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社会の発展には雇用安定や人材育成が不可欠 労働白書

 2010年度の労働白書は、目先の利益追求が景気にも社会全体の発展にも障害となっており、「雇用安定や人材育成が不可欠」と結論づけている。
【「平成22年版労働経済の分析」について】【収入格差の拡大、初めて国の責任認める 労働白書 朝日8/3】
【労働白書:「規制緩和が格差助長」 非正規の低所得層拡大 毎日8/3】
【所得格差拡大 放置すれば社会は衰退 中日新聞8/4】

 白書のポイントの説明では「人員削減を通じて労働生産性を引き上げようとする動きが強まり、生産力の持続的な発展に課題が生じていること、」「人件費コストの抑制傾向により、技能蓄積の乏しい不安定就業者が増加し、平均賃金の低下や格差の拡大がみられること」などを示している。
また、格差が拡大した結果、消費が低迷し、産業発展の可能性を狭めたことも指摘し「こうした傾向を規制緩和が後押しした」と認めたうえで、「今後は正規雇用化を進めて技術・技能の向上と所得の底上げを目指すべきだ」と求めている。

 中日新聞の社説は「その是正策と、経済や社会への重大な影響について説明が足りない。」と不十分さを指摘している。
 結婚できない若者の増加が少子化社会をもたらすこと。医療保険や年金に未加入の若者を増やし、やがては生活保護の受給を増やしかねない、ことをあげ、「貧困対策の重要性にもしっかりと言及すべきだった。」と結論づけている。

 新自由主義は、一部のものに目先の利益を集中したが、持続的な社会の土台を破壊してきた。きっぱりとした清算が必要である。
 
 その是正の1つとして、公務の専門性を放棄するアウトソーシングによる官製ワーキングプアも重要な課題だ。


白書が格差問題を取り上げたことは意義がある。だが、 低所得の非正規雇用労働者はなかなか結婚できない-という厚生労働省の調査がある。非正規雇用の独身者が結婚する割合は正規雇用の独身者の半分程度という“非婚”の実態は悲劇である。
 それが 政府として、自民党時代の労働・雇用政策見直しが必要だ。派遣の自由化など行き過ぎた規制緩和の責任は重い。今後は企業が長期雇用を増やし人材育成が行えるよう、税制や金融面など政策的に側面支援することだ。


 

【収入格差の拡大、初めて国の責任認める 労働白書 朝日8/3】

 厚生労働省は3日、2010年版「労働経済の分析」(労働経済白書)を発表した。不安定な働き方が増え、労働者の収入格差が広がったことについて、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と国の責任を初めて認めた。政権交代や、労働者派遣法改正案が先の通常国会に提出されたため、踏み込んだ表現となった。
 白書は雇用者の年間収入を、就業構造基本調査をもとに推計。1997年からの10年間で、100万円~250万円の低収入層の割合が雇用者全体の25%から29%に増えたと指摘。格差が拡大した結果、消費が低迷し、産業発展の可能性を狭めた、と結論づけた。
 非正規雇用が増えた背景に、企業で人件費の抑制志向が強まり、じっくりと人材を育てるよりも即戦力の確保が重視されたことを挙げた。また、99年の派遣業種拡大や04年の製造業派遣解禁など労働者派遣事業の規制緩和が、「こうした傾向を後押しした」と認めた上で、「今後は正規雇用化を進めて技術・技能の向上と所得の底上げを目指すべきだ」と求めた。
 民主党に政権交代し、製造業派遣の原則禁止などを盛り込んだ労働者派遣法改正案が通常国会に提出されるなど、雇用政策は一変した。06年から白書をとりまとめてきた厚労省の石水喜夫・労働経済調査官は「これまでは構造改革がもたらした格差の是正を訴え続けてきた。今後は、長期雇用のもと技能や付加価値の高い人材を育てることで、所得の向上や経済の発展を目指すべきだ」と話す。

【労働白書:「規制緩和が格差助長」 非正規の低所得層拡大 毎日8/3】

 厚生労働省は3日、10年度「労働経済の分析」(労働白書)を公表した。企業のコスト抑制志向のために非正規労働者が増え、年収200万円台以下の低所得層が拡大したと指摘、内需停滞につながったと分析した。さらに「労働者派遣事業の規制緩和が、この傾向を後押しした」などと労働行政の規制緩和の影響に初めて言及。近年、長期雇用を再評価する動きがあるとし、社会の発展には雇用安定や人材育成が不可欠と結論づけた。
 白書は97年と07年の比較から、年収100万円前後~300万円前後の非正規労働者が増え、これに付随して全労働者における年収200万円台以下の層の割合が増えたことを指摘。「いざなぎ超え」と言われた00年代半ばの好景気でも、雇用や賃金の面で成果が労働者に十分に分配されなかったことに注目し「内需停滞の一因になった」と指摘した。
 一方、企業が長期安定雇用を再評価し始めていることにも言及。労働政策研究・研修機構が1月、国内の3025社にこれまでと今後の採用方針を聞いたところ、これまでは「即戦力となる人材を採用する」が多かったが、今後は「将来成長が期待できる人材を採用する」企業が多いことを挙げ、入社後の人材育成を重視する方向に転換しているとした。背景には派遣などの細切れ雇用により、技術・技能の継承が損なわれてきたことへの反省があると分析した。
 その上で、着実な経済成長の実現には「成果が、賃金上昇や労働条件の改善として適切に分配されることが課題」と強調した。

【所得格差拡大 放置すれば社会は衰退 中日新聞8/4】

 今年の労働経済白書は非正規雇用労働者の増加による勤労者間の所得格差の拡大を取り上げた。問題意識は評価できるが、格差是正のための具体策と今後の労働・雇用政策の展望が不足している。
 政権交代は政府の白書にも如実に表れる。例年、労働経済白書は労働側に近い視点で書かれることが多いが、今年は非正規雇用が抱える低賃金・不安定雇用の窮状を正面から取り上げたことが特徴である。
 白書によると、雇用者に占める非正規雇用の比率は一九九七年の23・2%から二〇〇七年には33・7%へと10ポイント以上も高まった。
 非正規雇用はパート・アルバイト、派遣・請負・契約社員などで構成される。このうち派遣は一九九九年の改正で対象業務が原則自由化され、二〇〇四年の改正では製造業派遣も解禁された。
 この間の雇用者全体の年間収入の変化をみると、十年間で百万~二百万円台半ばの低所得層の割合が高まった。とくに非正規では低所得層の増加が目立ち、中間層の減少を通じて格差が拡大した。
 非正規雇用が増えた背景として、大企業製造業を中心に国際競争力強化のため人件費コストの削減を優先したこと。また生産性の低いサービス産業も、低賃金の非正規雇用労働者を積極的に採用したことなどを取り上げている。

  菅直人首相は衆院予算委員会で「雇用拡大を通じて経済成長をはかりデフレから脱却する」と述べた。新成長戦略の早期実行と、前国会で継続審議となっている労働者派遣法の改正が急務である。

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