TPP 本質は農業大国・米豪との協定
TPP交渉参加は、APEC21の国・地域のうち9カ国。うちチリなど6カ国とはEPAを締結・合意。よってその本質は、農産物輸出大国の米・豪との自由貿易協定。また、農業が「鎖国」というのも真っ赤なウソ(図)。
昨日は、JA高知中央会と意見交換。TPP参加の県内の影響が示された。
◇コメ/ 県内産米は、生産コストが高いうえ、ブランド力が乏しいことから最終的には139億円の産出額のほとんどが失われる。稲作面積13100ヘクタールのうち、他品目に転換できない1万ヘクタールが荒廃する恐れ。
◇野菜/ もともとの関税が低い(高知の主力産品 ナス、きゅうり、ピーマンなどは3%)、鮮度が求められることなどから輸入量が急激にふえるとはいえないが、少なからず影響を受ける。
ショウガは塩水処理分は9%、食酢などにより保存に適したものは12%の関税となっているが、加工食の輸入が増加することで、野菜への影響は大きい。
高関税で守られていた米、麦、大豆などの作付けが激減する傍ら野菜の作付けに転換する農家が増える。そのことが大きな影響を与えるだろう。
◇果樹/グレープフルーツとオレンジの関税が周年を通じてゼロになれば文旦、小夏、みかんは価格低下の影響を受ける。
◇畜産/13億円の生産額の7~8割が喪失する。とくに赤牛は消滅する恐れが強い。
◇地域経済/2、4%の県内生産のなかで農業生産は2.4%だが、肥料、農薬、農業機械の小売業者、運送業者、関連産業への影響、農家の所得減少による生活資材の購入量の減などを考えると地域経済への影響は計り知れない。
県内就業者10,7%をしめる農業就業者が減少すれば、失業者の増加、労働力の県外流出で、県の活力をいっそう低下させる。
JA中央会は、新聞への意見広告、県民大会を開きたいとのこと、TPP参加阻止で力をあわせることを確認した。
(道路特定財源のときには、知事先頭に大騒ぎした県は、影響額の試算を発表するでもなく、どうしたのか?)
以下は、昨日の菅総理からAPEC報告への吉井衆院議員の質問から
私は日本共産党を代表して、APEC報告について質問します。 まず、TPP、環太平洋パートナーシップ協定の問題であります。■いまなぜ米国主導のTPPなのか
米国オバマ政権は、TPPを米国の通商政策、対アジアを中心とした輸出倍増計画の柱に位置づけ、米国主導で強力に進め、日本の対応をもとめています。
菅総理が10月の所信演説で、「新成長戦略」の工程表にもなかった「参加検討」を突如打ち出し、「協議開始」を強行するのはなぜなのか。もともと日本は「東アジア共同体」、ASEAN+6を提唱してきました。なぜ方針を大転換し、米国主導のTPPに舵をきったのですか。明快な答弁を求めるものであります。
先週9日の予算委員会で、玄葉大臣は、二国間EPAが進められなかった、だからTPPというハイウェーに乗ることになった、と答弁しました。この意味を国民にわかるように説明ください。
現在TPPの参加交渉に入っているのは、APECに加盟する21の国・地域のうち9カ国にすぎず、中国も韓国も入っていません。そして9カ国のうちチリなど6カ国と日本は、すでにEPAを締結・合意しています。したがって、TPPに日本が参加する実質的意味合いは、米国と豪州にあり、その中核は事実上の日米FTAなのではありませんか。■農業破壊、地域破壊
重大な問題は、米国主導のTPPは原則、例外なくすべての品目の関税をゼロにし、完全な自由化を求めることです。農畜産物をはじめあらゆる品目、サービス、金融、労働力の移動から投資まで、すべてに及ぶのであります。
総理は「平成の開国」といい、世界から「立ち遅れている」かのようにいいますが、本当にそうなのでしょうか。
例えば日本農業は、鎖国状態どころか世界で最も開かれた市場となっています。
農産物の平均関税率は、韓国が62・2%、EUが19・5%などに対して、我が国はわずか11・7%であります。一方、世界最大の農産物輸出大国であるアメリカやオーストラリアに対して、我が国の食料自給率は40%にすぎません。
TPP参加に、北海道はじめ8道県議会や全国町村会が反対決議を行っています。鹿野大臣、農水省の影響試算によっても、日本農業と地域経済に壊滅的な影響を及ぼすことは火を見るより明らかではありませんか。
食料安保のAPEC「新潟宣言」にみられるように世界的な食料危機、飢餓と貧困からいっても、また気候変動、生物多様性、地球環境や国土の保水、自然環境の保全からいっても、農林水産業はいったん失うと取り返しのつかない多面的機能をもっております。決してお金だけに換算できるものではありません。総理の認識をうかがいます。
前原外務大臣は、先月、「日本のGDPの1・5%の第一次産業を守るため、98・5%が犠牲になっている」と発言しました。まさに暴論であります。前原発言の撤回をもとめます。
総理もこうした認識を容認されるのか、答弁を求めます。■TPPは誰のため、何のための協定か
TPPがめざす「シームレス」、すなわち「切れ目のない地域の形成」とはいったい誰のための、どういうものでしょうか。
自動車、電機など輸出大企業は、今や巨大な多国籍企業に成長し、すでに世界中に海外生産拠点を設け、国際生産ネットワークを築いています。シームレスな市場の形成は、日本経団連、財界の一貫した要求であり、TPPの実現により、例えばある自動車メーカーは、輸出を海外生産へ切り替えたり、米国工場を拡張し、そこを輸出拠点として豪州への輸出拡大をはかることを表明しています。
このようにTPPは、国内立地と雇用の拡大を保障するものではなく、かえって産業と雇用の空洞化を加速しかねないものではありませんか。
経済の国際化、グローバル化が進む今日、多国籍企業の国際競争力がその国の競争力、国民の利益と厳密に一致しなくなっている時代であることは、1992年の通商白書が喝破したとおりであります。総理にこうした認識はありますか、答弁をもとめます。■日米同盟の深化、何を約束したのか
つぎに、日米首脳会談です。菅総理は、安保改定50周年にあたり、米軍の引き続くプレゼンス(駐留)が必要との認識をしめし、普天間基地の辺野古「移設」に「5月の日米合意をベースに最大限の努力をする」と表明しました。これは沖縄県民の「県内移設反対」の総意を真っ向からふみにじるものであります。
また、泥沼化し治安状態の悪化が深刻化するアフガン本土に自衛隊医療部隊の派遣を検討すると表明したことも重大です。米側にどのような約束をしたのか。そもそもアフガンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派遣は、憲法9条から問題となり、自民党でさえ踏み出せなかったものであります。いったいどのような根拠で正当化するのでしょうか。明確な答弁をもとめます。総理は「いま歴史の分水嶺にたっています」といいながら、いつまで日米同盟にしがみつく政治をつづけるのでしょうか。経済でも外交でも日米同盟を絶対視するのではなく、真に、平和、人権、対等、平等、互恵の東アジア共同体の構築を目指す政治への転換こそもとめられているのであります。
以上、答弁をもとめ質問をおわります。
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