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地域主権改革と教育

「クレスコ」2011.1の荒井文昭・愛知教育大“教育の地方自治のあり方を問う「地方主権改革」”の備忘録。
首長権限の強化という地方議会「改革」と同様の流れを感じる。

【教育の地方自治のあり方を問う「地方主権改革」 荒井文昭・愛知教育大】

1試練にさらされる人権としての教育

・法令で定められていた各種基準の切り下げと撤廃、国の責任のあいまい化と首長の発言の比重増
→ 特に、社会教育分野の首長部局化、教育委員会制度の形骸化圧力の強まり/社会教育職員の専門性の危機
・今、必要なことは「地域主権改革」を正確に分析すること
→ この政策が、教育の自由(子どもを含む住民の学ぶ自由と、それを支援する教職員の専門性)をささえる土台としての「教育の地方自治」のあり方、財政保障のあり方を問うているから

2 教育領域における「地域主権改革」の動向

①義務付け枠付けの見直し
・専修学校の設置基準の見直し、基準の条例委任
・公立高等学校生徒収容定員の基準廃止
・公民館運営審議会、図書館協議会、博物館協議会の各委員委嘱基準の条例委任
→ 条例委任 「参酌すべき基準」  /地域の実情に応じて異なる内容を定めることを許容」

②基礎自治体への権限委譲
・市町村立学校職員の給与等の負担、教職員定数の決定、県費負担教職員の任命権、学級編成基準の決定など中核市への委譲の検討

3.「学校設置者への権限の集中」をめぐる課題

・民主 1995「学校設置者等への権限委譲と義務教育財政確保のための法律案」で方向性示す
・これらは、現状では分散している人事管理権、学校設置権、学級編成権などを設置者に委譲・集中
→ 民主党「地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案」で具体化 
→案では、不適切教員に対する措置、教育機関の管理運営(施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取り扱い)に関する規則を定める権限、教科書以外の教材の使用について承認を出す権限が首長にある。/首長には、教育監査委員会が調査・評価し、勧告できる。

◇学校理事会
・民主案/ すべての公立学校に学校理事会を設置(自治体設置の大学・高専のぞく)/校長は、自治体の規則で定める事項について、基本方針を作成し、教育課程、人事・研修に関する任命権者に対する具申について、理事会の承認をえなければならない。
・理事会の構成/ 過半数以上の保護者と地域住民、および校長、教員、学識者、首長が必要と認めたもの/メンバーの任命権は首長
・権限/ 校長の基本方針の承認、学校の運営に関し首長、校長に意見提出(首長、校長は「尊重」と記載)
~ 教育に関する権限が首長に集中

◇「新しい公共」型学校
・文科省、来年度の概算要求で「新しい公共」型学校を提案 /地域住民の学校運営参画、学校支援に加え、新しく「学校力を活かした地域づくり」を追加し、学校を地域課題解決の拠点としていくことを謳っている。
→ 例「学校施設の活用による文化・スポーツ活動」「地域課題への対応(子育て支援、防犯活動、外国人家庭・独居老人へのサポート)等」
⇒地域に根ざした学校づくりとして、戦後の地域教育運動で蓄積されてきたとりくみとの関係で慎重な検討が必要/ 今回の提案は、危機的な状況にある社会教育領域の教育機関を支援するとりくみをヒントにしたもの

◇図書館海援隊
・その取り組みとは、「図書館・公民館海援隊」プロジェクト 
→ 2010.1 課題解決支援サービスに関する知見の豊富な有志の図書館が結成、37館 /労働・生活相談、行政の支援制度、子育て支援など

4.「教育一括交付金」をめぐる課題

・95法案 教育目的以外の流用は不可となっている。
→ 教育一括交付金化は検討に値するが/ 費目に何を入れるか、自治体間の差異をどの程度容認し財政調整を行うかが大きな課題 
→ 費目の組み入れ方で、教育水準を低下させる。/また、民主案では、義務教育以外は「教育一括交付金」の対象外となっており、義務教育以外の学校教育、社会教育への影響は深刻となる。

5.学ぶ権利を保障しうる地方自治のあり方

・学校を含む自治体の教育機関/ 子どもを含む住民の学ぶ権利保障をとおし、まちづくりにも重要な貢献/
・基本的人権を実質的に実現するための必須な地方自治体の実現には、人権として学ぶ権利を、子どもを含むすべての住民に生涯にわたって保障していくことが必要
→ その条件整備に責任をもつのが国、地方自治体

・教育の自由を支える土台として「教育の地方自治」のあり方(学校をはじめとした教育機関運営のあり方、教育委員会の政策力量、教育振興計画をめぐる課題なと)が明らかにされる必要があり、/「地域主権改革」はその課題を、私たちに問うものとなっている。
→ 教育に民主主義が必要なら、それはどういう形であるべきか、地方自治のあり方が丁寧に探られる必要がある。

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