原発、基地…地域の活性化 沖縄2紙社説
沖縄の視点は興味深い。憲法記念日には、沖縄が告発してきた人権抑圧と憲法との乖離が、大震災で、国民的規模で「憲法と暮らしの現実との整合性について、深く問いが突き付けられるのは憲法制定以来、極めてまれなことだろう」(琉球新報社説)と、生存権、幸福追求権の現実について指摘した。
原発と基地との共通点・・・地域を疲弊、「交付金」での誘導・・・それが真に地域の活性化、また国益に役立つか・・沖縄2紙の社説。テーマは違うが、国のあり方を問うている。
【[原発と基地]変化見すえ政策転換を 沖縄タイムス05/16】
【与那国陸自配備 「断絶の海」にするのか 琉球新報5/16】
【[原発と基地]変化見すえ政策転換を 沖縄タイムス05/16】東京電力福島第1原子力発電所の1号機で「メルトダウン」が起きていることが分かった。大量の燃料棒が溶け、圧力容器の底にたまっているという。1号機の原子炉建屋の地下に大量の汚染水がたまっていることも確認された。
収束の方向に向かっているとみられていた原発事故は、震災から2カ月が過ぎても依然、深刻な状態にある。安定化のめどが立たない。
政府と電力会社が足並みをそろえて安全性を強調してきた原発政策の結果がこれだ。
米上院軍事委員会のレビン委員長らは、米軍普天間飛行場の辺野古移設について、沖縄視察の結果を踏まえ、提言を発表した。
オバマ政権に大きな影響力を持つ議会有力者が、日米両政府の現行計画(辺野古V字形案)を「非現実的」だと、一刀のもとに切って捨てた。
原発事故と普天間移設に、直接の関係はない。この二つの問題をあえて並べてみたのは、直接的関係がないにもかかわらず、多くの共通点を見いだすことができるからだ。
原発も米軍基地も国策である。住民にとっては、両施設ともノット・イン・マイ・バックヤード(NIMBY)、自分の裏庭に置かれては困る迷惑施設だ。
原発や基地を受け入れている自治体に対しては毎年、多額の交付金、補助金が交付される。市町村財政は原発や基地への依存度を高め、それが固定化される。原発や基地は、雇用の場にもなっている。
住民は、そこから抜け出すことが困難な「がんじがらめの状態」に置かれている。
住民を「がんじがらめの状態」に留め置くことが国のねらいだ。そのことに最も効果を発揮するのは「おカネ」である。基地建設に協力的な自治体にはカネをじゃぶじゃぶ流し、その自治体が非協力の姿勢に転じると、とたんに蛇口を閉める。「地域主権」も「地方自治」も二の次だ。
だが、人はカネだけでは動かない。
国は、原発については「国策」と「安全性」を前面に押し出し、基地については「国策」と「隣国の脅威」「抑止力」「地政学」を前面に掲げてきた。
原発事故と基地問題の共通点はそれだけではない。国と電力会社と専門家・一部メディアが、「利益共同体」を形成し、原発推進のため圧倒的な影響力を発揮してきた。基地問題にも似たような構図がある。このような構図の下で、安全性に対する疑問の声や、生活に根差した地元の切実な声はかき消された。
菅直人首相は、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)のすべての原子炉の運転停止を要請し、会社側もこれを受け入れた。原発の「危機」を、エネルギー政策転換の「機会」に転換してもらいたい。
基地問題もそうだ。6月に予定されている外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が、現行計画を確認する場であってはならない。
基地や原発の「あり方」を一から見直し、国民的議論の中から、転換期にふさわしい内容を見いだすべきだ。
【与那国陸自配備 「断絶の海」にするのか 琉球新報5/16】軍隊というものは自らの存在理由を求め続ける。存続は経費がかさむので、常に削減圧力にさらされるからだ。
防衛省が与那国島へ沿岸監視部隊を5年以内に配備する方針を表明した。だが今回、政治が大局観に基づいて防衛官僚を制御した形跡は全くない。これでは「政治主導」どころか「軍事官僚主導」そのものだ。菅政権は官僚を制御できず、制御の意思もないと正直に言うべきだ。
2009年に与那国町の町長・町議会議長らの連名で配備を要望したことが出発点になった。島の活性化が重要な動機だろう。
だが自衛隊が陸海空の自衛隊を配置する対馬(長崎)は1980年に5万人だった人口が05年には3万8千人に減った。全国各地の過疎地を見ても、自衛隊に頼って実現した活性化など存在しない。
町が進めてきた台湾との独自交流の努力も水泡に帰す。相手への警戒感を露骨に示すのだから当然だ。鳩山由紀夫前首相が「友愛の海」にすると言った東シナ海を「断絶の海」にするのだろうか。
町が申請した「国境交流特区」を政府は却下した。国境の島に人が住み続けることこそ、最大の安全保障策であろう。島嶼(とうしょ)防衛と言うなら、国は特区をこそ認可すべきだ。そして遠隔医療・遠隔教育を導入するなどして、島民の生活の質の保証を図るべきだ。
自衛隊は従来、「ソ連の大規模着上陸侵攻」を最大の仮想敵としていたが、冷戦終結でその論理が通用しなくなった。削減圧力にさらされたから、今度は北朝鮮・中国への反感をあおり、「西方重視」「南西諸島重視」と言い始めた。
だが東アジアは相互に貿易関係を高めている。他国住民のいる島に侵攻などすれば国際的に猛烈な非難を浴びる。国際的に孤立すれば中国経済はたちまち瓦解する。
侵攻などあり得ない。自衛隊の規模の維持のためにこしらえた虚構だ。新防衛大綱も「本格的な侵略が生起する可能性は低い」と認めている。
ひとたび侵攻があれば、大規模だろうと小規模だろうと国際的には侵略とみなされ、戦争の引き金となる。「本格的侵略」がないなら、小規模もあり得ないのだ。
軍は住民を守らない。守るどころか、むしろ住民の命を犠牲にして本土防衛の時間稼ぎをしたのは沖縄戦で実証済みだ。活性化の鍵は平和的な人の交流にこそある。
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