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福島原発事故 小康状態ではない 「3つの脅威」

 日本科学者会議のHPから。館野淳・核・エネルギー問題情報センター事務局長が、崩壊熱、放射性汚染水、水素爆発を重大な危機として指摘している。4月中旬の記事なので、「2号機、3号機がじじゃもれ、1号機は一応の『機密性』が保たれる」としていが、1号機も底部に穴が空き、汚染水が流れだしている。また、高濃度の汚染水を移送している「集中廃棄物処理施設」からの漏水している模様。さらに、3号機の温度上昇、ホウ酸投入も起こっている。14日のシンポでも「3つの脅威」を引き続き指摘している。
【<解説16> しのびよる危機―熱、放射能、水素 】
【処理施設周辺の地下水汚染 福島第一、漏れ出した疑いも 朝日5/16】
【3号機の不安定さ続く 温度上昇・窒素ガス注入できず 朝日5/16】
【プラントの温度データ 3号機 東電】

<解説16>しのびよる危機―熱、放射能、水素

 数字を用いた解説が続いたので、全体を見渡して今何が問題なのかを説明しましょう。「事態は小康状態」などとよく言われますが、決してそうではなく、三つの重大な危機がしのびよりつつあります。

 冷却材喪失事故は①熱、②放射能、③水素、の三つの敵との戦いです。①の崩壊熱(放射性元素が放射線を出して崩壊する際に発生する熱)は減少しつつありますが、<解説9>で示したように、依然として1時間に数百万キロカロリーと莫大な量が出続けています。これを冷やさなければ炉心の温度は再上昇し溶融が起こり、圧力容器の底を突き破って、格納容器内、さらにはその外に飛び出してしまいます。このことが周辺環境の放射能汚染を急上昇させ、事故の処理をさらに困難にさせることはいうまでもなく、絶対に避けなければなりません。
 現在、冷却のために注水を行っていますが、2号機、3号機ではいくら注水しても圧力が上昇しない、「じゃじゃ」漏れ状態です。1号機は2気圧程度の圧力があり、一応の「気密性」は保たれています。2号機、3号機には一日当たりおのおの約200トンの注水を行っており、1号機、燃料プールへの注水と合わせると一日最低500トンの注水量です。この水が②の高濃度放射性汚染水を増加させており、冷却と汚染抑制との間でジレンマの状態が続いています。注水せずに冷却するためには、循環システムを作って冷やすことが必要です。そのためには密閉あるいは底の抜けていない容器が必要ですが、「じゃじゃ」漏れの2号機3号機ではどのようなシステムを構築するのかが問題です。最近、汚染水を循環させるシステムが発表されましたが、うまくいくかどうかは分かりません。

 次に放射能の問題です。3月24日に起こった3号機タービン建屋での作業員の被曝事故をきっかけに、各原子炉のタービン建屋、およびトレンチと呼ばれるトンネル部分に、きわめて高濃度の放射性汚染水が溜まっていることが判明しました。その容積は7万トン、放射能の量は<解説14>で記したように、過去最悪の海洋汚染の一つ、ウインズケールで1983年に放出された放射能の800倍に当たります。汚染水の量は上述のように毎日500トン近く増加し続けています。東京電力は約3万トン貯水できる集中廃棄物処理施設から「低レベル汚染水」を海に放出して、これに溜めることを考えていますが、これも2カ月ほどで満杯になります。この高濃度汚染水が何かのきっかけで大量に海に流入すれば、もちろん周辺の生態系への放射能汚染は破局的な事態になります。またぐずぐずしていれば、コンクリートのひび割れなどから地下への汚染が広がります。

 最後に水素爆発です。<解説15>に述べたので、詳細は略しますが、とくに1号機は圧力容器がまだ密閉性を保っているだけに、酸素が発生して溜まっている水素と反応・爆発したらと考えると、三つの原子炉の中で最も不気味だという意見もあるようです。

 以上のように、放射能、熱、水素のいずれも、処理を誤れば破局的な事態を引き起こしかねません。その意味で事態は決して小康状態などでないことを認識すべきです。まずは、高濃度汚染水を貯めるためのスペースを確保し、これを移送すること、循環による冷却システムを確立すること、その間に水素爆発が起きないよう制御することなど、的確な方針をたてて実施することを含めて、早急な対応が求められています。(舘野、2011.4.17)


【処理施設周辺の地下水汚染 福島第一、漏れ出した疑いも 朝日5/16】

東京電力は15日、福島第一原発で、高濃度の汚染水の保管場所としている「集中廃棄物処理施設」の周辺で、地下水の放射性物質の濃度が上がっている、と発表した。汚染水が漏れ出した疑いも否定できず、汚染水の処理計画の見直しを迫られる可能性もある。
 放射性物質の濃度が上がったのは、4号機の発電機があるタービン建屋の南東部分。地下水から、ヨウ素131が13日に1立方センチあたり0.16ベクレル、14日に0.21ベクレル検出された。セシウム134、137も12日には約0.04ベクレルだったのが13日に上昇し、14日に2.6ベクレル、2.9ベクレル検出された。
 ただ、15日午後の速報値では濃度が下がり始めており、東電の原子力・立地本部の松本純一本部長代理は「汚染されたがれきが近くに落ちて、一時的に線量が上がった可能性もある」とした。一方、原子力安全・保安院の西山英彦審議官は会見で「集中廃棄物処理施設の中の方が水位が低いので漏れ出しているとは考えにくい」と話した。


【3号機の不安定さ続く 温度上昇・窒素ガス注入できず 朝日5/16】

 東日本大震災で被災した東京電力福島第一原発で、3号機の圧力容器の温度が上昇、4月下旬以降、不安定な状況が続いている。東電は12日に新たな場所からの注水を開始、量も増やした。また、3号機では水素爆発を防ぐ窒素ガス注入が遅れている。東電は15日、核反応を抑えるホウ酸を混ぜた水を注入する作業を3号機で始めた。
 東電は圧力容器の温度上昇について、注水用の配管から水が漏れている可能性があるとみて、別の経路で注入を始めた。圧力容器上部の胴フランジと呼ばれる部分では15日午前8時現在で297.5度まで上昇したが、16日午前5時は269度まで下がった。
 やや下の給水ノズルの部分は15日午前5時に139.8度だったのが、一時157.7度まで上がり、16日午前5時は141.3度。東電は「上昇傾向はおさまって徐々に低下している」としながらも、今後の推移を注意深く見ることにしている。
 窒素注入は、1号機で4月7日から始まったが、2、3号機はともに注入口が津波で損傷しており、現在も注入方法を検討中だ。
 ホウ酸水の注入は、原子炉内で核反応が連鎖的に起こる臨界を防ぐ効果がある。臨界のおそれは高くないというが、以前入れた分が、その後も続いた注水によって薄まっているとみられ、念のため足すことにしたという。1、2号機でも実施の準備を進めている。
 以前に注入した海水に含まれていた塩分にも臨界を防ぐ効果があるが、すでに淡水に切り替わっている。
 原発の燃料には低濃縮のウランが使われ、事故後の溶融で圧力容器下部にたまっているとみられる。臨界には燃料と燃料の間に一定の距離が必要で、東電は臨界にはなりにくい状態とみている。
 また、東電は3号機のタービン建屋の放射能汚染水の移送を17日から始める計画を明らかにした。
 1号機の圧力容器は、注水量を増やした結果、15日深夜から各温度計とも100度を切る状態が続いている。(佐々木英輔)

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