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「貧困の蓄積」と半失業・非正規労働 備忘録

 「なぜ資本主義は貧困を広げたか」(唐鎌直義・元専修大学教授)、「非正規労働は『自己責任』なのか ――「資本論」の産業予備軍論に立ち返り考える」(関野秀明・下関市立大学准教授)の備忘録(『経済」2010年11つき号)。
 「資本主義的蓄積の一般定式」「産業予備軍」論に立ち返って、現在の「非正規雇用」の本質は、産業予備軍=「半失業」と捉え、貧困をなくす戦いとして、「イギリスのブースの雇用理論」の意義や自己責任論の生まれる構造の解明、「就業者と失業者とのあいだの計画的協力を組織」することの重要性を説く。貧困、非正規労働の問題にかかわっている人には、ぜひ読んでほしい、鋭い論考。
 「201010.doc」をダウンロード

【なぜ資本主義は貧困を広げたか】  唐鎌直義・元専修大学教授

はじめに
・マルクス「資本主義的蓄積の一般的法則」(「資本制生産の敵対的性格」の指摘)で「富の蓄積」は、対極に「貧困の蓄積」を必然的に生み出すと詳述――― 現在の日本、人口の再生産の衰退、限界集落、12年間で38万人の自殺、など指摘は、誰も否定できない。
→ 貧困の理解には、この資本主義の法則を基礎におくべき /この視点を失うと、貧困の原因は個々の貧困者の個別性と多様性の中に韜晦し、貧困の不可知論へと導かれる /貧困は必ず具体的な個人に発現 /だからと言って、政策対応が個々人へのケースワークで済まされてよいはずがない。
・敵の所在を明らかにし、貧困をなくす闘いの共通の土俵を作るためには「資本論」を「導きの糸」とするべき。

1貧困原因としての「半失業」
・働く人々を経済的困窮に陥らせる原因 /老齢、障害、疾病、離死別、失業といろいろあるが、もっとも判断が難しく、歴史的にも政策的対応に大きな振幅を見せてきたのが失業による貧困
→ なぜか?/ 失業は稼働能力をもつ人々の貧困だから。/現に働いている人は「意欲の低下」「怠惰」と理解しがち。/どんなに厳しい不況でも失業はすべての人に均等に発生はしない。失業と失業しない人に二分され、しかも常に失業は少数派 / 失業を「心がけの悪さ」「努力不足」に帰することは至極容易である。
→ 人の判断の最深部には、自由競争原理の是認、「自立・自助」原則という壮大なフィクションがある。/多くの貧困原因のなかで、失業は最も道徳と結びつけてとらえやすい貧困要因
→ わが国でも、失業者はごく少数の例外を除き、生活保護の救済対象からはずされている。
→ この克服には、「失業とは何かという根源的な問いかけが不可欠」である。

(1)カール・マルクスの「相対的過剰人口」論
・労働者階級の貧困の原因が「半失業」(今日の非正規雇用)にあることを見抜き、理論的に体系づけたのは「相対的過剰人口」論を提起したマルクスが最初といってよい。
①景気循環の不況局面では労働力の需要(求職)が供給(求人)を大きく下回る。すぐわかること
②マルクスは、好況局面(むしろ好況局面だからこそ)、生産合理化(機械化)の推進によって投下資本中の固定資本比率が上昇しつづけ、可変資本(賃金)比率が相対的に低下し続けることを指摘(資本の有機的構成の高度化)
③これによって資本蓄積欲求に都合よく吸収、反発される「相対的過剰人口」が「労働力のプール」として常にいかなる場合にも準備されている。/ それが資本主義的生産様式の1つの重要な存在条件
④労働者は材料のように倉庫にプールできない。過剰とされる労働者は「半失業」の状態としてプールされる。

・マルクスの「相対的過剰人口」の諸形態/ 流動的形態、潜在的形態、停滞的形態、恤救貧民
→ マルクス「奴隷が認められてない自由な国では、最も確実な勤勉な貧民が多いことである。かれらは陸海軍のためにけっして尽きることのない供給源である」(マンデヴィルの言葉)/昨今に日米に当てはまる。

◇好況期にも貧困は蓄積される。
・故江口英一氏  「停滞的形態」を最も重視し、貧困を「働く貧困者」の問題として広く把握し続けた。/高度成長期からバブル期まで日本資本主義が最も活況を呈した時代だから、資本蓄積と同時に貧困の蓄積も猛烈な進行があったと考え調査。/「不安定就業階層」は底辺層として全就業人口の3割強を構成と考え /マルクスの指摘どおり、失業の本質は「半失業」であると主張。

(2)チャールズ・ブースの「常用雇用化」論
・19世紀末、英国の世界市場単独支配が終わり、帝国主義の時代に突入/この時、英国は世紀末大不況に遭遇/この時期に、「独占」と呼ばれる寡占企業が成立、クラフトユニオンがゆきづまりを見せる一方で「新型組合」とよばれる一般労組が台頭、社会主義思想が勃興するなど騒然とした世相
→マルクスの命題に対し、資本主義の大胆な修正で貧困問題を乗り越えようとする試みが、社会主義運動の高揚に強い危機感を抱いた資本家階級に属する人々から提起された。

・ チャールズ・ブース(海運業者 1840-1914年)統計学を駆使して「ロンドン調査」を実施
→ 『社会階層』の概念を用い、一定の「職業と結びついた貧困層」の存在を証明したのが最大の特徴
/港湾労働者、煉瓦積工、馬車の などをレーバリング・プアの代表として見出した
→ 基準「収入が規則的にあり、質素な暮らしながらも、緊急時に他人から借金しなくても済む暮らし」/この基準以下の世帯の出現率は35%強にも達した。
・ブースの分類 /標準生活E 貧困層D(収入は規則的だが低賃金)、C(間歇的収入)、B(不規則な収入)、A(臨時的労働者の最下層、浮浪者と半ば犯罪者)
→ CDの貧困原因は68%が「就労は規則的だが低賃金」「賃率は低くないが不規則」。ブースは「雇用に基づく貧困」と分類。/ 病気や大家族による貧困は「境遇に基づく貧困」19% /『個人の道徳的堕落』は全体の13%だけ

・ブースは、最大の貧困原因が雇用問題であると発見 /「半失業」問題に着目。貧困は、雇用問題という「社会的原因」であると証明した
→ なぜ社会的原因か ①資本家階級の圧倒的な繁栄の下で労働者の悲惨とも言うべき貧困が生じた ②国家が何らかの対策を採るならば解決できる貧困を放置しているから。

・ブースの処方箋 ・・・「不安定雇用労働者」を構成するB階級を、労働者階級全体の「死錘」と見なし、B階級を取り除くことで、CD階層をE階級まで浮上する。
→ B階級には高齢者や障害者が多く含まれ、公的扶助で生活を保障し、労働市場から引退させると「ひどく劣悪な条件でも、否応なく食べるために働かなければならない労働者」をなくし、労働者間競争圧力を緩和し、労働者の要求実現に優位に導く /マルクスが述べた「産業予備軍の死重」を取り除こうとした

・ブースの「常用雇用化」/ さらに「不安定雇用」をなくすために正規労働者化を提唱し、公的な無料の職業紹介所を創設し、「雇用の質」をチェックし、不安定雇用を労働市場から除去する役割を担わした。
→この体系は、「ブースの市場論」「ブースの雇用理論」と呼ぶ
→ この考えは、「労働市場の組織化」理論として、ベヴァリッジらに受け継がれ、先進国の雇用政策、社会保障政策の基本的枠組みとなった。

◇「不安定雇用」――失業の本質
・日本は労働法制の緩和、非正規労働の増加と正規労働者の条件悪化により、大企業は巨額の利益を得た。/今の日本から貧困をなくすためには、労働者派遣法の禁止からスタートしなければならない
→ 失業問題を回避する貧困研究は、貧困問題の本質にたどり着けない。
・ブースの政策提案 / 世界初の無拠出老齢年金(1908)、世界初の職業紹介所(1909)、世界初の失業保険(1911)等に結実 /この実現は、彼一人の力ではないが「不安定雇用」という「近代的貧困の本質」の発見をつうじ、貧困認識を一変させ社会保障制度の創設という新しい政策を提起した意義は評価されなければならない
→ ブースの研究は、今も「貧困の発見」「失業の発見」と賞賛/ 労働者階級にとって普遍的価値を有する。

2.日本の社会保障の貧困除去機能は低い
・貧困原因として「半失業」とともに重視されるべきは、急速に低下する社会保障の貧困除去機能。
・「国民一人当たりの社会支出」の国際比較 (05年度、社会保障統計年鑑より)
スウェーデン1万7135ドル、アメリカ8585ドル、日本6873ドル
スウェーデンを100とし、ドイツ73、イギリス63、アメリカ50、日本40

・社会保障の貧困除去機能の国際比較
 社会支出のOECD基準による9分類のうち、「家族、積極的労働政策、失業、住宅、生活保護その他」の5分野を「貧困関連社会支出」と分類
スウェーデン4055ドル、イギリス2777ドル、ドイツ2294ドル、日本599ドル
スウェーデンを100とし、ドイツ57、イギリス68、アメリカ21、日本15(わずか!)

・公的扶助の水準比較
 アメリカ、スウェーデンが300ドル台以外は、ドイツ96ドル、イギリス91ドル、日本94ドルで遜色ないように見える
→ しかし、ドイツ、イギリスの公的扶助は、日本の生活保護の「生活扶助」部分にのみ特化したもの。住宅、教育、医療、介護など現物サービスで国民一般対象の普遍的施策、または低所得者対象の施策の組み合わせで、最低生活を保障している。
→ 日本は、8種類の扶助、現金給付のみ。/生活扶助と生業扶助に限定すると31ドルと1/3のレベル

終わりに
・我々はマルクスのいう「資本主義蓄積の一般的法則」が貫徹する社会で、日々労働と生活を送っている /資本主義のくびきから抜け出すことは難しいが、せめて国民の労働と生活の諸条件を整備して、不安のない社会を構築することが、国に課せられた最低限の責務
~「政府の目的は支配者や民族の栄光ではなく、庶民の幸福である」(ベヴァリッジ)

★「失業する権利」
・労働者が完全に失業した状況というのは、失業の理念型であれって現実化ではない。/全く仕事に就いていない状況は、失業給付制度が創設されて初めて世に登場する。だから失業の基本形は常に半失業である /失業は決して悪い状況ではなく、悪い状況になるのは、ひとえに失業保険給付の貧しさにある /フランスの労働者は『失業する権利』を主張――「不適切な条件での就労を回避するために、失業保険、失業扶助を権利として保障すること」(メモ者/ 分厚い社会保障は、労働力の安売りを防止する)



【非正規労働は『自己責任』なのか ――「資本論」の産業予備軍論に立ち返り考える】
                       関野秀明・下関市立大学准教授
はじめに
・反貧困の運動の高まりに対し「派遣労働の規制は失業を生み企業の国際競争力を奪う」という主張。さらに「中高年正社員保護のような『構造改革の不足』が若者非正規にしわ寄せしている」という「正規労働者責任論」/「若者非正規の低い技術水準、低生産性に貧困の原因がある」とする「非正規労働者自己責任論」/という議論が出ている。(主張しているのは「構造改革」推進論者)
・論考の構成/ ①実態 ②本質分析において「産業予備軍」に立ち返る ③「正規労働者責任論」批判 ④「非正規労働者自己責任論」⑤両「責任論」が、資本蓄積運動そのものが生み出す虚偽意識であることを「資本論」に立ち返り解明

1.「構造改革」と労働者・国民の貧困の実態
・14年間で、正規労働者400万人減(-10.6%)、非正規労働者720万人増(+71.9%)
 (総務省「労働力調査」)
・「年収200万円以下の労働者階級」約30%増 「年収400-900万円」減
(1995-2007年 国税庁「民間給与実態調査結果」)
・週労働40時間が減少、週49-60時間以上が増(02-07年 総務省「就業構造基本調査)
・労働生産性の上昇と分配の関係(厚労省「労働経済白書2007年」)
1980年代 労働生産性+2.8% 賃金上昇1.6%  労働時間削減0.2%
1990年代 労働生産性+1.4% 賃金上昇0.2%  労働時間削減1.1%
2000年代 労働生産性+1.7% 賃金上昇-0.1% 労働時間削減0.1%

2.「大企業責任」と「資本論」の産業予備軍
・本質的事実は、正規労働者・高賃金層が、非正規労働者・低賃金層に置き換えられ /労働時間はさらに長時間となり / 労働生産性上昇分は分配されなくなった
→ 富は、大企業の利潤の蓄積に
・資本金10億円以上の大企業(財務省「法人企業統計」)
  単年度経常利益 96年15.8兆円から06年32.8兆円と2倍に
  利益剰余金 95年70兆円台から、08年に133兆円 
  国内の有形固定資本は増えてない(200兆円前後)。急増したのは投資的資金(70兆円台から150兆円)
→ 労働者へのしわ寄せにより生まれた富は、国内の生産、雇用には使われず、海外を含む株市議・企業買収に向けられた。
・「構造改革」下の貧困の注目すべき本質的事実 「正規と非正規は対立させられながらともに資本に支配され貧しい」
→ この本質的事実は、2つの次元で解明されるべきもの
①特殊現代日本的要因 95年「新時代の『日本的経営』」からの労働法制の緩和、成果主義 /「構造改革」の後ろ盾となった「年次改革要望書」などアメリカの対日要求
②根底に貫く貧困の法則として資本論の産業予備軍(現役軍の賃金引下げ手段として)論。/労働者の階層間格差を利用した資本蓄積は資本主義を貫く基本法則(日本の実態も、この法則に則るもの)

・現代の「非正規労働者」の本質は、マルクスのいう「産業予備軍」と定義しうる。(もちろん社会保障、労働法制、日本的雇用慣行とその変化など、その影響度を丁寧に位置づけ統合していく作業が必要)
・「相対的過剰人口または産業予備軍の累進的生産」(23章第三節)/ 技術革新、生産性の向上を伴う資本蓄積の進行が、産業現役軍の労働力需要拡大・賃金上昇を抑制し、賃金を引き下げ・過労を促すための相対的に過剰化した労働力人口・産業予備軍を生み出す法則を明らかにした。
→ 「いつでも使える搾取可能な人間材料を作り出す」
→ 資本が労働者を階級的に編成し対立させる結果、産業現役軍も予備軍もともに支配下に入れる
「労働者階級の就業部分の過度労働は、彼らの予備軍隊列を膨張させるが、その逆に、この予備軍隊列がその競争によって就業者に加える圧迫の増加は、就業者に過度労働と資本の命令への服従を強制する」
/産業現役軍の過労と産業予備軍の増大が互いを圧迫し共に資本への服従を深めるという、労働者階層間対立の本質を明確に指摘

3.非正規労働者の貧困の原因と「正規労働者責任論」
・「構造改革」派の言う「正社員と非正規社員の格差是正」とは、ともに非正規をすすめる内容
・「正規職員責任論」が受け入れられない3つの理由
①「構造改革」下の貧困の実態と相いれない
 正規労働者と安定所得層の減、一方、労働時間は増大。ここに非正規労働者を圧迫する「既得権益はない」
②大企業の利潤・蓄積を既得権益として聖域化している。
③「労働需要が低下しても賃金・労働条件を切り下げれば失業は生まれない」という主張の誤り
 今回の世界不況の本質は過剰生産。「売れないので仕事がない」以上、輸出大企業は、解雇したはず。/総需要不足の解決なしに、賃下げで労働需要が生まれることはない。

4 貧困の原因と「非正規労働者自己責任論」
・「正規労働者責任」論者は、非正規労働者の権利回復、保護を主張してない。/彼らは共通して非正規労働の規制強化は、失業と貧困をますだけ、という点で共通している。
・また、非正規労働者の貧困の原因を、労働者の生産性、技術の低さとしている。
・「非正規職員責任論」が受け入れられない2つの理由
①「構造改革」下の貧困の実態と相いれない
 2000年代、労働生産性の上昇が労働者にまったく分配されてない。この間、正規労働者減少と非正規労働者増加するもとで、労働生産性は90年代より上昇しており、非正規労働者の貧困は自己責任ではなく、生産性に見合った分配がなされてないため。
②非正規労働の貧困は、急速な大企業の経常利益、利益剰余金の蓄積のため「社会的に必要」とされたためであり「個人的な事情」ではない。/それを「自己責任」と非難するのは二重に誤り

5 「自己責任」の虚偽意識と産業予備軍機構
・現代の非正規労働者の貧困は「正規労働者責任」「非正規労働者自己責任」ではない。この客観的事実は何より重要だが、/ なぜ「このような誤った見解が多くの人々に影響を及ぼしているか」という問題
→ この虚偽意識を生み出す資本蓄積機構を解明してこそ、この意識から自由になれるのではないか。

・この資本蓄積機構の特徴、労働者階級間の対立を資本蓄積の原動力とする機構こそが、マルクスが資本論で分析した「産業予備軍」の機構
→ マルクスは、産業「現役軍」と「予備軍」のせめぎあいのメカニズムについて詳細に分析
①資本が、現役軍から過度労働を引き出す作用
~現役軍労働者の視点で見れば、技術的革新、生産性向上によるリストラで排除されないよう、産業予備軍に転落しないよういっそうの過度労働を受け入れる
~ この局面で、現役軍労働者の意識は、「より高い技術、生産性を身につけ、より過度な労働をこなす能力があるからこそ自分は現役軍。その能力がないものが予備軍なのだ」という「貧困=自己責任論」となる。

②資本が多数の予備軍労働者により現役軍を排除することで、より多くの労働力(メモ労働?)を引き出す作用
 「資本家は、ますます不熟練労働者によって熟練労働者を、未成熟労働者によって成熟労働者を、女子労働者によって男子労働者を・・・駆逐することを通じて、同じ資本価値でより多くの労働力を購入する」
~予備軍労働者の視点から見れば、自分たちが現役軍と同等の能力を発揮し競争に打ち勝って現役労働者を排除する局面
~この局面での予備軍労働者の意識は「現役軍労働者と同等の能力でより安く労働できるのだから取って代わって当然であり、それができないとすれば不当な既得権益が現役軍守っている」という「正規労働者責任論」に至る。

③マルクスは、①②の作用が統一される、と述べている
・「蓄積が進むにつれて、一方では、より大きな可変資本が、より多くの労働者を徴募することなしにより多くの労働を流動させ、/ 他方では、同じ大きさの可変資本が、同じ量の労働力でより多くの労働を流動させ、/ そして最後に、より高級な労働力の駆逐によってより低級な労働力をより多く流動させる」
→ 「一方」「他方」は、①の作用。現役軍労働者の過度労働と搾取を強め、予備軍労働者を寄せ付けない側面
→ 「最後に」、現役軍労働者が駆逐され、予備軍労働者が過度労働する結果に至る、という②の作用
→ ここで①と②の作用を統一した資本蓄積の機構は、それを担う当事者である現役軍労働者には「非正規労働者自己責任論」を、予備軍労働者には「正規労働者責任論」を、虚実を問わず意識、確信させる。

・この作用で、本質として誰が誰を支配し服従せしめているのか。マルクスの答えは明快 
 「労働者階級の一部分の過度労働による、他の部分の強制的怠惰への突き落とし、およびその逆のこと(強制的怠惰が逆に他の部分の過度労働への突き落としを招くこと)は、個々の資本家の致富手段となり、しかも同時に、社会的蓄積の進行に照応する規模で産業予備軍の生産を速める」

→ マルクスは、資本主義にとって避けられない景気変動と労働需給の不均等、それによる賃金の変動もこの「現役軍」と「予備軍」との対立を利用することで、資本蓄積に適合する範囲でコントロールされると述べている。
「産業予備軍は、停滞と中位の繁栄との期間中(労働需要<労働供給 筆者)には現役労働者軍を圧迫し、過剰生産と興奮の期間中(労働需要>労働供給 筆者)は現役労働者の要求を抑え込む。
 したがって、相対的過剰人口は、労働の需給供給の法則が運動する場の背景である。相対的過剰人口は、この法則の作用範囲を、資本の搾取欲および支配欲に絶対的に適合する限界内に押し込める」

→マルクスは、労働者階層間の格差を利用した資本蓄積を「資本の専制支配」と呼んでいる。
「“サイコロはいかさまだ”。資本は、その両面(労働需要と労働供給 筆者)に同時に作用する。資本の蓄積が、一方で労働にたいする需要を増大させるとすれば、地方では労働者の『遊離』によって労働者の供給を増加させるが、それと同時に、失業者の圧迫が就業者により多くの労働を流動させるように強制し、したがってある程度、労働供給を労働者供給から独立させる。この基盤の上における労働の需要供給の法則の運動は、資本の専制支配を完成する」

・「労働需要>労働供給」の場合
生産性向上で予備軍が供給され、予備軍の圧迫で現役軍の過度労働も促され、労働供給の強化が起こる
・「労働需要<労働供給」の場合
そのまま予備軍の圧迫で現役軍の過度労働は促され、労働供給の強化がおこる

・ここでの「サイコロのいかさま」とは、「生産性向上」による労働供給である
 「労働需要>労働供給」「労働需要<労働供給」のどちらの目が出ても、常に予備軍は生産され、現役軍は過度労働が強いられ、結果として賃金は抑え込まれ、労働強化が生まれる。

・以上の産業の「正規=現役軍」と「予備軍」とのせめぎあいのメカニズムを理解することは「資本論」の「致本蓄積論」における重要な基本法則をより具体的に理解することである

①いわゆる「資本の蓄積とそれに照応する貧困の蓄積」法則において、「相対的過剰人口または産業予備軍を蓄積の範囲と活力とに絶えず均衡させる法則」
 ~マルクスは、資本蓄積が豊かさとは正反対の失業・相対的過剰人口の形成、増大をもたらすこと /失業・相対的過剰人口が資本蓄積のテコとなり /労働者に対する資本の支配と搾取を強め、資本蓄積を進行させる / ことを明らかにした。

 ~ここで富・資本の蓄積の一方でそのテコとして展開される労働者階級の貧困の蓄積とは ・・・ 正規労働者と非正規労働者のせめぎあいのメカニズムを利用したもの、予備軍の生産と現役軍の過度労働の相互作用に他ならない。

②正規労働者の過重労働と非正規労働者の不安定雇用・低賃金を共に規制し、労働者階層間の格差や対立を緩和することが「資本の専制支配」をおわらせる「歴史的傾向」の具体的な形として理解できる。
 マルクス「彼らが“労働組合”などによって就業者と失業者とのあいだの計画的協力を組織しようとつとめるやいなや、資本とそのへつらい者である経済学者は、『永遠の』、いわば『聖なる』需要供給法則の侵害についてがなりたてる。とうのは、就業者と失業者とのあいだのどんな結合も、あの法則の『純粋な』作用を撹乱するからである」

 ~ 今日的には「正規労働者の過労」「非正規労働者の使い捨て」を共になくすために、「“労働組合”などによって就業者と失業者とのあいだの計画的協力を組織」することが必要であるとの命題は、正規・非正規という違いを超えて、労働者階級として組織・運動をつくっていく課題。
→ それは「資本主義的私的所有の弔鐘が鳴る」という「歴史的傾向」により明確なイメージを与える
→ つまり「弔鐘」を鳴らす主体として「生産手段の集中と労働の社会化」の中から生まれ増大する「訓練され結合される労働者階級の反抗」とは 
→ 「就業者と失業者とのあいだの計画的協力」という具体的形としても現れるはずである。

おわりに
・本稿は、「正規労働者責任論」「非正規労働者自己責任論」は、資本蓄積そのものが必然的に生み出す虚偽意識であることを、「産業予備軍」論に立ち返り解明した。
・資本蓄積は /常に生産性増大を追求しつつ、/まず正規=現役軍労働者の過度労働により、予備軍労働の排除を進める /さらに予備軍労働者の徴用、現役軍労働者との置き換えによって、より安価な労働を実現する / この両面の作用を統一した運動こそ資本蓄積であり、「正規労働者責任論」「非正規労働者自己責任論」という虚偽意識をつくられるメカニズムである。
→ このメカニズムを理解してこそ、虚偽意識から真に自由になり、貧困の本質、資本蓄積そのものに批判のメスをいれることができるのではないだろうか。

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