円高対策のカギは賃上げ
9日、参院財政金融委員会の大門みきし議員の質問は、わずか10分だったが要をついていた。
デフレが実質金利を高め、円高を招いている。デフレの原因は、賃金の減少による購買力の低下だと、対策をもとめた。また日銀の本来のあり方についても簡潔だが大事な話をしている。
9/9 参院・財務金融委員会 /2時間9分から大門氏の質問
・為替相場を決定する大きな要因は金利差であり、金利の高い国の通貨は買われ、高くなる傾向がある。
・焦点は実質金利。金利が高くても、物価上昇が高いと相殺される。
・物価下落が続いている日本では、物価上昇率を加味した実質金利で比較するとアメリカより短期金利が2%以上高くなっている。
・よって、円高対策も、当面の金利政策だけでなく、物価対策、いわゆる『デフレ』対策が根幹、重要である。
・日米欧ともに景気後退局面にあるのに、日本だけが「デフレ」が起こっている。
・不況一般とデフレをわけて議論する必要がある。今日も混同した議論がされている。
・他の先進国にない要因は、日本だけが賃金が傾向的に下がり続けているからである。直前まで訪問していたヨーロッパのメガバンク関係者に聞いてよくわかったが、「日本の『デフレ』というのは、賃金が減少し購買力の低下した結果、商品価格が下がる。するとコスト削減で、また賃金が下がる。こういう物価の下落と賃金の下落の悪循環が起きている。ヨーロッパではそこに歯止めがかかっている」と述べていた。
これに対し、野田財務相は「先行き不透明間から円が買われている」、そして「金利差が円高の要因になっているとの認識は共有している。」「賃金というよりより幅広く雇用の問題。いま雇用が厳しいので、需要と雇用をつくりだす中長期的な対策が必要だ」と答弁。
・雇用も重要、円高できびしいので企業支援も大切。だが、その先が重要、そこがヨーロッパと違う。欧州では同一労働同一賃金が原則で、コスト削減の手段として非正規雇用が雇われているわけではない。雇用を守れば賃金も守られている。
・日本は雇用が増えても、非正規に置き換えられて賃金は増えず、『デフレ』は克服されない。02-07年の「景気回復」局面でも賃金が上がらなかった。
・雇用だけでなく、賃金のこともやらないとダメではないか。この10年さまざま議論されてきたが、デフレはいっこうに克服されない。光を当ててないのは賃金だけ。
・経営の苦しい企業には配慮しながら、最低賃金の大幅な引き上げなどに真剣に取り組むべきだ。
野田財務相「賃金、雇用含めた総合的なイメージは共有できる。最低賃金の引き上げに政府としても努力したい」
また、白川・日銀総裁に対しても、日銀のあり方を前置き(下記部分)したうえで、デフレ対策と賃金の問題認識をただした。
・当委員会で、この10年間、デフレ対策で議論され、日銀にあれやれこれやれとか、打つ手が遅いとか、言われてきた。今日も銀行券ルールをはずせとか、マイナス金利とか、いろんな話が出てくる。
・すでに何年か前から日銀としては正攻法の手はうちつくしている。政権の圧力もあり、最後の規律は守られていると思うが、追加対策といって相当イレギュラーな対策をしてきている。その金余りが、バブルを引き起こすことにつながっている。
・日銀が本来の役割を果たすためには、どこかで適正金利にもどし手段を持てるようにしないといけない。
・そのためには実態経済をよくしないといけない。それなしに日銀にあれやれ、これやれとなると、どんどんイレギュラーな方向にすすんでします。
白川総裁は、賃金は下がっているが、欧州では失業率が高い。日本は労使が協力し、雇用を守るために賃下げという選択をした。という趣旨の話をしたので
・欧州では、手厚い失業給付で、所得が保障されているので購買力は下支えしている。と指摘した。
~ まさに直接賃金と間接賃金(社会保障)を合わせて、働くものの暮らしを支え、内需の好循環をどうつくっていくか、という問題である。
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