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中小企業振興条例で地域活性化を  備忘録

・「中小企業政策の転換へ 日本共産党の新たな中小企業政策」 藤野保史  前衛2010-7
・「今日の日本経済と中小企業 福島久一・日本大学教授」「中小企業の振興は政治の責任  吉井英勝」 経済2010-8
・「中小企業振興条例で地域をつくる」2010.7 自治体研究社 岡田知弘 (各地の振興条例の特徴について部分)
 の中小企業政策にかかわる4つの論考の備忘録。
 「chyushyokigyosinko.doc」をダウンロード

  高知でも、まず試案をつくり、各団体との懇談、意見交流をつうじて共同を広げていきたい。 
  
 【日本経済の「根幹」にふさわしく中小企業を本格的に支援する政治をすすめます 日本共産党4/22】


【中小企業政策の転換へ】 

 藤野保史 「前衛」2010-7/日本共産党の新たな中小企業政策 4月22日発表

1.政策をつらぬく2つの特徴
①中小企業の転換を、日本経済全体の建て直しの観点で位置づけている。
 日本は「成長が止まった」「国民が貧しくなった」という先進国の中でも異常な姿/ 富を一部の大企業が独占
 → 中小企業を、大企業の横暴から「守る」というだけでなく、経済の健全な成長に道を開く大義ある政策
②幅広い対話と共同で政治を前に動かすことを重要視
 幅広い対話と共同にもとづく模索と実践が、各地で中小企業政策を前進させる最大の力となっている。

2 従来の中小企業政策の破たん(略)

3 経済全体の立て直しと一体 ――「大義ある」中小企業政策
①「成長が止まった」「国民がまずしくなった」
 この10年、G7の他国は、GDPを3-7割増、雇用者報酬2-7割増/ 日本は0.4%増と5.2%減

②背景に中小企業からの絞り上げ
・中小企業は、世界の需要の変動に合わせて生産を増減させるバッファー(調整弁)にされている(日本マザー工場の生産調整バッファー機能 「世界経済評論」09/8)
→ その理由は、下請けいじめ、作業時間の変更、臨時従業員、残業・休日出勤の4つをあげている。

・EUにあるトヨタの下請会社(サプライヤー)230社のうち210社が現地会社/ これら210社には「カンバン方式」を押し付けていない。/ 製造ラインの作業時間の変更は、日本では2ヶ月に一回だが、半年に一回とか全く変更なし(マレーシア)/日本は「過労死」を生むほどのサービス残業だが、海外では法規制。フランスでは月7.5時間しか残業が許さない。/非正規雇用。日本は、26.8%が「柔軟な生産調整を可能にしている」が、「海外では・・・規制がある」「海外では・・・臨時従業員の増減による生産調整は難しい」と結論 / つまり、日本だけしか通用しない異常な絞り上げ

③全体が落ち込む中で、中小企業がもっとも深刻
・企業ベース 99年483万社から、06年419社へ。63万社減
・自営業者数 OECD各国が増の中、日本だけが減 
1980年を100とし07年比 独184.5 英183.7 韓国130.1 米120.5 日本65.4
・大企業との賃金格差  /大企業100として、この10年間の変化
  100-499人 77.7-72.9  30-99人 62.7-59.7 5-29人 54.6-50.5(厚労省「毎月勤労統計調査」)
→ 雇用者報酬が5.2%減るなかで、とくに中小企業の賃金が大きく低下/ 一時的な景気後退でなく、日本経済が長期にわたる地盤沈下するというかつてない危機的事態のもとでの中小企業が深刻な影響を受けている

④中小企業政策の転換は日本経済にとり「大義あるたたかい」
・大企業の10年 経常利益15兆円から32兆円、内部留保142兆円から229兆円 /この内部留保。機械、工場、土地などの実物資産は増えておらず、買収した海外企業の株式、国際などの金融資産が急増
・巨額の利益を再投資してない/ 企業の99%、GDPの6割占める家計に還元されず経済の好循環が生み出されてない
 → この異常なシステムが「成長の止まった国」にしている原因
・つまり、今回の中小企業政策は、中小企業へのまともな還元を通じ、中小企業を「守る」だけでなく、日本経済の好循環を生み出すこととなる。

4.本格的な中小企業支援策への転換を
①大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールを
・中小企業の「振興策」(製品開発、販路開拓、人材育成等への支援)と「規制策」(優越的地位の濫用など横暴を規制するルール)/単価たたきなど「搾り上げ」を野放しにして、振興策を行っても十分な効果はない。
・単価たたきなど不公正取引をなくす。独禁法の改正・強化、大企業の優越的地位の濫用や大型店の身勝手なルールを許さず商店街、小売業の活性化、金融自由化を転換し中小企業を支援する金融ルールの確立など

◇大企業「敵視」ではなく、当たり前の社会的責任を求める
・提起しているルールは、欧米では当たり前のもの
 →不公正取引で受けた損害の3倍の賠償請求(米クレイトン法4条)/大型店の規制 仏ロワイエ法(自治体の許可制)、ラファラン法(深夜営業の規制)、伊の商業規制改革法(市町村の許可制)など / これらは、大企業を「敵視」して無理難題をおしつるものでなく、欧米では当たり前のルールである。

◇大企業の発展にとっても不可欠の課題
・日本経済の好循環をつくることは、大企業の持続的な発展にとっても不可欠 /日本共産党だけの主張ではない
→ 英「フィナンシャルタイムズ」(1/13)は社説で「内需主導の成長のために最も重要な要件は、企業貯蓄の大規模な削減」 /第一生命経済研究所3/4「デフレ対策 200兆円の企業マネーは生かせ」で「そのまま保蔵するのでなく、設備投資を通じ資本ストックに替わり、フローの収益を生み出す役割を果たすことが、利潤追求のためには合理的な行動のはずである」 /富士通総研3/19「どうするべきか、過剰な企業貯蓄」で「余剰資金を溜め込んだまま眠らせておけば、いずれ外国資本の買収の格好のターゲットとなる恐れがある」と警告し、内部留保を生産的な投資に活用することを提言。

②現場の声にもとづく本格的な中小企業振興を
・振興策の一例として、帯広の農商工連携を触れる

◇生産、加工、流通、販売の各段階で、中小企業の支援を
・食用農水産物の国内生産・輸入額 10.6兆円 と、飲食費の最終消費額73.6兆円に、7倍以上のギャップ
→ 加工、流通、版売の各段階で付加価値が加えられている。しかし、大手企業が支配し、地元の企業、業者にまわらない。
 例)帯広・十勝地区  国内小麦の1/4、じゃがいも1/3、小豆1/2の生産 /小麦の94%は現地で精製されず大企業によりそのまま本州に出荷。地元小麦の使用は110-140倍の経済効果があり、何割かでも地元精製、活用ができれば大きな効果に。
→ 農産物地産地消等実態調査07 「地元農産物を販売するにあたっての課題」では「品目数、数量の確保」64.8%/ どこでも地元農産物の確保に苦労している。
→ 行政支援/ 地元農産物の増産、その加工、流通、販売に関連して地元企業が仕事ができるようにする

◇生活密着型公共事業への転換、公契約法・条例の制定で、まともな仕事と人間らしい労働条件を
・みずほ総研リポート09/3/19 1万棟の小中学校の耐震化で2.3万人、道路・下水道の維持補修で1.1万人の雇用が生まれると試算/ 50億円の大型事業一箇所より、500万円の事業千箇所の方が雇用効果が高い
・100万人の保育所待機児童、34万人の特養ホーム待機者を解消するための保育所、ホームの建設、学校や道路・上下水道の耐震、維持補修はまったなしの事業である
・発注者としての国、自治体の責務/ 公契約法・条例   千葉県野田市 728円の最賃を条例で829円に。

③中小企業を支援する税制と社会保障
・不況により、社会保障の事業主負担が払えず、制度融資など公的な支援制度の対象から外れる業者が増加  
→ この対策として、経営困難な事業者に対する社会保険料の猶予・軽減制度を提案している。

5.中小企業憲章と振興条例を制定し、中小企業政策の見直す
①中小企業憲章を政策的転換の出発点に
・6月に、「中小企業憲章」が閣議決定される
・重要なことは、実質的な中小企業政策の転換をはかること。/憲章の「公正な市場環境を整える」という精神を実現するためには、大企業の横暴を規制するルールを早急に具体化が必要。予算の増額、支援策の抜本改善が急務である。
・現行の中小企業基本法など諸法令の改正・強化が重要
・体制強化 / 米 95年ホワイトハウス中小企業会議を開催。また中小企業庁長官は、他の閣僚と同列の権限
   中小企業庁職員は200人 /公安調査庁1500人、宮内庁1000人 とくらべても余りにも少ない体制

②地域独自の振興策に結びつける――「中小企業振興条例」の経験
◇自治体の商工予算、体制の減少
・国の政治の悪影響で、自治体のおける商工予算・体制が減少
   都道府県の商工予算 98年4兆3073億円(構成比7.9%)から、07年3兆3597億円(同7.1%)へ
   市町村   同じ  2兆169億円から1兆6336億円と減少

◇相次いで破たんする既存の振興策
・企業誘致の破たん  三重・亀山工場 誘致に135億円。09年8月一部転売で数百名の非正規雇用のリストラ
・工場立地数 03年を境に、大都市圏の立地数が、地方圏を上回る。
・商店街対策としての「中心市街地活性化計画」 人口、販売額、従業員数ともに悪化した自治体は61%
→ みずは総研「新たな内需振興策」4/16 は「工場誘致は失敗続き」「旧来のスキームによる中心市街地活性化は大苦戦」/野村総研「地域の自立型・内発型成長への取組み」3月は「企業誘致による成長モデルは、停滞する地域経済の現状を打開するための抜本的な解決策になりえない」と、厳しい評価。

◇振興策の変化を作り出した「中小企業振興条例」
・旧来策の破たんとともに、足元を重視した政策への前向きの変化が生まれる
→ 野村総研(同)「地域経済の活性化のためには、地域経済を担う地域の中堅・中小企業の『自立=利益』を生み出すことを主軸としなければならない」と指摘/ 50近い自治体で「中小企業振興条例」が制定されている。
・条例は、基本理念の確立と中小企業や自治体など当事者の役割・責任の明確化によって独自施策の基盤を作り出す

◇「振興条例」を根拠に雇用を確保
・約半数の条例で、大企業、大型店、特定連鎖化事業の責務、役割を明記/ 「社会的責任」と中小企業との「連携・協力」を求めている。 /八尾市では。03年コクヨの工場閉鎖にあたり、市長は条例にもとづき「再考」の交渉→ 子会社をつくらせ障害者24名の雇用を確保   /応分の責任、責任ある行動を求める根拠となる

◇全庁的・横断的な中小企業支援の出発点に
・全国初の墨田区の条例/係長以上の職員165人が9314社を訪問し、実態調査(解決のヒントは現場にある)
→ 認識が一変 /長時間労働、健診もうけられず、家族で必死で支えている深刻な実態、また極めて高い技術なども
・大切なことは商工部門以外でも、中小企業への支援のとりくみが広がったこと/ 健診や家内労働者の労災加入の助成など福祉面、中小企業で働く意義や町工場を視察するなど職業教育、集積地を結ぶ道路整備など土木行政など・・・
・縦割りの弊害をなくし、効果的な支援策を実施するために、「振興条例」は横断的・全庁的支援への出発点となるもの

③「つくって終わり」ではなく、実質的な転換の契機に
・重要なことは、経営者・事業者・地域の金融機関などが「主役」となり自治体の施策の転換をはかること。
→ 帯広 「振興協議会」の設置。40名のメンバーが手弁当で年74回もの議論を行い、地域のよさ、地域資源を次々と発見し、中小企業の役割の重要性への認識が広がる。
→ 千葉県条例は、年一回の成果の公表、当事者をふくんだ検討が条例に義務付けられている。

6.日本の宝―― 町工場を守る直接・緊急の支援を
・政策の5章は、緊急の要求。要求にもとづく運動が政治を前に動かした点でも重要
→ リース代の支払い猶予の実現 /リース業者への通知

今こそ幅広い対話と共同を
・長年自民党の支持基盤であった日本商工連盟が、夏の参院選で、自民党支持をとりやめ、中立の方針を決めた。民主にも中立の方針という。
・保守層も含め、新しい政治への模索が始まっており。対話と共同の可能性がかつてなく大きく広がっている。

【今日の日本経済と中小企業】   福島久一・日本大学教授 「経済」 2010-8

1.グローバル経済の構造的矛盾と日本の中小企業
(1)激動する世界経済
・「冷戦構造」が崩壊した90年代以降、世界経済は、旧「社会主義国」を巻き込んだ市場経済化に向かい、情 報・通信と交通の高度化・高速化を軸に経済のグローバル化と大競争の展開を急速に促進させた。
→ 国民経済の枠組みや国境を残したままの国際的経済関係を超えて、地球規模大の世界経済として移動・一本化し、展開していく。/新自由主義の「市場原理至上主義」にもとづく多国籍企業の世界化が本格化、巨大銀行と巨大資本間の競争が、世界経済を不安定化させるとともに、国際的金融不安が深刻化する「21世紀型危機」を内包させていく。

・世界金融・経済危機は、「金・ドル交換」停止(71年)を契機に、変動相場制への移行(73年)し、アメリカの大幅な赤字の中での不換通貨となった国際通貨ドルの散布・膨張と通過投機の活発化がドルの不安定性を拡大していたことに起因する(メモ者 その基底には、過剰資本)
→ 国際金融不安が深刻化するたびに世界同時不況、世界恐慌が起こる潜在的可能性を示唆している。/ここから金融規制強化の始まり、ドル体制から脱却をはかる新たな国際通貨体制の模索が始まっている。

・「マネー・カジノ資本主義」は終焉したが、巨大独占企業は、多国籍企業展開を推進しつつ、信用収縮と、生産と消費の急落によって、類のない大規模な合理化、M&Aや資本・業務提携など産業再編成を迫られている。

(2)日本を襲う外需急減
・財務省「国際収支状況」/輸出 02年49兆4800億円、07年79兆7200億円と30兆円の伸び(自動車、電気機械、一般機械、鉄鋼の4業種で2/3を占める)→ 09年50兆8600億円と急減 /独占大企業の海外生産の拡大と輸出依存型のグローバル経済の矛盾が欧米以上に経済危機を先鋭化した。

・09年 倒産(負債額1千万円以上)1万2866社、解散・廃業2万7191社 計4万社が消滅/ 廃業が開業を上回る事態が20年以上続く異常事態 ~ 中小企業の消滅・淘汰が急速に進展 /他方、トヨタは09年4600億円の営業赤字から、単価や人件費の切り下げで、10年3月決算で1475億円の黒字。V字回復

・日本の中小企業は「世界化の中の中小企業」となっており、問題が従来の国民経済構造の矛盾から、「グローバル経済構造矛盾」へと転化している。

2.多国籍企業の展開と中小・零細企業数の激減
(1)進む日本企業の海外進出
・経済のグローバル化は、先進諸国では国内に投資場所を見出しえない巨額の過剰資本が「高い利潤」を求めて資本輸出・対外直接投資に向かうことによる。
→ 日本。60年代後半に資本輸出国に転化。85年プラザ合意以降の以上円高を契機に急増/独占大企業が本格的に多国籍企業展開。/89年バブル期には、675億ドルに。バブル崩壊後、一時期停滞するが、2000年以降、回復・拡大。~ 直接投資残高 00年末2744.45億ドルが08年末6838.72億ドルと2.4倍化(ジェトロ資料)。対外純資産残高 08年末225兆5080億円と世界最大の債権国(財務省「対外資産負債残高」)/メイドインジャパンからメイドバイジャパンへ(経団連 03年)。投資立国の実現へ(通商白書06年)

・多国籍企業展開は、独占大企業を中軸に、一部「ミニ多国籍化」した抽象企業・下請企業が大企業・親企業への随伴的進出、サポーティング・インダストリー(周辺・下請企業)として海外進出していることが特徴。

(2)拡大する海外生産
・製造業の海外生産比率(全法人ベース)は、00年11.8%から07年19.1%と傾向的に増加。(輸送機械39.2%、情報通信機器28.1%、化学17.4%、電気機械13.0%、一般機械12.8%の順)

・製造業の海外子会社の材料、部品・部材の現地・域内調達。99-08年度比較
  北米51.2%→66.6 アジア57.4→63.1 欧州52.3→58.8 といずれも上昇。
→域内の第三国でなく現地調達の増/日本からの調達 北米44.0→27.3 欧州38.2→34.6に対しアジア35.7→35.5と横ばい。/アジアの成長・工業製品の日本依存の高さ/また販売でもアジアでは現地販売率が増えているが、日本への販売は、20.0%と高い。/中国で生産された日本企業製品の逆輸入と国内中小企業との競合・競争

・東アジア経済圏と産業構造の形成は、独占大企業・親企業に随伴進出した一部上層日系中小下請・系列部品メーカーや現地地場企業を包摂する国際的下請生産を構築。資本輸出国・日本と資本輸入国・アジア特に中国との結びつきを深化させ、緊密・一体化へ

(3)メイドバイジャパンへ (4)縮小を続ける国内産業
・こうした中で、国内では製造業と技能・技術の「空洞化」、地域経済を担ってきた地場産業、中小零細企業の仕事の激減、アジア並み単価の引き下げという問題を深刻化させ、企業数の激減と存立の危機的状況に。

・欧米は企業の廃業率より新規開業率が高く、中小企業数は増加/ 日本は、大企業の「海外拡大、国内縮小」の優先政策の中で、新規開業率が低く、廃業率が極めて高い事態が20年以上継続。さらに世界恐慌が拍車。
→229兆円の内部留保をもつ大企業は、リストラでV字回復、中小企業は赤字続きの明暗
・「シンク・スモール・ファースト」(中小企業をまず考える) 政策転換で内需拡大が急がれる

3.産業構造政策の転換と中小企業政策の方向性
(1)存立の危機にたつ中小企業
・事業所得200万円以下の業者が申告者の5割弱 本業では生活できずアルバイトに出る状況の広がり

・大田区、浜松市、東大坂市を詳細記述/中小企業白書2010
①事業所、従業員数 2.5-4割減。大田区は、全国平均上回る4割以上の減 /大田区 大企業や上層中小企業の域外転出、跡地にマンションなどが建ち、工場集積の密度低下、歯抜け状態の集積地に。
→ピーク時に1万を超えていた工場数は半分以下に減。特に小零細層のスパイラル的衰退・溶解減少とモノ作り基盤技術の崩壊「技術の空洞化」に直面。/これは独占大企業の技術基盤をも掘り崩し、日本のモノ作りの弱体化、製造業の喪失懸念を生んでいる。

・「白書」は「中小企業の中には、我が国の製造業の根幹を支える技術や工程を有し、域外から受注した仕事を域内の企業に回すなど、集積を維持・発展させるために重要な役割を担う企業が存在」/ この高度な技術・技能や集積内の工程間社会的分業をいかに維持・発展させていくかが重要な不可欠な課題。/白書は、「アジアを中心に増大する重要をその成長にとりくんでいく」ことを柱にしており、海外進出しえない圧倒的多数の国内中小・零細企業の存続・発展の方策とはなりえない。

(2)「産業構造ビジョン」は危機を救うか
・経済産業省「産業構造費ビジョン2010」/グローバル4業者の大企業がすでに国内の生産空洞化を引き起こしていることを放置し「日本企業による海外投資、国内での事業編成、海外企業との提携・事業買収などグローバルでの事業・企業再編を促進するし、我が国企業のコスト競争力を強化する必要がある」と、一層のグローバル化と多国籍企業の展開を進めようとしている。
→ 製造業の空洞化に拍車、中小企業が産業調整の対象とされその存立・存亡の事態に投げ込まれる

(3)中小企業政策転換の3つの条件
・中小零細企業のかつてない深刻な危機/企業数(421万社)の99.9%、従業員(4千万人)の69%、製造業付加価値額(108兆円)の53%を支えている。その存族と成長・発展の道は?
・現状は、一部大企業の高利潤と多数の中小企業の赤字が、グローバル経済進行の下での経済構造全体に起因して並存している。
→ 中小零細企業の力を引き出し、どう構造転換し世界市場と連動するか/そこから独自の存在意義と役割をになった持続的に成長・発展する中小企業構造と、それを保証する政策を策定することが、今日の重要課題
→世界独占・グローバル大企業の下で従属的発展するのか、情報や輸送の高速化、高度化など技術的・競争的条件の変化を有利性・有意性ととらえて、アジア諸国をパートナーとする平等・互恵の関係の中で自立的に発展する中小企業構造をつくるのか、が問われている。
・改革の方向/ 国民経済レベル、地域レベル、個別中小企業レベルとその関連性から展望する

①経済民主主義の確立と反独占
・私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法の禁止というルール強化の中で、中小企業を経済民主主義の形成者と位置づけ、「市場の社会的構築者」としの役割を明確化する。
・下請け代金支払い遅延等防止法の強化、公正取引委員会の検査執行体制の強化、下請中小企業新工法の厳守がもとめられる。

②地域経済の再建と中小企業の振興
・中小零細企業を地域経済社会の形成者、担い手であると位置づけ、地域振興の中核にすえる政策方向

③中小企業の事業支援と大企業優位の政策の転換 事業活動の4方向
・国内需要適応型  蓄積してきた技術を生かしユーザーニーズに対応した多品種・小中量生産型企業へ
・品質重視の技術高度化型 市場細分化や製品の差別化・差異化を強め、より専門化していく
・開発創造型 固有技術を基礎にした製品の技術力、開発力、マーケッティング力をもった経営の高度化、企業の差別化
・海外立地・海外展開型企業の方向。 ITの積極的活用による海外企業との連携、ネットワークの追及

おわりに
・6月に、「中小企業憲章」の閣議決定/ これを今後の政策体系にどういかすか /99年「改正」の独占大企業に役立つ1部優良中小企業やベンチャービジネスの育成に大転換した「現行中小企業基本法」の再改正へと運動がもとめられ。
・「シンク・スモール・ファースト」への転換こそ、危機にある日本経済の再生と「持続可能な発展社会」を構築する道へとつながる。


【中小企業の振興は政治の責任  吉井英勝 】

1.抜本的な政策転換を
①経済の根幹にふさわしく
・従来のトリクルダウン政策(大企業を応援すれば、いずれ中小企業もよくなる)で、中小企業対策費は、1911億円。国の政策経費の0.36%。米軍思いやり予算3370億円を大きく下回る額。
・中小企業基本法の改悪 1999年、日本共産党以外が賛成/ 大企業と中小企業の「格差の是正」、中小企業の「不利益の補正」の理念が削除され、市場原理のもとで一部ベンチャー企業のみを支援、と変質
 →改悪で中小企業の疲弊の深化/自営業者1980年951万から07年622万と3割減/同時期に、ドイツ・イギリスは1.8倍、韓国1.3倍、アメリカ1.2倍 /こうした政治のあり方の抜本改訂が必要

②憲章の制定を機に政策転換を
・憲章前文「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」、また「政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ば」す。/長年の運動が、憲章制定に結びついた。/EUの中小企業憲章(00年)は、小企業を「ヨーロッパ経済の背骨」と規定し、08年、拘束力のある「欧州企業憲章」に
・一方、今回の憲章には、大企業優先政策の転換が明示されていない。/一内閣の方針、閣議決定であり、国会決議にする必要がある。

③振興条例を生かして
・自治体での条例制定の前進/ 大企業は自らの戦略で進出、撤退するので、大企業誘致ありきの振興策でない、地域経済を支える農林水産業や商工業を振興し、地域経済の足腰を強くする取り組みが大事
・帯広市/07年制定、中小企業団体・金融機関・関連行政機関で構成する「中小企業振興協議会」を発足し、地域経済の活性化に生かす取り組み

2 振興策と仕事づくり
①仕事づくりと行政の役割
・実際に仕事が中小業者に回る仕組みを /4月、京都府知事選、「スクールニューディール構想」によるデジタルテレビを大手量販店に一括発注。しかし、量販店は学校へ取り付ける体制はないので、地元の電気屋、電気工事店に最賃を下回る単価で下請けに出し、怒りがひろがった。 / 国会質疑で、文科大臣「地域の中小企業の受注機会の増大に努める」よう自治体に要請
→ 京都府「WTO協定で分離分割発注は禁じられている。政府から指導をうけている」と説明 /しかし、WTO協定も合理的な範囲で分離分割発注を認めている。/鹿児島、高知県では100%地元中小企業が落札
・公契約条例の制定で、下請け業者、労働者の保護を

②エコは中小企業で
・太陽光パネルの各家庭への設置も地域の工務店、電気店の仕事となる。/設置工事は、各メーカーの研修を受講し認定を得て登録業者になる必要がある。京セラ・研修料20万円/ 国が公的に資格認定を実施すればよい
・太陽光発電設置への国の補助は年350億円/一方、電気代に上乗せされ主な原発推進に使われている電源開発促進税は3500億円。/これを太陽光などに振りまけば、普及促進、中小業者の仕事確保となる。
・太陽光の余剰電力の固定価格買取制がスタート。初期投資に対し、地域の金融機関がエコローンを組み、売電料から返済する方法も考えられる。

③地域経済の再生を
・小型風力発電(サボニウスタイプ、長野伊那市。京都モートロンという中小企業が開発) 防風林の代わりに
・高知県梼原町 風力発電の売電益で森林整備、太陽光パネル補助、小水力・地熱発電で学校、街路灯を賄う。町産材の使用と木質ペレットづくり/ 森林整備は作業道づくり土木建築業者の仕事の場に
・地域の条件と需要に応じた中小企業の振興をかることは、地域経済と地域社会そのものの再生と結びついている。

3.日本経済の健全な発展へ
①営業破壊の消費税増税を許さない 
 今必要なことは莫大な利益をあげている大企業の支援でなく、雇用と中小企業を守るルールをつくり、大企業に応分の負担をもめること。内需を根本から温め正常な経済ジュウンカンを実現すること

②政治の転換こそ
 中小企業の苦しみの根源は、大企業の横暴な支配と、安保条約にもとづくアメリカの介入、85年プラザ合意以後の円高、超低金利政策が、労働者、中小企業いじめを加速し、産業空洞化をもたらしてきた―― 日々の仕事、生活に追われ、日本経済全体の仕組みや問題はなかなか見えにくいが、歴史をひもときながら懇談会などでは丁寧に話をしている。

 


【中小企業振興条例で地域をつくる】
  2010.7 自治体研究社 岡田知弘  /同著より、各地の振興条例の特徴についてのメモ

・グルーバル化と「構造改革」のもとでの地域の疲弊、食料とエネルギーの海外依存の高さに見る社会の持続性の危機/そのもとで、一人ひとりの住民の生活の質が高まるように地域内再投資力をつくる。それが地域の「活性化」であり、今、地域をつくる主体としての地方自治体のあり方が問われている。/地域の「活性化」には、「構造改革」路線からの転換・衰退の原因をとりのぞき、地域経済・社会の担い手である中小企業・業者・農家を重視する政策へ。/地域の個性にあった自治体産業政策の構築が不可欠であり、今、地方自治体の中小企業振興基本条例が注目されている。
~ 中小企業基本法六条で、新たに規定された地方自治体の経済政策の責務
 (メモ者 条約制定は、関係団体による制定過程での共同のひろがり、制定後の継続的とりくみにこそ要がある)

◇振興条例の制定から具体的施策へ
①千葉県中小企業の振興に関する条例
・理念条例、中小企業の位置づけとともに、県の「持続的発展を確固たるものにするため、県をあげて中小企業を育てていく体制を築いていくことが何よりも重要」と明確にしている /受注機会の拡大、予算確保なども規定
・第二条で「地域づくり」の定義/歴史、文化、技術、人材、自然環境その他の資源の活動により、地域を活力と魅力あるものにすることが規定されている。/非経済的側面を含む幅広い「地域づくり」との関係を明確にしている。
・第二条 「地域連携」と個別の条項で、自治体、中小企業、大企業、大学、住民の役割と連携を明確にしている。
・第17条で、「施策の公表」。毎年一回実施状況の公表と、中小企業者も入った合議体での検討、改善を義務づけている。
・第18条「施策実施上の配慮」 県の施策全般にわたり、つねに中小企業の経営への影響を配慮。つまり教育、福祉分野であっても、ということ。
→ 「ちば中小企業元気戦略」を策定、見直しを継続的に実施。

②帯広市中小企業振興基本条例
・民商、同友会、商工会が共同し、条例案を策定する「振興条例の検討プロジェクト」が設置、条例制定され行政と中小企業経営者とれ共同作業が開始される。/条例制定後「中小企業振興協議会」が設置(創業・ものづくり部会、経営基盤・人材部会、交流部会、産業基盤部会/40名の委員が年74回の会議)。提言書を市長に提出、「産業振興ビジョン」策定。
・同ビジョンが「指針」として位置づけられる/地域資源の活用、産学官の連携、中小企業の振興、の3つの視点
・特徴は、帯広信用金庫が中小企業振興の施策づくりに積極的に参加。地域経済振興部を設置

③吹田市産業振興条例
・市の策定途上の条例案に民商などが意見表明、市の商工振興対策会議の議論を経て制定/同協議会は、3つの作業部会(事業所実態調査、企業誘致・創業支援、商業の活性化に関する要綱・要領策定)を設置。業者を加えて議論
・第一条「地域経済の循環および活性化」の文言を入れ、中小企業の振興とともに、農業及び観光振興を目的に据えた。
・第六条「事業者の役割」で、大型店に「地域社会における責任の自覚」「中小企業者との共存共栄」を規定
   特定連鎖業者に、加盟店についての指導を求めている。
・第4条「基本方針」で、「地域経済の循環に資する企業誘致」「地域からの雇用の促進及び継続に対する支援」を明記し、企業誘致、工場閉鎖に対する踏み込んで規定をしている。

◇地域経済政策づくりにかかわって
・地域の宝物さがし
・地域内産業連関と大企業の地域貢献誘導策
   異業種交流、生活・福祉・環境など幅広い関係づくり、共同受注など「下請」から「横請」へ
   八尾の条例「大企業の努力」/公契約制度/小規模工事契約希望者登録制度、住宅リフォーム補助など
・自治体と地元企業、住民の共同による地域づくり
 栄村 田直し事業、浄化槽工事の協同組合設立、下駄履きヘルパー制度など「内部循環型経済」
 湯布院 旅館の泊食分離による「囲い込み」から地域全体の魅力の押し出しへ/馬路村、上勝町 山林資源の活用など
・これら地域振興を支え公民館を中心として社会教育の学習の力。担い手である住民一人ひとりが輝くことが大前提

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