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賃上げでデフレ脱却を 富士通総研

 旗開きのあいさつで志位さんが引用した富士通総研のリポート。「GDPの5%にも相当する需給ギャップ」をうめるのは「一般消費者の所得そのものを高めることが不可欠だ」と賃上げがデフレ、円高対策になることを指摘している。

【来年の春闘は4%の賃上げを目指せ 富士通総研2010/11】

 レポートは、日本経済の特異さとして「90年代の後半から賃金が絶対額で前年を下回る」、特に「サービス価格の下落」であると指摘。その原因を「生産性に見合った賃金という原則が忘れられてしまったことである」と、その是正を主張。また、賃金低迷は、「競争力」を高め、それを相殺するため円高になり「自らの首を絞めている」と指摘する(デフレによる実質金利の上昇が円高に拍車。賃上げはこの点でも有効/メモ者)。
 
 「10年以上賃金が下がりつづけている国は先進国の中で日本だけ」であり、それが「内需の低迷、勤労者の労働意欲の低下など経営側にとっても好まし」くない結果を招いており、 「企業は200兆円もの現金を溜め込みながら、成長のための投資や、国内市場の拡大のための適切な分配は忘れ去られている」と「デフレと賃金低迷の悪循環を断ち切」るための経営と労働の真剣な話し合いを呼びかけている。

 ・・・需要サイドが問題(内需低迷)なのに、供給サイドの強化(法人税の引き下げ)って、まったく対策になっていない。

【来年の春闘は4%の賃上げを目指せ 富士通総研2010/11】

 根津利三郎 2010年11月16日(火曜日) 

 筆者はかねてより、日本のデフレは賃金が低迷しているからであり、デフレを克服するためには賃金を上げるべきだ、と唱えてきた。この2年ほどはリーマンショック後の急速な景気後退があったので、かかる主張を控えていたが、さる11月1日、連合の主催する「2011春季生活闘争中央討論会」で講演する機会を得たので、再度この問題を取り上げた。以下はその講演の概要である。

◆金融政策だけではデフレ克服は出来ない
 一般的にエコノミストはデフレ、インフレの問題は金融政策、すなわち金利と通貨供給量の問題と考える。日本銀行は1990年代の半ばから超低金利政策を採り、2003年からは量的緩和もかなり大胆に進めた。だが、デフレはその後も解消されることなく、最近では消費者物価の下落は加速している。日銀がもっとアグレッシブにやればこんなことにはならないはずだ、という意見はいまだに強いが、筆者はそのような考えには疑問を持っている。

 日銀がやれるのは、市中の銀行に対する資金の金利を下げたり、供給量を増やしたりすることだけだ。そこから先、実体経済に金が流れ出るかどうかは、企業が金を借りて投資をする意欲を持つか、また消費者が金を使う気持ちになるかどうか、にかかっている。そしてこの10年間、そうはならなかったのだ。同じようなことは今、米国でも起こっている。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は米国が日本と同じようなデフレ経済にならないように、昨年来、量的緩和を実施しており、最近さらに強化した。その結果、溢れ出た資金は国内の景気回復に寄与することなく、ほとんど国外なかんずく新興国に流出してバブルを撒き散らすようなことになり、目下、世界中から非難を受けているが、期待された効果は今までのところ見られていない。

◆不可欠な消費者の購買力の向上
 デフレを解消するためには需要不足を解消することが不可欠である。これは個人消費、設備投資、財政支出、または輸出のどれかを拡大させることが必要だ。日本としては輸出に頼りたいところだが、先日のG20での議論でも明らかなように、経常収支の黒字国が円安操作をしたり、人為的な輸出促進策を採ることは難しい。財政支出の拡大は現下の状況では全く不可能だ。設備投資は法人税減税が実現すれば増えると期待する向きもあるが、GDPの5%にも相当する需給ギャップがある状態では無理だろう。

 日本経済の現状を見れば、デフレを是正するためには一般消費者の所得そのものを高めることが不可欠だ。それには勤労者の賃金を上げることが最も直接的な効果を持つ。賃金は労働に対する価格という側面と、勤労者の所得という2つの面がある。前者だけを考えれば、賃金を上げれば雇用が減り、失業が増えるという議論になるだろう。しかし、所得という視点から見れば、これは国内需要を増やし、商品の価格を引き上げ、雇用を拡大する効果を持つ。

◆日本に特異なサービス価格の下落
 日本の場合、90年代の後半から賃金が絶対額で前年を下回るようになり、傾向的に下落するようになった。これと平行して消費者物価指数も下落、つまりデフレ傾向が顕著になった。つまり、デフレと賃金下落が並行して進む状態となったのである。消費者物価指数はわれわれ消費者の支出構成に基づいて算出されるが、日本の場合は5割、米国では6割がサービスである。このサービス価格はモノに比べて、そこに働く労働者の賃金によって決定される度合いが強いが、わが国の場合このサービスの価格がほとんど上昇していないのに対して、他の先進国では毎年3%ずつ上昇している。他方、財の価格については中国などの新興国からの安い商品が流入して、世界的に価格の横ばい、ないしは下落が観測されている。全体としてみると、欧米先進国ではサービスの価格が物価全体の水準を下支えしているので、1~2%のマイルドな物価上昇が続いているのに対して、日本だけ物価が下落し続けるという特異な状況が続いているのだ。サービスの価格とサービス産業における賃金との相関関係はデータで見てもかなり明確だ。したがって、サービス業における賃金が上昇すれば、サービスの価格も上昇し、消費者物価全体が押し上げられることになろう。

◆想い起こそう、生産性に見合った賃金
 日本における近年の賃金決定の問題は、「生産性に見合った賃金」という原則が忘れられてしまったことである。賃金を労働生産性で除したものが単位労働コスト(ユニット・レーバー・コスト、ULC)と呼ばれるもので、これが下がっていれば賃金上昇よりも生産性上昇のテンポが速いことを意味する。ULCがマイナスであることはその国がデフレであると判断する重要な指標であるが、【グラフ1】は単位労働コストの変化率を主要国と比較してみたものである。これから明らかなように日本のULCは90年代後半からほとんどマイナス領域にとどまっており、他の先進国との違いが明らかだ。つまり、わが国では生産性の上昇に見合った賃金、という長い間守られてきた慣行が90年代後半以降破られ、それとともにデフレが進行し始めたのである。

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 【グラフ1】主要国の単位労働コストの動き

 90年代後半に何故このようなことが起こったのか?それはバブル崩壊後の不良債権問題が原因である。この時期、銀行に限らず日本企業の多くが住宅や土地バブルの崩壊の影響を受けて多額の不良債権を抱えていた。これを処理するためには利益を上げて、それを償却のための財源とするしかない。労働側も雇用の存続を最優先に考え、賃金カットを受け入れた。だが、そのような不良債権処理は2005年頃には完了したはずである。にもかかわらず、生産性に見合った賃金の原則に立ち返ることが出来なかったのは何故か?ひとつの理由としては、この時期、中国と競争しているので賃金は上げられない、というような議論が横行した。だが、それなら欧米も同じはずだ。日本だけが中国やアジアとの競争に晒されているわけではないからこの議論は説得力が無い。

 労働生産性は長い目で見れば、かなり安定的に上昇している。生産性は賃金の下落傾向が始まった1998年と比べると2割ほど上昇している。もし、この間、生産性の上昇に見合った賃金が実現していれば、同じ割合で賃金が上がっていたはずだ。実際には10%ほど下落している。その分だけデフレ圧力の原因となったわけである。

 生産性と賃金の上昇率が同じであれば労働分配率も変わらない。実際には今世紀に入って日本の分配率は2007年までの間、下落し続けた。2008年は戦後最大の景気後退を受けて労働生産性が急落し、企業収益も大幅に減少したため、分配率は急激に上昇したが、その後、景気が持ち直すにつれて再び下落し、足元では2003年から8年の間の平均水準に近づいている。(【グラフ2】)2010年度の決算も11月時点では比較的良好と見られているから、生産性に見合った賃金を確保するなら、ある程度の賃金上昇は正当化されるはずだ。

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 【グラフ2】日本の労働分配率

◆成長戦略に不可欠な賃金の4%引き上げ
 成長戦略は名目で3%の成長率を想定している。実質は2%だが、1%のインフレを見込んでいるので、デフレ脱却も併せて狙っていることになる。かかる成長を内需中心に実現するとすれば、国民の購買力を名目で3%拡大しなくてはならない。今後、労働力人口が毎年1%ずつ減少することも考え合わせれば、賃金は毎年4%ずつ上昇させていくことになる。金額にして10兆円程度の企業負担になるが、これは購買力の拡大になるので、かなりの部分、売り上げの拡大という形で還元されよう。ただし、そのためには一過性の賃上げでは2008年のときの定額給付金と同じで、大半は貯蓄に回り効果は無い。基本給の引き上げなどの永続的な賃上げであって初めて、消費者の消費意欲を高めることが出来る。賃金の上昇に伴うコストアップは製品の価格引き上げに転嫁すべきだ。そうすることで企業収益に対する悪影響も避けられるだけでなく、デフレが解消できる。一旦インフレ期待が形成されれば、消費の先送りもなくなり、デフレスパイラルの解消が可能となる。

◆賃金低迷が円高の原因
 為替レートを決定する要因は金利や国際収支など様々あるが、単位労働コスト(ULC)も重要なファクターである。ULCが低い国はその分だけ競争力が高まるので、為替市場ではそれを相殺するようにその国の通貨が高くなる。わが国はその代表例だが、スイスやスウェーデンのように賃金上昇率が低い国の通貨は総じて上昇している。ドイツもユーロに統合される以前、ドイツマルクは世界で最も強い通貨として知られていたが、それも賃金の上昇率が他のヨーロッパ諸国よりも低かったからだ。先進国では平均的にみて賃金の上昇率は年3%程度である。わが国における生産性上昇率が他国とそれほど違わないとすれば、わが国もその程度の賃上げを継続すれば、円高圧力も緩和されるはずである。もちろん円高は内外金利差など他の要因も関わっているが、日本企業は賃金カットのために円高を引き起こし、結果として自らの首を絞めている、といっても過言ではない。

◆経営と労働は真摯な議論をすべきだ
 10年以上も賃金が下がり続ける国は先進国の中で唯一日本だけである。その結果は内需の低迷、勤労者の労働意欲の低下など経営側にとっても好ましいものではない。企業は200兆円もの現金を溜め込みながら、成長のための投資や、国内市場の拡大のための適切な分配は忘れ去られている。企業と従業員がデフレと賃金低迷の悪循環を断ち切り、ともに成長の成果を享受できるようにするにはどうすればよいか、来年の春闘に向けて意味のある議論を期待したい。

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