センチ程度だとすると、表面から10センチの土を剥離(はくり)すれば対応は十分だと考える。汚染度が低い所は土壌の入れ替えなど必要なく、野菜をすき込んでも問題はない。
当面は汚染した農作物の処分も課題だが、汚染した土壌をどう処理するかも長期的な対策が求められる。
【菜の花で土壌の放射性物質浄化、農水省が研究着手 実用化には課題も 産経5/3】旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で汚染された土壌浄化のため、現地で試みられている菜の花を使った土壌浄化の、日本への転用に向けた準備作業が始まった。農林水産省では現地・ウクライナに幹部らを派遣。菜の花の放射性物質(放射能)吸収に関するデータ収集などに着手した。ただ、東京電力福島第1原発事故の被災地に応用するには、早くも課題が見えている。
「あちらにはデータが山ほどある。日本の研究者が現地の研究機関などから成果を学び、日本に合わせ研究することになっている」
菜の花による浄化実験が行われているウクライナ北部のナロジチ地区を視察した篠原孝農林水産副大臣は4月末、そう明らかにした。すでに日本の研究者が現地入りしている。ナロジチはチェルノブイリ原発から西に約70キロ。1986年の事故から25年を経た現在も、食用作物の作付けが地区の95%で禁止されている。浄化実験は日本のNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)が2007年、地元の大学などと連携し始めた。
植物は成長のために、土壌中の水分に溶けたカリウムを吸収する。菜の花やヒマワリは、植物の中でもカリウムの吸収量が多いことが分かっている。浄化実験は、カリウムとセシウムの化学的性質が似ていることに着目。菜の花が、カリウムと混同して放射性セシウムを吸収することを利用した。
実験では、収穫した菜種でバイオディーゼル油を、搾りかすや葉などからバイオガスを精製。いずれからも放射性物質は検出されなかった。
また、1年目に菜の花を植え、2年目にライ麦、3年目にソバを栽培したところ、収穫物に含まれる放射性物質は汚染後に何もしなかった土壌でできたものと比べ3年間で半分以下になったという。土壌中の放射性物質は時間をかけて溶け出すため、4年目に再び菜の花を植えるというサイクルを繰り返している。
菜の花や麦は同じ土壌で毎年栽培すると生育不良になる「連作障害」が起きる。同NPOの河田昌東(まさはる)理事(71)は「菜の花と麦などを交互に育てることで次第に土壌の汚染レベルも下がる。連作障害を避けながら新しい農業ができ、麦は家畜の飼料などに利用できる」と期待を寄せる。
ただ、課題もある。茎や葉、菜種の搾りかすの処理だ。それらをバイオガスにしても放射性物質を含む排水が出る。排水を吸着剤に吸着させて低レベル放射性汚染物にする実験には成功しているが、実用化には至っていない。
また、日本と汚染の状況も異なり同じ成果が出るかも未知数だ。ナロジチの菜の花畑の地表の放射線量は1時間当たり0・6~1・0マイクロシーベルト。河田理事は福島には、それ以上の汚染地域もあるとみる。
一方、事故から長時間たち、放射性物質が20~40センチまで沈み込んで水に溶け出しにくくなっているナロジチと比べ、事故直後の福島は表面に集中しており、植物に吸収されやすいことが期待できるという。
河田理事は「汚染度に応じたきめ細かい対応が必要だ」と指摘。その上で、「実際に菜の花を植えるのは、茎や葉などの処理方法を決めてからだ。いずれにせよ放射性物質が深く沈み込む前に、早く取り組んだ方がよい」と話している。
農水省でも「一つの選択肢と思っている」(鹿野道彦農水相)と、データ収集などを急ぐことにしている。(高橋裕子)
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