合築図書館 県議会での反対討論
県市図書館検討委が開始された。「(成功は)ゼロではないが、相当難しい」と言っていた元鳥取県立図書館長がなぜ委員を受けたのかよくわからないが、「討議では委員から、想像していた以上に厳しい意見が続出して、拙速な合築ありきとは一線を画するものになり、県教委のもくろみとは異なる流れになった(2人のぞく)。」(N田記者)とのこと・・・
県議会では、つかじ県議が関連予算の削除をもとめた修正案の討論に立ったが、検討委員会は、討論の指摘に対して回答する責任がある。 以下に、22日閉会日の討論の全文。
【図書館「合築」に慎重意見 検討委初会合 県と市「役割違う」読売】
【県立図書館:合築問題 経費削減かサービス低下か 検討委で議論 /毎日】
【修正案、請願趣旨に対する賛成討論 つかじさち 10/24】
私は、日本共産党と緑心会を代表して、ただいま議題となっています議発第3号平成22年度高知県一般会計補正予算に対する修正動議に賛成し、また、請第1号高知県立図書館の新館建築の請願について否決とした委員長報告に反対し請願趣旨に賛成の立場から討論を行います。
先の提案理由の説明にもあったとおり、今後50年間の高知県、高知市の図書館行政のあり方を決定する極めて重要な課題である新図書館の建設にあたって、ここまで県民、図書館関係者の声を聞くことなく、実質追手前小学校跡地への合築ありきでの議論を前提とした基本構想検討委員会を認めることはでき無いことをまず申し上げておきます。
さて、今議会中に、高知県議会文化振興議員連盟による勉強会が開催され多くの議員も参加をされていました。その、講師として、進化型図書館として注目されている人口60万人の鳥取県県立図書館の元館長である斉藤明彦氏の講演内容は、本県の図書館行政の今後を考える上で極めて示唆に富んだものでした。
当県立図書館では、年1億円の豊富な蔵書で市町村図書館、学校図書館、大学図書館や研究機関等への支援とネットワークづくりを基本に「読書する図書館から役に立つ図書館、役に立つと認識される図書館」へ、との考え方のもと、医師会、商工会議所、弁護士など各種団体との情報交換と人的ネットワークづくり、自治体やNP0まで視野に入れたチラシ類も置き、専門的司書を配置、養成し、様々な課題解決のためあらゆる専門家、情報、各機関と県民をつなぐ情報拠点として、進化しています。
自ら情報を得、自らの頭で判断し、自ら行動する県民となるよう徹底した支援を行っているため、他施設との共用とはいえ、いまある約400台の駐車場でも不足し、さらなる蔵書拡充の必要から、現在の9000㎡の床面積でも足りず、県立図書館だけでも13000~14000平方メートルは欲しい、と話されました。中でも、県民のアクセスを保障する広い無料の駐車場を整備することは、必須条件であることも力説されました。
まさに、人を育てることが県勢浮揚の要であり、県立図書館はその中核的施設としての責務と機能を発揮しなければならないとの熱い思いが伝わり、大きく整備の立ち後れた本県の県立図書館の目指すべき方向が指し示されたお話でしたし、高知市を含む34市町村、80万県民を視野に入れて昨年8月に作成された「高知県の図書館行政のあり方提言」に示された方向と多くの部分が一致する内容でした。
一方、高知市民図書館の目指すべき方向は、35万市民を対象に、司書の配置を増やし、直接窓口サービス生活支援機能を充実する事はもちろん、高知市内の21の図書館分館と分室、市立小中高等学校等の64学校図書館支援、保育所や幼稚園、地域文庫、移動図書館の図書環境の整備と支援、それらを機能的に活かすためのシステムとネットワークの整備をはかるなど、1つの自治体、中核市としての図書館行政を強化するための図書館整備が求められています。
そもそも、県立図書館と市民図書館とはその担うべき役割と機能が違い、今日さらにその分化が進んでいます。それを踏まえ、県市の合築という事業が、日本で初めて行われる前例の無い事業であり、失敗すれば後世に重大な禍根を残すことになりかねないとの思いから両図書館の現場関係者は、県市の図書館業務をすべて洗い出し、それに基づき、合築して機能充実がはかれるのかを実務者レベルで検討してきました。その結果、当時の両図書館館長は「結果的に互いに業務が干渉しあい中途半端になる。個々の機能を拡充するどころかスケールデメリットが多くなる」「合築は、両図書館を足してさらに拡充する発想ではなく引き算になる。業務の集約化を進めても整理が難しく、機能するか確信できない」と実質反対の声をあげ、今日も発信しておられます。
しかし、今回打ち出された計画は、このような現場と専門家の声を無視し、明確な管理運営方針を示すことなく、追手前小学校跡地への合築ありきでつくられました。そして「一体的整備」との名の下に、貸し出しなどの窓口業務を高知市に一本化する、購入する本を選ぶ選書活動も一体に行うなどの方針をそのデメリットも考慮せず、合理化を図ろうとしていることに図書館関係者から率直な批判と不安の声が寄せられるのは当然のことだと考えます。
「合築では良い図書館にならない」。その懸念は、立地場所、合併特例債の期限に連動した平成26年度末完成をめざす建築スケジュールなど、合築案の具体像が明らかになり、一層強まってきています。
先ず、建設場所の制約からくる駐車場の整備と機能的な書庫と十分な閲覧スペースの確保の課題です。
今、図書館用地として一般的に追手前小学校跡地と表現されているため、その全体9800平方メートル全部を図書館用地として活用できるとの受け止めがあり、総務委員会の委員でさえ、その半分程度しか活用できないとの認識になっていなかったことも審議の中で明らかになりました。しかも、建設スケジュールから逆算すると、現在校舎が建っている部分は図書館の建物が建てられる用地に使用できず、1フロアーの面積は約3250平方メートルにすぎない計画です。そこに、205万冊の蔵書機能を持たせることとなるため、延べ床面積の35%が巨大な本の倉庫となり、開架書棚と閲覧スペースは、現在の極めて狭隘な県、市民図書館の2倍にも達しない計画です。どこでも新図書館が整備されると、来館者数は数倍になりその数は増えていく傾向があることは教育長も答弁されました。
県立図書館の年間来館者数は約26万人強、それが3倍でも約80万人、市民図書館は来館者数が不明ですがほぼ匹敵する利用状況が想定され、統合された場合年間100万人を優に越える利用者が想定されます。しかも、3300平方メートルに開架書籍数を28万冊としているため、他県の例からしても、実質の閲覧スペースは2倍弱よりもさらに狭いものとなり、利用者にとって利便性があがるとは考えられません。
また、あまりに巨大な閉架書庫は、本の出し入れに人手と時間がかかり決して効率的でも機能的でもありません。県立図書館の基本的機能は、各図書館に長期に貸し出す書籍や、貴重書籍や郷土資料、専門書などあらゆる書籍を蔵書しておく機能です。そこが十分機能していれば、市民図書館をはじめとする各図書館は、莫大な量の蔵書機能は持たずに、住民要求に応えることができます。県立と一体化するが故、貴重な高知市中心部の一等地に巨大な本の倉庫を出現させることはせず、県立図書館は単独整備を行う方が妥当だと考えます。
さらに、駐車場問題は、大きな課題となっていることは衆目の一致するところです。しかも、子ども科学館構想も出され駐車場の必要性が一層高まっています。しかし、現状では平地での整備は困難で、立体、地下が検討されますが周辺の交通事情や新たな建設費負担、さらに工期との関係でも十分な台数を確保できる、するという明確な説明が今に至ってもなく、無料の利用しやすい駐車場を備えて欲しいという住民要求に背を向けたものです。
合築案のメリットとしてあげられた、コストの軽減も、審議の中で、建築面積の削減、人員の削減効果を見越したもので、今後の施設建設や機器の整備費、人員増の必要性などは考慮されたものでなく実質的には意味のある額とはいえないこと、高知市にとっては合築で合併特例債の充当できる面積が減り削減効果が縮小されることも明らかになりました。
合併特例債の期限にしばられ、本来目指すべき県市の図書館計画やそのために必要なそれぞれの図書館像、点字図書館や子ども科学館の具体像やランニングコストの問題も当県議会として判断材料のないままわずか3ヶ月足らずで中間取りまとめ、5回の基本構想検討委員会で合築計画案にお墨付きが与えられることがあってはならないと考えます。ある図書館建築の専門家は、この建築のタイムスケジュールは、極めてぎりぎりの日程で、管理責任と所有権の明確化が細部にわたってなされていなければどんな問題でも協議を要するようになり、極めて事務的、時間的ロスが大きく、今後にも課題を残すとの懸念を表明されました。その指摘は、日々の複雑に絡み合う図書館運営そのものにも当てはまることだと考えます。
そうした複雑で無駄な労力を排除し、本来の県市それぞれの機能を将来にわたって発揮できる図書館整備を、先進地の滋賀県や鳥取県などから深く学び、機能の分化を鮮明にした単独整備の方向で改めて検討することを求め、同僚各位のご賛同をお願い私の討論といたします。
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