「地域主権改革」Q&A~「俗論」から考える
先々週から週1で、経済、財政、平和・領土問題などの学習会を開催しているが、来週の「地域主権改革と県議選の争点」のうち、「地域主権改革」の部分の資料。民主党などの「俗論」から・・・Q&A形式で整理してみた。
Q1 「地域主権改革」って何
小泉「改革」が不評なので、名前を変えただけ
自公政権の「地方分権改革」とめざす方向は同じだが、「自公退場」で同じ名称を嫌っただけ。
言葉の由来は、みんなの党の最高顧問をつとめた江口克彦議員・前PHP研究所所長が作った言葉であり、小泉改革「日本21世紀ビジョン」の中で使われたもの。
その本質―- 多国籍企業に奉仕する「グローバル国家」戦略にもとづく地方自治体の新自由主義的再編であり、中央で新自由主義路線が破綻し「構造改革」が叫べなくなったもとで、その実行のため「地方分権」「地域主権」をことさら強調しているだけ。
*民主選挙公約(09年8月)
「明治以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、地域主権国家に転換する」とし/中央政府の役割を外交、安全保障などに限定し、「地方でできることは地方に移譲する」/「国と地方の協議の場」を設置する、/国が地方に使途を指定する「ひもつき補助金(社会保障・義務教育をのぞく)を廃止し、地方が自由につかえる一括交付金にする。/国の人件費削減のために国の出先機関を「原則廃止」し、「地方分権推進」により国家公務員を地方に移管する、 という政策を発表。
Q2 「ひも付き補助金」「義務付け・枠付け」廃止で自由度をます。
実は、福祉・教育切捨ての「自由度」がますだけ
21兆円の補助金。「ひも付き補助金」というが8割は、福祉、教育関係。「国庫補助負担金」/ ナショナルミニマム保障のために、人員配置や面積、安全面など基準をきめ、それにもとづき補助負担金を出している。
「義務付け・枠付けをなくす」とは、その基準をなくし、国の責任を放棄するもの。そして基準がなくなるので財政支出の根拠がなくなり、何に使ってもよい「一括交付金」となる。
*実際はどうなるか
【証言1】今年、国土交通省と農水省の予算に、一部「一括交付金」の芽だしがされたが。総額は削減。
【証言2】就学援助制度、公立保育の運営費―― 補助金から交付税化(使途が自治体で自由に決められる)し、全国的に後退した。
85年度に一般財源化された学校図書館の図書費では、国が交付税措置した額の77%しか、図書予算に計上されていない(09年度)。そもそも基準以上に充実されるのは今でもできる。
【証言3】保育の面積はスウェーデン、フランスの3分の1、先進国で最低。児童福祉司は、先進国の5分の1、というただでさえ低い基準がさらに引き下げられる。憲法25条に風穴をあける改憲的な攻撃。
Q3 「明治以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、地域主権国家に転換する」
実は、憲法成立による国民主権の確立という根本的な転換を無視した暴論
現行憲法は、明治憲法下の国・地方の縦関係から、地方自治体が戦争に協力させられた反省から対等平等の関係に転換したことで、平和的生存権が保障できるようになった(憲法第8章)。
→ この国と地方の関係の根本的な転換を無視したもの。
Q4 「国と地方の役割分担」
実は、新しいどころか、明治憲法下の仕組みの復活
・Q3の理論的「根拠」が、「国と地方の役割分担」論
・古典的自治論では、基礎自治体は、住民サービスを自己決定でやればよい、となり、国の責任はとわれない。しかし、社会権が確立したもとでの国の責任は違っている。
・国は、軍事・外交・通商政策を担当(自公も民主も同じ)に限定というのは、「分権」の名のもとで、古い「自治論」の復活、明治憲法下の縦関係の再構築するもの。
【証言1】地域主権改革の法案概要 「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課 題に取り組むことができるようにするための改革」とし、人権保障もナショナルミニマムの保障という言葉はない。
【証言2】沖縄の基地問題/ 基地ノーの県民の判断は「国と地方の役割分担」論では、無効、違法となる。
Q5 二重行政の無駄の排除を
実は、無駄をつくった政治の責任を免罪し。人権保障する仕組みをなくすこと。
・何が「無駄か」という具体例はない。問題があれば個別是正すればよい。
・無駄を生み出した政治の責任を免罪/「公共事業630兆円」「天下り・企業献金温存による癒着構造」
★そもそも憲法論から考えよう!
ナショナルミニマムは、憲法が定めた国の責任。その前提があって地方自治がある。
国民は、国と地方のともの主権者として、国政と地方自治の2重のルートを通じ、権力を統制し、それぞれの役割に応じて、協力共同し、幸福の追求、人権保障をする体系。無駄ではなく、むしろ人権保障を担保する豊かさの示すもの。
Q6 中央集権だから無駄。 地方に税源委譲と税率決定の自由を
実は、所得再配分機能を弱体化し、「格差と貧困」が拡大させるもの
・現在/ 国税の所得税の約1/3は地方交付税、消費税の1%分は地方消費税として、地方に再分配がされている。その上で国庫補助負担金があり、ナショナルミニマムを支えるシステムとなっている。
この国税分を地方に委譲し、また税率も地方が決められるようにし、「地方の自由性を増す」というが・・・
・地域間格差が拡大する。「貧乏なところは貧乏なりのサービス」、「サービスを増やしたいなら負担増を」と「受益者負担」が徹底する。
・自治体の課税権限が増したところで、法人税の引き下げ競争が各地で起こることはあっても、引き上げ競争が起きることはない。/ 住民税も同じであって、地域間で減税競争がおこる。
→ 結果として、課税標準の大小にかかわりなく、同じ税率で課税する税、逆進性が高い比例税に収斂し、応益負担原則にむかってく。
★福祉国家の財源は、応能負担原則
所得再配分機能は、所得の自由な移動を前提にすれば、全国規模でしか成立しない(中央集権機能)。単純な地方への税源委譲では、必然的に、再配分機能は弱まる。
・問題は、その中央政府をどの政治勢力が握っているかであって、制度の問題ではない。
Q7 首長のマニフェストに議会が反対するのはおかしい
なんでも「賛成」のオール与党の議会が一番の問題
・大阪府、名古屋市、阿久根市の首長の主張。
・民主党の「地方政府基本法の制定」/ 議員から、○○部長など執行部に入れるようにする。
・首長と議会がともに直接住民から選ばれ、チェックアンドバランスの関係で、暴走の阻止と、多様な意見の反映を行う民主的なシステム / この機能をなくす
・今問題なのは、オール与党「なんでも賛成」の議会
・議会は、住民参加の大道であるのに、議員の個々の議決がわからない状況/ 評価できない
Q8 道州制って何?
狙いは、国のナショナルミニマムの責任放棄と財界が自由に活動できる地域づくり
・国の仕事を外交・軍事・司法などに限定。福祉・教育は地方に押しつけ、自立自助の名で住民負担で運営。
・住民自治による規制の撤廃(原発、産廃、大型開発)。自治体数300に再編し、浮いたお金を大型開発に投入
【証言】 日本経団連/ 「究極の構造改革」と位置づけて、「官の役割をゼロベースで見直し」、「小さな政府、民主導の経済社会」めざして、「規制改革の推進や官業の民間開放…を徹底する」(第二次提言 08年11月)
【証言】 全国町村会 /合併はデメリットが多く「これ以上の合併推進はおこなわないこと」「市町村合併につながる道州制には断固反対」(08年9月)
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