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外交密約文書と「抑止論」の呪縛 沖縄2紙社説

 外交文書の公開で、外交の無策、「抑止論」の根拠のなさを、沖縄の地元2紙が社説を書いている。
・ライシャワー元駐日米大使「沖縄の軍事施設をグアム島へそっくり移すことは理論的には可能」
・マクラマナ米国防長官「沖縄基地は日本が考えているほど重要ではない」「飛行機の速度の進歩で大量の兵力を海外に置く必要はない」
・在沖米軍基地は外部からの攻撃に弱く、主要道路の2、3カ所を抑えられただけで基地機能は著しく損なわれる・・・などを紹介し、「抑止論」の呪縛にとらわれた外交の無策を批判している。

【[外交文書公開]抑止論を吟味すべきだ 沖縄タイムス2/20】
【沖縄密約公開/戦略なき外交を露呈 「抑止力」の呪縛と決別を 琉球新報2/20】

 自民党の防衛族議員が鳩山発言について「これほど沖縄、アメリカをバカにした話はない」などと気色ばんでいるが、まったく筋違い・・地元紙は、どこで交渉が挫折したか、『抑止力』論に凝り固まった官僚の抵抗など、交渉の経過の一端と原因があきらかになったことを肯定的にとらえ、本質的な問題に追求する姿勢となっている。
 むしろ、自民党は、当時の政権党として、外交文書の内容がしめす外交の無策や不明朗な財政支出について説明する責任がある。

【[外交文書公開]抑止論を吟味すべきだ 沖縄タイムス2/20】

 先月、米ワシントンの著名な民間シンクタンクの研究員が沖縄基地を取材に訪れた。中国研究で名の通った識者だという。地元メディアとの意見交換会があった。
 中台関係をどう展望しているのかとの質問に、「中国は政治、経済など、軍事力を除くあらゆる手段で影響力を行使するだろう」と語った。
 大国化する中国の動向は沖縄の基地問題にも直結しそうで気がかりだ。昨年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件で、米政府は尖閣が日米安保条約の適用対象であるとの認識を日本側に伝えた。米研究者はこれを当然視し、「日本が実効支配する領土に対しては、日米安保は適用される。オバマ政権に限らず、ブッシュ政権下でも同じ対応だ」と説明した。
 仮に中国軍が不意を突いて尖閣に上陸、占拠すると、日本は実行支配できない。それでも安保条約に基づき米国は日本と共同対処するのか?
 研究者は一呼吸置き、「その仮定は考えにくい。回答は控えたい」とかわした。続けて、中国が尖閣のために国際的な信用を失うような愚かな行為に走ることは想定できないとも語った。
 そうすると台湾海峡にしても、尖閣にしても具体的な脅威とは何だろうか。
 日本政府が繰り返す「抑止力」はいったいどこへ向けたものだろうか。そんな疑問が湧く。
 米軍を沖縄につなぎ留める思考の根源はいったい何だろうか。戦後これまで解明されない謎だ。
 外務省が18日公開した外交文書で、沖縄に米軍を駐留させる必要性にまた大きな疑問符が付いた。
 ライシャワー元駐日米大使は沖縄返還交渉開始前、1967年4月15日付の「極秘」公電で、「沖縄の軍事施設をグアム島へそっくり移すことは理論的には可能」とした。軍部は30億~40億ドル(当時レートで1兆800億~1兆4400億円)の移転経費をはじき出していた。
 また、米軍基地の完全撤去か基地付きの沖縄返還かのいずれかの「選択権」は日本側にある、と米側が外務省に伝えた公文も公開された。
 昨年11月、前回の公文書公開でマクラマナ米国防長官が「沖縄基地は日本が考えているほど重要ではない」と語った記録が明らかにされた。「飛行機の速度の進歩で大量の兵力を海外に置く必要はない」との見解だった。
 いまや無人攻撃機を遠隔操作する時代だ。
 公文書が次々と真実を暴いていく。米軍を受け入れるか、基地をどこへ置くかの「選択権」は常に日本側にある。
 しかし、公文書によると、米側は閣僚と官僚が一丸となって交渉に臨んだが、日本は内部で情報共有すらままならず、挫折していった。
 「抑止論」が後付けであることは、鳩山由紀夫前首相が沖縄タイムスなどへのインタビューで明かした。首相が選択権を行使しようとしても外務、防衛官僚が足を引っ張ったと証言した。
 半世紀を経ても同じだ。問題の核心が見えてくる。

【沖縄密約公開/戦略なき外交を露呈 「抑止力」の呪縛と決別を 琉球新報2/20】

 全てお金が絡んでいた。公開された沖縄返還に関する外交文書から見えてきた事実だ。
 返還に伴う日本の財政負担について、算出根拠を欠いたまま一括決着するランプ・サム方式で6億5千万ドル(当時のレートで約2340億円)を米国が要求していたことが明らかになった。
 根拠のない見積もりについて当時の佐藤栄作首相が「是非このような具合にかねを出すよう」前向きな姿勢を示していた。
 国民に全容を説明できないような支出を、なぜ一国の首相が認めたのか。国民への背信行為だ。

◆脅しに弱い日本
 結局、日米関係に重大な支障が出ると米国から脅され、財政密約を結んで不明朗な支出をしてしまった。当時の財政負担をめぐる交渉は今日まで続く「思いやり予算」の源流と言える。
 米国が示した「言い値」は最終的に返還協定に記された「3億2千万ドル」を大幅に上回る。現在まで実際に日本がいくら負担したのか明らかになっていない。
 別の外交文書は、在沖米軍基地をそっくりグアムに移すことは理論的に可能だと記している。移転費用は30億から40億ドルと具体的で、駐日米大使を務めたライシャワー氏の発言だけに説得力がある。
 しかし冷静に考えると、この発言は米国が対日外交によく使う脅しの手法ではないか。ライシャワー発言のあった1967年、沖縄返還をめぐる日米交渉が始まった。当時日本は、返還後の沖縄基地の自由使用や核の持ち込みについて「白紙」の立場を貫いていた。
 ライシャワー氏はグアム移転をちらつかせば日本が驚いて、沖縄に基地を置き続け、基地の自由使用を含む一層の防衛協力に動くとにらんだのだろう。
 効果てきめんだった。この発言から4カ月後、外務省北米局長が作成した極秘文書に、日本は基地の全面返還という立場をとらないことが示されている。さらに短距離ミサイルや戦術空軍用の核弾頭の貯蔵、基地の自由使用について検討を加えている。
 外交の裏面を伝える文書は政治の無策も伝えている。
 外務省幹部による外務大臣ブリーフィング(68年8月)で外相が「(返還)交渉は方針をことさら立てることなく、しかも『世論は充分頭に入れている』との姿勢で」行うと発言した内容が記録されている。
 対米外交戦略や方針を立てないでどうして交渉ができるのだろうか。理解に苦しむ。こうした政治の無策が結局、官僚主導で米国追従の政策決定につながっていく。
 対する米側は、沖縄返還に向けた戦略文書(69年7月)を作成して沖縄返還交渉に臨んだ。沖縄から核兵器の撤去を決めていたが、交渉のカードとして日本側に最終段階まで明かさず、核貯蔵の重要性を強調して日本から多くの譲歩を引き出す作戦だ。その結果、有事の際の「核再持ち込み」の密約で合意した。

◆攻撃に弱い米軍基地
 在沖米軍基地は外部からの攻撃に弱い。外交文書は、主要道路の2、3カ所を抑えられただけで基地機能は著しく損なわれると明記している。攻撃に弱いと知られてしまえば、相手に対する抑止力にならないはずだ。
 それにもかかわらず外務官僚は「信頼しうる抑止力」として沖縄の米軍基地機能を重視し、返還後も米軍による基地の自由使用を認めるよう佐藤首相に進言した。理屈に合わず矛盾している。
 あれから40年以上たっても官僚の思考は変わっていないようだ。鳩山由紀夫前首相は先日、本紙などとのインタビューで次のように語っている。
 「防衛省も外務省も沖縄の米軍基地に対する存在の当然視があり、数十年の彼らの発想の中で、かなり凝り固まっている」
 鳩山氏は官僚の壁を崩せなかった非力を率直に語った。同時に米軍普天間飛行場の県外移設断念の理由とした在沖米海兵隊の「抑止力」は、辺野古しか残らなかったときの後付けの理屈として使った「方便」と説明した。
 日本の政治外交の無策の結果、沖縄は施政権返還後も過重な基地負担を背負わされ続けている。
 公開された外交文書は、米軍普天間飛行場移設をめぐり、根拠のない「抑止力」の呪縛(じゅばく)から抜け出せない現在の民主党政権と重なる。直ちに呪縛と決別すべきだ。


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