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非常勤職員への一時金、退職金は適法 大阪高裁

 注目していた裁判で、勝利判決がでた。非常勤職員であっても勤務の実態から常勤であり一時金・退職金の支給はできるとうもの。もともと地公法も地方自治法も、今日のように非常勤職員が公的業務の中核をになうことを想定していない。均等待遇へ前進させることは、安易なアウトソーシングを防ぎ、若者に安定した雇用の場を確保し、地域社会の持続性と公務の質を高めることにつながる。自治労連のHPより
【枚方市非常勤職員の一時金・退職金は、給与条例に基本的事項は定められていると認定9/22】

【枚方市非常勤職員の一時金・退職金は、給与条例に基本的事項は定められていると認定9/22】

 9月17日、大阪高裁で枚方非常勤裁判の判決が出され、地裁判決を覆す全面勝訴となりました。
 地裁判決は、非常勤職員であっても勤務の実態から常勤であり一時金・退職金の支給はできるとしたものの、給与条例に具体的に定められてないとして市長に返還請求するよう求めたものでした。今回の高裁判決は、枚方の非常勤職員については、「地方自治法第204条でいう常勤の職員と同様のものと解することができる」として、地裁判決と同様、一時金・退職金の支給ができると認め、給与条例についても細部は規則に委任しているが、上限値を規定し、恣意的に無制限にできず、少なくとも基本的事項が定められているとし、給与条例主義に反しないとして地裁判決を取り消し、原告の請求を棄却しました。

◆報告集会「みんなで勝ち取った勝利」
 報告集会では弁護団の城塚弁護士が、「完全に勝利しました」と報告すると参加者から大きな拍手がわき起こりました。城塚弁護士は、「今回の裁判の争点は、①非常勤職員に一時金・退職金を支給してよいか、②枚方の給与条例がきちんと規定されているかであるが、①については1審判決で実態が常勤であったら支給できるとした。②については、高裁判決では、大事なところが条例で決まっておればよいと判断されたもので、一番大事なところで勝利した」と報告。「みごと勝利判決を勝ち取った。みんなで勝ち取った大勝利です」と報告しました。

 枚方市職労の市本委員長は、「5年にわたる闘いへの支援本当にありがとうございます。2年前の地裁判決の時には非常に悔しい思いをしたが、本当にうれしく思う。人間の尊厳をかけた闘い、社会正義を貫く闘いであり、大阪から均等待遇を掲げて発信していこうと言ってきた。組合員のみなさんには、頭の下がる思い。この間の闘いで私たちも鍛えられた」とあいさつし、「判決については、歴史の審判に耐えられる良心的な判決だ。今後は、地公法、地方自治法の不備の改善を求める法改正の闘いを自治労連・大阪自治労連に結集してすすめたい」と決意を表明しました。

 自治労連本部の大場副委員長は、「今回の判決は、均等待遇への一頁を広げるもの。朝からどうなるかドキドキしていた。本当にうれしい。今後は社会的に判決を広げ、人間らしく働くために『誇りと怒りの大運動』へとつなげていきたい」としました。

 大阪自治労連からは大原書記長が、「府下で住民訴訟が続き、一時金を月例給に組み込まざるを得ない苦渋の判断もしてきたが、必ず正規職員と同じように支給できるようにと闘ってきた。府下の非正規の闘いの大きな励ましになる。非正規、任期付など激しい闘いとなっており、雇用を守る闘いも現実の闘いとして求められている。今回の判決は大きな力になる。当事者も家族に胸をはって仕事に励むことができる」と強調しました。

当該の当事者から支援のお礼
 国保徴収員さんからは、「勝利できて本当によかった。いろんな人に支援してもらった。本当にありがとうございます」。また、延長保育士さんからは、「5年前に裁判所から通知が来たときに、個人なら泣き寝入りしかなかったが、組合として闘うことになり、いろんなところへ支援要請に行ったりして、応援してもらった。こんなこと出来るのかと新鮮な思い、感激した。みんなの力でここまでやってこれた」と支援に対するお礼がありました。

「非常勤裁判をたたかう会」の東野会長(枚方市職労)が、「返還対象者となっているものが自らの力ではねかえしていこうと裁判への補助参加やたたかう会へ参加するなど闘いに立ちあがったことが大きい。奮闘に感謝する。今後原告が最高裁に上告するかもしれないが、枚方市の約千人の非正規職員にアンケートをとり、均等待遇求める運動と組織拡大を、判決を武器に進めていきたい」と決意を述べて閉会しました。

(談話) 枚方市非常勤裁判大阪高裁判決について           2010年9月17日 大阪自治労連書記長 大原 真

1.本日午後1時10分、大阪高裁において枚方市非常勤職員に対する「損害賠償請求及び不当利得返還請求控訴事件(住民訴訟)」の判決が言い渡された。判決は、地裁判決にあった非常勤職員の敗訴部分を取り消し、返還請求も棄却するとする全面勝訴の内容であった。
2005年1月の提訴から5年8カ月、地裁での不当判決からでも2年近くが経過しての判決であったが、多くの仲間に支えられ、何よりも当事者となった枚方市に働く非常勤職員の社会正義を貫く奮闘がこの裁判闘争を支え、勝利を勝ち取ったものである。改めて、ご支援いただいた全国の仲間のみなさん、裁判闘争を攻勢的に進めていただいた弁護団のみなさんに御礼を申し上げるとともに、枚方市職労及び「たたかう会」のみなさんに敬意を表するものです。
 同時に、「人間の尊厳をかけた、社会正義を貫くたたかい」(市本枚方市職労委員長)としての訴えに正面から応えていただいた大阪高裁の良識ある判断に敬意を表したい。

2.今回の裁判は、05年1月に枚方市の住民より当時の枚方市の中司宏市長らを被告として、枚方市の非常勤職員への特別報酬(一時金、退職手当)の支給が地方自治法等の関係法令に違反し不当な支給であるから、市へ返還するよう求め提訴されたものである。この支給をうけた非常勤職員の多くは自治労連枚方市職労の組合員であり、本裁判へ補助参加した。枚方市では、学校の宿日直代行員、国民健康保険料徴収員、保育士(時間外)、肢体不自由児介助員などの職種において、正規職員では対応することが困難な夜間業務や時間外業務等を担う者として「一般職非常勤職員」と呼称される職員が採用されてきた。枚方市職労では、「非常勤裁判をたたかう会」を組織し、この裁判を当該組合員だけでなく、非正規職員全体の処遇改善を図る闘いの一環として位置づけ、とりわけ「自治体構造改革」のもとで公務職場においても3人に1人が非正規職員とされ、その業務は従来の臨時的・補助的業務から、継続的・基幹的業務に急速に拡大し、その処遇を司法の場がどのような判断を下すのかが注目されたものであった。
 08年10月の大阪地裁判決では、枚方市の非常勤職員がその職務の実態からして地方自治法第204条1項の常勤の職員にあたると解しつつも、非常勤職員に特別報酬を支給したことは、枚方市の条例が具体的基準を欠き、地方自治法の規定する給与条例主義に反しているとの不当な判決を下した。

3.大阪高裁判決は、「本件非常勤職員が『非常勤職員』と呼称されることに法的な意味を認めることはできない」として、(地方自治法)「第204条所定の『常勤の職員』に該当する」(判決文P18~19)と地裁判決を支持するだけでなく、「地方自治法172条において『常勤の職員』の人数が条例で定められた定数を超えることができないものとされている関係上、本件非常勤職員を任用することによって上記定数を超えてしまうことのないように、形式的に『非常勤の職員』として採用せざるを得なかったからにすぎない」(同P19)と断定した。職務の実態はもとより、当局が定数条例との関係で形式的な採用として「非常勤の職員」と判断したことの意味は大きい。今後、各自治体当局が「自治体構造改革」の圧力に委縮することなく、「住民福祉の向上」のための行政執行体制をきちんと説明し、定数条例の改正を含む自治体のあり方を整理すべき時代の要請を認識すべきである。
 次に、給与条例主義との関係でも「給与条例自体にすべてが規定されるのが望ましい」としつつも「具体的基準及び具体的数値が明確に規定されなければならないとか、条例によって手当てに関する具体的な支給要件、額、支給方法を規則等に委任することが一切許されないものとは解されず・・許されている」(同P20)とし、「給与条例主義の趣旨である地方公務員の給与に対する民主的統制の要請に反するものとはいえない」(同P22)と判断した。
 また、退職金や一時金の返還請求についても「任用手続きが公序良俗その他の社会正義に著しく反するものであったとか、重大かつ明白な瑕疵が存したものであったとかなどの特段の事情がない限り、支給された給与については、命ぜられた職務に従事したことの対価及び生計の資本として受け取るものができるもの…不当利得として返還する義務を負わないと解するのが相当である」(同P32)と判断した。

4.判決後の勝利報告集会で当事者の一人である延長保育士のⅠさんは「5年前に裁判所から1通の封筒が届き、はじめは意味もわからなかった。個人なら泣き寝入りしていたと思う。(裁判がなければ)行くこともないところにも行って、みんなが力を貸してくれて感激した。ここまでやって来れたのも、みんなのおかげです。」と感想を述べた。改めて団結の力に感動するとともに、弁護団からは「この判決はゴールじゃない。(同じような仕事をしていても)正規職員の半分でしかない。均等待遇に向けてさらに奮闘してほしい」との激励もあった。
 府下には自治体職場だけでも2万を超える非正規職員が働いている。任期付き職員制度の導入や雇い止めも発生しており、均等待遇の立場からの処遇改善、一時金・退職金制度の確立、雇い止め阻止など私たちが乗り越えなければならない課題は多い。大阪自治労連は府下の自治体当局が今回の判決を真摯に受け止め、非正規職員の処遇改善に誠実にとりくむことを強く要請するとともに、引き続き団結を固め、非正規職員の処遇改善と住民福祉の向上に資する自治体づくりに全力をあげる決意を表明する。

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Comments

このような判決に地方自治体はどのように対応するのでしょうか?
自分の自治体は関係ない、と知らぬ存ぜぬなんでしょうね。

こういう情報を自治体組合ががしっかり反映していけたらいいですね。
秋闘に向けて頑張ります。

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